※この作品はR-18です。

元非モテでアニヲタの僕が自作キャラで異世界転生   作:月狼

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第40話

「配信しません?」

 

 昼休み。いつものように昼食をとっていると、フブキがそう言ってきた。

 

「え、なんで配信?」

「ほら、王竜祭で優勝してから、陽月の知名度が上がったでしょ?だから配信者になればいいセンいくんじゃないかなと思って」

 

 フブキの言うとおり、陽月は王竜祭で優勝してから知名度が上がっている。元々そこそこの知名度はあったのだが、そうしたことでそれがさらに加速したのだ。

 

「配信か……興味はあるけど、知識ないからなぁ……」

「知識なら白上が教えられますし、それに結構いるんですよ?陽月くんに配信してもらいたいって人」

「それ、どこ情報?」

Connect(コネクト)

 

 Connectとは全世界で使用されているSNSアプリで、陽月ももちろん使用している。そこでは人々との交流はもちろんのこと、様々な情報が飛び交っているため、情報収集にも適しているのだ。

 

「ウソでしょ……僕のフォロワーもめっちゃ言ってるじゃん……」

 

 スマホでアプリを開いて確認したところ、本当に配信してほしいというつぶやきが多くあがっていた。ざっと数えたところ、100件くらいだろうか。多くの人が陽月の配信を待ち望んでいた。

 

「配信は楽しいですよ~?いろんな人とリアタイで交流できますし。それに陽月くんはコミュニケーション能力あるから、すぐに馴染むと思いますし」

 

 陽月は多くの人の前で話をしたことはあるものの、それは全て事務的なもの。事務的な話よりも他愛のないおしゃべりをするほうが楽しいのは明白。永遠に近い時を生きるなら、楽しいことを増やしておいたほうが人生は楽しくなるだろう。

 

「じゃあ、やってみようかな」

「やった!じゃあ、早速機材を買いに行きましょう!」

「そっちの知識はないから、いろいろ教えてくれるとうれしいよ」

「はい!白上におまかせあれ!」

 

 それから陽月はフブキのアドバイスの元、機材をそろえ、初配信を備えての準備を進めた。機材の使用方法。ディザーPVの作成。PVは40秒程度のアニメシーンを陽月によるイラストとアプリで作成した。陽月は前世で小説を書いていたのだが、それといっしょにそこに登場する人物を描いていたので、画力には自信があったのだ。

 内容はいろんな案があったので迷ったが、フォロワーが自分に対してなにを求めていフブキを考えた結果、乙女ゲー風にやることにした。乙女ゲー風ということは当然ボイスもついており、陽月が声当てしている。こんな風に。

 

【おすすめの配信者を教えてほしい?なら僕なんてどう?キミを絶対夢中にさせてあげるよ】

 

 動画は主観視点風になっており、夕方の教室を背景に陽月がカメラ目線で視聴者に話しかけるというスタイル。動画の中の陽月はそう言うと、壁ドンして顔を近づける。

 

【どうしたの?顔赤いよ?もしかして、もう夢中になってるのかな?な~んてね】

 

 陽月が笑うとともに画面が切り替わり、黒い背景の中央に配信日の告知を陽月の声で読み上げられて動画は終了。初めての動画投稿で不慣れだったため、もちろん不安はあった。しかし、実際は視聴者の反応は良く、初配信を楽しみにしている声がコメント欄に多くあがっていた。

 チャンネル登録者数は先ほどの動画をあげた時点で10万人。陽月はConnectでディザーPVを投稿することを告知していた。しかし、それを加味しても1本しか動画をあげていないのみこの伸びようは異常といわざるをえない。ちなみに当然ではあるが、登録者は買っていない。中にはそういうことをする配信者もいることは知っているが、それで登録者を増やしても意味がない。そもそもそれは陽月も利用している動画サイト―――CTube(シーチューブ)の利用規約に違反するので、推奨される行為ではないが……。

 

「まさか、こんなに伸びるなんてな……」

 

 アナリティクスを確認すると、リスナーは女性が圧倒的に多かった。まあ、あの動画は女性向けに作ったものだし、元々陽月は男性人気よりも女性人気のほうが高いので、当然といえば当然なのだが。

 

「いよいよ、だな」

 

 初配信当日。配信開始まであと5分まで迫っていた。

 

「大丈夫。今日までちゃんと練習してきたんだから……」

 

 配信の練習は今日ギリギリまでフブキに付き合ってもらった。彼女からいろいろアドバイスはもらったものの、配信において一番大事なことはリスナーといっしょに楽しむこと。実際、陽月が知る配信者の枠はそんな感じだった。フブキ曰く、友達と話す感覚で話しているんだとか。たしかに楽しんでと言われるよりそのほうがわかりやすい。幸い陽月には多くの友人がいるので、尚更理解できた。

 

「すぅ……はぁ……よし」

 

 深呼吸をしてPCの画面と向き合う。配信開始まであと1分。そろそろ時間だ。

 

「やフブキ」

 

 意を決して、陽月は配信開始のスイッチを押した。

 

 

―――――

 

 

 少し時をもどし、魔女の家。そこではアズサたちが陽月の初配信を見ようとリビングに集まっていた。

 

「まさか、陽月が配信デビューするなんてね」

 

 フブキに誘われたからということは聞いていたが、身近な人が配信者というのは妙な感覚を覚える。こそばゆいというのだろうか。なににしても、多くの人に陽月のことを知ってもらうのは親としても姉としても悪いことではない。

 

「姐さん!そろそろ始まりますよ!」

 

 ロザリーの声をかけられ、枠に入る。そこには既に多くのリスナーが集まっており、陽月の登場を今か今かと待ち構えていた。その人数、なんと5万である。

 

「5万……めちゃめちゃ人がいるのだ……」

「王竜祭で優勝してからますます知名度があがったからね。ディザーPVの出来もよかったし」

 

 そのとき、自分が不老不死でよかったとあらためて思った。そうでなければ動画内容にキュン死にしていただろう。ライカたちにいたってはしばらくのたうち回ってなにもできなかったくらいだ。こんな動画を作ってしまうなんて、陽月は罪な男だとアズサは育ての親ながらも彼に恐ろしさを覚えた。

 

「あ!始まりましたよ!」

 

 ハフブキラがそう言ったのでスマホの画面を見ると、目に移ったのはOP画面。朝の公園を背景にトレーニングウェアを着た陽月が素振りをするという内容だ。これは日課である朝トレーニングを陽月がアニメ化したものである。

 

「これ、お兄ちゃんが作ったのかな?」

「みたいだよ。Connectでもそう言ってたし」

 

 そのつぶやきのリプもかなりの数が来ていた。どのリプもそのクオリティの高さに絶賛しており、身内としてうれしい限りだ。

 

「お兄ちゃん、出てきた」

 

 画面が切り替わり、陽月が映し出される。瞬間、チャット欄が加速し、あいさつの言葉であふれだす。

 

【全世界のリスナーのみんな、こんひず~。クロスディアの超新星(スーパーノヴァ)、日向陽月です。今日は僕の初配信に来てくれてありがとう】

 

 徹夜で考えてきた開始のあいさつを爽やかな笑顔で言う陽月。何度も練習したのだろう。初めてとは思えないくらい堂々としている。

 

【初配信はなにをしようかギリギリまで考えてたんだけど、まずはやっぱり僕のことを知ってもらいたいと思って、プロフィールを作ってきたんだ】

 

 そう言うと、背景が切り替わり、プロフィールが映し出される。名前、誕生日、年齢の項目に分かれていた。

 

【まず僕の名前は日向陽月、たまに名字を“ひゅうが”って読み間違える人がいるけど、正しくは“ひなた”だから間違えないでくれるとうれしいよ】

 

 “透視はできるけどね”としれっとわかる人にはわかるネタを仕込んで、チャット欄を沸かせる。陽月はアニヲタを自称しているので、らしいといえばらしい。

 

【誕生日は1月29日、129(ひづき)で覚えてね。身長は168cm。小さいって言わないでね?男はデカければいいってもんじゃないから!!いい?絶対だよ!?】

 

 ネタを知っている人からしたらフリと思われフブキもしれないが、これはフリである。実際、リスナーもそれを察して、“小さい”、“ちっちゃいね”、“チビ日向”とコメントしている。

 

【誰がチビだ!今小さいって言った人名前覚えたから、あとで職員室に来るように】

 

 コメントを拾ってボケる陽月に対し、“いつから教師になった?”とか“おまえ生徒だろ”とか“職員室でナニするんですかね?”というツッコミがチャット欄に流れる。陽月のボケもそうだが、なによりリスナーのノリがいいというのはアズサたちの印象だった。

 

【最後に年齢は16歳。後ろにカッコで永遠って書いてるけど、文字通り僕は永遠の16歳だよ。この先何度誕生日が来てもずっと16歳だよ。僕は】

 

 この説明をボケと受け取ったリスナーが“不老不死かな?”とコメントしていたが、これはボケではなく事実。陽月は16歳になったあの日から神様によって不老不死になったので、ずっと16歳から歳を取ることはないのだ。

 

【次はタグ、Connectでは今回の放送についての感想は“♯日向陽月初配信”のタグをつけてつぶやいてねって言ったと思うけど、他のタグも考えてきたらここで紹介するね】

 

 陽月がそう言うと、プロフィールと入れ替わるようにタグの他にもファンマークとファンネームが表示される。

 

【汎用タグは♯陽月サーチ、配信タグは♯陽月ライブ、切り抜きタグは♯ひずきり、ファンアートタグは♯陽月アートってつけて投稿してくれるとうれしいよ】

 

 続けてファンマークは“  ”、ファンネームはリスナーから候補をいくつか出してもらい、それでアンケートした結果、陽月のリスナー略してひずナーに決まった。

 

【次に好きなものはアニメ、漫画、ゲーム。意外かもしれないけど、僕はアニヲタだからね。基本雑食だけど、特に好きなのは恋愛ものとバトルものかな。だから収益化が通ったらメン限で同時視聴とかやりたいなと思っているよ】

 

 リアタイでリスナーとアニメを視聴し、終わったら感想を言い合う。陽月にとっては初めてのことではあるが、楽しいことには違いなかった。

 

【嫌いなものは……カエル。顔も声も聞きたくない。以上】

 

 嫌いなものコーナーはそれだけ言って終了。さっきとは明らかにテンションが低く、リスナーもこれはマジなヤツなだと察し、それ以上追及はしなかった。

 

【次は質問コーナー。Connectで募った質問をピックアップして答えていくよ。まずは1つめの質問】

 

 好きな異性のタイプはなんなのか。これからどんな配信をやっていくのか。同性愛に興味あフブキ、など。画面に表示された質問に陽月は次々と答えていった。

 

【こんなところかな。みんな、たくさん送ってくれてありがとう。最後に送ってくれたスパチャを読ませてもらうね】

 

 配信を進めていく中で送られてきたスパチャを読み、それに対するリアクションを取っていく。中には男性リスナーから求婚する内容のものがあったが、それは適当にあしらって。

 

【名残惜しいけど、今日はここまで。これから僕もみんなも楽しくなるような配信をしていくから、応援よろしくね。それじゃ、おつひず~】

 

 陽月の締めのあいさつの後、配信画面からED画面へ。窓際に腰掛ける陽月がマグカップを片手に時折コーヒー(ミルク入り)を飲みながら夜の城下町を眺めるアニメーションが流れる。チャット欄が“おつひず”というコメントで埋め尽くされていく。

 

「陽月さん、本当に配信者になっちゃったんですね」

「うん。初めて会ったときはここまでになるなんて正直思わなかったよ」

 

 はじめて会ったときの陽月は生まれたての赤ん坊でしかなかった。だが成長して、クロスディアに上京して、竜王祭で優勝して今に至っている。これも陽月の努力によるものといっていいだろう。

 

「がんばってね。陽月」

 

 チャット欄に表示されることのないエールを送り、アズサは動画を閉じた。

 

 

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