太陽が管理の行き届いたビーチを照らし、光の反射で輝く波が寄せては引いていく。そんなアルタミラ・リゾートの浜辺で、私は命の危機に晒されていた。
きっかけは、世界再生などの旅を共にした仲間達、そして新たな旅を共にした二人をアルタミラへ招待したことだった。ある者はビーチで女性に声をかけては隣の同行者に頭を叩かれ、ある者は海には寄らず日陰で弟を見守り、ある者達は二人きりの海を日差しに負けぬ眩しさで楽しんでいた。
そんな中で、ロイドがコレットやジーニアスと共に、私を砂浜に埋めようとした。以前も同じように砂浜に埋められたが、意外と心地よかったということもあり、私から進んで砂浜に埋められた。……と、ここまではよかったものの、ある事態が私の身に危険を及ぼしていた。今日のアルタミラは、いつもよりすこしばかり気温が高く日差しも強かったのだ。
(暑い……)
そろそろ出たいと思いながらも、ロイド達は海で遊ぶのに夢中で帰ってこない。他の者達も私の様子を特に気にせず、思い思いにビーチを楽しんでいる。自力で脱出しようとしたが暑さに体力を奪われており、さらには思った以上に深く埋められたようで、首から上しか出ていない私は足掻くこともままならない。徐々に気力が削られ、大声を出すこともままならず、唸りながら助けを待つ。しかし無情にも、あるいは仕方のないことだが、埋めた本人達は私の様子に気づきもしなかった。
(頭が、揺れる……意識が、遠のいていく……こんな姿で、私は……)
そこまで考えたところで、私は意識を失った。唯一私の様子に気づいた者の影を、認識することもないままに。
次に目を覚ましたとき、私はホテルのベッドに寝かされていた。カーテンで日光が遮られ、薄暗い照明が点き冷房が効いた部屋で、私の意識と視界ははっきりとしていく。たしか私はビーチで気を失っていたはずだが、身体にほとんど砂は付いておらず、薄手のタオルケットがかけられている。
状況がいまいち飲み込めていない私の耳に、ドアを開ける音が聞こえた。音の方へと視線を移すと、一人の少女……いや、女性が部屋の鍵を閉め、トレイに何かを乗せてこちらに向かってきた。
「目が覚めたんですね。お水と塩分の入ったゼリーをもらってきました」
「プレセアか……お前がここまで運んできたのか」
「はい」
彼女から差し出された水とゼリーをすこしずつ飲みこみ、再びベッドで安静にする。プレセアは僅かに安堵の表情を浮かべつつ、私がこの部屋に運ばれるまでの経緯を語った。
どうやらプレセアが新たな砂の芸術品を作ろうと歩いていたところで、偶然気を失った私を見つけたらしい。彼女の力によって私の身体は砂浜から引き抜かれ、他の者達が気を遣わぬよう密かにホテルまで担がれていった。その様子を見た支配人が大慌てで空き部屋を彼女に貸し、私のプライベートにも関われる嘱託社員の彼女が介抱を任され、今に至るとのことだ。
もし彼女が私を見つけなかったらどうなっていたのか、考えるのも恐ろしいがとりあえず身体は快方に向かっているようだ。気絶する前に感じていた頭痛や眩暈などは、話を聞いている間に徐々に落ち着いていった。
「お前には世話をかけた、すまないな」
「いえ、リーガルさんが無事ならいいんです。とりあえず、見つけられてよかったです」
「ロイド達に進んで埋められた挙句手遅れになっていたら、色々な意味で申し訳が立たなかったからな」
ベッドのサイドテーブルに置かれたグラスを手に取り、再び水を飲みこんでいく。プレセアも水差しから使っていないグラスに水を注ぎ、ゆっくり飲み干すと、ベッドの近くに置かれた椅子に座る。私の様子を見つめる彼女の姿を見て、今更ながらに覚えていた違和感の正体に気がついた。
「プレセア、ずっと水着のまま私の介抱をしていたのか?」
「介抱をしている間に着替える暇もなかったですし、このまま皆さんのところに戻ったときに水着じゃないのも変ですし」
「たしかに……」
水着のままプレセアに世話をかけさせていたことに、申し訳なく思う気持ちが湧いてくる。体力を奪われる前に自力で脱出していれば、彼女だって久しぶりの海を楽しんでいたはずだ。
「本当に、すまないな」
「謝らないでください。予想外のことで体調を悪くするのは、誰にでも起こりうることです」
「しかし……」
「それに、リーガルさんを介抱するのは私の意思でもありますから」
そう言って彼女はくつろぐような姿勢となって、私の身体に上半身を預ける。その姿に、その視線に、何故だか申し訳なさではなく気まずさを覚えた。
世界再生の旅が終わり、彼女がレザレノの嘱託社員として協力してくれるようになってから、おおよそ三年半の月日が経とうとしていた。エクスフィアの影響で長らく成長が止まっていた彼女の身体も、今では無事に成長しつつある。身体だけでなく表情や言動にも変化は訪れ、以前よりよく微笑み、口数は多くなくとも積極的に話すようになった。本来あるべき姿に近づいていることは、彼女にとっても私にとっても喜ばしいことだ。
ところが、変わっていく心と身体の中で、彼女の私への態度もすこしずつ変わっていった。世界再生の旅が終わった当初は仲間として、ビジネスパートナーとして言葉を交わしていたが、すこしずつ、本当にすこしずつ、彼女は私そのものに興味を向けるような素振りを見せるようになったのだ。最初は私の勘違いだろうと気にもしていなかったが、ふとしたときに手を重ねられたり、私の身体に身を委ねるようなことが増え、どうやら勘違いではないと思うようになった。今、私の身体に上半身を預けている彼女の眼差しも、仲間やビジネスパートナーのそれとはどうしても思えないのだ。
(どうすればいい……)
冷房が効いているのに、身体がじわりと汗をかく。このまま安静にして、いつものように気づいていないふりをするべきだろうか。そう思案していると、プレセアは身体を預けたまま、私に話しかけた。
「あの、私も横になっていいですか」
「構わぬ。好きに休むといい」
部屋にはもうひとつベッドがある、ソファもプレセアの身体であれば十分くつろげるだろう。そう思ってかけた言葉にプレセアはゆっくりと立ち上がり、もうひとつのベッド……ではなく、私の横たわるベッドのタオルケットをめくった。
「なっ……何を」
「横になりたいので」
「向こうにベッドもソファもあるのだが」
「ここで、横になります」
頑なに私のもとを離れぬ彼女に、己の言葉が足りなかったと気がつき、さらに気まずくなる。たしかに私は彼女に休むといいと声をかけたが、場所をはっきりと示しておくべきだった。私は彼女に同じベッドへ上がる口実を作ってしまったのだ。
鍵が掛かり、薄暗い照明だけが点いた、冷房の効いたホテルの一室。同じベッドの上で、同じタオルケットをかけて横たわる水着の男女。危機感を覚えて距離を取り、ベッドから離れようとした私の身体は、彼女の腕によって絡め取られてしまった。
「は、離してくれ」
「どうしてですか?私達、一緒に横になっているだけです」
脇腹に腕を回され、他者と身体が密着している状態を「横になっているだけ」と言う者はまずいないだろう。私達の関係はそのようなものではないと拒む言葉は、彼女の人差し指一本で封じられた。
「言いたいことはわかります。でも、今は言わないでください」
「……」
彼女は私の首筋に顔を寄せ、上目遣いで私を見つめる。まだ少女の面影がありつつも大人になりゆく彼女の表情が、大人のものに見えてしまう。身体がこわばり、動けない私の首元に細い指がかかる。そしてゆっくりと、首元にあった私の水着のファスナーを下ろしていった。
「プレセア、何を……」
「私にしては、我慢した方です」
露わになっていく肌を、細い指が撫でていく。喉元、鎖骨、胸元、腹……徐々に下がっていく指の感覚に、血の気が引いていく。
「本当は、もっと身体が大人になってから打ち明けるつもりでした」
「だけど、今度は心が止められなかったんです。心ばかりが先に行ってしまって」
「こうして、いつもと違う場所で、姿で、二人きりになったら、抑えきれなくて」
彼女の告白は決定的な言葉を含んでいない。しかし彼女が何を我慢し何を打ち明けたのか、何故我慢し何故抑えきれなかったのか、それだけは痛いほど伝わった。彼女は大人の女性だ。少なくとも、私は彼女が大人の女性として生きていけるよう接したつもりだった。大人の彼女にどんな心境の変化が訪れるのか、僅かにあった可能性に目を背けながら。
「もしかして、私を介抱したのもそのためか」
「いいえ、介抱を任されたのは本当に偶然です。意識を失ったあなたを真っ先に見つけたのも」
「何故、私なのだ。私には心に決めた人が……」
「あなたが、あなただからです。わかっていても、私が私自身として、抑えきれないほどの人だから」
プレセアの指が私の身体から離れ、タオルケットの中で彼女自身の水着に触れる。一体何をするつもりなのか、その疑問の答えは胸元に触れる感触で容易に見つかった。
「な、何をしている、っ」
「ただ触れあっているだけです……ね」
伝わりあう体温、生身で感じる人肌の感触、そして嫌でも気づいてしまう、我が身とは明らかに違う身体の柔らかさ。生身の胸と胸が触れあって、というより彼女の胸を押しつけられている。彼女は私と触れあうために、水着をずらしていたのだ。
「温かいです、それに……なんだか不思議な感触です。硬すぎず、柔らかすぎず……私の胸と違う、男の人なんだと感じられます」
「こ、こういうことは、私とでなく、っ」
「言ったはずです。あなただからこういうことをしたくて、しているんです。まだ私の身体も、あなたの心も追いついていないけど、こうしていたい……」
より触れあうように、肌と肌を擦り合わせるように、彼女は私の腰を抱いてゆっくりと上下に揺れる。その行為に、表情に、彼女の心の渦を覗いた気分になった。
「まだ成長の途中ですけど、前よりすこし胸が膨らみました。同じ形の水着でも、サイズが上がりました。前よりもずっと、身体に丸みが出ているのも感じます」
「……っ」
「私の身体がどれだけ近づいたか、感じてほしいです。そしてできれば……リーガルさんの腕の中で、大人になりたい。大人の女の人としての経験が、ほしいです」
彼女は理解しているはずだ、私の心の中にいる片翼の存在を。私がまだ、片翼たる人を想い出にできていないことを。我が片翼は、アリシアは、プレセアにとっても大切な存在であることも。それでも、プレセアは私を求めている。私の心がアリシアから離れないとわかったうえで、大人の女性として情を交わそうとしている。そして今の私は、客観的な立場としては「不義を理由にできない、恋人のいない男」なのである。
私自身はプレセアを求める感情はない、しかし、彼女に応える身体の持ち主として私はあまりに都合がいい。そんな応えられぬ心と、応えられる身体をもって、彼女に向き合わなければならない。薄暗く静かな空間の中、私は彼女が諦めることを祈って、情を交わす条件を並べた。
「唇へのキスは決して認めない。お前が望めば従うが、私からはお前を求めない。たとえ肌を重ねても、私の心まで渡すことはないだろう。この行為で確実に傷つくのは、お前の方だ」
「……」
「虚しく傷つくだけの行為で、自分を傷つける男を相手にして、本当に大人になるつもりか」
「リーガルさんらしい言葉です。優しくて……不器用で、拒むには甘すぎる言葉」
彼女は顔を上げ、私の首に腕を回す。そして耳元まで顔を寄せると、吐息のように溶ける声でささやいた。
「そんな条件であなたと一緒になれるなら、あなたの手で大人になれるなら、私は構いません」
「……」
唇の代わりに、彼女は私の喉元にキスを落とす。拒むこともできず、己の操より彼女の願いを選んだ私に、代償と覚悟が求められるときがやってきていた。
彼は心まで渡してはくれない。それでも彼は、私の想いを選んでくれた。
タオルケットを取り払って、ベッドに横たわりながらお互いの身体と向きあう。私の水着は胸が見えるようずらされていて、彼の水着は一番下までファスナーが下ろされている。私を見て彼は目を逸らしてしまったけれど、私は目の前の身体から目が離せなかった。
「近くで見ると、身体の違いをより感じますね」
「そんなに、見ないでほしいのだが……」
見られることに戸惑う姿まで違いを感じながら、私はまた彼の身体に抱きつく。そして今度は、彼の脚の間に片足を絡ませた。
「な、っ⁉︎」
「こうすると、もっと身体がくっつきます。温かくて、心地よくて……すこし、恥ずかしいですけど」
「……っ、プレ、セア」
身体を寄せあってすこし汗ばんだ肌が、ふたつの身体の隙間をぴったりと埋める。すこしの動きも敏感に拾えて、お互いの体温も胸の高鳴りも伝わって、もっとどきどきしてしまう。私は胸の先端を、目の前の逞しい胸に擦るようにあててみた。
「ぁ、あっ……じんじんして……気持ちいい、です……」
「っ、く」
彼は私を見ないようにしながら、擦りあう感覚に耐えようとしている。だけどちらっと見えた顔はすこし赤くなっていて、彼の身体も敏感になっているんだと感じられる。気持ちいいのは私だけじゃない、そう思うと先端がもっと切なくなって、擦るだけじゃ足りなくなる。私は胸を擦りながら、リーガルさんにお願いをした。
「ん、ぁ……擦るの、いいですけど、っ、触って、ほしいです……胸、触って、ください……」
「承知、した……」
彼の両手がおずおずと差し出されて、私の両胸を捉える。大きな手のひらが私の胸を包みこんで、そのまま優しくゆっくりと揺さぶった。
「あっ、ぁ……いい、っ、気持ちいい、です……!ここも、もっと、ぁ、触ってください……っ!」
「こう、だろうか」
「あぁっ!ぁ、あ、はぃ、っ!そこが、すごく、気持ちよくて……っ!」
指先でおそるおそる撫でられ、いじられる感覚がもどかしくて気持ちいい。触られれば触られるほど先端は硬く敏感になって、また触られると気持ちよくなって。そんな刺激の繰り返しの中で、私も両手を彼の胸に伸ばす。そして私が彼にしてもらっているように、両胸の先端を指先で撫でた。
「っ⁉︎そ、そこは、っ!」
「リーガルさんも、ぁっ、気持ちよく、なってください……んん……っ」
「こ、こんなところで、っ、刺激など、得られるはずが、っ!」
耐えるように息を詰まらせて、それでも丁寧に、懸命に、私の胸に快感を与えてくれる。彼にとって、私との行為で快感を得ることは悪いことなんだろう。
でも、彼もこの行為を身体では気持ちいいと思っている。寄せあう肌が熱を持って、相手を大切にしながら与えあう手を止めることはない。私達は見返りを求めないまま、心地よい快感を分かちあっていた。
「こんなに、ぁ、気持ちいいこと、しているんです……ぁっ、素直に、なってください、っ」
「わ、私は、っぅ、私は……!」
「罪悪感なんて、覚えないでください……これは、いいことですから、ぁっ」
「っ!」
指先で摘んだものを引っ張ると、彼の身体がびくんと跳ねた。絡めた太ももを動かすと、心より素直な身体の変化を感じられる。私達は、私達の身体は、快感を受け入れていることをごまかせなかった。
「ぁ、はぁ、っ、リーガルさん、こっちも、触りますね……」
「あっ……」
胸への愛撫を続けられながら、私は彼の下半身に手を伸ばす。水着に覆われたままのそれを、布越しに形を確かめるように手のひらで撫でた。
「う、うっ……!そ、こは、っ!」
「んっ、大きくて、温かいです……っ!これが、ぁ、リーガルさんの……」
「は、ぁっ」
「これからもっと大きく、かたく、しますね……」
彼の形を探るように手のひらで包んだり、指先でなぞったり、下から揉みこんでみる。ある場所に触れると、彼は愛撫の手が止まるほど反応する。どこをどう触るか考えながら布越しに彼への愛撫を続けていると、手の中のものはすこしずつ硬く、そして大きく膨らんでいくのを感じた。
「あ、ぁっ、すごい……かたくて、大きく、っ、なりました……!」
「ふ、っ、ぅっ、あ、ぁ……っ!」
「直接、触りたい、です……水着、脱いでください」
彼のものから手を離して、絡めた脚をほどく。彼は自分の水着に手をかけながら、戸惑う視線で私を見つめた。
「私だけが脱ぐのか?」
「リーガルさんの水着は、全部脱がないといけませんから。私の水着は脱がなくても」
「それ以上は言わなくていい……」
諦めと恥じらいを表情に浮かばせて、リーガルさんは目の前で水着を脱いでいく。私よりも露出の低い水着から腕を抜き、水着をすこしずつ下にずらしていく。片脚を抜いて、もう片方の脚も抜くと、大きな両手が前を隠してしまった。
「これで、よいだろうか」
「手をどけてください。リーガルさんのを見て、触りたいです」
「う……っ」
彼がゆっくりと両手をどかすと、そこには形を変えて、硬く勃ったものが上を向いていた。男の人の性器が性的な刺激で形を変えるのは本で調べたけれど、実物を、しかも彼のものを見られたことにすこしの感動すら覚える。私は「お互いに」触りやすい距離を取りつつ、それに手を伸ばした。
「水着越しより、ずっと熱くて……硬さもよくわかります。ゆっくり、ゆっくり触りますね」
「う、ぁ、っく……」
ふたつの身体の間で、熱い塊を掴んで上下に滑らせる。彼が耐えようと目をつむっても、手をすこし速く動かすとぬるぬるしてきて、手を動かす度にいやらしい音を立てはじめる。私との行為で、彼の身体が興奮してしまっている。それが嬉しくて、もっと二人で興奮したくて、私は彼のものを触りながらまたお願いをした。
「私のも、触ってください……」
「っ、さすがに、それはっ」
「触っていると、私もどきどきして……身体が、疼くんです。私も、水着の中で触ってほしい……」
薄目を開けて私を見つめる顔には、ためらいがある。だけど私の手の中にあるそれは、熱さと硬さを失わない。空いた手でさまよう彼の手を取って、そっと水着の中へと導く。彼の長くて太い指の先が、私の秘密に触れた。
「……!」
「あなたに触って、あなたの手で大人になるんだって思ったら、こんなに……」
「プレセア、っ⁉︎っぁ、また、っ!」
「指で触って、いじってほしい、です……一緒に、気持ちよく、なりたい」
「……ふぅ、っ」
ひと呼吸置いて、彼の指先が私の蜜をまとうように動く。そしてぎこちない動きで、私の秘密の入り口を確かめるように指を動かした。
「あっ、ぁ、そこ、そこですっ!指がっ、つついてるとこ、です……!」
「ぐっ、そんなに、擦られると、っ!もうすこし、っ、加減を……!」
「や、優しく、ぁ、さわりますから、いっ!いれて、ゆび、挿入れて、ください……っ!」
入り口を丁寧にノックしていた指が、ぴたりと止まる。そして指の先がつぷりと入り口を越えると、太くて長い指がゆっくりと私のナカに挿入っていった。
「ぁ、あぁっ……!ゆび、すごい、です……っ!私のナカ、いじって……っ、あぁっ!」
お腹の中のあるところを指で押された瞬間、身体の奥から湧くような快感が全身に駆けていった。これがナカで感じられる快感で、彼の指で与えられる悦び。そう思うともっと欲しくて、腰を誘うように揺らしていた。
「も、もっと、指を曲げて、いじってくださ、っ!やっ、あぁっ!あ、ぁ、ひぁ、っ!いい、気持ちいい、ですっ!」
「っ、はぁ、っく、ぁ……っ!」
「ゆび、いいっ!すごくっ、いいです、っ!わ、私のっ!あっ、いやらしい音っ、き、きいてくださ……ああっ!」
決して乱暴ではない、むしろ私の身体をすこしでも傷つけないように動く。そんな彼の不器用だけど繊細な指の動きが、私のナカを気持ちよく刺激する。彼の指先で特に感じやすい場所を押されて、彼のものを触る手が止まってしまう。私は部屋にいやらしい音を響かせながら一歩ずつ、大人の経験を積んでしまっているのだ。
「あ、あ、ぃっ、いいっ!おなかのなかっ、すごくっ、きもちよくて……あっ!何か、ぁっ、なにかきますっ!あ、あっ、あ……」
「……っ!」
「ひあぁああっ‼︎ぁっ、ぁ……」
追い詰められた身体が限界を迎えたそのとき、強烈な快感と一緒に頭の中がちかちかするような感覚がした。身体をガクガクと震わせて、足先がぴんと伸びて、波のような快感の余韻が落ち着くのを待つ。彼の手で、私以外の手で、初めて絶頂を味わった。指が抜けて余韻が落ち着いたとき、私は彼のものから手を離して、目の前の胸にくったりと身体を預けた。
「気持ちよくて、お腹の中から満たされてるみたいです。でも、もっと知りたい……指より大きくて、熱いもので、私を大人にしてください……」
片脚を上げて、水着をずらして濡れた場所を見せつける。片方の手で上げた脚を支えて、もう片方の手で入り口を拡げて、はしたない姿を晒す。彼は私を見ないよう視線を外すけれど、刺激を与え続けたそれは硬く上を向いたままだ。私は入り口を近づけて、透明な液体を滲ませる先端にぴとりとくっつけた。
「プレセア、っ」
「お、お願いです、っ……挿入れて、んっ、ほしいです……熱くて、硬くて、っ……大きいのを、ぁっ、ナカ、まで……」
「わ、私には、っ、でき……」
「約束です、私をっ、大人にしてください……」
濡れた場所が擦り合わさって、にちにちと音を立てる。私が腰を動かせば、多分簡単に挿入ってしまう。だけど、私は彼の手で大人になりたい。彼に挿入れられて、私の秘密をこじ開けてほしい。私は上げた脚を彼の腰に引っかけて、最後のお願いをした。
「リーガルさん……挿入れて、ください。あなたの手で、大人になる私を……見てください。あなたに、挿入れられたい、です……」
「……きっと、後悔する」
「後悔、しません……。あなたに、初めてを渡せるなら」
彼は私の言葉にすこしつらそうな顔を浮かべて、それからそっと目を閉じる。次に目を開けたとき、彼の瞳にはある種の決意の色が表れていた。
リーガルさんにリードされるように、ベッドに仰向けで横たわる。これからどうするのか理解した私は両脚を大きく開いて水着をずらし、秘密の入り口を両手で拡げてみせた。
「ここ、すごく濡れてます……恥ずかしいけど、ほしくて、動くのが抑えられないです……」
両脚の間に大きな身体が入りこんで、再び濡れた場所が触れあう。これから挿入ってしまう、そんな期待に胸を高鳴らせる私に、リーガルさんは静かに言葉をかける。
「私は……女性とこのような経験をしたことがない。一応知識だけは教育を受けたが、お前に痛みを与えぬ保証はできない」
「リーガルさんも、初めて……?」
「私はともかく、もしお前が耐え難い痛みを感じたらすぐに止める。それでもいいか」
私の身体はすぐにでも繋がりを求めているのに、彼の告白と問いかけはあまりに誠実だった。戸惑いながらも私に応え、ためらいながらも私を慈しむ。たとえそこに彼の恋愛感情がなくても、私にはそれで十分だった。「妹の恋人だった人」でなく、「ずるいほど誠実で不器用な彼」を、好きになってしまったのだから。
「はい……本当に痛かったら我慢しません。でも……すこしなら我慢します。最後まで……一緒に経験したいから」
「……」
「私のナカに、挿入れてください」
私の一言を合図に、彼の腰が動きだした。触れあい、目的地をしっかり定めた先端が、私の入り口からゆっくりと挿入っていく。初めて挿入る太さに鈍い痛みが起きるけれど、耐えられないほどではない。
「う、っ……ぁ」
「痛むか?」
「すこしだけ……。でも……っ、ゆっくりきてるので、ぁ……大丈夫、です。そのまま……」
心配そうな顔をしながら、私の表情の小さな動きも逃さないというように様子を伺いながら、熱いものが私のナカへと挿入っていく。先端の一番太いところが入り口を抜けると、私の身体が彼の先端をぬるっと包みこんだ。
「あ、ぁ……全部、挿入りそう、です、奥まで、きそう……んっ」
「う、ぐ……」
「あぁ……っ、きてます……お腹、いっぱいになりそう……あ、ぁっ」
無理やり挿入れられることなく、お腹の中がすこしずつ彼で満たされていく。初めての感覚、初めての熱さに、視界もとろりとしていく。はっきりしない視界で、開いた両脚の前に手を突いて私の下半身を太ももに乗せる彼だけがわかる。
ゆっくり、ゆっくりと身体が近づいていく。そして一番奥に彼の先端がたどり着いたとき、私達の下半身もぴったりとくっついた。
「お、奥まで、きましたぁ……っ」
「全部、挿入って、しまった……痛みは、ないか、っ」
「大丈夫、です……とても、きもちいい……」
とうとう、私達は奥まで繋がってひとつになった。初めての私が、初めての彼を全部受け入れた。彼の視界には、きっとひとつになって悦ぶ私が見える。そう考えるとお腹が甘く切なくなって、ナカにいる彼をきゅっと締めつける。
「うぁ、っ」
「ぁ、うれしい、嬉しいです……私達、ひとつになってて……」
「ん、ぐ……」
「う、動いて、ください……奥、突いて、あなたを、感じさせて……」
私のお腹に、大粒の汗が滴り落ちる。リーガルさんは、やっぱり動くことに抵抗を感じている。私の身体を揺さぶることが、彼自身が欲望のまま動くように感じてしまうんだろう。
最後のためらいをほどいて、彼の背中を押して、悦びを分かちあいたい。私は両脚を彼の腰に回し、奥まで押しつけるように脚の力をぐっと込めた。
「っ、あっ⁉︎」
「おっ……!お、くっ、すごい、です……もっと、来てください、も、もっと、きて……」
「こ、腰をっ、押しつけるのは、っ!」
「気持ちいい、ですよね……ん、もっと、気持ちよく、なってください……動いて、私のナカ、いっぱいにしてください……」
「……」
動ける限界の場所までリーガルさんは腰を引き、熱をゆっくり抜いていく。私のナカが彼のものを引き戻そうと締まりかけたそのとき、再び熱が挿入っていき、私の奥を突いた。
「あぁ、っ!」
「う、ぐ……っ、はっ、うぅ、っ」
「あ、あっ!ぁ、ぁんっ!ひぅ、あぁあ……っ!」
緩急をつけて、彼が私の奥を丁寧に突いていく。激しすぎない腰の動きに、身体は苦痛を覚えず快感だけを深く覚えてしまって、奥を突かれる度に私のものとは思えないような甘い声が出る。
「きもち、いいです、っ!もっと、っ、もっとぉ……っ!」
「プレ、セアっ、あ、脚を、っ!」
「あっ、だめです、っ!は、はなしたく、ない……あ、ぁ、あっ!リーガルさ、あぁっ!」
彼の声が詰まっていって、お腹の中から彼が抜け出そうとする度に、脚に入るだけの力を入れて彼を奥へと引き戻す。彼が抜け出そうとする理由が私の身体を守るためとわかっていても、私は彼を離したくなかった。大事な場所に触られるのも、ひとつになるのも……ナカに射精してもらうことだって、全部彼が初めてでありたい。私の彼の手で大人になりたいという願いは、そういうことだから。
彼の動きに合わせて私はより深く、より激しく、二人の絶頂に近づくように腰を揺らす。奥を突かれる刺激が、いやらしくナカで擦りあう感覚が、汗だくの肌が色んなもので濡れる感触が、我慢できずに漏れあう声の響きが、何もかもが気持ちいい。このまま二人で最後の瞬間を迎えるんだと思うと、二人の身体が追い詰められていく。
「あ、あっ!わたしっ、また、きますっ!きもちいいのが、ぁっ!きて、もう、もう……っ!」
「い、いけない……っ!こ、これ以上、は……っ!」
「き、きてください、っ!リーガルさんの、だしてっ、あっ、だしてくださいっ!わたしの、な、ナカにっ!ナカにだして……っ!」
「あ、ぐっ!ぅ、だ、だめだ、っ!耐えられなく……っ⁉︎」
彼の身体が限界を迎えようとしたとき、私の脚は彼を逃さず、彼のものを勢いよく奥へと迎え入れる。大きな質量と衝撃で奥を突かれたそのとき、頭のてっぺんから足の先まで強烈な快感に包まれて、私は絶頂を迎えた。
「あっ、ああぁぁっ……‼︎」
「ぐっ、ぁ……!」
お腹の中で彼のものがドクドクと脈打って、脈打つ感覚に合わせて熱いものが注がれていく。私はリーガルさんの手で大人になれた。キスはできなくても、彼から求められなくても、心まではもらえなくても、彼は悩みながらも私に真正面から応え、慈しんでくれた。私にとって、これ以上なく幸せな初体験だった。
彼の腰に回していた脚を離すと、リーガルさんは全てを注ぎきったものを私のナカから抜く。水着が元に戻らないよう両手で入り口と水着を引くと、入り口から彼が注いでくれたものがとろりと溢れだした。
「すごい……たくさん、射精してもらいました……」
「私は……なんということを……」
「私は大丈夫ですから、私が頼んだことですから、そんな顔しないでください。私……リーガルさんが初めてで、本当によかったです」
「……お前の心に応えられず、責任のない身体しか差し出さず、操を立てることも……」
「私もあなたも、わかっていてしたんです。私の願いに、あなたは精一杯応えてくれた。それでいいんです」
「……」
「水着も身体も、このままだと外へは出られませんね。シャワーを浴びないと」
下半身の水着を脱ぎ、彼の手を引いてシャワールームに向かう。脚の間を伝う余韻に悦びを感じながらも、私はうっすらと思い続けていた。
いつか彼があの子を想い出にできたら、キスもできるのだろうかと。
ホテルのベッドでプレセアの初体験の相手となり、私もまた純潔を失った後、私達はまるで何事もなくホテルで療養していたように振る舞った。ロイド達には随分心配をかけたが、一方でビーチにいた面々は思い思いのひとときを過ごせたらしく、次の日には笑顔で解散となった。私達が手に入れてしまい、そして失ったものが何か、誰も気づくことのないままに。
そしてこの日から、私はプレセアが「大人になる」相手として、彼女と肌を重ね続けている。仕事とは完全に切り離された時間の中で、彼女と様々なものを与えあい、失いあっている。最初に私が並べた条件を守ったまま、今では私の唇以外の純潔を完全に失っている……いや、唇の純潔も既に差し出した。キス以外のことは、してしまったのだから。
「んっ……く」
私の目の前で、プレセアは先程まで咥えていたものから出た熱を飲み下す。そして差し出した水で熱を流しこむと、嬉しそうに微笑んだ。
「たくさん、出ましたね」
「う、ぅっ……」
「今度は、リーガルさんが飲んでください」
彼女は立ち上がり、ベッドに座る私の前に秘所を曝け出す。彼女に願われるまま、望みに応えるように、私は既に濡れつつある彼女の秘所に口をつけた。
「あっ、あっ、気持ちいい、です……たくさんっ、出しますから、ぁっ、全部飲んで、ん、くださいね……」
彼女が甘く漏らす声を頭上に聞きながら、私はまた考えてしまう。この行為で、いつか私は彼女の求める愛まで分かちあってしまうのだろうか。未だ想い出にできぬ片翼は、己の姉と交わる恋人を罰してはくれないのだろうか。そして私が片翼を想い出に昇華できたとき、彼女の望み通り心まで渡すのだろうか。
口で愛撫する場所が震えだし、彼女の声がうわずっていく。彼女がより快楽を受けられるよう、彼女が出すものを受け止められるよう、秘所を口で包み舌で絶頂を促した。
「ぁっ、はぁっ!ひっ、で、でちゃうっ……でますっ!んぁ、ああぁっ‼︎」
彼女が声をあげると同時に、口の中に尿とも違う彼女の悦楽が流れこむ。溢さぬよう飲み下していると、彼女は身体を震わせながらも私の頭に両手を置いて言葉をかけた。
「あっ、あ……うれしい、すき、すきです……もっと、一緒に……あなたと……」
今日も薄暗く静かな部屋の中、男女の交わる音と声だけが響く。彼女に応えるために分かちあう快楽と、彼女の抑えきれぬ私への情は、迷いと躊躇いに彷徨う私を感情渦巻く泥沼へと導いた。
終