「や、やっと終わった〜!」
「お疲れ様です二亜さん」
締め切り間近だった漫画の執筆を終えて、机に突っ伏す女性。
彼女は本条二亜。漫画家の天使で、よく締め切りに追われており、近所で付き合いのある俺が手伝いすることになって、今に至る。
「ありがとうボクサー・パンツ君。キミのおかげでなんとか間に合ったよ」
「それは良かったです。あ、お茶でも飲みますか?」
「サンキュ~!」
そしてお茶を飲みながら、俺たちは休憩する。
「ところでボクサー・パンツ君」
湯呑みを置きながら、二亜がふと真剣な眼差しで見上げてきた。いつものふざけた調子ではない。
「今回の漫画、読者の反応どうだったと思う?」
「え?すごく好評でしたよ。特にファンタジー世界観が……」
「違うんだ!そこじゃなくて!」
二亜は身を乗り出し、短い銀髪が揺れた。
「あのクライマックスシーン!ヒロインが命懸けで主人公を救うシーン!」
「あぁ……あれは感動的でしたね」
「そう!そこが問題なの!」
彼女の目が爛々と輝き出した。
「感動的すぎた!読者のコメント見てたら『もっとこう……刺激的な部分があれば』っていう意見がちらほらあって!」
「刺……激的?」
思わず声が上ずる。彼女の漫画は清純派ファンタジーで知られていたはずだ。
「エロスよ!」二亜が拳を握りしめる。「物語に魂を吹き込むのは人間の本能!恋愛!そして……その先にある熱い絆!それを表現したい!」
「そ、それでなぜ俺を?」
「キミしかいない!」
彼女は突然立ち上がり、壁際のダンボール箱を引っ掻き回し始めた。
「協力してくれないかな?リアルな資料が必要なんだ!」
そう言いながら取り出したのは——フリルいっぱいのメイド服だった。赤地に白いエプロン紐が結ばれた伝統的なデザインだ。
「これは……まさかコスプレ?」
「正解!」
二亜がにっこり笑う。
「まずは文化祭の屋台でメイド喫茶を開店した設定で……あっ!」
「二亜さん!?」
躊躇なくジーンズを脱ぎ始める二亜。慌てて視線を逸らすが遅かった。白いショーツが目に焼き付く。
「さぁ着替えるよ!」
彼女は床に胡坐をかいたままストッキングを履き始め、生足に絡まる繊維の音がやけに艶めかしい。
「そんな……俺はただのフリーターで……」
「大丈夫!これも経験!」
メイド服を着るのに苦戦しつつも楽しげな声が部屋に響く。カチャカチャという金具の音や布が擦れる音まで耳に入る。
「できた!どう?」
振り向いた二亜は完璧なメイド姿だった。肩から胸元にかかるホワイトブリムも丁寧にセットされ、腰のベルトが華奢な体を引き立てている。ミニスカートから伸びる脚が眩しい。
「素晴らしいです」
思わず呟いた言葉に頬が熱くなる。
「でしょ?」
得意げな笑顔を浮かべると、彼女はいきなり俺の前に片膝をつき——
「お客様、何かご注文はございますか?」
演技に入り込んだ二亜の瞳が妖しく光る。普段見せない媚びるような口調が背筋をぞくりとさせる。
「えっと……紅茶をお願いします」
「畏まりました♪」
立ち上がろうとした彼女のスカートが不意にめくれ、太腿の奥に食い込んだショーツが見え隠れする。慌てて目を逸らす俺に彼女が小さく笑う声がした。
「お待たせ致しました……特別サービスの時間です」
振り返ると、二亜が両手でメイド帽を押さえながら近づいてくる。甘い香りと共に。「あっ……!」
バランスを崩した二亜を受け止める形になる。柔らかい胸の感触がシャツ越しにも伝わり、彼女の吐息が首筋にかかる。
「ごめんなさい……足が絡まって……」
謝りながらも身体を押し付けるように密着させてくる。
「お客様……」
囁く声が耳朶を震わせる。
「本当に欲しいものは紅茶じゃないですよね?」
見上げる瞳に宿る情欲の色に抗えなかった。
「二亜さん……もう……」
「ボクサー君」
彼女が俺のファーストネームを呼ぶ。それが合図だった。
唇が重なり、甘い味が広がる。彼女の指が首筋を撫で、ブラウスのボタンに触れる。
「んっ……ここでは狭すぎるかも」
キスを解いた二亜がふと呟く。確かにテーブルも椅子もあるダイニングでは動きづらい。
「移動しましょうか」
その時二亜が立ち上がりながら言った。「次はここに来て……」
手招きされたのは彼女の寝室。漫画のキャラが描かれたポスターやフィギュアが並ぶ部屋だ。
「いいんですか?」
「もちろん!資料提供は徹底的に!」
ベッドに腰掛けた二亜が髪をかきあげる仕草に釘付けになる。額に汗が光り、銀糸のような髪が一房乱れていた。
「来て」
囁かれるまま近づくと彼女が抱きついてきた。そのまま押し倒される格好でベッドに沈む。
「ボクサー君……好きにしていいよ?」
潤んだ瞳で見下ろされる。理性の糸が切れる音が聞こえた気がした。
彼女の腰を掴んで位置を入れ替える。驚いた表情を見下ろしながらメイド服の胸元を開いていく。
「あっ……ちょっと激し……い…♡」
露わになった乳房に舌を這わせると二亜の背中が弓なりに反った。甘い吐息と共に漏れる嬌声が部屋に響く。
「ダメ……これ以上は漫画のネタにならない……」
言いながらも彼女の手は俺の後頭部を強く抱いている。矛盾する言葉にさらに煽られた。
ミニスカートの中に手を滑り込ませると既に湿り気を感じた。ショーツをずらして直に触れると二亜の肢体が跳ねる。
「んぅっ♡そこ……あっ♡」
喘ぎ声を噛み殺そうとする努力が逆に扇情的だ。指先で探るとすぐに芯を見つけ、軽く弾いただけで甲高い声が上がる。
「ダメッ♡あっ♡んっ……♡」
快楽に悶える彼女の姿を見て、自分の中の獣が目覚めるのを感じた。早く一つになりたい。
ズボンを下ろすと既に昂ぶったものが勢いよく飛び出す。それを目の当たりにした二亜が生唾を飲むのが分かった。
「入れて……♡」
消え入りそうな声とともに脚が開かれる。避妊具を急いで装着し、ゆっくりと秘裂に当てがう。
「はぁ……っ♡入ってきたぁ……♡」
温かな肉襞に包まれる感覚に腰が砕けそうになる。彼女の内側は驚くほど熱く濡れていた。
「動くよ」
静かに告げて腰を前後に揺らす。その度に二亜の喉から洩れる声が大きくなっていく。
「あっ♡あっ♡深い……もっと奥……♡」
メイド服の裾が揺れ、剥き出しの太腿が痙攣している。ベッドサイドの漫画のポスターが二人の姿を映し出していた。
「こんな展開……最高……♡」
途切れ途切れに呟く二亜の指がシーツを強く握りしめる。その手を取り自分の首に回させる。
「一緒に……来て……♡」
互いの吐息が混じり合う距離で囁かれ、最奥まで貫く衝動に駆られる。激しく打ち付ける腰の動きに合わせてベッドが軋む音が高まる。
「イく……イっちゃう……♡」
「俺も……!」
同時に果てる瞬間、二亜の爪が背中に食い込む痛みさえ快感に変わった。絶頂の余韻の中で避妊具越しに放つ感覚が鮮烈だった。
ぐったりと横たわる二亜の額に張り付いた髪を優しく払う。
「すごい……資料ができたわ……」
荒い呼吸の合間に呟く声が掠れている。汗ばんだ肌の上でメイド服のフリルが乱れていた。
「今日はここまでにしませんか?」
まだ息の整わない二亜に水のグラスを渡す。
「でも……まだ試したいことが……」
受け取る手が震えているのに気づく。過労もあったのか頬が紅潮していた。
「明日も来ますから。焦らずに」
「本当?」
嬉しそうに見上げる瞳に胸が痛む。この人の夢を応援したい気持ちと男としての欲望が葛藤する。
「約束ですよ」
翌日から本格的な製作が始まった。