※この作品はR-18です。

元非モテでアニヲタの僕が自作キャラで異世界転生   作:月狼

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登場ヒロイン

【東方Project】
・魂魄妖夢


第18話(ライカ―10さんリク)

 夜露に濡れた草木が朝日に照らされ、薄霧の中から光る水滴が宝石のように輝いている。半人半霊である妖夢が住む白玉楼にも穏やかな朝の光が差し込んでいた。

 

「ん……」

 

 ここへ泊まりに来ていた陽月がベッドの中で身じろく。窓から漏れる朝の光が彼の顔を優しく撫でると昨晩の出来事が脳裏に浮かび、彼の頬が熱くなった。

 

「……」

 

 ゆっくりと目を開けて隣を見る。そこには人1人分のスペースが空いており、そこで寝ていたはずの人物の姿がなかった。妖夢だ。陽月は上半身を起こし、彼女の姿を求めて部屋を見回す。そうしたことで妖夢はすぐに見つかったが、様子がおかしい。床に座り込み、項垂れている彼女の後ろ姿はなにかに絶望しているようだった。

 

「妖夢、どうしたの?具合でも悪いの?」

 

 ベッドから飛び降り、妖夢に声をかける。近づくにつれ、彼女の異変が明らかになった。彼女の肩が小さく震えているのだ。

 

「妖夢……?」

「うっ……ひぐっ……」

 

 妖夢から嗚咽が漏れている。陽月は愕然とした。だが、それもムリもないこと。普段は強い意志を持ち、どんな困難にも立ち向かう剣士の妖夢が親に叱られた直後の子どものように泣いているのだから。

 

「なにがあったんだ?話してくれ」

 

 妖夢の前に膝をつき、優しく声をかける。妖夢はゆっくりと顔を上げると、涙で濡れた瞳で陽月を捉えつつ、両腕を胸の前で組み──そこにあったはずのものがないことを示し、ふたたび顔を伏せた。

 

「……なくなったんです……私の……胸が……戻っちゃったんです……」

 

 その言葉を聞いた瞬間、陽月の記憶が鮮明によみがえる。あれはそう。今から2日前のことだった。

 

 

―――――

 

 

 時は遡り、2日前。陽月は妖夢と共に深い森を探索していた。ここに古の酒があると聞き、主である幽々子にプレゼントしようとやってきたのだ。しかし、彼らは知らなかった。この森には古の魔術師が残した罠がまだ生きていることを。突然地面が崩れ落ち、2人は底なしの穴に飲み込まれたのである。

 

「きゃあっ!」

 

 悲鳴をあげる妖夢の腕をつかみながら陽月は落下する。暗闇の中を数秒落ち続けた後、ドボンッと音を立てて着地した。落ちた先は沼のような粘液に包まれた空間で、どこかじめじめした雰囲気を醸し出している。

 

「なんなんだ……ここ……?」

 

 陽月は周囲を見渡すが、何も見えない。これが罠であるなら出る必要があるが、それよりまず確認しなければならないことがある。

 

「妖夢!大丈夫か!?」

 

 そう。同行者の安否の確認。出口が分かっても同行者が危険にさらされていたら優先順位が変わってくるからだ。

 

「はい……なんとか……」

 

 妖夢から返事はあったものの、彼女の声は震えていた。その理由はすぐに判明した。突然足元から伸びてきた複数の触手が妖夢を絡めとり、彼女の身体を這いずり始めたのだ。

 

「ひゃっ……やめてくださいっ!」

 

 妖夢は抵抗しようとするが、全身が粘液に覆われ動きづらい。しかも触手はそんな彼女の衣服を容赦なく引き裂き、肌を蹂躙していく始末。

 

「妖夢!」

 

 妖夢を助けようと駆け寄る陽月だったが、それは叶わなかった。彼も同じように触手に体を絡め取られたからだ。

 

「このっ……放せ……!」

 

 完全に拘束されてしまい、無防備な状態となった陽月と妖夢。そこから始まったのは触手による蹂躙ショーだった。

 

「やめてぇ……そんなところ触らないで……ああん♡」

 

 最初こそ抵抗していたものの次第に快楽に溺れてしまう妖夢。自分の恋人が自分以外の者に犯されている。そう思うと、陽月の中でふつふつと怒りが湧き上がってきた。彼女にあのようなことをしていいのは自分だけ。それ以外のヤツがするなんて許さない。それは人間はもちろんのこと、人間でない者であってもだ。例外など存在しない。あまり表には出さないが、これは陽月がこの世で最も確信していることであり、この先も消えることのない独占欲なのだ。

 

「……」

 

これを聞いた者は陽月を自分勝手なヤツだと思う人もいるだろう。自分は多くの女と恋人関係を持っているくせに独占欲は人一倍強い。となればそう思われるのは当然だし、陽月自身もそれは理解している。だが、それでもこの感情こそが陽月の本音であり、決して譲れないもの。それは今もこれからも変わることはないことを陽月は確信している。だから……。

 

「……僕の妖夢に」

 

 右拳を握り締め、赤い竜の紋章を浮かび上がらせる。

 

「手を出すなぁああああぁあああぁあああぁああぁああぁあああぁああああああぁあああっ!!!!!」

 

 咆哮とも呼べるような怒号をあげながら、陽天の竜装(サンライト・ドラゴニック・ギア)を纏う。その際に放たれた光が触手をかき消し、蹂躙ショーの幕を下ろした。そのおかげで解放された妖夢は力なく倒れる。

 

「助かっ……た…?」

 

 朦朧としながら呟くと同時に妖夢はおっぱいに違和感を覚えた。見ると、平らだったはずのそこが大きく膨らんでいたのだ。

 

「なっ……!?」

 

 慌てておっぱいを隠そうとする妖夢だったが、次の瞬間に起きた現象でその必要がなくなる。陽月が魔法で触手によって引き裂かれた衣服を綺麗に修復したからだ。これで安心する妖夢であったが、おっぱいを覆う服の内側はやはり突っ張った感触を消すことまではできなかったが……。

 

「ごめんね妖夢。助けるの遅れて……」

「そんなことないです。助けてくれてありがとうございます……」

 

 陽月の謝罪に対し首を横に振る妖夢。そして顔を俯けると彼にだけ聞こえる小さな声でこう言った。

 

「それに……このおっぱいのおかげで……」

 

最後まで言い終わることなく黙り込む妖夢。だが、陽月には伝わっていた。彼女が何を言いたいのかを。妖夢はおっぱいにコンプレックスを抱いている一面がある。小さいおっぱいを気にしていたのだ。そして今は触手のせいなのか分からないが、大きくなった。このおっぱいで陽月を喜ばせてみたいという気持ちが芽生えているのだろう。その証拠に、帰り道では今まで見たことのない積極的な彼女が目立っていた。

 

「陽月さん……私と一緒に帰りましょうよ〜」

「妖夢?ちょっ!?」

 

 いつもなら手を繋ぐ程度のスキンシップしかしないのに今日の妖夢は妙に大胆だ。手を繋ぐどころか腕を組み、密着してくる。さらに顔を陽月の左肩に乗せ甘える仕草を見せるというおまけつき。こんな彼女を見ることは滅多にないので、陽月は困惑こそしたが、嫌だとは思わなかった。いや、むしろ嬉しいと思ったくらいだ。そんなことを思いながら歩いていくうちに白玉楼に到着する2人。部屋に入り扉を閉めた途端に妖夢は彼に抱きつき唇を重ねてきた。

 

「んむぅ……ちゅぱっ……ぷはぁ……♡」

 

 口内を蹂躙した後、銀色の糸を垂らしながら唇を離す。

 

「……本当に今日は積極的だね」

 

 尋ねる陽月であったが、答えは帰ってこなかった。ただ潤んだ瞳でじっと見つめてくるのみである。それを見てすべてを察した陽月は妖夢の腰を抱き寄せると、再び唇を奪う。それからしばらく互いを求め合う2人だったが、やがて名残惜しそうに離れると陽月は妖夢をベッドに押し倒し、馬乗り状態へ。妖夢は陽月と目が合ったときからすでに準備万端だったのだろう。秘所からは愛液が溢れ出ており、太ももまで垂れていた。陽月はそれを確認すると、指で掬い取りそのまま膣内へと挿入していく。1本だけでなく2本3本と増やしていき、Gスポットを探ると、ある箇所で反応が変わったことに気づく。

 

「陽月さん、もっと激しく掻き回してくださいぃいいいっ♡!」

「ここ?」

 

 要望通りにすると、身体がビクビク震え始め、絶頂を迎える。しかし、これだけで終わりではない。今度はクリトリスへの刺激も加える。両方同時責めにより彼女の限界はすぐに訪れたようだった。

 

「イクゥウウッ♡!」

 

 全身を痙攣させ大きな声を上げながら果てる妖夢。だが、陽月は休ませるつもりはないらしい。すぐさま肉棒を取り出し挿入を開始したのだ。ズブブッという音とともに侵入してきたモノを受け入れる妖夢だが、その表情には苦痛ではなく快感が浮かんでいるようだった。パンッパチンッ!グチュッグチャッ!といった淫靡な水音が響く中で行為は続いていく。

 

「ああんっ♡奥まで届いてますぅうっ!凄いです……気持ちいいですぅうううっ♡」

 

 結合部からは大量の潮吹きが発生しており、床が水溜まりになっていた。それでも構わずピストン運動を行う陽月に対して、妖夢の方も負けず劣らず応戦していく。彼女の手足はしっかりと巻き付いて離さないと言わんばかりであるし、お尻を高く持ち上げるようにして自ら動いて快楽を得ようとしていたからだ。その結果、どんどん高まっていく性感によって遂には絶頂を迎えてしまうことになる。

 

「もうダメですぅうっ!!イキますぅううっっ♡!!!」

 

「僕も出そうだよっ……中に出してもいいよね……?」

「お願いしますっ♡中にくださいぃいいぃっ♡」

 

 ほぼ同時に達してしまう2人。最後の一滴まで注ぎ込もうとするかのように長時間射精した後ゆっくりと引き抜く。そうして栓が抜けたことで勢いよく流れ出てくる白濁液が辺り一面に広がっていく。それをぼんやりと眺める妖夢の視線にはどこか満足げなものを感じることができた。その後しばらく余韻に浸った後、シャワーを浴びに向かう2人。湯船に浸かりながら妖夢はこんなことを考えていた。

 

(やっぱり……陽月さんとのセックスは最高ですね)

 

 身体に残る甘い疼きを感じながら微笑む妖夢。このまま幸せな時間がずっと続けばいいと思っていたのだ。だがしかし……現実はそう甘くなかったのである。

 

 

―――――

 

 

「妖夢。少し落ち着こう」

 

 時を戻して現実。陽月は妖夢を優しく抱き寄せた。そうすると彼女は大人しくなり、静かに啜り泣く。

 

「なんで……なくなったんでしょう……?」

 

 妖夢の疑問はもっともだが、それは陽月にも分からなかった。ただ1つだけ分かることがあるとすれば妖夢の願いが強すぎたせいでそれが実を結びすぎたということである。つまり、本来であれば一時的におっぱいを大きくする触手が妖夢の願いの強さによって能力を超えた状態となり、元に戻ってしまったということ。しかしそれを妖夢本人に言うわけにはいかないので、違う理由を提示するしかない。頭を巡らせた末に思いついた嘘を妖夢に伝えることにした。

 

「僕たちがあの穴に入った時にさ、僕妖夢を助けるために陽天竜の力を開放したよね?その時触手が消滅した影響で本来効果が永続するはずが一時的なものになっちゃったんじゃないかな……?」

 

 苦し紛れの言い訳にすぎなかったのだが、意外にも効果はあったようで妖夢の顔に希望の光が戻ってきた。なにかよからぬことを考えていそうな顔。そして案の定、彼女はよからぬことを考えていた。

 

「じゃあ……またあの場所に行けば……」

「待って!それはダメだって!」

 

 急いで制止する。理由は言うまでもないが、あんなところに行くことは危険極まりないからだ。あの時は運良く助かったが、次もそうなるとは限らない。しかもあんな罠が他にもあったらと思うと尚更行かせてはいけないと考えたのだ。

 

「でも……私のおっぱいは……」

「妖夢のおっぱいは今でも十分魅力的だよ。大きかろうが小さかろうが関係ない。僕にとって妖夢は自慢できる彼女なんだから」

「……」

 

 精一杯の慰めの言葉を投げかけ続けるが、効果は芳しくない様子。やはり触手が与えてくれた巨乳は彼女にとって憧れの存在だったのだろう。しかし陽月としてもこれ以上は譲歩できない部分もあるため、平行線を辿ることになってしまう。

 

(どうしたものかな……)

 

 困り果てていたその時。寝室の扉が開かれそこに1人の女性が現れた。西行寺幽々子。ここ―――白玉楼の主だ。

 

「幽々子さん……」

「どうしたの?2人とも深刻な顔をして」

 

 彼女はゆったりとした笑みを見せているものの、目は笑っていない。まるで獲物を見つけた猛獣のような鋭さを持つ眼差し。それに気づいた陽月は背筋に冷たいものが走るのを感じるほどの緊張を走らせていた。

 

「なにがあったのか、説明してくれる?」

「……実は」

 

 正直に話すべきかどうか悩んだが、いずれバレることを考えれば正直に話したいいだろう。そう判断した陽月は全てを打ち明けることにした。最初こそ真剣な表情で聞いてくれていた幽々子だったが、途中から表情が緩み始め、最終的には爆笑してしまう。

 

「面白い話をしてくれるじゃない。そんなことならもっと早く言ってくれたらよかったのに〜」

「幽々子様、笑いごとじゃないですよぉ……こっちは真剣なんですから……」

「わかってるわよ。冗談に決まってるでしょ?」

 

 冗談だと告げられて安心したのも束の間、次の瞬間には鋭い眼光を向けられ恐怖を感じる羽目になる。

 

「けどね……あなたの主である私がこんな大事な話を見過ごすわけないでしょう?あなたがどうして胸のことを気にしていたかちゃんと調べていたわ。そしたらね、ある情報に辿り着いたの」

 

 不敵に笑うと彼女は新聞紙を取り出す。そこには見出しとして“触手の呪い?大きくなった身体はいつか元の大きさに戻る”と書かれていた。その見出しを読んだ瞬間、陽月は驚愕した。まさかそんなことがあったとは思っていなかったからだ。記事の内容を要約するとこうだ。ある村で行われていた祭りにおいて巨大化させる薬を使用し村人が肥満体型に変わってしまったが、半年後には元の体型に戻ってしまったというもの。しかも原因は不明のままだというのだ。

 

「妖夢の胸が戻った理由はこれかもしれないわね。もし仮にこの事件と同様に呪いだとすれば……解決策も見つけられるかもね?」

 

 提案する幽々子だが、当の本人は疑心暗鬼になっている模様。恐る恐る聞くような形になってしまっているあたり、信用していないというのがわかる。まぁ、こんんなの信じろというほうが無理な話なので、当然の反応ではあるが……。

 

「じゃあ早速行く?善は急げっていうじゃない?」

「幽々子様、行くってまさか……」

「もちろん、問題の村よ。触手の呪いについて詳しく知っている人たちがいるかもしれないでしょ?」

「確かに可能性はありますけど……」

 

 渋る妖夢とは対照的に乗り気になっていく幽々子。このままでは強引に連れ出されてしまうのではないかという危惧を感じているようだった。そう思った陽月はここで1つ条件を提示することにした。

 

「わかりました。行きましょう。ただし妖夢が不安ならば僕が付き添います」

「本当ですか!?陽月さんが一緒なら心強いです!」

 

 パァッと妖夢の表情が華やぐ。幽々子は最初からそのつもりだったのか、2つ返事で条件を吞んだ。そこからはトントン拍子で話が進み、出発までの時間が刻一刻と迫ってきた頃。ふと思いついた陽月はある疑問を投げかけることにした。

 

「ところで幽々子さんはなんでそんなに詳しいのですか?その記事もそうですけど」

「あー……それはねぇ……」

 

 幽々子は言い淀む。なぜならこの真相を聞けばきっと失望してしまうだろうと感じたからである。だがここまで来て隠す意味もないと思い直し、腹を括った。

 

「実はね、私も昔似たような目に遭ったことがあってね……」

「え?そうだったんですか!?」

「うん……まぁ……いろいろあってね……」

「どういうことですか?」

「簡単に言えば胸を大きくしてほしいと神様にお願いしたら逆効果になっちゃった感じかしら?」

 

 苦笑いを浮かべながら答えると、続けてこう話した。

 

「まぁそこはなんとかパチュリーにお願いして元に戻してもらったんだけど……さっきの妖夢を見てたら他人事のように思えなくてね……」

「……そういうことだったんですね」

「とにかくそういうわけだから、協力させてもらえないかしら?」

「もちろんですよ。むしろ感謝したいぐらいですし」

「ありがとう。さてと……準備はできた?行くわよ2人とも」

「はい!行きましょう!」

 

 幽々子の問いかけに妖夢は大きく頷く。一方陽月はと言うと、若干疲労感を漂わせていた。理由はもちろん昨日の件である。触手の罠に嵌められたことで体力を消耗した上に今日は朝から準備作業があったのだから、無理もないだろう。とはいえここで弱音を吐くわけにもいかないので、気合を入れ直すことにする。目的の村までの道中は特にトラブルもなく順調そのものだったが、問題は目的地に近づいた時に起こった。遠目に見える村からは煙が立ち昇っており、明らかに異常事態であることが見て取れるのだ。

 

「あれって……」

「間違いありません。村全体が火事になっていますね」

「これは想定外だわ。とりあえず消火活動を優先しましょう。2人とも行くわよ」

 

 幽々子の号令と共に3人は全速力で駆け出す。幸いにも炎の勢いはそれほど強くなく、比較的容易に鎮火させることができた。村民たちからの感謝の言葉を受け取りつつ、事情聴取を行なっていく。そしてわかったことは以下の通りである。まず村は普段から観光客などで賑わっており、比較的平和な地域であるとのこと。次に今回の事件は自然発火によって起きたものではなく、人為的なものであること。そして最大の問題点としては誰が何のためにこのようなことをしたのかという点にある。それさえわかれば捜査も進展するのだが、今のところ手掛かりらしいものは一切なしの状況なのだ。

 

「どうやら厄介なことになりそうね」

「どうするんですか?幽々子さん」

「ひとまず情報を集めましょう。何かヒントになるようなものが見つかるかもしれないし」

「了解しました」

「では、聞き込み調査をしてきますね」

「頼んだわ」

 

 それぞれ役割分担をして行動を開始する一行。まずは村民に話を聞くことから始めることにする。村長宅へ向かい事情を説明すると、快く招き入れてくれた。そこで得られた情報によると、最近妙な噂が流れているらしい。

 

「妙な噂ってなんですか?」

「なんでも村の外れにある森の中に祠があってね……その中にいる巫女様が我々を救ってくれるらしいんだ」

「巫女様?どんな方なのですか?」

 

 陽月が質問すると、村長は難しそうな顔をする。曰く昔は毎日のように参拝客が訪れていたそうで、かなりの人気者だったそうだ。しかし近年では年々参拝客は減少しており、今ではほとんどいない状態になってしまったという。

 

「なるほど……」

「それで最近また復活したようでな……」

「復活?」

「なんでも夜な夜な森の中から歌声が聞こえてくるらしいんだよ」

「歌声ですか……」

「うむ。それでみんな恐れていてな……」

「ありがとうございます。参考になります」

 

 お礼を述べると、村長宅を後にする3人。そして次に向かった先は噂の祠。雑草が生い茂っていて荒れ放題といった様相になっているその周囲には朽ち果てた鳥居が散乱しており、長い年月放置されていたことが伺えた。

 

「いかにもって感じだな……」

「お化けが出そうな雰囲気ね」

「幽々子様!変なこと言わないでくださいよ!」

 

 青ざめた顔で言う妖夢。妖夢はホラーが苦手だ。半分幽霊のくせにと思うかもしれないが、怖いものは怖いのだからしかたがない。

 

「お邪魔します」

 

 律儀にそう言って中に入った一行を迎えたのは古びた像。その姿を見る限りでは神聖なオーラを放っているように感じられるが、よく見ると至るところにひび割れがあり、とても崇め奉るようなものではないことがわかる。さらに不思議なことに像の顔はボロボロになっているため判別がつかないものの、目元の部分だけははっきりと確認できた。その目つきは非常に鋭く、睨まれたら凍りつくのではないかと思わせるほどの迫力がある。そんな印象を与える像を前に3呆然とする状態がしばらく続いた後、口を開いたのは妖夢だった。

 

「この像……誰かに似てませんか?」

「言われてみればたしかに……」

「どことなく紫に似ている気がするわね」

 

 3人揃って頭を傾げる中、突然背後から声がかかった。振り向くと視界に映ったのは金色の長髪に紫のドレスに身を包んだ女性。そう。彼女こそが像のモデルとなった人物―――八雲紫その人である。

 

「あなたたちかしら?私のことを調べているのは。ここに来たのもそのため?」

 

 鋭い眼光をむけながら聞いてくる紫。その目にはヘタな嘘は許さないと言っているように見えた。陽月はどう答えるべきか迷うものの、下手に誤魔化して余計に疑われるのは避けたい。そう判断して正直に話すことにした。

 

「はい……そうです」

「そう。なら教えてあげる。この村はね……かつて封印された地獄なのよ」

「地獄!?」

「そう。正確には地獄を作り出した悪鬼の魂を閉じ込めた場所ということになるわね」

「地獄を作り出した悪鬼……?」

「そうよ。昔はたくさんの人がここを訪れていたらしいわね。でもある時突然来なくなったみたい。おそらくその原因は私でしょうね」

 

 自信ありげに語る彼女の言葉を聞いた瞬間、嫌な予感が陽月の頭をよぎる。しかしそんな彼のことなどお構いなしとばかりに語り続けた。かつて幻想郷には天狗と呼ばれる種族が住んでいた時期があったらしい。彼らは高度な文明を持っており、様々な道具を開発することで生活の質を向上させていったのだが、ある時問題が発生した。それは寿命という壁だ。陽月やアズサのように神や女神から不老不死を付与してもらったのならともかく、人間が永遠に生き続けることは基本不可能であり、いつか死ぬことになるのは必然。それを解決するために考案されたのが転生システムだ。魂だけの存在となって他の肉体へ移ることで何度も生まれ変わりを繰り返すというものだが、ここで2つの問題が発生した。1つはこれを実践するためには特別な術式が必要となるため専門家による施術が必要となってくること。1つは専門家の数が少ないため、需要に対する供給が追いつかない状態になったことだ。この結果生まれたのが闇医者で、彼らは安く術を受けてもらうことができると謳い文句にして商売を行っていた。しかし当然ながらそれは違法行為。加えてリスクが高いということで表立って活動することはできなかった。そのため、裏社会にて独自にネットワークを作り上げていくうちに組織化されていったのだ。そして満を持して転生ビジネスが完成した時には時既に遅し。理由は彼らの作り上げたシステムには重大な欠陥があったから。簡単に言ってしまうと、前世の記憶を持ち越すことができないというもの。いくら新しい体を得ても過去の自分と同じように過ごせる保証はどこにも無い上に、場合によっては全く別の人格になってしまうこともあるかもしれないのだ。それを防ぐために行われたのが洗脳教育なのだが、幼少期から徹底して教え込まれる教育内容には自分の意思などなく、従順になることだけが求められていたと言ってもいいだろう。そうして、成長した彼らは新たな人生を送ることができるようになったのだが……その代償はあまりにも大きかった。なぜなら、自分が何者であるかも忘却してしまった人々が多数誕生したことになるからである。そうして生まれてきた子供たちは例外なく殺害された。親にとっては迷惑千万以外の何者でもないからだ。このような悪循環の中で作られたのが禁忌の術。それは具体的な方法までは公表されていないものの、その名前だけは広く知られている。黄泉帰り。死した者の魂を蘇生させる技術であり、この世に再び呼び戻すことができる唯一の手段。もちろん成功率は低く、成功しても自我を失ってしまっているケースも多いのだとか。だが、当時はそれでも縋りたくなるほど追い詰められていたのだろう。詳細は不明ではあるものの、実行した者は何人かいたらしい。この技術が生まれてからというもの、非難する声が多く上がった。だが、それも当然のこと。一度死んだ者を生き返らせるのは自然の摂理に反することであり、死者への冒涜にほかならないからだ。死とはなんなのかと議論する者もいるが、その議題自体がナンセンスだ。そもそも死というのは生命活動が停止することを指しているだけであり、必ずしも意識がなくなるわけではない。よって、死後も魂魄として存在していると考えることが可能なのだ。つまり、死後の世界など存在せず輪廻転生も同様で、これらはすべて仮説にすぎないのである。それを踏まえた上で考えるならば、黄泉帰りなんていうものはただの自己満足に過ぎず、むしろ害悪になり得るものだと断言できるだろう。故にこの世界ではこの術を使用した者には厳しい罰則が課せられることとなっている。それでもなお手を染める者が後を絶たない理由は何故だろうか。それは単純明快。誰もが自分の大切な人を失いたくないと思っているからだ。愛する人が亡くなった悲しみは計り知れないものであり、二度と会えないという現実を受け止められない人は当然出てくる。ならばどうすればいいのか。答えは簡単。黄泉帰りを使えばいいのだ。これさえあれば失ったものを取り戻すことが出来る。どれだけ時間がかかろうとも必ず成し遂げてくれる。そう信じているからこそ、彼らは罪を犯すのだ。例えそれが許されないことだとしても……。

 

「……ってことがあってねぇ……」

「なるほど……それで地獄を作り出したのですか?」

「いや……まだ続きがあってね。黄泉帰りを行なうと死者の魂を呼び寄せることができるのはわかったけど問題はその後でね……。いくら呼び戻したところで肉体は腐敗していくし病原菌の温床にもなってしまうのよ。つまりは感染症が蔓延して大災害級の被害が起こりかねなかったの」

「それは確かに……」

「そこで私は考えたわ。せっかく呼び戻すことができた命なのだから大切に使わなければならないとね」

「……まさか」

 

 陽月たちの中で嫌な予感がよぎる。そしてその予感な最悪なことに的中してしまう。

 

「そのまさかよ。私は魂を回収した上で結晶化させることで保存することに成功したのよ。こうすることであらゆる病気の治療に使える素材として利用することができるようになったわけだけど……このやり方がよくなかったみたいでね……一部の連中がこれを悪用し始めたの」

「どういうことでしょうか?」

 

 疑問を呈する妖夢。それに対して紫は溜息混じりに答えた。

 

「つまりこういうことよ。人間にとって最も大切なものは何だと思う?家族?友達?恋人?お金?地位?名誉?健康?それともその他?」

 

 その問いに沈黙を貫く陽月たち。紫はそれが答えだと捉え、言葉を続けた。

 

「正解は命。自分自身の存在意義そのものといってもいいでしょう。だからこそ人は必死になって守ろうとするし、失いたくないと思うはず。それなのに奪われるなんて到底許されるべきではないと考えるのは自然な流れよね?そういうわけで彼らは魂を集めるために殺戮を繰り返すようになったのよ」

「ひどい……」

 

 どのような理由があったにしろ、人の命を奪うことは許されることではない。それはどんな大義名分があったとしても覆ることのない共通認識だ。

 

「えぇ本当に酷い話よね。けど……残念ながらこれが現実なのよ。人間の欲望というものは際限がない。だから歯止めが利かなくなってしまったのでしょうね。でも安心してちょうだい。もうその時代は終わったものとして片付けられているから」

「終わったとはどういう意味でしょう?」

「そのままの意味よ。魂を集めている途中で暴動が起きてしまってね。その結果集めたものが全部壊されてしまったみたいなの。それからというもの彼らは力を失って消滅してしまったわ」

 

 きっと人の命を奪った報いを受けたのだろう。罪を犯した者は形はそれぞれ違うとはいえ、自分に跳ね返ってくる。これも覆ることのない共通認識だ。

 

「まぁざっとこんなところかしらね。あと補足しておくとこの話は極秘事項だから誰にも喋らないようにお願いするわ。もしバラしたら……わかっているわよね?」

「もちろんです。あの、最後に1つ聞きたいことがあるんですけど……いいですか?」

「なにかしら?」

「最近この近くの森で夜な夜な歌声が聞こえてくるということを聞いたのですが、それはあなたですか?」

 

陽月の質問に紫は肯定する。なんでも最近ハマっているアイドルがいるらしく、その曲を歌っていたんだとか。本人に悪意はないのかもしれないが、人騒がせな妖怪である。

 

「質問はそれだけ?」

「はい……答えていただきありがとうございました」

「なら私は帰るわね。さっきの件、くれぐれもお願いね?」

 

 そうすれば敵対する気はない。紫はそう言い残し、隙間の中へと消えていった。ため息をつく陽月たち。理由は簡単。さきほどの話を聞いているうちに胸が痛くなってきたからだ。彼女の言うように確かに非情な仕打ちではあるものの、全てを悪い方向に考えるべきではないと思っている。何故なら死は基本誰にでも訪れるものであり、逃れることはできないものだからだ。この世界には陽月を含めて死の理から外れた者は存在するものの、大抵の者はそこから逃れることはできない。故にどうしようもないことなのだと割り切るしかないのだ。しかし同時に思うこともある。もし死後の世界が存在したのならどうなるのかということだ。天国地獄のような概念があるかどうかわからない以上、安易に結論を下すことなどできないものの、少なくとも陽月はこれだけは理解している。死の理から外れた自分がそれを理解する日は来ないということを。

 

「あの……陽月さん?」

「ん?なに?」

「いえ……その……大丈夫かなって思いまして……」

「大丈夫だよ。ちょっと考えごとをしていただけだから。それよりもそろそろ帰らない?もうここから得られるものはなさそうだし」

「そうですね。この件に関してはもう関わらないほうがよさそうですし」

「私もそれがいいと思うわ。胸に関しては別の方法を探しましょう」

 

 幽々子も賛成してくれたことでこの調査は打ち切りとなり、一行は白玉楼へと帰るのだった。

 

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