無口な幼馴染の「お店ごっこ」で身も心も搾り取られる話 作:松木ユキ
「カズが『好き』って私に言ってくれること、だよ」
「……へっ?」
思いもよらない台詞を発して、真衣は再びもとの姿勢に戻った。手をひざにつき、頬を微かに紅潮させて、照れ臭そうに下を向いている。
「ま、真衣?」
「……言って、『好き』って」
真衣はひざに置いた手をぎゅうっと握りしめ、不安そうな顔を見せていた。お、俺に「好き」って言ってほしいのか? 真衣が?
俺は……たしかに真衣のことが昔から好きだ。だけど、自分がどう思われているのかが分からなかったから、次の一歩を踏み出すことが出来なかった。
「言ってくれなきゃ、さ、サービスしない」
畳み掛けるような、それでいて泣き出しそうな声色。どうして今まで分かっていなかったのだろう。真衣はずっと、俺から「好き」だと言われるのを待ち続けていたんだ。
「真衣」
「! ……うん」
こほんと咳ばらいをしてから、真衣の方を向いて、両肩を掴んだ。真衣は少し驚いて目を見開いたが、すぐに元通りのクールな表情に戻る。
こんな近距離で可愛い顔と向かい合うと……恥ずかしくなって、ずっとこのままでいたくなる。でも、言わなくちゃ。真衣はずっと待ってくれていたんだからな。
「俺、真衣のことが好きだ」
「……」
真衣はじっと俺の目を見つめ、何も言葉を発さなかった。見るもの全てを吸い込んでしまいそうな綺麗な瞳に、こちらがたじろいでしまいそうになる。……な、何か言ってくれよ。
「分かった」
「えっ?」
ま、真衣? なんでそんな冷静なんだ? 出会って十五年目にしてようやく「好き」って言えたのに……どうして何事もなかったかのように振る舞っているんだ?
「じゃあ、サービスするから。ちょっと待ってて」
「ちょっ、なに?」
「料金は貰ったから。ほら、タイマー始まっちゃうよ」
「ちょい待てちょい待て!?」
おい、俺の告白は!? 好きだって言わせておいて何も言わねえのかよ!?
「へ、返事は!?」
「なに?」
「告白の返事は!?」
「別に、それは30分コースの料金だから……」
淡々と言葉を発して、後ろを振り向いてしまう真衣。……嘘だろ? 俺だけ「好き」って言わされて、真衣は何も言ってくれないってことかよ!?
「へ、返事してくれないのか!?」
「安心して。ちゃんと考えてあるから」
真衣は枕もとに手を伸ばして、ごそごそと何かを準備している。ちゃんと考えてある……って、どういうことだよ!?
「真衣、それってどういう――」
「カズ、準備はいい?」
「!」
こちらに振り向いた真衣の左手に握られていたのは――ローションの入った容器。本当にエロいことをするんだと気がつき、ハッとしてしまう。
「えっと……どうすればいい?」
「大丈夫、カズは『お客さん』だから。私にまかせて……」
「お、おい」
左隣に座る真衣が、俺の股間に手をかける。寝間着代わりに使っているジャージのズボンだから、柔らかい素材越しに刺激が伝わってきて、ビクっと体が跳ねてしまう。
「ま、真衣っ!?」
「ここ……だよね」
真衣は体重をかけるようにもたれかかってきて、ズボンの上からちんこをまさぐっていた。真衣の体温が伝わってくるのと同時に、ふわりと良い匂いが漂う。股間に手をかけるように前傾姿勢をとっているものだから、真衣の白Tシャツの胸元から二つの膨らみが見え隠れしていた。
「真衣っ……!」
「んっ……おっきくなった。これ、気持ちいい?」
ズボンの素材ごと肉棒を包み込んで、上下に優しく擦り始める真衣。自分でするのとは違う、新鮮な刺激。胸元の隙間からは、赤色のレースがついた下着が見えていて、罪悪感がありつつも目を離さずにはいられなかった。
「ちょっ、ちょっと……!」
「カズ、苦しそう。……脱ぐ?」
「えっ?」
「お洋服、脱ぐ?」
真衣は俺の顔を見上げて、首をかしげていた。ハッとして部屋を見回すと、いつの間にかベッドのすぐ近くに脱衣かごが置かれていた。
「脱がないとサービス出来ないよ」
「……うん、脱ぐ」
「じゃ、手伝う」
自分でズボンに手をかけようとしたら、真衣が手を貸してくれた。一緒に腰のところを掴んで、ずり下ろして――って、パンツごと掴まれてる!?
「ちょっ、それじゃ全部脱げちゃうって!」
「いいでしょ、どうせ脱ぐんだから」
「だからって、その……」
「いいから、脱いで」
「ちょっ……!」
次の瞬間、真衣は手を動かして俺のズボンをパンツごと脱がせ始めた。抵抗する間もなく、ずるずると下ろされていき――やがて、硬くいきり立った肉棒が弾けるように姿を現した。
「わっ……」
それを見て、真衣は驚いたような声を上げた。風俗のお姉さんがちんちん見てビックリしちゃ駄目だろ、なんてツッコミを入れる余裕はなく、真衣の前で下半身をさらけだしたことが恥ずかしくてたまらなかった。
「……な、なんだよ」
「これって、おっきいの?」
「し、知らないって」
「そうなんだ……」
しげしげと俺の性器を見物する真衣。照れるから早くサービスしてほしい。
「な、なあ」
「あっ、待たせちゃってごめんね。カズ、上も脱いで?」
「えっ?」
「ローション使うから、汚しちゃう」
「あっ、ああ」
真衣は脱がせ終わったズボンを手際よく畳み、脱衣かごに入れてしまった。その間に俺は着ていたシャツを脱いで、畳んでかごに放り入れてしまった。
「……カズだけ素っ裸」
「真衣が脱げって言うからじゃん」
「そうだけど。……なんか、おかしいなって」
俺の姿を見て、真衣はクスっと笑った。滅多に笑わない真衣がこんなことで頬を緩めるなんて。……不思議なもんだな。
「じゃあ、横になって」
「えっ?」
なんとなく聞き返しただけなのに、真衣の顔がだんだん赤くなっていく。しばらく口をもごもごと動かしていたが、しばらくしてから、急に口を開いた。
「この体勢だと、カズに……お、おっぱい見られるから」
ば、バレてる!? さっきからこっそり胸チラを拝んでいたことがバレてる!?
「み、見てないって!」
「カズ、嘘はよくない」
「うう……」
思わず縮こまってしまう。まあ、幼馴染に隠し事は出来ないってことか……。
「わ、悪かったって」
「そうじゃない。そ、それはオプションだから料金がいるの」
「えっ?」
「『ランジェリー姿』って、あったでしょ。頼んでくれたら、私も脱ぐから……」
真衣はまた恥ずかしそうに顔を赤くして、ぷいっとそっぽを向いてしまった。そ、そうだった。オプションがあるんだったな。……そうだ、これも「時価」だったんだよな?
また「好き」って言わないといけないのかな。真衣にだったらいくらでも言えるけど……とにかく、頼んでみるか。
「じゃ、じゃあオプションを追加するよ。『ランジェリー姿』ね」
「ん、分かった。別料金だけど、いい?」
「うん」
「先払いだから。じゃあ、先に横になってて」
言われるがまま、ベッドに敷かれたバスタオルの上に横たわった。全裸のうえに、股間から一本の肉棒が勢いよくせり立っていてなんだかシュールだ。
真衣は……ベッドの端に座って、この状態をじっと眺めている。まな板の鯉、というのはこういうことを指すんだろうな。……性別が逆な気がするけど!
「ん、準備出来た?」
「うん」
「ローションつけると脱ぐの大変だから、先にお代もらうね」
床に下ろしていた両足をベッドの上にあげて、俺の側に女の子座りする真衣。緊張しているのか、真衣の白Tシャツは汗で滲んでいて、その下に赤い下着が透けているのが見えた。……こんなのでさらに硬くなってしまうなんてな。エロいことを覚え始めた男子中学生みたいだな、と苦笑いしてしまう。
「その……お代って?」
「……」
見下ろすかのように、真衣はじっと俺の目に視線を向けていたが――恥ずかしいのか、それとも性的興味なのか、いきり立った俺の性器に目を移してしまった。
「ま、真衣?」
「……言って」
「えっ?」
「だからっ、その……」
やっぱり「好き」って言わせたいのかな? だとしたら可愛いなあ。でも、わざわざ「別料金」って言っていたしな。何が来るんだろう――
「私の好きなところ、一つ言って……」
向こうを向いたままだったから、真衣の表情は分からなかった。だけど、後ろから見える真衣の耳たぶは――赤いという言葉で言い表せないほど、赤く染まっていたのだった。