勇者が旅しているうちに。〜勇者の母親。魔法使いの姉。戦士の妹。〜 作:ユリイカ
二人だけの静かな店内で、シアは絞り出すように溢した。
魔王の気配が迫り、多くの軍勢がそれに対峙し、そして散っていった。絶望の空気が蔓延するなか、大神殿の神官たちが女神からの神託を受けた。曰く、この王都に魔王を討ち得る勇ましき者あり。
王命により王都全てが隈なく探され、ようやく見つかったのは年若き少年だった。齢十四。あまりにも幼く、顔立ちにもあどけなさが残る彼に、人類は希望を託さざるを得なかった。
果たして神託は真実を語っていた。神殿の宝物庫に安置されていた聖剣が、彼に反応したのだ。少年は剣を掲げ、仲間たちと旅立ちを決意する。人類を守るため。かの悪虐の王を討つために。
「彼は、アレックスは優しい子です。父親が居らず、満足な暮らしもさせてやれなかった。それでも私にありがとうと、そう言ってくれたんです」
シアは泣いていた。
彼女の旦那は腕聞きの傭兵で、若かりし頃は二人で旅をしていたという。しかしアレックスが生まれたことで王都に居を構え、そこで暮らしていた。しかし十年前、まだ息子が幼いうちに父親は魔王討伐軍に加わり、そして帰ってこなかった。
そして今日、息子までもが魔王を討つため華々しく送り出された。
彼女の心情は到底推し量れない。
「私はあの子を引き止めたかった。でも、出来なかった……。アレックスは優しい子だから、自分が選ばれたなら、行かなきゃならないって」
シアは唇を噛み、嗚咽を堪える。見ず知らずの客である俺に話しすぎたと思っているのだろうか。その頬は赤く染まっていた。
「す、すみません。突然こんなこと」
そんな彼女にどう言葉をかけるべきかも分からない。夫を亡くし、息子も見送ってしまった。家族というものを知らない俺には、その痛みが分からない。
だからせめて、その肩を撫でてやらねばと思った。
「……っ!」
「――俺はこの都の南門を守る衛士だ」
「衛士。ああ、だからそんなに逞しいんですね」
身体がデカいのは衛士になる前からだが、鈍る暇がない程度に忙しいのは事実だ。
シアは話題が切り替わったことで少し気が楽になった様子だった。
俺は彼女の背中をさすりながら話を続ける。
「今日も門の前に立っていて、息子さんのパレードは見ていない。でも、多くの人が集まって見送った。その拍手と応援の声は、俺にも聞こえるくらいだったさ」
「……そう、でしたか」
彼女は見送っただろうか。それとも、家にいたのだろうか。
表情や反応からは分からない。
「彼は王都百万人の期待を受けて旅立った。応援は力になるが、過ぎれば押し潰される。それでも堂々と出発したんだ」
友人からの伝聞だが、勇者一行は華々しく王都を発ったという。少なくともアレックスは、絶望に暮れていた民衆の期待を受け止めたのだ。それだけでも、彼女は安心していい。
「それに彼は一人じゃないんだろ」
「ええ。仲間が二人ついてきてくれるって」
勇者アレックスには頼もしい友人がいる。王都でも指折りの名門と名高い武道の一門、ヴェリグス流の師範であるゴルドール。魔法学院主席の英才、オーウィル。彼らは幼少期からの付き合いで、仲も良い。信頼のおける仲間達と共に旅立ったのだ。
更に彼は聖剣を携えている。魔王を滅することができる唯一の武器として、女神の加護を受けた強力な剣だ。
これだけのものがあって、何を心配することがあるだろうか。
「安心して帰りを待っていたらいい。女神に選ばれたってことは、その実力も折り紙つきだ。なにも心配することはない」
「そうでしょうか……」
信頼でき、実力も確かな仲間。女神の加護を受けた聖剣。それだけ揃っていても、やはり母親は心配するものらしい。
気が付けば、俺は思わず彼女の背中に腕を回していた。胸板に、大きな胸が密着する。驚いたような吐息が首筋にかかる。
「信じて待つことも、残された者にできる応援だ。彼が帰ってきた時、出迎えることができるのは、シアだけだろう」
「レリオさん……。そう、ですね。あの子が帰ってきたら、迎えてあげないと」
強張っていた背中から力が抜けるのを感じた。俺の拙い慰めも、少しは彼女を楽に出来ただろうか。
シアは自らこちらへ手を回し、より抱擁を強くした。花のような香りが間近に感じられて、今更ながら状況に困惑する。なぜ俺は、人の妻を……。
「すみません、レリオさん。頭では分かったつもりでも、やっぱり……。もう少しだけ、こうさせてくれませんか?」
「あ、ああ……」
シアの甘えるような声に、思わず声が上擦ってしまう。けれど彼女はこちらに寄りかかり、頬を胸に当ててきた。
「ふふっ。レリオさんの身体、がっしりしてます。あの子も成長したら、こんな感じになるのかしら」
共に傭兵をしていたというシアの夫は、似たような体格だったのだろうか。彼女が安心するのであればと思い、されるがままになる。しかし、この状況はなかなかに厳しい。酒も巡って火照った身体が、また別の意味で熱くなってしまう。
シアは自分の魅力的な身体を自覚しているのか。いや、しているのなら、こんな大胆なことはしないだろう。それとも、夫を亡くして、男との距離感を間違えているのか。
ぐるぐるとどうでもいいことだけが頭の中を巡る。きっと彼女もそのうち我に帰って離れるだろう。そう思いながら、しばらく時間だけが過ぎる。
「……あの、シア?」
流石に長過ぎるのではないか、とシアを見る。眠ったのかと思ったが、俺を抱きしめる腕にはしっかり力がこもっている。
「ごめんなさい、レリオさん。あの子を育てて、ずっと母親のつもりでいたんです。でもレリオさんとこうしていると……」
潤んだ瞳が見上げてきた。その光の宿る目に、思わず生唾を飲み込む。
疲れた酒場の女主人ではない。息子を送り出した母親でもない。いくつもの、彼女が自分を守るためにつけていた仮面が剥がれ落ち、最奥の素顔が見えていた。
「ふしだらだと言わないでくださいね。私も、よく分からないんです」
そこに居たのは寂しさに窒息しそうな女性だった。今にも消えてしまいそうな儚い雰囲気で、懇願するように俺を見つめている。十年も前に夫を亡くし、それからは子育てと酒場の経営に注力し、その支えを失ってしまったのだ。倒れそうな彼女を、支えてやらねばと思った。
シアの背中を抱き、身体を寄せる。
「レリオさ――んっ」
気が付けば、俺は彼女と唇を重ねていた。酒の匂いが鼻先を掠める。ふっくらと肉厚な唇が強張り、咄嗟にきつく結ばれる。しかし氷が溶けるように力が抜けて、やがて彼女の方から応じてきた。
「んっ、んん――。んちゅう――」
舌がこちら側へ差し込まれる。それを迎え、絡め合う。お互いの体温を交換するように密着しながら、静かな店内に水音だけが響く。
シアの目が蕩け、身体から力が抜けていく。俺に体重を預け、身を委ねる。
「ぷぁっ。――レリオさん」
「俺でよければ、慰めよう」
「……お願いします」
息継ぎ。そして最後の確認。
お互い、もう止まることはできない。
再び唇を重ねて、抱きしめる。後ろでエプロンの結び目を解き、床に落とす。ゆったりとした服は脱がせるまでもなく、彼女の肉体を浮き上がらせていた。裾から手を差し込めば、熱く火照った彼女の柔肌に触れる。
「んっ♡ レリオさん、お願い――もっと触ってください♡」
言われなくとも、そうするつもりだった。
彼女の柔らかく重たい乳房に手を伸ばす。簡素で色気のない下着を剥ぎ取るように外せば、ふっくらと膨らんだ濃い色の乳輪があらわになる。その先端、ブドウのような突起が腫れている。それを指先で摘めば、シアはびくりと敏感に身体を震わせた。
「ああっ、ダメ。乳首、久しぶりで……」
「可愛いじゃないか。大きくて、立派だ」
「言わないでぇ。恥ずかしい♡」
何を恥ずかしがることがあろうか。勇者を育てた偉大な母の象徴だ。
乳房を掴めば柔らかく、指はどこまでも沈む。それでいて感度は繊細で、乳輪の縁にそってなぞるだけで身を悶えさせる。上衣を脱いであられもない姿となったシアは口を半開きにして、むしろ自ら胸を押し付けてきた。
「あんっ♡」
俺がその先端に口をつければ、彼女は艶やかな声を漏らす。
「おっぱい吸われるなんて、何年振りでしょう」
「嫌だったか?」
「いえ。懐かしくて……。んっ♡ こんなにいやらしいのは、初めてですけど♡ はぁんっ♡」
未亡人の胸は軽く刺激するだけで盛大に跳ねる。だぷんっ、たぷんっと柔らかくもボリュームのある動きで、その深い谷間に顔が全て埋まってしまうほどだ。
俺の頭を抱えるようにして、彼女もその刺激に甘んじていた。乳頭が唾液で濡れ、口を離すと銀の糸が橋のように伸びる。
「レリオさんのここも、大きくなってますね♡」
うっとりとした表情で、シアがこちらの下半身に手を伸ばす。ズボンの上から白い手が撫で、張り上げていた怒張がびくりと震える。それが彼女には嬉しかったらしい。
細い指がズボンの縁にかかり、隙間へと滑り込む。
シアは床に跪き、まるで神聖なものを開陳するかのように、仰々しく顔を近づけた。
「こんなお店でなんて、少し恥ずかしいですけど……。レリオさん、私もう、我慢できません♡」
一息にズボンが下ろされる。封じられていたモノは反動で勢いよく立ち上がり、ペチンと彼女の頬を叩いた。
乱暴で異様な光景。だが、シアは一種大きく目を開いたかと思うと、すぐにうっとりとした表情に変わる。
ビキビキと力を漲らせる肉棒を見上げ、その精緻な顔に影を落としながら、妖艶に唇を舐める。
「あの子がいない間だけ、母親であることを忘れます」
彼女は大きく口を開ける。赤い口腔は濡れ、唾液がとろとろと溢れていた。舌が伸び、亀頭に触れる。少しざらついた先端の感触がカリ裏をなぞり、意思に反して男根が跳ねる。
「ひゃんっ♡ 元気なおちんちん、ですね♡ 男らしくて、素敵です♡」
まだ少し恥ずかしそうにしながら、そう言って。彼女は今度こそ、大きく開いた口でそれを飲み込んだ。