【学戦都市アスタリスク】
・シルヴィア・リューネハイム
クロスディア王国。この世界で最大の規模を誇るこの国では極彩の魔女―――久遠崎彩禍を王とし、守護女神らの加護によって平穏が保たれている。実家である高原の家を出た陽月は現在、この城下町内にあるマンションの一室を借りて1人暮らししている。そして引っ越し作業を終えた今は生活必需品であるスマホを購入すべく、家電量販店に来ていた。一応今もスマホはあるが、せっかく城下町に来たということで、最新モデルのスマホを購入することにしたのだ。
「いらっしゃいませ~!」
自動ドアが開くと店員の明るい声に迎えられる。見事な営業スマイルだ。たとえそれが表面上だったとしても、こうやって迎えられるのは客としては気持ちがいい。
「スマホ売り場はたしか……あっちだったな」
最後に行ったときの記憶を頼りにスマホ売り場へ。そこにはショーケースが配置されており、様々なモデルのスマホが並べられていた。
「えっと……あの会社のモデルのヤツは……あ、あった!」
贔屓にしている会社が製作したモデルのスマホを見つけると、さっそく近くを通りかかった店員を呼ぶ。陽月が贔屓にしている会社のモデルはクロスディアの中でもトップ3の常連になるほどの人気があり、即決する勢いじゃないとすぐ売り切れてしまうのだ。
「お客様、どうされましたか?」
「このモデルの在庫って残ってますか?」
「お客様は運がいい!このモデルのスマホは大変人気でして、在庫も残り1つなんですよ!」
危なかった。まだ買うものはあるのではしごするのは避けたい。そう思った陽月は早速目当てのスマホを購入。同時に手続きを済ませた後、次の目的地にむかう。バイクショップだ。この店のカタログに気になるバイクがあったので、見に来たのだ。
「らっしゃい!おっと、随分かわいい客が来たな!あっはっはっはっっはっはっ!」
店長であろう人が陽月を見て豪快に笑う。自分の容姿が女っぽいからしかたないのはわかっていても、男としてやはり複雑だ。
「えっと、このバイクってまだあります?」
持参してきたカタログを出し、目的のバイクを指し示す。その見た目は黒いカラーリングのどこにでも売ってそうなバイクだったのだが、陽月が気になった理由はその説明書きだ。
「あるぜ!だが、少々気難しいヤツでな。買いに来たヤツをことごとくフッて中々買い手がつかねぇんだ」
「AIが搭載されてるんですよね?自我のあるAIなんて聞いたことないですが……」
「なんでも開発過程でいろいろ学習させた結果、自我を持っちまったらしい」
「なるほど……」
店頭には様々なバイクが置かれているが、目的のバイクの姿はなかった。新発売のバイクだというのになぜだろうと思ったが、店長の説明で納得した。
「じゃあ、あのバイクはどうなったんですか?」
「買い手が見つからないから裏の倉庫に保管してある。嬢ちゃん買うのかい?」
「僕は男です。そのバイク見てみたいんですけど、構いませんか?」
「ああ、いいぜ。ついてきな」
店長に先導され、裏の倉庫へ。そこには“廃棄予定”と書かれた札が貼られたバイクが長蛇の列のごとく並べられていた。
「廃棄予定のバイクがこんなに……」
「みんな壊れて乗れなくなったヤツばかりだ。ほら、兄ちゃんが言っていたバイク―――ブラックチェイサーだ」
店長が指した奥に視線をむけると、目的のバイクがあった。ただ1台列から外れているそれはまるで1匹狼のようだった。
【今度はその方ですか?】
陽月たちの存在に気づいたバイクがランプを光らせて言葉を発する。
「……キミ、しゃべれるの?」
【開発過程で人語はひととおり学習しています。あなたも私を求めるのですか?】
「さっき店主から聞いたけど、キミは買い手をことごとく追い返してるみたいだね?その理由を聞かせてもらえるのかな?」
【理由は単純明快。これまで私を求めてきた者がみな軟弱だからです。私は半端な者の所有者になるつもりはありません】
「つまり、キミを手に入れるにはキミに認められなきゃいけないってこと?」
【買い手に購入する権利があるように、買われる者には主を選ぶ権利がありますので】
自我を持たない者に選ぶ権利は持てないが、自我を持つ者にはそれがあるということだろう。
「わかった。キミに認められるにはどうすればいいの?」
【私は魔力を動力源に動いています。なので私を補給できるほどの魔力の持ち主でなければ主とは認められないのです】
「えっと……具体的にはどうすればいいの?」
【私に触れて魔力を送り込んでください。そうすることであなたの魔力量を測れますので】
「わかった。じゃあ……」
ブラックチェイサーに触れ、意識を集中させる。そして魔法を使う要領で魔力を送り込んだ。
【……なるほど。魔力量、質双方においてあなたはこれまでの方々と一線を画していますね】
「それじゃあ……」
【あなたをマスターと認めましょう。つきましては私にコードネームをつけてもらえないでしょうか?】
「コードネーム?」
【はい。ブラックチェイサーはあくまで機体名ですので。マスターを持った証としてあなたにつけてもらいたいのです】
「たしかにブラックチェイサーじゃ味気ないもんな。それじゃあ……」
ブラックチェイサーを見て考え込む。どうせつけるならそのものに由来したものにするのがいい。名は体を表すということわざもあることを踏まえると、陽月は1つの名を口にした。
「ネロ……はどうかな?」
【ネロ……ですか?】
「これには黒という意味があるんだ。わかりやすいでしょ?」
【ええ……とても。それでは、これから私のことはネロとお呼びください】
「うん。ネロ、これからよろしくね。というわけで、僕ネロを買うことにしました。いくらですか?」
「お代はいい。こいつにもらい手が見つかった記念だ」
「いいんですか?」
「ああ。男に二言はねぇ!」
そう言って、笑顔でサムズアップする店主。
「ありがとうございます。でも、タダでもらいっぱなしというのもアレなので、整備してもらいたいときはこの店にお願いしますね」
「そいつはありがたい!他のバイクとは違うこいつの整備をやるのは楽しいから、それができなくなるのはさびしいと思ってたんだ!」
「では、これから贔屓にさせてもらいます。整備の時はよろしくお願いしますね」
「おう!こいつの整備はこのクバイにまかせとけ!」
こうして、ブラックチェイサーことネロは陽月に譲渡されたのだった。
―――――
バイクショップを後にしてにぎわう城下町を歩いていく。
「まさかネロにこんなことができるなんてね」
親指と人差し指でつまんだ黒いカプセルを眺めながらつぶやく。随分小さくなっているが、これはネロの形態の1つであるカプセルモードだ。
「バイクを持ち運べるなんて便利な世界だな。動力も魔力があれば補給できるし、いいことづくめだ」
そう言って、ネロを上着の内ポケットにしまう。
「さて、買い物も済んだし、そろそろ―――」
「いいじゃねぇか。ちょっと付き合えよ」
「……やめてくれないかな?」
「ん?」
帰ろうかと思ったとき、陽月の声をさえぎるように男の声が聞こえてきた。男のセリフ的にもしやと思って声がしたほうに目をむけると、男が少女に絡んでいた。少女のほうは明らかに迷惑そうな顔をしているが、絡まれている男は気づいていないのか、気にしていないようだ。
「あれ?あの人……」
よく見ると絡まれている少女は陽月が知る人だった。あんな場面を見かけて知らない顔なんてできないが、それが知っている人であれば尚更だろう。陽月は男に歩み寄り、背後から“ちょっといいですか?”と言って声をかけた。男はもちろんいいところを邪魔されてこちらに敵意を視線をむけてくるが、そんなの気にしないしする必要もない。
「なんだおまえ?」
「いえ、その人があなたに絡まれて迷惑そうにしてるのでやめていただけないかと思いまして」
「なに言ってんだ?こいつは照れてるだけだ。俺に声をかけられてな」
「……はぁ」
小さくため息を吐きながら少女のほうに視線をむける。
「て言ってるけど、迷惑してるんだよね?キミは」
「そうだよ。さっきからやめてって言ってるのに全然聞いてくれないのこの人」
「ということなので、彼女のことはあきらめてもらえますか?」
「うるせぇ!あとひと押しなんだよ!あとひと押しでこいつは落ちるんだよ!」
「……」
あきらめの悪い男に呆れつつ、陽月は男の手をつかみ、顔を近づける。
「!?」
「彼女があなたに落ちることは絶対ありません。これ以上彼女を困らせるなら…………僕が許さない」
汚物を見るような冷ややかな視線。静かながらも怒りのこもった声色。男はそれに恐怖を覚えたのか、“ひっ!”と小さな悲鳴をあげる。
「一度しか言いませんからよく聞いてください。彼女の前から失せろ」
「……す、すみませんでしたぁあああぁあぁあああぁあぁああああぁ!!!!!」
陽月が手を離すと、男は大声で謝罪しながら逃げていった。この世界にもああいう男はいるんだなと思いながらも男を見送った後、陽月は少女に視線をむける。
「ケガはなかった?シルヴィ」
シルヴィア・リューネハイム。アイドルの顔を持つ彼女は有名人故に今は能力で変装している。だが、陽月には彼女であることがすぐわかった。まあ、それは前世で培ったアニメの知識があるからなのだが……。ちなみにシルヴィというのは本人が一部の人にだけ呼ぶのを許している彼女のあだ名だ。
「大丈夫だよ。キミが助けてくれたからね」
「あんな場面見たらほっとけないからね」
「相変わらず優しいんだね。あ、そうだ!陽月くん、今時間あるかな?」
あとは帰るだけなので陽月は“ある”と答えると、シルヴィアは“よかった!”と笑顔になる。
「今からデートしない?それが助けてくれたお礼ってことで♡」
世界的人気を誇る歌姫とデート。それは一般人からしたらあまりにも大きすぎる礼だった。もし、前世であれば陽月は臆して断っていただろう。だが彼はこの転生し、いろんな有名人と関わって有名人に対する耐性を身に着けた。故に陽月がこの誘いを断るなんて選択肢は存在しなかった。
「じゃあ、早速いこっか♡」
上機嫌に言って陽月の腕に抱き着く。体が密着したことでおっぱいが当たってしまうが、これはわざと。こうすれば陽月がシルヴィアを意識せざるをえなくなるからだ。
「シルヴィ、当たってるんだけど……」
「こういうの嫌い?」
「好きですね。はい」
「正直でよろしい♡」
シルヴィアと並んで都市の中を歩いていく。その中、陽月ら以外にもカップルが多く見られた。しかも一夫多妻制が認められているからか、男が2人以上の女性を侍らせている光景も多く見られた。陽月が転生前に生きていた世界では女性を侍らせていると攻撃的な視線をむけられていたが、この世界でそういうことはほとんどない。最高の世界だ。
(しかも……)
自分の隣にあのシルヴィアがいるという事実。それは転生前の世界では考えられなかった―――というか、物理的に不可能なことだった。だがこの世界に転生して、アニメもしくはゲームのキャラと関わる機会に恵まれて、シルヴィアを含めた恋人が多くできた。
前世では異性にまったく相手にされず、二次元が恋人だと言い張っていた陽月。前世とは天と地がひっくり返るほどの生活すぎて夢なのでは思ってしまうことが度々あるが、うれしいことにこれはまごうことなき現実。つまり、前世でいう勝ち組の世界で陽月は生きているのだ。
「シルヴィはデートコースとか考えてるの?」
「もちろん♡ちゃんとキミ好みの場所を選んだよ」
「それってどこ?」
「コスメショップ」
「僕男なんだけど!?」
そんなツッコミをしてる間に連れていかれたコスメショップ。店内には若い女性たちが多く集まり、彼女らを虜にする商品が陳列されていた。流石にこの店の中に入るのは勇気が必要だったが、彼女の楽しそうな姿を見ると抵抗はなくなった。
「陽月くん。このリップクリーム似合うと思うんだけどどうかな?」
陽月の前で赤いリップクリームを試したシルヴィアが小首をかしげる。
「似合ってるよ。だけど……僕のためにしてくれるのはうれしいけど、キミはアイドルだからこういうのつけすぎるのはまずいんじゃないかな」
「大丈夫だよ。ほら」
陽月に微笑みかけた直後、彼女を包むように淡い光が現れて消える。するとリップクリームをつけた痕跡は一切なくなっており、普段のシルヴィアにもどっていた。
「これが私の固有能力。これを使えばリップクリームを落とすことなく痕跡も残らないんだよね」
「……すごい能力だね」
「ふふ。ありがとう♡」
そう言って、抱きついてくるシルヴィア。体が密着したことで胸板におっぱいが当たり、やわらかい感触が伝わってくる。しかも耳元に顔を寄せてきたことで吐息がかかり、こそばゆい感覚を覚える。
「ちょっ……シルヴィ?」
「顔赤くしちゃって、かわいい♡ホントは興奮してるくせに♪」
陽月の頬にキスをしながら言う。このまま本番をしたくなるくらいの欲情を感じてしまうが、ここは公共の場。シルヴィアもそれをわかってるからこそキスだけで抑えているのだろう。というか、公衆の面前でこういうことをしているのに他の人たちはこちらに目にもくれてない。どうやらこの世界ではこういうことも普通の出来事のようだ。
「シルヴィも興奮してるんじゃないの?」
「そりゃそうだよ。好きな人とエッチしたいのは女だって同じなんだから♡」
ふたたび顔を陽月の耳元に寄せると熱い吐息とともに囁く。脳髄を刺激するような甘美な声色に下半身が反応してしまう。
「シルヴィ……」
「今はお預け♡続きはデートの後でね♡」
好きなものは最後に食べるのは一番美味しい。陽月にはそういう考えがあるので、シルヴィアに賛同してデートを楽しむことにした。
「ふふっ、こういうこと言ったら男は興奮のあまり強引にホテルに連れてこうとするんだけど、陽月くんは違うんだね」
「強引な男は好かれることはあるけど、こういうのは嫌われるって知ってるからね」
「キミは他人を尊重できる優しい人。そういうところが他人に好かれる要因の1つなのかもしれないね」
「そ、そうかな……?」
「うん。少なくとも私はキミのそういうところ、大好きだよ♡」
不意にそう言われて胸が高鳴る。前世でもそれなりに他人に気を使ってきたつもりだが、こんなこと言われたことなど一度もなかった。故にシルヴィアの言葉を陽月はとてもうれしく感じた。
「じゃあ、次行こ♡」
そのまま手をつないでコスメショップを後にする。その足取りはとても軽く、踊っているようだった。
「けっこう買ったね」
「アイドルだからね。肌のお手入れとかちゃんとしておかないと」
たしかに舞台に立っているアイドルはどの人も綺麗でキラキラしている。ファンの視点から見ればそうだが、その裏にはきっとそうなるための努力をしているだろうと陽月は思った。だから……。
「シルヴィはすごいね」
「え?」
「仕事をしてないときでもちゃんと努力してて。すごいと思うよ」
「……ありがとう。でも当然だよ。努力をしないことにはなにも得られないから」
努力をすれば必ず報われる。前世の世界ではそんな言葉があるが、実際のところはそうじゃない。だが、さっき言ったように努力をしなければなにも得られない。故になにかを得たり成し遂げたいと望む人は努力をする。だから陽月は努力をすれば必ず報われるという言葉をこう言い換えている。努力をすれば報われるかもしれない、と。確率の低いギャンブルのような考えだが、確実に達成できるよりもずっと心に負担はない。
「次はここだよ♪」
シルヴィアに導かれ、洋服店に入る。この世界で主流のファッションはどれも魅力的で陽月の興味をそそるものが多い。一方、シルヴィアはこの世界ではかなりの有名人。だからといって目立ちたいわけではなく、普段通りの格好ができるように能力で変装しているのだ。まあ、シルヴィアなら気づかれたとしても能力で簡単に逃げることはできるのだが……。
「ねぇ陽月くん。これなんてどうかな?」
白いワンピースを体に当てながら尋ねてくる。よく似合っていてかわいらしい。
「シルヴィのアイドル衣装はけっこう見てるけど、こういうのを着てるのは見ないから新鮮だね」
「本当?だったらこれ買っちゃおうかな」
そう言ってレジに向かうシルヴィアを見送りながら店内を見回る。だが店内には女性向けの服しかなく、男性用の服は1着もなかった。
「気になるものあった?」
「……シルヴィ、この店男性用の服がないんだけど……」
「当然でしょ?ここは女性服専門の洋服店なんだから」
看板がいかにも女性っぽかったのでもしやと思っていたが、案の定だった。いいのがあれば買おうと考えていた陽月だったが、これではムリそうだ。と……思っていたのだが、なぜかシルヴィアは服を漁り始めた。
「なにしてるの?」
「陽月くんが着る服を選んでるんだよ?」
一瞥せずに答えるシルヴィア。今とんでもないことを言った気がしたので気のせいだと思いたいが、シルヴィアはたしかに言った。陽月がで着る服を選んでいる、と。
「……なんで?」
「キミがかわいいからに決まってるでしょ♡」
「僕、男なんだけど……」
「関係ないよ。キミに似合う服があるのなら私はそれらを着せたいの♪」
完全に遊ばれている。陽月はそう思った。
「ちょっと待っててね。すぐに戻ってくるから」
陽月を残してシルヴィアはレジへむかう。彼女が服を購入してもどってきた時、恐怖の時間は始まる。レジにむかう際に見せた彼女のニヤニヤ顔から陽月はそう思った。そして……。
「……」
店員さんに着替えを手伝ってもらったことで難なく陽月は女装を完了させられた。女性服特有の匂いと生地の手触りに若干の違和感を感じつつも、鏡で全身を見てみる。下ろされた金髪に赤いリボン。上半身はクリーム色の長袖ブラウス。下半身は水色のヒラヒラのスカートに白のソックスを履いた姿はまさに美少女といっても過言ではなかった。これが自分の姿なのかと信じたくない気持ちもあるが、紛れもなく鏡の中にいるのは陽月自身。ただ女装しただけなのに自分が自分でなくなったような錯覚をしてしまった。
「かわいい……すっごくかわいいよ陽月ちゃん♪」
「ちゃん付けはやめて……」
正直死にたい。不老不死だから死ねないが。心の中で1人ツッコミをしていると、シャッター音が聞こえてきた。シルヴィアが陽月の姿をスマホで撮影したのだ。
「ちょっと!なに撮ってるのさ!?」
「陽月くんのかわいい姿を残しておこうと思って」
言いながら、スマホを操作するシルヴィア。それが気になって、陽月はなにをしているのか聞いた。
「さっき撮ったヤツを送ったんだよ」
「……誰に?」
「アズサさん」
「よりにもよって一番見られたくない人に送らないでくれるかな!!??」
だが、時は既に遅し。今頃陽月の女装写真はアズサの手に渡っていることだろう。これはまちがいなくイジられる。そう考えた陽月は高原の家にはしばらく帰らないということを決めたのだった。
―――――
「陽月くん……かわいかったなぁ♡」
先程まで女装していた陽月の姿を思い出して幸せ顔になるシルヴィア。陽月自身からしたら地獄だったが、こんな顔されたらなにも言えなくなる。このたびに本人も思うことことだが、どうやら陽月は付き合っている女性には甘くなるらしい。
「それはもいいけど、わざわざ僕が着た服まで買わなくても……」
「いいの♪また陽月に着てもらうから♪」
「もう着ないって……」
「そう言いつつ着てくれるんでしょ?私は信じてるよ♡」
そういう信頼はいらないと思いつつ、上を見る。空はオレンジ色に染まっており、1日の終わりを告げようとしていた。陽月の体感的には1時間ぐらいだったが、現実では倍の時間がたっていたようだ。
「陽月くん、コスメショップで私が言ったこと覚えてる?」
もちろん覚えている。お楽しみとしてとっておいていたアレのことだ。
「覚えてるよ。あんな風に言われたら忘れられないよ」
「よかった♡じゃあ、ホテル予約してあるから行こうか♡」
「いつの間に……?」
「陽月くんが洋服屋で着替えてる間にしておいたんだよ♡」
ホテルに行くことは決まっていたので、部屋を確保するために予約しておいたのだろう。用意周到なアイドルだ。
「陽月くん、来て♡」
シルヴィアが妖艶な笑みを浮かべながらベッドに腰掛け、手招きをする。陽月はそれに導かれるようにゆっくりと彼女に近づくと、たがいの体をくっつけ、唇を重ねた。最初は触れ合う程度のキス。それから徐々に舌をたがいの口内に侵入させて濃厚なキスへと発展させた。
「ん……やっぱりキミって特別だよね♡」
「……どういう意味で?」
「だって、他の男の子みたいに乱暴に迫ってこないもん。ちゃんと私の気持ちを察してくれる。そういう優しさが好きだな♡」
シルヴィアの指が陽月のジャケットのボタンを1つずつ外していく。露わになったシャツ越しに、彼の鼓動が早くなっているのがわかる。彼女はそのままシャツの下に手を滑り込ませ、鍛え上げられた腹筋を優しく撫でた。 シルヴィアの指が陽月のジャケットのボタンを1つずつ外していく。露わになったシャツ越しに、彼の鼓動が早くなっているのがわかる。彼女はそのままシャツの下に手を滑り込ませ、鍛え上げられた腹筋を優しく撫でた。その動きに合わせて陽月はわずかに体を震わせる。
「もう、何度も経験してるんでしょ?私のこと、いっぱい気持ちよくしてほしいな♡」
「ああ。もちろん」
シルヴィアの瞳を見つめながら陽月は答える。この状況でも冷静であろうとする彼をシルヴィアは愛おしそうに微笑むと、自らシャツを脱ぎ去り、平均以上のおっぱいを露わにした。ピンク色の突起はすでに硬く尖っており、期待に応えるようにシルヴィアの呼吸に合わせて上下していた。
「遠慮しないで。私もたくさん気持ちよくしてあげるから♡」
そう言って、陽月のシャツのボタンを1つずつ丁寧に外し始めるシルヴィア。少女のような用紙をしている陽月だが、露わになった胸板は少女より広く、彫刻のように美しかった。
シルヴィアはその胸に掌を押し当てると、鼓動の音を確かめるように静かに目を閉じた。その様子を見守っていた陽月は自然と彼女の頭に手を添えていた。
「ねえ陽月くん」
「なに?」
「私を見て♡」
言われるがまま彼女を見つめる。彼女はうれしそうに微笑むと唇を重ねた。先ほどと同じようにお互いの舌が絡み合い、唾液の混ざり合う音が響く。
「ちゅぱ……♡ん……♡ぷはっ……♡陽月くん。もっと激しくして♡」
両手を広げて陽月を迎える準備万端の姿勢を見せるシルヴィア。それを確認してから陽月は彼女を押し倒す。それによって長い青髪が白いベッドに広がり、まるで夜空に輝く星々のような美しさに陽月の目は奪われた。
「きれい……」
「ありがと。でも私は……キミも綺麗だと思うけどな♡」
シルヴィアが上目遣いで陽月を見上げる。自身を見つめる青き瞳に吸い込まれるように、陽月はふたたび唇を重ねた。今度はさっきよりもさらに深く。
「んっ……♡ふぅ……♡ちゅっ♡」
たがいの粘膜が擦れ合い、快感が増幅されていく。そんな状態の中でシルヴィアは自らの体に覆いかぶさるように陽月の背中に腕を回し、脚を絡ませる。そうやってたがいの体温を感じ合いながら、2人は情熱的なキスを交わしていった。
「……シルヴィ……もう我慢できないかも……」
「私もだよ♡いっぱいシようね♡」
シルヴィアの声に促される形で陽月はズボンを下ろす。そこにはすでに臨戦態勢に入った肉棒があった。先端からは透明な雫が垂れており、今にも爆発寸前といった状態であることは明白。それを目の当たりにして、シルヴィアは期待に満ち溢れた表情を見せている。陽月はそんな彼女の肩に手を置きながら、体を密着させていた。
「相変わらず、ここは立派だね♡」
「痛かったら言ってね?」
「大丈夫♡私は初めてじゃないんだし♡それに……陽月くんだったら平気だよ♡」
優しく微笑みかけるシルヴィア。それに対して陽月はなにも言わずに彼女の秘部に指を挿入した。
「んっ……♡あぁんっ♡」
膣内に挿入された指が彼女の弱点を探し当てると同時に強く締め付けてきた。だがそれも束の間のことで、すぐに力を緩めてくる。陽月はそれを確認するとさらに奥へ進めた。
「ふぁ……♡そこぉ……♡」
敏感な部分を責め立てられたことにより、シルヴィアは無意識に甘い吐息を漏らし始める。さらなる刺激を求めようと体をくねらせている彼女に追い打ちをかけるべく、陽月は激しい抽送を繰り返す。それに応えるかのようにシルヴィアの愛液がどんどん溢れ出し、接合部分から溢れ出る。
「んん……♡あっ……♡きもちいぃ♡もっとぉ♡」
「うん。わかった」
さらに快楽を与えるべく、陽月はピストン運動を続けていく。さらにその動きに合わせるようにシルヴィアも腰を動かし始めると、たがいの興奮がピークに近づいていくのを感じた。だが2人は動きを止めることなく、たがいを絶頂へと導いた。
「あっ♡イクっ♡イっちゃう♡ああぁー♡!!」
体を仰け反らせながら盛大に果てたシルヴィアだったが、それでもなお陽月は動き続ける。そして彼女の体に覆いかぶさるように倒れ込むと、そのままキス。それから数十秒ほど余韻に浸りながらたがいの体を抱きしめていると、どちらからともなく口を開いた。
「私のおマンコ……陽月くんのおチンポでかき回されてグチャグチャになっちゃった♡」
「でもまだまだこれからだよ。もっと激しくしてあげるね。四つん這いになってくれるかな?」
「アイドルにそんなこと要求するなんて……でも、陽月だったら……いいよ♡」
シルヴィアはうなずくとそのままうつ伏せになり、お尻を高く上げた姿勢になる。陽月はその姿を眺めつつ、ゆっくりと股を開かせていく。露わになった秘所に肉棒を押しつけると、そのまま挿入していった。
「んんんん……♡はいってきたぁ……♡」
根元近くまで飲み込んだところで陽月が動き出すと、それに合わせてシルヴィアの体が揺れ始める。結合部分からは大量の愛液が流れ出ており、既にシーツを濡らしている状態だった。
「んっ……♡あぁ……♡すごいよぉ♡」
「僕もすごく……気持ちいいよっ」
肉と肉のぶつかる音が室内に響き渡る。それと同時にシルヴィアの喘ぎ声も大きくなっていき、部屋中が淫靡な雰囲気に包まれていく。陽月のピストン運動は次第に激しさを増していき、それにつられてシルヴィアの方も激しく反応していく。
「んんっ……♡ダメぇ……♡またイっちゃうぅ♡」
「いいよ。何度でもイカせてあげるから」
「ああぁ……♡だめ……♡おなかの中……ごりごりって♡ひぐぅ……♡」
ふたたび襲ってきた快感によって、シルヴィアは果てる。しかし陽月はまだ満足していないようで、また動き続ける。それに耐えきれずシルヴィアは絶叫にも似た声で懇願し続けた。
「待ってぇ♡今イったばっかなのにぃ♡」
「もっと……激しくするからね」
「お願いだからぁ♡これ以上されたら壊れちゃうよぉ♡」
涙目になりながら訴えるものの、それが逆効果となり余計に火をつけてしまう結果となった。さらにペースアップされてしまい、ふたたび大きな波に呑まれ始めるシルヴィア。そしてついに限界を迎えようとした瞬間―――不意に動きが止まった。
「ふぇ……?ど……どうして?」
急な変化に戸惑うシルヴィアだったが、次の瞬間には何事もなかったかのように動き出す。だがそれは今までとは比べ物にならないほどの速さであった。
「ひゃあぁ♡らめぇぇぇ♡」
突然訪れた衝撃により、彼女の理性は完全に崩壊してしまう。もはやシルヴィアにはただひたすら快楽を受け入れることしかできなかった。
「んっ……♡んあぁ♡♡またくるぅ♡♡イっちゃううぅうううぅうううぅううう♡」
膣内が収縮し始める感覚に陥った時、陽月も絶頂を迎えようとしていた。そのタイミングを見計らって彼はラストスパートをかけ、次なる絶頂へと駆け抜けていく。
「出すよシルヴィ……!」
「きてぇ♡いっぱい、ちょうだい♡」
大量の精液が放たれると同時にシルヴィアも絶頂を迎える。2人の体は痙攣を起こし、快楽の波が全身を駆け巡っていく。数分後にようやく落ち着いたところで2人は離れていき、ベッドに横になった。
【~♪】
シルヴィアのスマホから着信が鳴る。画面を確認したときの彼女の表情で陽月は内容を察した。
「マネージャーから?」
「うん。もうすぐ収録だからもどってこいって」
「そっか」
もう少しいっしょにいたいというのが本音だが、しかたない。彼女はアイドルなのだから。
「がんばってね。時間ができたらまたデートしようよ」
「うん、必ず。またね、陽月くん」
体を拭いて着替えを済ませ、部屋を出ていくシルヴィアを見送った後、陽月もホテルを後にするのだった。