私の前には、膝をつき身体を掻き抱くリーガルさんがいる。あるものに耐えながら、だけど抑えきれず、切ない吐息を漏らしながら私を見つめている。
「私は……」
「リーガルさん。あなたは今、身体が疼いてたまらなくなってますね」
「……」
「これから、あなたの身体の疼きを一緒に鎮めます。それと同時に、あなた自身の欲望を解放します」
「私の、欲望……?」
「あなたは、本当はいやらしいことや気持ちいいことが大好きな身体を持ってます」
「私は、淫らな身体を持っている……」
「そうです。そしてあなたは、いつだって愛する人や愛を受け止めた人の言いなりになりたい」
「私は、言いなりになりたい男……」
「さあ、欲望を解放しましょう。いやらしい身体と、言いなりになりたい心を、私に見せてください」
私の言葉にリーガルさんはうなずき、身体を抱きながら私の「指示」を待つ。どうして……いいえ、ここまでのことになるなんて。そう思いながら、私は彼にベッドに行くよう「指示」を出した。
話は一ヶ月前にさかのぼる。「ゆりかごから墓場まで」を宣伝文句のひとつにしているレザレノ・カンパニーでは、夜の生活をサポートする商品も販売している。私が主に商品開発の協力をしているレザレノ神秘ネットでも、営みをする人の雰囲気と運気を高めるグッズを開発することがある。そんな中で今開発しているのが、「どきどきミスト」という(わりと安直な)仮の名前がついたルームミストだ。
このミストを部屋に吹きかけておくと、名前の通り営むことにどきどきしながら励むことができて、ついでに健康運が上がる効果がある。健康運はともかく、どきどきする……言いかえればちょっとした催淫効果は適度に効き、強すぎず弱すぎず盛り上がれるとサンプルを試した女の人達の間では評価が高かった。ちなみに、開発部門の人達には実年齢を明かしたので、私も一人でするときに試して効果を実感している。
ただし、この商品には大きな問題があった。女の人が使うには問題ないけれど、男の人が使うと催淫効果が強く出るのだ。これは、男の人の体質が催淫効果を出す成分の影響を強く受けやすいことが原因だった。しかも大柄で、体脂肪が少なく筋肉が多いような体格の男の人には特に強く影響し、人によっては催眠効果すら出てしまうことがわかった。
もちろんこの問題は、開発の間に改良を重ねて解決されつつある。だけど私の手元にあったサンプルは改良前のもので、効果を強く受けすぎてしまう条件をすっかり忘れたまま、私はミストを使ってしまった。そして今、リーガルさんはミストの影響を強く受け、強烈な催淫効果と催眠効果を受けてしまっている。
(どうしよう……)
自分の身体を掻き抱き、膝をついて耐えているリーガルさんを見て、私はサンプルの問題を思い出して頭を抱えそうになった。だけど一方で、見たことのない表情を見せはじめる彼を前に、胸がどきどきする自分もいた。
私とリーガルさんの関係は、年月をかけて密かな「お付き合い」をする仲になっている。彼は戸惑いながらも私個人と向き合い続けて、アリシアへの想いにも向き合い続けて、そして私の想いを受け入れてくれた。惹かれ合う愛情ではないけれど、想い合って寄り添う愛情も間違いなく本物だと、私は思う。
ただ、このお付き合いの中にも悩みはあった。彼は私を想って寄り添うあまり、私を求めないのだ。身体のお付き合いもしているけれど、手つきはガラス細工を扱うように慎重で、私のしたいことには応えるけれど、彼自身が何をしたいかは言ってくれない。それが彼の優しさであり、誠実さであり、好きなところでもあるけれど、寂しさを感じたりもする。
そんな背景があって、私は彼の同意をもらってサンプルのミストを使った。このミストで彼もどきどきしてくれたら、すこしでも求めてくれたら……そんなささやかな願いは、彼に強烈な催淫効果と催眠効果をもたらした。こんなにも強く効いてしまったと悩みながら、頭の片隅で私はいけないことを考えてしまった。今なら催淫効果と催眠効果で彼に求めてもらえるのでは、と。
とろりととろけるような目をする彼なんて、知らなかった。身体が疼いて止まらなくなっている彼なんて、見たことがなかった。初めて見る彼の姿に、私は負けてしまった。彼がどんな風に求めるのか、知りたくなったのだ。
こうして、私はリーガルさんに催眠の暗示をかけた。言いなりになるという暗示の裏に、求めてほしいという願いもこめながら。
指示を受けたリーガルさんは、ベッドに横たわらず端に座った。低く色っぽい吐息を漏らし、ただ座るだけの彼に、私は問いかける。
「自分で服は脱げますか?」
「そ、それが……服が擦れると、身体が疼いてしまって、自力では」
「それなら私もお手伝いします。両腕を広げて、まずはスーツを脱ぎましょう」
私がやんわりと指示を出すと、彼は言われるがまま両腕を広げた。彼のスーツは一見すると堅く見えるけれど、実はそのまま闘える程度には動きやすい造りになっている。私は彼の首元を緩め、スーツのボタンを外し、彼の身につけているものを一枚一枚脱がせていった。
「は、ぁっ」
(服を脱ぐだけで、感じているなんて)
布が擦れる度に、小さく声をあげて身体を震わせる。上半身の肌着を脱いだ頃には、彼の肌は汗でびっしょりと濡れ、下半身のそれがズボン越しでもわかるほど主張を始めていた。
「服を脱いだだけなのに、勃起してしまいましたね」
「す、まない……」
「いいんです、リーガルさんの身体はすごく敏感ですから。窮屈なズボンと下着も脱ぎましょう」
「ん……」
下半身も脱ごうという言葉を、彼は指示だと感じたらしい。ズボンのベルトを自ら緩め、私が脱がしやすいようにベッドへ寝転がった。
「ぬ、脱げない、脱がせて、ほしい……」
「わかりました。脚をリラックスさせて、すこしだけ閉じてください」
彼の脚のラインに沿ったズボンが脱ぎやすいよう、控えめに両脚が閉じられる。ベルトを外し、ファスナーを下ろして、下着ごと一緒にズボンをゆっくりと引っ張る。足から抜けたズボンと下着をスーツと一緒に隣のベッドへ置いて、彼の方へと戻る。彼は既に勃ち上がったそれを触ろうとしていて、私はその手をぱっと掴んだ。
「さ、触りたい……射精してしまいたい……触れと、言ってほしい……」
「まだ射精したらだめです。忙しいあなたと夜を過ごすのは大変なんですから。めいいっぱい時間をかけて、欲望を解放していきましょう」
彼が下半身を触らないよう手を繋ぎながら、逞しい身体の上にまたがる。またがられる刺激にも身体を震わせる彼に、私は求めあうための指示を出した。
「リーガルさん、口を開けてください。こんな風に、あー……って」
「ぁー……」
とろけるような目のまま、彼は舌を差し出すように口を開ける。私は彼の身体の上に重なり、首に腕を回して、彼の舌を絡め取るようにキスを落とした。
「んっ……ふぅ、ぁ……」
「んんっ……!ん……っ」
舌を絡めたキスをして、息継ぎの度に角度をすこし変えて、また舌を絡める。今までしたことのなかったキスに彼は不器用や息継ぎをしながらも、私に懸命に応えようとする。まだぎこちないけれど、骨から伝わるようなキスの音と感覚に身体がぞくぞくして、気持ちが上がっていく。
「ん、はぁ……リーガルさん、とっても上手です。こういうキスも、好きなんですね」
「わ、私は……いやらしいキスも、好き……」
「もっといやらしく、気持ちよくなるために、大好きなキスをしてください」
視線はとろけたまま、彼はまた口を開けて私の舌を迎え入れる。だけど今度は、彼から舌を絡めてきた。
「んっ、んっ……!っぁ、ふぅ……んんっ」
「んむ、っん……はぁ、ふ……っ、んっ」
(あ……)
私のお尻に、熱いものが擦れる感触がする。私はまだ服を着ているのに、彼はキスをしながら勃ってしまったものをすりすりと押しつけるように腰を動かしている。息継ぎの時間が短く、絡まるキスの時間が増えていくのに合わせて、彼の腰の動きも速くなっていく。
「はぁ、んっ、いいれすよ……キスして、らひて、っ!きもちよく、んぁ、なってくらさい……」
「んんっ、んっ!ぁっ、はぁ、っ……う、ぁ、あっ……!」
「ん……っ!」
「んんんっ!」
彼がぎゅっと瞳を閉じたその瞬間、私の服に熱が降りかかる。彼が私を求めてキスをした、下半身を擦りつけた。そんな悦びを抱える私とは裏腹に、しばらくキスと絶頂の余韻に震え、唇が離れたときの彼が口に出したのは謝罪の言葉だった。
「プレセア、すまない……わ、私は、っ、お前の服を……っ」
「いいんです。あなたはいやらしい身体で大好きなキスをして、気持ちよくなった。仕方ないことですから、怒ったりしません」
「し、指示を……」
「えっ……?」
「指示を……。赦しでは足りない……っ、服を汚した私に、仕置きの指示を……私をお前の言いなりに……」
荒く熱っぽい呼吸を繰り返して、彼は催眠の暗示通り私の言いなりになろうとする。どんな指示で、どう求めてもらうか。私は彼にしてほしいことを頭に浮かべて、指示の言葉を組み立てていった。
自分からお仕置きを望んだ彼に出した指示は、床に膝立ちになることだった。両手首を背中に回してリボンできつく縛って、催淫効果で勃起が収まらない下半身を触れなくする。敏感な身体をなんとか支えるような体勢では、太ももを擦り合わせて刺激を与えることもできない。
「っ、はっ、はぁ……っ、プレセア、身体が、火照って……」
「まだ触りません。リーガルさんがお仕置きを欲しがったんですから」
「ん、ぐ……っ」
「最初のお仕置きです。そのまま私が服を脱ぐところを見ていてください。目を閉じたり、よそ見はだめです」
「私は、プレセアを見るだけ……」
彼のそれはとても泣き虫で、さっき射精したばかりなのに次の射精を求めて、先端から涙を絶えず流している。そんな欲しがりで泣き虫な身体をうっとりと見つめながら、私は自分の服に手をかける。まずはワンピースを脱いで、彼が汚した場所を見せつけた。
「キスだけで私のお尻にすりすりして、こんなに射精して、気持ちいいことが本当に大好きなんですね」
「ぅ……」
彼は私の言葉に身悶えながら、それでも指示通りに目を離さず耐えている。私はワンピースを床に落とすと、スパッツを脱いでずっと隠していた下着姿を披露した。
「今日のために買いました。気に入ってくれましたか?……気に入ってくれたみたいですね」
目を逸らそうとして、でも指示を守るために慌ててこちらへ向き直った表情を見て、彼が恥じらいながらも似合うと認めてくれたんだと確信した。
私が用意したのは、彼が好みそうな上品さを兼ね備えた純白のベビードールだ。裾まで広がる布はショーツが見える程度の透け感があるけれど、胸元はレースに覆われて透けないようになっている。レースをあしらったショーツにスリットは入っていないけれど、前から使いたかった仕掛けが付いている。私はベビードールを揺らしながら彼の目の前まで近づいて、そして裾を持ち上げた。
「横に紐があるのがわかりますか?このショーツ、横の紐を両方解くと脱げるようになってるみたいです」
「私は、どうすれば」
「手は使えません。もし脱がしたければ……口で頑張るしかないですね。どうしますか?」
腰に結ばれた紐を揺らしてみたり、わざとお尻を向けてみたり。彼を身体で知るまではやろうともしなかったことを、彼のためにやっている。彼はどんどん前屈みになって、どこからでも感じる強烈な快感と私の指示の間で必死に耐えようとしている。彼は求めてくれるのか、それを確かめるための指示を、私はささやいた。
「次のお仕置きです。私に何をしたいか、されたいか、包み隠さず言ってください。嘘やごまかしをしたら、あなたの身体には触りません」
「私がしたいこと、されたいこと……」
ぼうっとした瞳で、刺激で言葉にならない声を漏らしながら、彼は私を見つめる。そしておずおずと、懇願するように、彼は私に願いを打ち明けた。
「く、口で……紐を解きたい、解かせてほしい……。大切な場所への奉仕を、させられたい……」
(させられたい、って思ってたんだ)
その願いに、普段の彼がどれだけ理性と自制をもって私に接していたか、何を隠して私に応えていたかが見えた気がした。催眠状態になった彼が真っ先に求めたのは、自分の快楽ではなく私への奉仕だったのだ。自分から口を開けて求める彼に胸を高鳴らせて、私はベビードールの裾を持ち上げる。腰の紐を彼の口元に近づけると、軽く引っ張られる感触がした。
「ん……」
(リーガルさんが、口で下着を脱がしてる……)
器用に、丁寧に、紐の結び目が解かれる。蝶結びが崩れた側から、布がずれていく。紐から口を離して、もう一度開いた口を差し出す彼に、私はもう片方の紐を咥えさせた。
「っ、ふぅ、っ」
さっきよりも彼の息が荒く、紐を引くのに時間がかかっている。彼がはっきりと興奮している様子を感じて、私の身体も火照っていく。ようやくもう片方の紐も解けて、ショーツが床に落ちるのを見届けると、私は露わになった場所を彼の目の前に見せつけた。
「私のここも、欲しくて泣いています……。口でいっぱい、慰めてくださいね」
ミストの効果と彼との行為で濡れつつある場所を、彼の口に押しつける。すると、いつもは慎重に動く口がためらいなく性器を包んで、彼の分厚い舌が割れ目を舐め上げた。
「あっ……⁉︎あぁあっ!は、ぁっ、い、いつもより、っ!は、激しいですっ!」
「んく、っ……んぅ、っ」
「は、激しいのも、ぁっ!き、気持ちいいです……!ぁんっ、もっと、してください……!」
彼の頭を掴んで、下半身を押しつけながら腰を動かすのが止められない。いつもの心地いい前戯も好きだけど、いつもと違う動きで恥ずかしいところを舐められるのも気持ちいい。
(私に頭を掴まれて、こんな風にしたいって思っていたの……?)
いやらしい音を立てながら彼の舌先は敏感な場所を容赦なく弄り、そしてナカにまで挿入ってくる。舌がまるで指のように出し挿入れされて、浅いところを掻き回して、私の身体を追い詰めていく。彼が施す、徹底的に私を気持ちよくさせるための愛撫で、私は限界を迎えようとしていた。
「あっ、あっ!リーガルさんっ、わ、私っ!出ちゃうっ……あっ、でちゃいますっ!ぁ、あぅっ……ゃ、あぁぁっ!」
「んっ!ん……んくっ、んぐっ……」
「リーガルさん、私の、飲んで……あぁ……」
あまりの気持ちよさで、絶頂と一緒に出したものが「どっち」だったか私にはわからない。だけど視線を下ろせば、私の秘密の場所に口をつけ、喉を鳴らして出したものを飲んでいる彼がいた。
(こぼさずに飲んでくれている……ご褒美を、あげなきゃ……)
余韻が落ち着いて、最後の一滴までこぼさないようにしている彼の下半身に、そっと足を伸ばす。そして足先でぬるぬるに濡れた彼の先端を触った瞬間、目の前の大きな身体が大きく跳ねた。
「んんっ!」
私の足先の刺激ひとつで、彼は絶頂した。勢いよく飛び出した精液は私の足にかかり、どろどろにする。彼が全てを飲みきり、口を離したとき、私達の視線はとろけて絡み合った。
「っは、はぁ……っ、プレセア……」
「残さず飲んでくれた、お礼です……でも、リーガルさんのはまだ、足りないみたい」
足先で触れたものはまだ硬く、先端はまた欲しがるように涙を滲ませている。催淫効果で、彼の身体はまだまだ止まらないらしい。私は床に膝をつくと、彼を戒めていたリボンを解いてお仕置きから解放した。
「お仕置き終了です。だけど、いやらしい身体にはまだまだ足りないですよね」
「た、足りぬ、足りない……プレセア、指示を……私の淫らな身体を、使ってほしい」
「いっぱい使ってあげますから、リーガルさんもいっぱい射精して気持ちよくなってくださいね」
気持ちよくなって、という言葉も指示だと思って身体を震わせた彼の額にキスをする。ベビードールを脱ぎ、自力ではベッドに登るのも難しい彼の手助けをしながら、私は彼と一緒にベッドへと横たわった。
ベッドで向かい合う彼は、私のお腹にそれをゆっくりと擦りつけた。射精しないよう緩やかに動いているけれど、肝心のそれは先走る涙を私のお腹に塗り、くっつく肌と肌を濡らしていく。
「あっ、すごく、欲しがりさんですね……」
「欲しい、欲しい……っ!淫らな身体を、使ってほしい……!」
言いなりの状態で、それでも正直な欲を口に出し、彼の理性はがりがりと削られていく。まるでナカで動くみたいにゆっくり腰を動かして、震える手で私の肩にしがみつく彼に、いつもの慎重さはない。彼の姿は私の理性も削り、出せない欲をむき出しにしていく。早く、彼とまだ知らない快楽を分かち合いたい。
「こんなリーガルさん、初めてです……いつもより激しくて、いやらしくて。これが、私のために隠してくれていた姿ですよね?」
「わ、私はっ、淫らな男……言いなりになり、使われることに、悦ぶ男……。けれどそれでは、っ収まらぬ熱が、燻って……」
「包み隠さず教えてください。その熱を、欲望を」
ベッドの上で身体を動かし、彼の唇にキスをして、彼の言葉を待つ。教えてほしい、言葉にしてほしい。催淫と催眠で剥がれた彼の、激しさの理由を。
「私の手で、満たしたい……悦びで、乱れてほしい……ただ」
「ただ?」
「万が一でも……お前に苦痛をっ、与えることは、したくない……。それなのに……っ今は……!」
激しさの理由と隠されていた本心を言葉で聞いて、彼が身体のお付き合いで私を求めなかったことの意味に気づいた。彼にとって、私が快感を得ることこそが一番求めていたもので、私が傷つくことを何よりも恐れていた。だから私に「何をしたいか」を言ってくれなかった、自分から求めなかった。彼には、自分のためだけにしたいことが何もなかったのだ。強烈な催淫効果で、身体が抑えられなくなるまでは。
彼の首に腕を回し、仰向けに転がって覆い被さられる体勢になる。全身に感じる重さと密着する感触にぞくぞくしながら、彼に最後の指示をささやいた。
「リーガルさん……今夜は激しくしてください。私のこと、全身を使って気持ちよくして……ほしいです」
「……っ」
「大丈夫です、あなたが恐れてくれた苦しみも痛みもありません……だから何もかも、激しいものを私にください」
「ぅ、ぐ……っ!」
小さく低い呻きを漏らしてリーガルさんは身体を起こし、私の身体を抱えた。片腕で私の腰を抱いて浮かせ、もう片方の手で自分のものを握って狙いを定める。私は宙に浮いた両脚を大きく広げて、彼の先端と私の入り口が触れるように体勢を整えた。
「こ、ここに……リーガルさんの、熱くて大きいもの、挿入れてください……」
彼のものは先端から溢れた涙と射精の名残でぬるつき、私の入り口は彼の愛撫と愛液で十分に濡れている。彼の形を覚えた私の身体は、痛みもなく彼を受け入れるだろう。いつもは労るようにゆっくり挿入ってくるけど、今夜はどうなるんだろう。期待で胸がいっぱいになったそのとき、彼が挿入を始めた。
「プレセア……っ!」
「ぁ、あっ……ああっ⁉︎」
先端を包んだと思った瞬間、奥まで突き上げられて全身が強烈な刺激に跳ねた。彼は一番太いところまでゆっくりと挿入れて、そこから根元まで一気に挿入したのだ。そして一呼吸置くと身体を丸めて、私と目線を合わせた。
「あ、ぁ……」
「気に入った、だろうか」
「は、はぃ……いつもの、っ、優しいのも好きですけど……いきなり、挿入ってくるのもっ、ぁ、あん……」
彼の腕が私の肩を抱え、私は両腕を彼の首に回し、両脚で彼の背中に絡みつく。間近で見る彼の切羽詰まった表情に、奥をぐっと押す腰使いに、全身が悦びに震える。
(こ、こんなの、初めて……!これが、リーガルさんが隠していた激しさ……)
ゆっくり腰を引き、ずるずると大きい熱がナカから抜けていく。先端が入り口の近くで引っかかって、そして……
「ひゃあんっ!」
一気に奥を突かれて、ゆっくり抜いたと思ったらまた一気に奥を突かれる。その緩急のある刺激と圧倒的な質量に、甘い声が出てしまう。
「んん、ああっ!すごいっ、すごいですっ!」
突かれる度に彼の熱い吐息の音が聞こえて、とろけた瞳の中に鈍い光が見える。彼の頬から落ちた汗の味を感じ、ルームミストの香りに混じる彼のかすかな香水と身体の……男の人の匂いを感じる。感覚という感覚で彼を感じ取って、満たされていく。逃げ場のない快感に身悶えていると、ぐっと腰を押しつけられた。
「ああぁっ……!」
「っ、ふぅ、っ……」
硬くて熱いもので奥を押さえつけながら、彼は呼吸を整えようとする。身体は興奮に震えているのに、私を抱える力は強くて温かい。次はどうされてしまうの、どうやって気持ちよくなってしまうの。そう思って彼を見つめると、低く腰まで響くような声でささやかれた。
「つらくは、ないか?」
「つらくないです、すごく……気持ちよくて。あの、もっと……激しくして、あなたでいっぱいにしてほしい、です」
「私で、いっぱいに……」
その言葉と一緒に、私を抱える力が強まる。私を夢中にさせる熱が、さっきよりもゆっくりと離れていく。半分くらい抜かれて、数秒くらい動きを止めて、とうとう私達は……初めての「本気の営み」を始めた。
「あっ、ああっ!ぁっ!はぁっ!うあぁっ!」
「っ、はぁ、は、っ」
肌と肌がぶつかる音と体液がかき混ざる音を響かせて、彼は激しく腰を叩きつける。動きは速く力強いのに、私の気持ちいい場所を的確に擦り、突き上げる。私を知った彼の動きに身体が悦び、挿入ってくる熱を締めつけた。
「ぐっ!く、ふう、っ」
「あっ!あっ!んっ!はっ、あぁ!リーガルさ、ああっ!はぁっ、んあぁ……」
彼の動きに合わせて声をあげ、より深く挿入れてもらえるよう腰を動かす中で、私は舌を差し出すように口を開ける。もっとほしい、分かち合いたい。その願いに応えるように、彼は唇を重ねて舌を絡ませた。
「んんっ!んっ!はぁ……んんっ!」
「ん、ぅ……はぁ、っ」
「んん、ぁあっ!きもひぃっ!れす、っ!んんんっ!」
お腹の中も、口の中も、彼で満たされていく。彼の手で、身体が昇りつめていく。与えられる快感に乱れ、全身で彼に応えているうちに、彼も絶頂に近づくように動きを変えた。
「ん、んっ!んっ!は、あっ!んん!ぁっ……!」
「っ……プレ、セア、限界が……っ!」
「いいっ、いいれすっ、あっ!らひて、っ!らひてっ、くらさい……っ!わたしの、なか、にぃっ!」
「……っ!」
私の奥を徹底的に突く激しさに、優しいけどねっとり絡むキスに、私の視界が涙でとろけていく。いつもと違う快感で、初めての快感で私達は限界を迎えようとしている。彼が全体重をかけて私の奥を押して、私が隙間なくしがみつくように彼を締めつけたそのとき、とうとう待ち望んだ瞬間が訪れた。
「んっ、んっ!んんんんっ‼︎」
「ん、ぅ……っ‼︎」
キスと絶頂を同時に味わう中で、ドクドクと脈打つ塊が私のナカに熱を注いでいく。私のお腹は、注がれた精を飲むように受け止める。余韻を味わい尽くすように強く抱き合い、射精の勢いが落ち着いた頃、私達は唇を離した。
「ぷはっ……ん、ぁ……いっぱい、射精ましたね」
「はぁ、はぁ……無理は、していないか……?私の、身体で……気持ちよく、なれただろうか」
「すごく、よかったです……いつもの優しいプレイも、好きですけど……激しいのも、好きです」
唇で軽く触れるキスをして、リーガルさんは私のナカから熱を抜いて離れていく。大きい栓のなくなった入り口からは、注がれた熱がとろりと溢れた。
「私、まだ……気持ちいい感覚が、抜けなくて……あの」
「プレセア、無理を承知で、言うのだが……身体がまだ、収まらないのだ……もしお前が、望むなら」
「私も、同じことを……言いたかったんです。もう一回……激しいの、しませんか……?」
彼の熱を溢れさせながら、私は彼に向かってナカへの入り口を拡げて見せつける。彼は射精の直後でも勃ったままのそこを隠さず、私を労るように抱きしめた。
「その、プレセア……身体は大丈夫か?」
「はい、すこし腰は重いですけど……リーガルさんは」
「私も腰の重さ以外は問題ない。自分で言うのも憚られるが、身体だけは丈夫にできているらしい。それより……」
「ベッドが……すごいことになってしまいました」
迎えた朝の柔らかな日差しとは対照的に、私達が朝を迎えたベッドはひどく汚れて悲惨な有様だった。
結局あの後も興奮はなかなか冷めなくて、私達は体力切れで寝落ちするほど激しい夜を過ごした。お互いの体液まみれの身体に奉仕しあってみたり、今までしたことのない体勢でひとつになってみたり、恥ずかしいことを見せあってみたり。催淫効果でいつもより精力が増して敏感になったふたつの身体と、催眠効果で引き出した本気の行為にブレーキは効かなくて、ベッドもそんな私達の体液にまみれていた。リーガルさんも催眠効果を受けていたとはいえ何をしたかはそれなりに覚えているらしく、私の隣で頭を抱えていた。
「いくらミストの効果が効きすぎたとはいえ、お前に乱暴な真似を……」
「乱暴じゃないです。激しくて気持ちよかったです……リーガルさんだって、あんなにたくさん射精していたのに」
「いや……その、それはそうだが。できればもっと、大切に触れたかったのだがな……」
あんなに激しい夜を過ごして、それでも自制をかけて申し訳ない顔をする彼に、私も本音を伝えることにした。シャワーも浴びないまま眠った身体を寄せ合って、彼の腕に抱かれながら言葉を紡いだ。
「私の身体を大切にしてくれるのは嬉しいです。いつもの行為はすごく気持ちよくて、リーガルさんと夜を過ごすのが好きになっていきました」
「だけど、時々思うことがありました。私だけが大切にされすぎるのは、求めてもらえないのは寂しい。あなたが私に応えてくれるみたいに、私もあなたに応えられたら、って」
「だから今回、激しくしてもらえて……本当に嬉しかったんです。求められない理由も、本当は激しくなれる理由も知ることができて、身体も心も満たされたんです」
「だから、そんな顔しないでください。優しいのも、激しいのも、私……どっちもしたいです」
私の言葉は、本音は届いているはず。あとは彼がどういう選択をするか待つだけ。どんな選択でも受け入れたい、そう思いながら頭を預けると、彼は私にだけ聞こえるような声で答えを返した。
「お前の身体に、決して苦痛や負担はかけない。苦痛や負担を感じたとき、決して私に隠さない。それさえ約束するなら……私はお前の望みに、応えたい」
「はい、ありがとうございます。……あの、リーガルさんも、求めていいんですよ。しつこくしたいとか、激しくしたいとか」
「私から求めるのは苦手だ、すまないな」
「積極的なリーガルさん、見たいですけど」
「仕方なかろう。お前に応えることこそが私が求めていることであり、悦びの素だ」
そう言ってそっぽを向く顔に両手を添えて、軽くキスをする。それからお風呂場に連れて行ってもらうよう「お願い」をして、私は彼に抱きかかえられながらシャワーを浴びに行った。
こうして私達は初めての経験を分かち合い、身体のお付き合いを深めることができた。改良を重ねた「どきどきミスト」はわりと安直なネーミングのまま商品化されて、レザレノ神秘ネットでも密かな人気商品になりつつある。実際に私達も、ユーザーとしてそれなりに使っている。
ただ、私達の用途は適度な催淫効果ではない。私達がミストを使う目的は、私から合図を送ることだ。今夜もミストを部屋に吹きかけ、私は夜の支度を始めた。
「……たしかに、お前の望みに応えたいとは言った。それでも、私にも恥じることや躊躇することくらいはあるのだが」
「でも、選んできてくれましたね。すごく素敵なデザインで……嬉しいです」
彼も私も、もう下着姿になっている。そして私が着けている下着は、彼に選んでもらったものだ。純白のなめらかな生地に、複雑なレースと刺繍がふんだんにあしらわれたブラジャーとショーツは、私の身体にぴったりと合っている。私に似合う下着を選んでほしい、そんな私の頼みを恥ずかしがりながらも真剣に考えてくれた。その誠実さを身につけられるのが本当に嬉しくて、愛おしくて、どきどきする。
「本当にありがとうございます。お支払いは帰る前にします」
「結構だ。女性の下着の値段がわからず、お前の言っていた予算を大幅に超えてしまった。私からの贈り物にしておいてほしい」
「そうですか……それなら、リーガルさんのためだけに、大切に着けますね」
彼の選んだ下着を着けて、ゆっくりと彼の大きな身体をベッドへ押し倒す。そして彼の上に覆いかぶさるように、身体を横たえた。
「今夜のご希望は?」
「一回目はとても激しく、二回目からは……とびきり優しくしてほしいです」
「承知した。今夜もお前を満たし、乱してみせよう」
そう言って、私達は夜の始まりを告げるキスをする。ルームミストが香る日は、私達が激しい営みをする日。そんな合図に気分を高めた私達は、既に下着を濡らしはじめていた。
終