※この作品はR-18です。

プレリガのR-18系短編   作:タニシカレー

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プレ→リガでリーガルをオカズに一人で致しちゃうプレセアの話
■プレセアとリーガルに直接絡みはありませんが、絡みを想像する描写があります


あなたの知らないあなたの指先

あなたの知らないあなたの指先

 

 止まっていた私の時間が動きだしてから、身体に変化が訪れるようになった。全く伸びなかった背が伸びるようになって、痩せていた体重が身長に沿うように増えていき、そして世界再生の旅が終わった直後、大人の身体にほんのすこしだけ近づいた。大人の身体についてはしいなさんやリフィルさんに聞いて、得られなかった知識を補うために本もそれなりに読んでいたから、身体の変化にも慌てずに対応できたと思う。

 世界が変わるように、というのは大げさかもしれないけれど、私自身も一緒に変わっていく。変わっていくことはすこし不安でもあり、だけどとても嬉しくもあり、そして時々悩みの種になったりもする。

 

 世界再生の旅でふたつの世界があるべき姿に戻ってから一年、私はレザレノ・カンパニーの嘱託社員として商品開発の協力をしている。リーガルさんやジョルジュさんは変わらず私を気にかけてくれて、だけどあからさまな贔屓もしない。周りの社員さん達は私の事情を無理に聞き出そうとせず、対等なビジネスパートナーとして迎え入れてくれた。

 私にとっては、あまりに恵まれていると思えるほどの環境と関係だ。子供の時間を飛ばして大人になった心も、まだ大人には遠い身体も、今の働き方を前向きに受け入れている。ただ、あることに限っては、私は心と身体の変化を素直に喜ぶことができない。その、あることというのは……

「どうした?プレセア」

「あ、いえ、なんでもありません」

「そうか、では話を続けよう。次の商品の展開についてだが……」

「……」

 彼の低く穏やかな声で呼びかけられると、大きくて逞しい身体が目に入ると、胸が高鳴って言葉に詰まるようになったことだ。

 心と身体が変化したことで、私のリーガルさんを見る目はすこしずつ変わっていった。旅の間、わだかまりを抱えた中で彼と向き合い続けていたとき、私は彼の声や身体に特別何かを思うことはなかった。それなのに、わだかまりが解けて心と身体が変化するにつれて、私は彼の声と身体を嫌でも意識してしまうようになった。多分、今の私は彼のことを「男の人」として見てしまっている。

 それでも、自分の変化に引っ張られて仕事をおろそかにしてはいけない。彼の言葉を理解し、考えて、仕事の話は問題なく進んでいく。ただ、それでもちらちらと見える口元や、スーツに覆われた身体が気になって、意識が持っていかれそうになる度にテーブルの下で手の甲を軽くつねっていた。

 仕事の話が終わると、リーガルさんは私の持ってきた書類を元の形に束ねて渡す。そして会長室を出ようとする私に、声をかけた。

「もし抱えている仕事で疲れが出ているようなら、誰かを頼っても構わぬ。商品開発部門の者は、快く協力してくれるはずだ」

「そうですね、ありがとうございます」

 その言葉は私の様子を見た彼の、彼なりの心配と気遣いの言葉だった。だけど私の抱えた問題は全然違うところにあって、それを彼には言えなくて、私はすこし罪悪感を覚えながらお礼と共に会長室を後にした。

 その日の仕事終わり、一緒に商品開発をしている社員さん達と話をしているときに、ふと一人の社員さんが私に話題を振った。

「ここ最近の会長、プレセアさんのことをすごく高く評価してるんですよ」

「そうなんですか?」

「確かに。実際プレセアさんが企画したものは人気商品が多いからなあ」

「俺達も、一緒に開発ができて楽しいです」

「あ、ありがとうございます。私も、楽しいです」

 私の見た目については触れず、仕事の喜びを分かち合ってもらえている。そんな言葉をすこし恥ずかしくも嬉しく思っていると、一人の社員さんがとんでもない話題を振った。

「で、プレセアさん。実のところリーガル会長のことはどう思ってるんです?」

「えっ」

 彼女の問いかけに、私は心の底から驚きの声をあげた。まさか、リーガルさんをどう思うかなんて訊かれると思っていなかったからだ。でも、私のいる商品開発部門の人達は若手の人が多くて(それこそ実年齢なら私よりも若い人もそれなりにいて)、リーガルさんとアリシア、そして私の関係を知らないのは当然といえば当然だった。

「会長、素敵な人じゃないですか。しばらくここを離れてたらしいけど仕事もできるし、現場にもちゃんと行くし、社員にも優しいけど仕事には手を抜かないよう厳しいことが言えて。あと、背が高くて体格がよくてカッコいいし!あれで独身なのが不思議なくらい!」

「そう聞くと、本当にすごい会長だよなあ。それでいて公爵様だから俺達には全然届かないような人だけど、結構憧れてる女性社員も多いらしいね」

「で、で、プレセアさんはどう思います⁉︎」

「わ、私は……べつに。信頼できる方だとは、思いますけど」

「そっかー……ちょっと私一人で盛り上がっちゃいましたね」

 そう言って彼女は話を止めてくれて、私は内心胸を撫で下ろしていた。

 私が抱えている悩みは、彼女が期待していたような甘酸っぱい恋ではない。けれど、意識していないと言えば完全に嘘になってしまう。この悩みの種に気づかれる前に、私はさっさと荷物をまとめてフロアを後にした。

 

 オゼットにある自宅に戻る頃には、すっかり夜になっていた。簡単な夕飯を作って、淡々と胃の中に納めていく。今日は持ち帰った仕事もない、納期の迫ったグッズもない。ご飯を食べたらシャワーを浴びて、明日の仕事に備えて寝るだけだ。

(とりあえず、シャワーを浴びなきゃ)

 空になった食器はすぐに洗って乾かしておいて、私はパジャマと下着を持ってシャワールームの脱衣所に向かった。

 ホテル・レザレノの客室に比べればずいぶん簡素ではあるけれど、仕事終わりに家でご飯を食べて、シャワールームで疲れを洗い流す時間は好きだ。すこしぬるめのシャワーを浴びて、身体や髪の汚れを洗い流すのが心地いい。

 ふと、身体の泡を洗い落としていたときに、自分の身体が目に入った。まだ大人とは言えないけれど、大人に近づいていく身体。一年前と比べて丸みが出てきた腰、すこしずつ膨らみゆく胸。服を着てると身長以外はあまり変わらないけれど、色んな変化が起きているんだと実感する。だけど変化に喜び目を閉じたその瞬間、私の頭の中には私のものとは全く違う人の身体が映ってしまった。

(……だめ!)

 気がつけばシャワーを止めて、脱衣所で慌てて身体を拭いていた。どんなに振り払おうとしても思い出してしまう、どんどん鮮やかになっていく。パジャマも下着も身につけずに抱えたまま、私はベッドに潜りこんでいた。

(また、また思い出すなんて……!いけないって、わかっているのに……!)

 裸の身体を掻き抱き、必死に思い出さないようにする。だけどその姿がはっきりと浮かびあがったそのとき、全身があっという間に熱を帯びていくのを感じた。

 私が思い出してしまったもの、それは旅の途中でたった一度だけ見てしまったリーガルさんの裸だった。その日、私達は導き温泉で宿を取って、リーガルさんはそこでも日課の早朝鍛練を行っていた。いつもよりもだいぶ早く目が覚めてしまった私は、誰もいない温泉で汗を流して出ようとする彼の姿を偶然見かけてしまったのだ。いつも見えている場所はもちろん、胸も脚も生身のまま。腰に巻いたタオルは濡れていて、張りついたタオル越しにくっきりと……彼の下半身のシルエットが浮かびあがっていた。

 覗きをするつもりはなくて、そのときの私は彼の身体を意識することもなくて、気づかれないようにその場を後にした。だけど、身体が大人に近づこうとして、心も変化するようになってから、彼の身体を思い出すようになってしまった。私にとって彼の身体を見たことがどれだけ衝撃的だったのか、気づいてしまったのだ。

(だめ、彼を、そんな風に見ちゃいけない……いけない、のに……)

 抑えこもうとする度に、かえって思い出してしまう。意識してしまう。あんなに逞しい身体の人なんてめったにいなくて、騎士団にいたらしいパパよりも背が高くて、今でも鍛練を欠かさない身体がスーツに覆われていて、私に話しかける声は低く穏やかで心地よくて。もしも、もしもそんな彼が甘くささやくことがあったなら。もしも彼の指が、私の身体に触れてしまったら……そんなことは起こるはずがないとわかっているのに、身体はどんどん火照っていく。

(だめ、また……)

 ためらう心と求める身体がぶつかって、頭の中をぶつかる熱で焦がしていく。そしてぶつかる熱の中で、私の両手はゆっくりと、だけど確実に自分の胸へと伸びてしまっていた。

 

「あ……」

 掴んだ胸からじわりと伝わる感覚に、ため息混じりの声が漏れる。シーツの中で胸をゆっくりまさぐると、甘く焦れる感覚が波のように私の身体に波打ち、太ももを擦りあわせてもぞもぞと動かした。

「あっ、ぁ……だめ……」

 甘く焦れる感覚が何か、太ももを擦り合わせる感覚が何か、大人の身体になりゆく私は知っている。性的なことを全然知らないわけじゃないからこそこの行為がいけないことで、それでもしてしまう罪深さを、既に子供の心でなくなった私は知っている。これは悪いこと、慰めることじゃなくて、彼の身体を思い出してするのがいけないこと。そんなことはわかっているのに、手が止まらない。

「ん、ぁ……っ」

 まだ大きくはない胸を触って、飾りのようについた突起を指先でつまんで、甘い刺激に身体を震わせる。そしてその刺激は、頭の中に浮かぶ言葉によって蕩けるような甘さに変わってしまう。

(あの人は、リーガルさんは、どんな風に女の人を、あの子を触っていたんだろう)

 いけない想像は頭の中で形を作って、私の手つきを変えていく。頭の中にいる彼の、大きい手のひらと太くて長くも繊細な指先の動きを、すこしでも再現するように。

(きっと手のひらで膨らみを包んで、ここは指先で……)

 胸の膨らみを優しく揉みながら胸の突起をさすって、そして彼の身体と声を思い出す。私の想像の中で名前を呼ぶ声が、感じるはずのない背中越しの温もりが、さらに私の心と身体を追い詰めていく。

「は、ぁっ、んん……っ!」

 甘くて、もどかしくて、気持ちよくて、いけない刺激に、引き返せなくなっていく。彼を思い出して慰めることに、どんどん溺れていく。ただ慰めるだけでは満たされないと思うほどに溺れて、知らない指先を動かしている。胸を触り続けて、突起をきゅっとつまむのと同時に彼の声を思い出したそのとき、私の頭のてっぺんから足の先まで甘い刺激が駆け巡った。

「あ、ああっ……!っ、は、ぁっ、はぁ……」

 仰向けになって深呼吸をしても、一度火がついた身体が収まらない。脚の間が汗以外のものでも濡れているのがわかって、シーツの中で両脚をすこし開く。もし彼がこんな姿を見たら、どんな反応をするんだろう。青ざめてしまうのだろうか、息をのむのだろうか、それとも……はしたないとたしなめるのだろうか。

(だめ、いけないのに、止まってくれない……ごめんなさい、リーガルさん……)

 頭の中で、彼の姿は記憶のものから歪んだ想像のものへと何度も形を変えていく。私を優しく抱きかかえる姿、私に愛撫と奉仕をする従順な姿、私に押し倒されてなす術なく受け入れる姿。私に迫り、乱暴なことをする姿が想像できなくて、だからこそ想像する彼は都合が良くて、溺れる心地よさから抜け出せない。胸を触っていた右手はそろそろと下半身に伸びていき、そして割れ目のところをそっとなぞった。

「濡れてる……」

 慰めるために物を挿入れることもあるらしいけれど、それにはまだ抵抗感があって、濡れているところを指で撫でてみる。シーツの中でぼやける音と敏感に拾ってしまう気持ちよさに気分はあがって、全身はじわりと汗をかく。今の身体を見るのは恥ずかしい、だけど暑さと湿気から解放されて続きがしたい。すこしずつシーツをめくっていくと、そこには完全に「その気」になった私の身体が横たわっていた。

(恥ずかしいけど、触りたい。いやらしくて、いけないことがしたい)

 胸を触ったままの左手を再び動かして、右手の中指を割れ目に埋める。焦らすように中指を埋めては離す動きを繰り返すと、はっきりとした水音と一緒に甘い刺激がお腹から広がっていく。

「ぁ、あっ、あ、はぁ……っ」

 自分の身体を探って、閉じたまぶたの裏であの人を思い浮かべてまた身体を探る。ここはどんな風に触るんだろう、どんな言葉をささやくんだろう。あの身体は、あの顔は、どんな風に変わっていくんだろう。知らない、何も知らない、この先知ることも多分ない。だけどきっと、あの人なら。

「き、気持ちいい、です……っ、もっと、ぁ、触って、ください……」

 私の言葉に、想像の彼が何かを返すことはない。だけど私の手は、指先は、敏感なところをいじっていやらしい音を立てさせる。もしも彼がこんな風に触ってくれたら、そう思いながらする動きのひとつひとつが、気持ちよくてたまらない。

 割れ目に沿って動いていた指が曲がって、指先がほんのすこしだけナカに埋まる。その刺激と一瞬鳴ったいやらしい音に、身体がびくつく。そろそろ、挿入れてしまいたい。そんな欲望のままに中指の関節を動かして、入り口がすっかり濡れていることを確認すると、そのままゆっくりと指をナカに埋めていった。

「ん、ああぁ……っ!」

 付け根まで埋まった指に、普段は出ないような声が出る。指の関節をくにくにと曲げると、かき混ぜるようないやらしい音に合わせて気持ちいい波が私の身体を伝う。指を激しすぎない程度に抜き挿しすると、指にまとわりつくようないやらしい音と刺激が私の身体をノックする。はしたないのに、恥ずかしいのに、いけないのに、覚えてしまった慰めの感覚を追うのをやめられない。

「あっ、ぁ、は、うぅ、だめ、だめ……!だめ、なのに……!」

 中指を抜き、まだ濡れていない薬指を口で濡らして、もう一度右手を入り口に伸ばす。ゆっくり埋めようとした二本の指は、思った以上にスムーズに私のナカへと挿入ってしまった。

「ああっ!そ、そんなっ!あっ!ぁ、んっ!ゃ、ぁあ!」

 二本の指は私の理性に逆らうように、気持ちいいものを求めて動く。目をぎゅっとつむると彼の裸の胸が大きく映って、聞いたことのない低く熱い吐息が聞こえる気さえする。

(私、私、あの人を欲しがってる……!あの長くて太い指で、低く響く声で、お腹の中を揺さぶられたいって……そんなこと、思っちゃだめなのに……!)

 いけないと思うほど泥沼に浸かってしまって、もう私にはどうすることもできない。自分で作った想像で、想像に突き動かされた自分の指で、心も身体も追い詰められていく。

「も、もう、ぁっ!もう、きそう……!あ、あ……!」

 二本の指でナカを責め続けて左手で胸の突起を強く引っ張って、昇りつめるような限界を迎える中で私が最後に感じたものは……甘く私の名前を呼ぶ、聞いたことのない彼の声だった。

「ぁ、だ、だめえっ!あああぁっ!」

 自分のものとは思えないほど大きく甘い声をあげて、身体を大きく波打つように震わせて、刺激に足先をぴんと伸ばして、私の頭は真っ白になった。身体が時間をかけて落ち着きを取り戻すうちに、刺激的な彼の幻はすうっと消えていく。また彼の裸を思い出して、知らない彼を想像して、一人で慰めてしまった。いけないことをした虚しさと罪悪感に襲われながらも、身体は心地よい余韻を引きずったままベッドの端に追いやっていたシーツを引き寄せていた。

 

 一人で身体を慰めた後はシャワーを浴びる気力も起きなくて、パジャマを着る気も起きなくて、とりあえず下着を穿いてベッドのシーツに包まっていた。彼の裸を思い出してしまった夜は、いつだってこうだ。

(わかってる。リーガルさんは私をそういう目では見ない、あの裸だって私が偶然見てしまっただけ。私だって、あのときは何も思わなかったのに)

 心の中で言い訳をしながら、そっと目を閉じる。自分のために彼を「使ってしまった」後は何も起こらないことに勝手に安堵しながら、それでも考えこんでしまう。

(それでもやめられないのは、心地よいと思うのは、身体が大人に近づいてるから……本当に、それだけなの?ううん、本当にそれだけ。それだけだから……)

 そう言い聞かせるように心の中で繰り返して、なんとか眠ろうとする。次にアルタミラに行くのは三日後、それまでは悩みの種も振り払って、ちゃんと仕事もできるはず。それから、三日後に彼に会っても、気づかれずに話せるはず。そこまで言い聞かせると身体から力という力が抜けて、不思議と気が楽になって、そうして私はようやく眠りにつくことができた。

 たった一回見たことのある身体を思い出しては想像を膨らませて、一人身体を慰める。そして数日経てば何事もなかったかのようにアルタミラを訪れ、彼と顔を合わせる。今のところ、私の悩みの種はリーガルさんには気づかれていない。多分彼には悩みの原因が何か想像もつかないだろうから、気づかれることもない。そんな関係とも言えない何かを続けながら、私は日々変わっていき、仕事をこなしていく。

 だけどたまに、本当にたまに思うことがある。もし彼が私の悩みの種に気づいたら、私が彼の裸を見ていたことを知ったら、そして私の想像の中で自分がどんな姿をしているか知ったら彼はどんな顔をするのだろう、と。

 

終

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