※この作品はR-18です。

愛する者の幸福を願う   作:ココネ

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 作者のオリジナル世界の話第一弾です。神が暮らす神の世界のお話。人間達が暮らすように、色んな神が暮らしています。この世界は皆が神なので、神は世界に暮らす住民の総称を、神様は信仰の対象を指します。

 この話の主人公はアオイという名前の神です。元々の名前は捨ててしまったので、知る人は殆どいません。後の世では「剣神」、「古代の三英傑」の1人として伝わっています。

 感想をくださると作者が泣いて喜びますが、豆腐メンタルですので批判はおやめください。
 
 虐待や性的暴行等の描写を含みますので、それでも大丈夫な方のみご覧ください


かつて人形だった男の独白

ーーー皆、同じ願いを持っていた筈だった。渇望するものは、その根幹にあるものは、同じ筈だったのだ。違う道を歩んだとしても、望むものは、自らが愛するものの『幸福』。たったそれだけだった筈なのに、いつしか戦火は広がり、親を失った子、子を失った親、恋人に先立たれた誰か。そんな愛するものを失い、嘆き悲しむ声しか聴こえてこなくなった。

 『平和であれ』、という叫びが聞こえる。

 一閃、戦の音が消える。

 『幸福であれ』、という願いが聞こえる。

 一閃、嘆き悲しむ声が消える。

 平和になったのではない、戦っていた者達が死んだだけだ。

 幸福になったのではない、現状を嘆く者達が死んだだけだ。

 

 俺はあの光を救いとは思わない。あれこそが滅びだ。理想の世界にならないからと、全てをリセットしようとする、傲慢たる滅びの神だ。

 一閃、今度は俺が、あの神の首を刎ねる為に。この刃が届くまで、俺は何度でも、この刃を振るおう。

 

ーーー全ては、愛しいあの子の幸福の為に。

 

 

 

 

 

 かつて、俺は人形だった。今は亡きあの人の、暇つぶしの為の人形。あの人は何処かの女と夜を過ごし、俺を作った。女がどんな存在だったかは知らない。あの人の側に居る女は皆ギラギラしていたが、いつも違う人だった。『あの人と共に、お前を作ったのは自分だ』と名乗り出る人は、あの人が死ぬまで現れなかったから、俺は俺を作った女を、『母』という存在を知らない。どんなものであるかも分からない。けれど、俺を友だと言った男が自分の母だと俺に紹介した女は、優しくて、暖かくて……、きっと、『母』とは本来ああいう女を指すのだろう。慈しみ、とでもいうべきか、『愛情』と呼ばれるものなのかは分からない。俺が唯一理解できたのは、あの女に暖かい何かを向けられていたのは俺ではなかったということだ。

 俺はあの人が好きだった。あの人は毎日俺を殴って、犯して、壊したけれど、あの人の視線が俺の方を向くのが嬉しかった。嬉しかった時は笑うものだとあの人が教えてくれたから俺は笑った。追い出された。俺は間違えた。あの人が望まないことをしたから、俺は追い出されたのだろう。俺は笑うのをやめた。あの人は俺をもう一度家に入れてくれた。その日は、いつもより酷くされたけれど、捨てられなかったことが嬉しくて、俺は安心して眠った。

 ある日、あの人は子供を連れてきた。面倒を見ろ、そう言ったきり、あの人は自分の部屋に行ってしまったから。俺は教えられる限りのことを子供に教えた。あの人の葉巻は押し付けられると痛いこと、あの人が注いだものは、放っておくと腹が痛くなること。そして、あの人は俺を見てくれないこと。子供は、俺に色んなことを教えてくれた。あの人は、俺の『父親』だということ、子供の『父親』もあの人だということ、同じ親を持つ子供は『きょうだい』だということ、俺は大きいから『兄』で、子供は小さいから『弟』だということ。そして、『兄』は『弟』を守るものだということ。

 子供はカミロ、と名乗った。俺は分からなかった。呼ばれたことが無かったから。あの人が俺を壊しに来た時、俺はなんというのか聞いてみた。あの人は、俺をアレンと呼んだ。俺はアレンだった。カミロは俺のことをアレン兄さんと呼んだ。

ーーーあの人が、カミロを壊すようになった。

 俺はカミロを守った。『兄』はそうするものだと、カミロが教えてくれたから。カミロは泣いた。訳が分からなかった。『兄』とはそういうものではなかったのかと聞いた。カミロは、アレン兄さんが傷つくのは嫌だ、と泣いた。

 俺はあの人が怖くなった。好きだった。けれど、カミロを壊すあの人が怖かった。

 俺はカミロを家から出した。あの人が、近くに『むら』があると、前に言っていたから、そこに行けと言った。俺はあの人を殺した。カミロは戻って来なかった。

 俺は1人になった。ずっと、ずっと、1人だった。

ーーーある時、刀を貰った。ボロボロで、錆びていて、まるで俺みたいだと思った。あの人に本当は見向きもされなかった、俺みたいだった。くれるのか、と聞いたら、いらないからやる、と言われた。刀に名前は無いようだったから、名前をつけようと思った。あの人を思わせるようでいて、カミロが好きだった空のような名が良いと思った。俺は言葉を知らないから、道すがら、似合う言葉が無いか聞いた。遠い東の地の、『天津御空』という言葉を教えてもらった。教えてくれた奴は、あの人を神様だと思ったのだろう。あの人は俺にとって神様みたいなものだったから、訂正はしなかった。『天津御空』の『天』の字は神様を指すことがあるそうだった。『天津御空』は大空を意味すると知った。俺は刀に、お前は『天津御空』だ、と言った。刀は俺より大きい神になった。神はお前を喰うと言った。俺は、俺が死んだら喰ってもいいから、俺の『父親』になってくれと言った。神は了承して、刀に戻った。ボロボロだった『天津御空』は、ぴかぴかになっていた。綺麗だった。この刀に殺されたら、きっと幸せだろうと思った。

 『天津御空』と俺は長い間、ふたりぼっちだった。2人だから、ふたりぼっちだと、俺達は笑った。俺は笑い方を思い出したようだった。その日は、いつもより安心して眠ることができた。

 しばらくして、子供に会った。子供は腹が減っていたようだったから、パンをやった。俺の食うものが無くなったけど、何故だか、それでいいと思った。子供は女の『きょうだい』がいた。子供より小さい女だった。『兄』は『弟』を守るものだと言ったら、小さな女の『きょうだい』は『妹』というのだ、と笑われた。俺は子供に歌を教えた。子供は歌が上手かった。しばらく経って、子供が大人に近くなった頃、子供は『呪歌使い』と呼ばれるようになった。守る必要が無くなったから、俺は子供の側を離れた。カミロとは違う、『弟』だった子供の側に戻らなくなった。『天津御空』は、あの『弟』は『弟分』と呼ぶのだと教えてくれた。俺に『弟分』ができた。

 俺は大人になった。背も伸びて、あの人と同じぐらいになった。俺もあの人みたいにカミロを壊すのかもしれないと、怖くなった。『天津御空』は俺に名前をくれた。『アオイ』という名前だった。何故『アオイ』なのかと聞いたら、踏み潰されてぐしゃぐしゃになった花を指して、お前があの葵の花みたいだからだ、と言った。俺は『アオイ』になった。俺は『アレン』を捨てた。

 男と出会った。男はエディアルド、と名乗った。響きが似ていたから、勇者みたいだと言ったら、勇者を知っているのか聞かれた。知らないと言ったら、『勇者とはクソッタレな存在』だと教えてくれた。エディアルドは俺をウサギと呼んだ。理由を尋ねたら、無害そうな顔をしてるからだと言われた。エディアルドは有害か無害かで他人を判断しているようだった。『天津御空』は有害だった。俺にとって有害だ、とエディアルドは言っていた。『天津御空』は俺に名前をくれた、と言ったら、お前にとっては有益だ、と言われた。エディアルドは有益かどうかも気にしているようだった。面白い奴だと思って、笑った。

 傭兵に会った。変な奴だった。当時の俺の家に転がり込んできて、しばらく経って、何処かに行った。その間、食費が増えた。置き手紙で、傭兵はサミュエルという名前だということと、俺とサミュエルは悪友だと知った。本当に変な奴だった。

 王に会った。竜の王だった。竜の王はなんでも知っていた。本人は知らないこともあるとか言っていたけれど、きっとなんでも知っているのだと思った。竜の王はルイス、と名乗った。ルイスは俺を友と呼び、『母』を紹介した。俺は『母』を、少しだけ知った。

 子供に出会った。周囲の生命は息絶えていた。子供は泣いていた。子供が大人になるまで見守って、別れた。子供は名乗らなかったから、俺も名乗らなかった。別れる時、子供は笑っていた。

 

ーーー大戦が起きた。風の噂で、何処かの神が、平和にならない現状を嘆いて狂ったのだと聞いた。神に従っていた巨神族は、神と共に他の奴らと戦った。俺達はたくさん殺して、殺された。『剣神』という呼び名は、俺のことを言っていたのだと、その時初めて知った。

 そうして、今、俺は刃を振るい損ねた。神によって、腕が壊れて飛んでいったから、『天津御空』もどこかにいってしまった。俺はなんだか疲れてしまって、目を閉じた。

 

 一閃、また、何かが起きた。




 続きは未定ですが、書くとしたらアオイが知り合った誰かの話を書きます。
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