【ガールフレンド(仮)】
・笹原野ノ花
9月13日。他人からしたらなんでもない日だが、一部の人にとっては重要な日となっている。立花響。笹原野ノ花。そう。9月13日は2人がこの世に産まれ落ちた日。つまり、2人の誕生日なのだ。当日はそれぞれで誕生日パーティーが開かれ、彼氏である陽月はもちろん誘われている。それは非常にうれしいことなのだが、1つ問題がある。誕生日が同じということはパーティーの開催日も同じということ。そして彼は2人の誕生日パーティーに誘われている。つまり彼はその日、2つの誕生日パーティーに参加しなければならないということだ。人によってはどちらかを選んで参加するという選択を取ればいいという人もいるだろう。だが、最初から陽月にその選択はなかった。理由は単純明快。その選択を取れば今後の関係に亀裂を生むことになるからだ。陽月は響と野ノ花を愛する者として、それだけは絶対に避けなければならなかった。一見、1日で2つの誕生日パーティーに参加するなんて無茶だと思うだろう。だが、彼にはそれができる理由があった。
(野ノ花さんの誕生日パーティーは18時、響の誕生日パーティーは20時……)
幸いそれぞれの誕生日パーティーの時間はバラバラ。開催地はそれぞれ響がクリスの自宅。野ノ花の祖父が経営している喫茶店。この2件はそれなりの距離があり、徒歩だと1時間くらいかかる。だが、ネロを走らせれば20分くらいではしごは可能だ。時間もそれなりの空白があるのでパーティーの参加も十分に可能。これができると考えた理由である。
「プレゼントはもう用意してある。あとは当日を迎えるだけだな」
横に置いてある2つの箱を見ながらつぶやく。リボンで綺麗にラッピングされているそれらには2人のプレゼントがそれぞれ入っている。どれも本人が前から欲しいと言っていたものなので、まちがいなく喜んでくれる。陽月はそれを確信しながら翌日―――9月13日を迎えた。彼は学校が終わるまっすぐ帰宅して準備をしたあと、喫茶店へ。そこには既に主役である野ノ花はもちろん、彼女の友人たちも集まっていた。
「陽月くん、いらっしゃい。今日は私の誕生日に来てくれてありがとう」
「来ますよ。大事な日なんですから」
「じゃあみんなそろったので、パーティーを始めましょう!」
パーティーの開始を告げる野ノ花。誕生日ケーキをみんなで囲んでバースデーソングを歌い、プレゼントを渡す。嬉々としてプレゼントを受け取る彼女。それを見るだけで陽月も幸せな気持ちで満たされた。
「じゃあ、最後に……これは僕からです」
タイミングを見て、陽月が用意していたプレゼントを野ノ花に差し出す。
「陽月くんからもあるの?なにかしら?開けてもいい?」
「ええ、もちろん」
丁寧にリボンをほどき、包装紙を広げる。そしてフタを開いて出てきたのはハンカチ。湯気が立っているコーヒーカップが描かれ、レースでかわいらしくデザインされたピンク色のものだ。
「陽月くん、これって……」
「それ欲しいって言ってましたよね?ちょうどいい機会だったのでそれをプレゼントしようと思ったんです」
「そっか……覚えてくれてたのね……」
目を閉じ、ハンカチを抱きしめる野ノ花。とても、大事そうに。
「ありがとう陽月くん。これ、大事に使わせてもらうわ」
「そうしてくれるとうれしいです」
それからはボードゲームをして盛り上がる。いいマスを引いたら喜び。悪いマスを引いたら嘆きの声をあげ、みんなで笑う。そんなことを繰り返す中、陽月は一番にゴール。瞬間、陽月はスマホで時間を見る。19:40。切り上げ時だ。
「じゃあ、僕はここらで失礼させてもらいますね?」
「あら、帰っちゃうの?」
「えっと、ちょっと用事がありまして……」
「そう……残念ね。今日は来てくれてありがとうね?」
「いえいえ。それでは、失礼します」
そう言って、陽月は喫茶店から出るとネロに乗り、クリスの自宅にむかう。ギリギリの時間になってしまったが、まだまだ許容範囲だ。
「おう来たか」
インターホンを鳴らすと、家主のクリスが中から出てくる。
「こんばんはクリスさん。すみません遅れちゃって」
「まだ遅刻したって時間じゃねぇから気にすんな。さ、入れよ」
「お邪魔します」
クリスに通されて客室へ。そこにはS.O.N.G.に所属する装者全員が集まっていた。
「あ!陽月!待ってたよ!」
「間に合ったようでよかったよ。大事な日に遅れるわけにはいかないからね」
「では全員そろったところでバースデーソングを歌いましょう」
みんなでバースデーケーキを囲み、主役の前でバースデーソングを斉唱。装者は歌いながら戦う者。それもあって、彼女らの歌唱力は群を抜いている。思えばそんな彼女らがそろってバースデーソングを歌ってもらうのはかなりの贅沢ではないだろうか。歌いながら、陽月は心の中でそう思った。
「……ふっ!」
バースデーソングを歌い終えると、響は吹き消す。バースデーソングに刺さったろうそくの火を。みんなはそれを見て響に祝福の拍手を送る。それからは野ノ花同様、プレゼントタイム。みんながそれぞれ用意したプレゼントを渡し、響はそれに“ありがとう”と満面な笑みを浮かべる。
「じゃあ次は僕だね。誕生日おめでとう、響」
用意したプレゼントを響に手渡す。
「ありがとう!開けてもいい?」
「もちろん」
リボンをほどき、ラッピングされた包装紙を広げる。そしてフタを開けて現れたのはゲームソフト。先日発売された新作の格ゲーだ。
「うわ~!これ欲しかったヤツ!陽月覚えてたんだ!」
「何度もやりたいって言ってたからね」
響は自身の戦闘スタイルもあってか、かなりの格ゲー好きだ。特に陽月がプレゼントしたシリーズは全て制覇しているほどハマっているのを彼は把握している。故にこれが一番喜ぶプレゼントだと考えたのだ。
「よし!さっそくこれで対戦しよう!みんなでやったほうが盛り上がるしね!」
ということで、対戦パーティー開始。せっかく人数がいるのでトーナメント形式で対戦することになったが、優勝者は当然響。決勝で戦った陽月も健闘はしたのだが、それでも彼女には一歩及ばなかった。
「もう1回!響さん、もう1回勝負デス!」
1回戦で響に負けたことが相当悔しかったのか、切歌が再戦を申し込んでくる。そうなれば響の性格上受けないわけなく、彼女からの再戦を受けた。徐々にHPが削られる中、どうにか食らいつく切歌。だが、それでも響のプレイスキルには及ばず、撃沈した。
「で、デース……」
2回も負かされればさすがに闘争心も折れたのだろう。切歌は真っ白に燃え尽きていた。だが、格上の者に挑むチャレンジ精神は見事だ。自分はこういうところは見習うべきだろうと陽月は心の中で感心した。
(2人の誕生日パーティー、間に合ってよかったな)
生誕を祝えた。プレゼントを渡せた。その後のゲームを楽しい時間を過ごせた。時間との勝負だったので少々大変ではあったが、その甲斐はあった。もらえたからだ。“ありがとう”とともにむけられた野ノ花と響の笑顔を。
―――――
みんなが帰ったあと、野ノ花は祖父とともにパーティーの後片付けをしていた。
「今年の誕生日パーティーも大成功だったな。野ノ花」
「そうね。今年もたくさんの人が祝ってくれたし」
それにゲームで盛り上がることもできた。だが、野ノ花なによりうれしかったことが1つある。陽月が来てくれたことだ。
「彼に祝われたときが一番いい顔をしていたな。付き合い始めてからの彼はどうかな?」
「陽月くんはとてもいい人よ。付き合う前からそうだったけど」
皿を洗っている祖父に答えてからポケットにしまっていたハンカチを取り出す。陽月に誕生日プレゼントにもらったあのハンカチだ。
「彼は野ノ花がそれを欲しがっていることを覚えていたね。野ノ花のことをよく見ている」
「そうね。最後までいられなかったのが残念だけど」
陽月は用があると言って出ていった。用がなんなのかはわからないが、きっとよっぽど重要な用だったのだろう。そう思ってあのとき見送ったが、さびしいことには変わりなくて……。祖父も野ノ花の顔を見てそれを察したのだろう。“案外”と言って陽月をフォローするように口を開いた。
「他の子の誕生日パーティーに行ったのかもしれないな」
「え?」
「彼と付き合っている女性は大勢いる。それなら、1人くらい野ノ花と同じ誕生日の子がいても不思議じゃないだろう?」
たしかにそうだ。この世に野ノ花と同じ誕生日の女性は星の数ほどいるのだから。
「野ノ花、もし彼の用事が他の子の誕生日パーティーだったとして、なぜ彼はその用事を優先させたと思う?」
野ノ花はしばらく考える。だが、思いついたものはどれもネガティブなものばかりだった。祖父は悩む彼女にほほ笑むと、“きっと”と言って自身の思う答えを話した。
「どちらかの誕生日パーティーしか行かなかったら、きっと今後の関係に亀裂を生むことになる。陽月くんはその可能性を考えて、ほかの子の誕生日パーティーにも行くことにしたんじゃないかな?」
もし1つだけを選べば選ばなかったほうに角が立つ。少なくとも、ほかの子を理由に自分の誕生日パーティーに来ないと言われていたら。自分よりほかの人が大事だと言われていたら、きっとそうなっていたに違いなかった。だが、陽月が出した答えは両方。2人分の誕生を祝い、2人分のプレゼントを用意し、2人分の楽しい時間を共有した。これが今後の関係に亀裂を生まないために彼が出した答えなのだ。
(陽月くん、そこまで私たちのことを……)
複数の女性を愛するなら相応の覚悟を持たなければならない。こういう事態も陽月からしたら想定の範囲内なのだ。
「すごいな。野ノ花の彼氏は」
「……そうね。おじいちゃん、ちょっと電話してくるから、しばらくここお願いしてもいいかしら?」
「ああ。いってきなさい」
祖父は誰に電話するのは察したのだろう。笑顔で引き受けた。野ノ花は“すぐもどるから”と言って、住居スペースに移動。スマホを取り出し、登録されている連絡先に電話をかけた。連絡先は祖父が察したとおり、陽月だ。
「陽月くん、今いいかしら?」
【はい。用事もちょうど終わったところなので、大丈夫ですよ】
「用事というのは、ほかの子の誕生日パーティー?」
聞かれてこまるようなことでもないので、陽月は肯定する。祖父の予想が当たり、に野ノ花は“やっぱりそうなのね”と言って納得する。
【あのときは言わなくてすみません。隠すようなことじゃないんですけど……なんか言いづらくて……】
「ううん、気にしないで。私は祝ってくれただけでもうれしかったから」
しかし、最後までいられなかったのがさびしかったというのは事実。だから野ノ花は1つ、わがままを言うことにした。
「陽月くん、今度の週末ヒマかしら?」
【週末ですか?そうですね。その日は特に予定はないので、ヒマではありますね】
「じゃあ、そのヒマな時間を私にちょうだいって言ったら、どうする?」
遠回しに言っているが、陽月はすぐその意味を理解した。だからこそ、陽月は答えた。“喜んで”と。
「本当?」
【はい。その日は2人だけの時間を過ごしましょう】
めでたい日を迎えたのだ。1つのわがままくらい叶えてあげたい。野ノ花のわがままを許した陽月はそんな思いだった。
「うれしい……じゃあ、日時は日をあらためて連絡するわね?」
【わかりました。楽しみにしています】
そう言って通話を切り、週末を迎える。野ノ花は駅前で陽月と合流した。服を選ぶのに時間がかかって少々遅れたが、それはかわいく見られたい故の行動。なので陽月からしたら許容範囲なのだ。
「じゃあ、行きましょうか」
「ええ♪」
並んで歩きながら話すのは誕生日パーティーでの出来事。ボードゲームで陽月が一番にゴールしたこと。陽月が帰ったあと、野ノ花は不運が続いて最下位になったこと。響の誕生パーティーで格ゲートーナメントを開いたこと。健闘はしたものの、響に一歩及ばず負けてしまったことを、笑いながら。
「どこ行きたいですか?」
「私、カラオケに行ってみたいわ。これまで行く機会がなかったから」
言われてみれば野ノ花がそこに行っているイメージがない。ならこの機会に行くのもいいだろう。陽月はそう考え、野ノ花とともにカラオケ店へ。受付を済ませ、指定された部屋にむかう。中には座り心地よさそうなソファが2つ。間には設置された横長のテーブル。その上にはこの店で提供可能なフードが記載されているメニュー表と曲を転送するための端末。モニターの下には転送された曲を受信するための機器。天井には音をクリアに届けるための音響機材が設置されていた。
「野ノ花さん、お先にどうぞ」
「いいの?」
「はい。野ノ花さんの歌が聞きたいので」
陽月から差し出された端末を野ノ花は受け取る。
「えっと、たしかこれで曲を検索できるのよね?」
「はい。歌いたい曲を見つけたら予約ボタンを押せば、順番が回り次第曲が始まるので」
「予約……あ、これね」
画面に表示されている予約ボタンをタップ。端末から送られた曲を機器が受信し、モニターに予約した曲名が表示される。野ノ花が選んだのは“あなたの幸せに私がなれるなら”だった。
「思えばあなたは どんな時も笑っていて 辛そうなフリも 全然見せない~♪
笑顔が好きだって 私が言ったから 弱音も吐かないで 強がってたりして?~♪
ねえ もっと本音を聞かせて わがままも言って 心から 心から 大切な人~♪
あなたの幸せに 私がなれるなら どんな夜も越えて 会いに行くよ~♪
雨が降るそんな日も 晴れ渡るそんな日も 同じ空見て 手を繋いでたい~♪
いつまでも いつまででも二人で笑い合いたい~♪」
曲が終わり、リザルト画面が表示される。96点。かなりの高得点だ。
「……ご本人ですか?」
とコメントしたくなるくらい野ノ花の歌唱力はアーティストと酷似していた。シャレにならないほどに。
「えっと……違うけど……それは誉め言葉……なのかしら?」
「はい。本人にまちがえられるくらい上手いという意味なので」
「ありがとう。じゃあ、次は陽月くんね」
「では、僭越ながら」
端末を操作して曲を転送する。陽月が選んだのは“好きになれる人を好きになれたならば”だった。
「一人暮らしには 不釣り合いな部屋で 食洗器もまわせないまま 途方と日がくれていく~♪
記念日の腕時計は 切なきメトロノーム そばにいれれば幸せだった~♪
それだけでよかったのに 愛した先に 未来のない恋~♪
まるくおさまる世界と おさまらないこのささくれた感情~♪
好きになれる人を好きになれたならば 愛をコントロールできたなら~♪
どれだけラクになれたんだろう 常識色の雨が 二人を滲ませる~♪
生まれ変われたなら 今度こそ 祝福の中で君を抱きしめたい~♪」
曲が終わり、ふたたびリザルト画面が表示される。86点。野ノ花には劣るが、それでも平均を上回る点数だ。
「さすがに90はいかなかったか……」
「でも、すごくよかったと思う。あ、そうだ!次はいっしょに歌いましょうよ!」
「それいいですね。曲はなんですか?」
「これよ!」
野ノ花が見せてきた端末の画面。そこには“ライオン”と表示されていた。野ノ花がアニソンを選出するのは意外だ。とはいえ、これはアニヲタであれば誰もが知っている曲。故にアニヲタである陽月も歌える程度にはこの曲を把握している。
『星を廻せ 世界のまんなかで くしゃみすればどこかの森で蝶が乱舞~♪
君が守るドアのかぎ デタラメ 恥ずかしい物語 舐め合っても ライオンは強い~♪
生き残りたい 生き残りたい まだ生きていたくなる 星座の導きでいま、見つめ合った~♪
生き残りたい 途方にくれて キラリ枯れてゆく~♪
本気の身体 見せつけるまで 私 眠らない~♪』
曲が終わり、3度目のリザルト画面。93点。野ノ花の歌唱力が高いこともあって、かなりの高得点だ。
「陽月くんとカラオケに行く機会があったら、この曲を歌いたいと思ってたの」
「この曲を選ぶなんてお目が高いですね。アニメ見てるんですか?」
「友達に薦められてね。面白いからあっという間に全部見ちゃったわ」
先ほど歌った曲をオープニングとしたアニメ―――“マクロスF”はアニヲタの中でも評価が高いアニメだ。アニメに精通していない野ノ花を魅了しているのがそれを物語っている。
「では、この調子でどんどん歌いましょう!」
「ええ♪」
そうして、どんどん歌い続ける陽月と野ノ花。店を出たころにはすっかり日が暮れてしまっていた。いつもならここで解散するところだが、今回はそうではない。2人のデートはまだ終わっていないのだ。
「お邪魔します……」
次なるデート場所は陽月の自宅。野ノ花からの要望で、彼女は今夜ここに泊まることになっている。陽月がこれを了承したのは今日の時間を野ノ花に捧げると約束したから。もちろん、このことは野ノ花の祖父には事前に伝えて了承をもらっている。
「陽月くん」
ベッドに腰掛けた野ノ花の呼びかけに応え、陽月は歩み寄る。
「ん……」
たがいに見つめあったあと、唇を重ね合わせる。何度も、何度も触れあっていく中、首に腕を回してくる野ノ花。衣服越しに感じる体温。やわらかい感触。それらに心地よさと興奮を覚えつつ唇を離すと、透明な橋がかかった。
「……脱がせて」
「……はい」
言われるまま、陽月は野ノ花を脱がしていく。そうして現れたのはフリルの付いた白のブラジャーとパンツ。このままずっと見ていたいが、そういうわけにもいかないので、彼女をベッドに押し倒した。
「随分かわいらしい下着を着けてるんですね?野ノ花さんが買ったんですか?」
「誕生日プレゼントに、もらったの……。陽月くん、こういうのが好きだって言ってたから……するときに着けようと思って……」
つまり、今日はする気満々だったということ。性格に反してスケベな女だが、実際下着は陽月の好みだ。プレゼントした人はよくわかっている。
「その……そんなに見られるとはずかしいのだけど……」
無意識で凝視してしまっていたようだ。野ノ花は顔を赤くして下着に包まれたおっぱいを手で隠す。だがそれはむしろ逆効果で、谷間が強調されたことで陽月の性欲をさらに煽ることになった。均整の取れた体つきでありながら、ご立派な双丘。それを隠すのは非常にもったいない。だが、それ以上に野ノ花の巨乳が見たい。そんな欲がおっぱいを隠していた腕をどけさせた。野ノ花から“ひゃっ!”と短い悲鳴があがるとともに露わになるおっぱい。続けて陽月がブラ越しにその大きな膨らみに指を這わせると、彼女の身体は小さく震えた。
「ん……っ」
フロントホックの留め金を外し、直接肌に触れる。温かくやわらかな感触。手のひら全体を使ってゆっくりと揉みしだいていくと、彼女の呼吸はだんだん荒くなっていった。
「陽月くん……あんまり強くしないで……」
懇願するような声に応え、優しく円を描くように愛撫する。時折乳首を指先で軽くつまむと、彼女の背中が弓なりに反った。
「ひゃ……!」
股間に目をやると、パンツの中心部分にうっすらと染みが広がっていた。おっぱいへの愛撫だけでこんなになるとは。やはり野ノ花はスケベな女だ。
「気持ちいいですか?」
「うん、すごく……♡」
「じゃあ、もっと気持ちよくしてあげますね」
頷くと同時に両手でおっぱいを揉みしだく。ふたたび跳ね上がる野ノ花の身体。そんな彼女に追撃をかけるように、陽月は舌先を使って右側のおっぱいに吸い付き、左側のおっぱいには右手で揉んだり摘まんだりして刺激を与えていく。口の中に甘い味が広がると同時に左側の乳首の硬度が増す。それを感じ取り、陽月は左手の動きを速めていった。
「あっ、んぅぅうっ♡んあああぁっ♡」
喘ぎ声が大きくなっていくにつれて快楽に耐えきれなくなったのか、股間をすり合わせるように足を閉じる野ノ花。それによって彼女の秘部から溢れ出した蜜が太腿を伝い、流れ落ちる。その光景に興奮した陽月がさらに激しく責め立てると、限界を迎えたようだ。野ノ花が身体を大きく仰け反るとともに性の象徴を解き放った。
「はぁ……はぁ……陽月くん……♡」
息を整えながら野ノ花が彼を呼ぶ。そのときの視線は私はまだ満足していない。もっと私を気持ちよくさせて。そう言わんばかりの視線だった。
「ならもっと感じさせてあげますね」
下着の中に手を入れ、割れ目に沿って上下させる。既に準備万端といった状態で濡れそぼっていたそこは簡単に侵入を受け入れた。膣内に指を入れ、抜き差しを繰り返しながら、親指の腹で陰核を刺激する。快感に耐えようと歯を食い縛りながら身体を強張らせている野ノ花はとてもいじらしく見える。だが、いつまで我慢できるのか。陽月はそんなことを考えながら指を動かしていると、野ノ花が突然叫び声をあげた。
「ぁあああぁああああぁああああぁあああっ♡」
同時に潮吹きしてしまう野ノ花。ベッドの上に大量に飛び散る液体を見ながら陽月は思った。これはあとで掃除が大変そうだと。だが、同時にパンツの隙間から見える愛液の糸に興奮を覚えたのも事実。野ノ花が今下着姿というのもあって、余計にそうなってしまうのだ。しかし当の本人はそんなことを気にする余裕もないようで、肩を上下させて必死に呼吸を整えようとしていた。そんな彼女もかわいく思えて、つい意地悪したくなったのだろう。陽月は指の動きを再開させた。そうすると、野ノ花はすぐに反応を示し、身体をビクビク震えだした。絶頂を迎えたばかりで敏感になっているためか、少し触るだけでも感じてしまうらしい。野ノ花は快楽から逃げようと身を捩らせるが、それは叶わない。なぜなら今の彼女に抵抗する術がないからだ。
「ふあぁあぁああっ♡」
そしてまた限界を迎え、野ノ花は盛大にイッてしまう。全身を痙攣させながら呼吸をする彼女の下着を脱がしてやると、秘所からは糸が引いているのが見えた。それを見た瞬間、陽月の中にある欲望が芽生えた。野ノ花に自分のモノを入れたい。そんな思いが徐々に膨れ上がっていく。だからだろう。陽月は無意識のうちに野ノ花の太腿を掴んでいた。そのまま大きく開脚させると、正面に座り込む。
「はぁ……はぁ……陽月くん……?」
突然の行動に戸惑う野ノ花。だが、陽月は構わずズボンとパンツを一緒に脱ぎ捨てると、戦闘状態の肉棒をさらけ出す。野ノ花はそれを目にした瞬間、ゴクリと唾を飲み込んだ。自分はこれから犯されるのだ。自分が望んでいることをされると思うと自然と期待を込めた眼差しをむける。陽月はそれに応えるように彼女の両膝の裏に手を掛けると、左右に押し開く。ぱっくりと口を開いた秘裂。丸見えになっているそこに肉棒を宛てがい、ゆっくりと腰を沈めていく。
「ふぁあぁ……♡」
「こうされたかったんですよね?野ノ花さんは」
「……うん♡陽月くんにこうされるのも、好きだから♡」
根元までしっかりと咥え込み、結合部分を確認したのちに抽送開始。最初はゆっくりだったペースも次第に早めていき、肌同士がぶつかる乾いた音と水音が部屋に響き渡る。
「ふぁっ♡あんっ♡あぁんっ♡」
突かれるたびに漏れる喘ぎ声。野ノ花が快楽を感じていることは明らかだった。
「んんっ♡奥まで来てるっ♡すごぃいっ♡」
腰の動きに合わせて揺れ動くおっぱいをつかみ、捏ね回す。加えて乳首に吸い付くと、野ノ花の表情はさらに蕩けていった。彼女の弱点はおっぱい。その証拠に乳首を噛むと膣内の締め付けが増し、子宮口に亀頭が当たる感触がより鮮明に感じられた。
「ふぁあぁああっ♡そんなにおっぱい攻めないでぇえ♡おかしくなるからぁあっ♡」
訴える彼女に答えることなく、陽月はひたすら腰を振る速度を上げる。ピストン運動のスピードが上がるにつれ、結合部から溢れ出る愛液の量も増えた。グチュッグチャという粘り気のある卑猥な音が室内に響き渡る。
「ふぁああっ♡陽月くん♡陽月くん♡陽月くぅうううんっ♡」
もう我慢できない。そう言わんばかりに野ノ花は絶頂を迎える。それによって収縮し、搾り取ろうとするかのように絡み付いてくる膣壁。うごめく肉襞に逆らうことができず、陽月は精を解き放った。
「ひぁあぁあああっ♡出てるっ♡陽月くんのが中にいっぱい出てりゅうぅうっ♡」
大量の精子を受け止めきることができず、結合部分から流れ出てくる白濁色の液体。その熱さにすら感じてしまっているのか、野ノ花の身体が小刻みに痙攣している。だが陽月の欲望は未だ尽きることはなく、ふたたび硬さを取り戻していた。射精したばかりにも関わらず、萎えることのない剛直。それを感じ取った野ノ花は恍惚とした笑みを浮かべる。
「まだ、、出し足りないの……?」
「……はい」
「じゃあ、もう1回シましょうか♡」
「いいんですか?」
「ええ、もちろんよ♡」
陽月の問いかけに野ノ花はほほ笑んで即答。彼との性交を拒む理由などない。故に拒むことなく受け入れる彼女に感謝しつつ、陽月は抽送を再開。だが、一度達したことで感度が増したのだろう。野ノ花は先ほどよりも激しい反応を見せた。彼女をより悦ばせるべく、陽月は彼女を抱き寄せ、対面座位の体位に移行。騎乗位では味わえない密着感と奥深くまで入り込む感覚。それに酔い痴れながらも、2人はたがいを求め合った。野ノ花は彼に求められることを望んでいる。陽月はそれに応える形でひたすら彼女を突き続けた。
「ひぐぅっ♡それ、ダメぇええっ♡感じ過ぎちゃうからぁあっ♡」
とか言いながらも、野ノ花は自らも腰を振り始める。陽月が動けば動くほど快楽が強くなり、それが癖になったのだろう。今では自ら進んで動くほど積極的に貪欲に快感を求めている。
「あぁああっ♡気持ち良いっ♡」
「僕も気持ちいいですよ。野ノ花さん」
耳元で囁くと、ゾクッとしたものが野ノ花の中を駆け巡る。それが引き金となり、野ノ花の膣内は一層強く収縮し始めた。限界が近い。野ノ花は直感的に悟るとともに更なる快感を得るための体勢に移行する。背面座位。後ろ向きに座り込み、男根を受け入れるというものだ。その格好で激しく揺さぶり立てられることで生まれる衝撃。彼女にとってそれは至福の一時であった。
「ふぁあぁあっ♡これ好きぃいいっ♡一番気持ち良いとこに当たってるのぉおおっ♡」
「では、これはどうですか?」
陽月はそんな彼女を満足させるためにおっぱいを揉みしだく。加えて乳首に爪を立てると、野ノ花の口から甲高い声が上がる。
「ひゃあぁあっ♡おっぱい引っ掻いたらダメェエッ♡おかしくなるからぁあっ♡」
「嘘はいけませんよ。本当はもっとしてほしいんでしょう?」
「あぁあっ♡あんっ♡あひぃいっ♡」
もう声が声になっていない。つまり、それほどまでに彼女が追い詰められているということ。だが、このままやられっぱなしはイヤなのか。陽月にも気持ちよくなってもらいたいのか。膣内は今まで以上にうねりを上げており、搾り取ろうとしてくる。もうすぐ果てるはずだ。最後に向けてスパートをかけるべく、陽月は腰の動きを加速させる。肉同士がぶつかり合い、乾いた音が部屋中に響き渡る。同時に結合部から聞こえる淫靡な水音が大きくなっていく。
「ふぁっ♡あんっ♡ふぁあぁああんっ♡」
喘ぐ彼女の瞳は焦点があっておらず、完全にトリップしていた。もうすぐ終わるだろう。だがそれでいい。むしろ早く終わらせて欲しいと思っていた。なぜならこのまま続ければ確実に壊れてしまうからだ。だがそう考える陽月に対して、野ノ花は異なる考えを持っていた。もっと長く味わっていたい。だからこそ快楽に抗い続けるものの、屈するのは時間の問題だった。
「ふぁあぁあぁああぁああぁあっ♡」
野ノ花が絶頂を迎える。膣内が激しく痙攣し始めると同時に白濁液を放出する肉棒。それは子宮口にまで到達し、子宮内部へと注がれていく。ドクンドクンと脈打ちながら精を吐き出す感覚が堪らなく心地良く感じられるが、まだ満足できない。もっと欲しい。そんな欲が無意識のうちに腰を動かしていたことに気がつくと、陽月は我に帰ったように動きを止める。慌てて離れようとするものの、時すでに遅し。肉棒が抜かれたと同時に栓を失った秘所からは大量の白濁した液体が溢れ出してきた。その様子を見た真っ赤に染まる野ノ花の顔。羞恥心に苛まれているのか。あるいは別の感情によるものなのか。どちらなのかは定かではないが、少なくとも嫌悪感や不快感といった類のものでは無いということだけは理解できた。何せ彼女の表情には喜びの色があるのだから。そんな彼女に対し、陽月は優しくキスを落とす。啄むような軽い口づけ。それを繰り返したおかげか、野ノ花は少しずつ落ち着きを取りもどしていった。完全に鎮静化したところで、あらためてたがいの顔を見合わせる。そこにはあったのは野ノ花の幸せそうな笑みがあった。
「ねぇ、陽月くん」
「はい」
「今夜は、いっしょに寝ましょうね。まだあなたのぬくもりを感じたいから」
陽月の返事はもちろんOK.。その後2人はたがいのぬくもりを感じながら眠りにつくのだった。