作中のダンスシーンは映画「シ〇デレラ」を参考にしています。
煌々と明かりが灯された、壮麗なダンドラシル城の大広間。今宵は舞踏会で、美しく着飾った大勢の人々が集っていた。皆がパートナーと話したりグラスを傾けたりと、思い思いに過ごしている。
そんな中で突如、人々が騒めいた。広間の大扉からイレブン王子が現れたからだ。王子の隣には彼の差し出した腕にそっと手を掛けた青い髪の美しい青年。皆一目で青年が王子のフィアンセだとわかった。波が引くように、人混みが分かれて彼らに道を空ける。二人はゆっくりと中央へと歩みを進めた。
赤をアクセントに金色で縁取られた黒いコートに紫色のサッシュ、赤のベスト、白いアスコットタイを身に着けたカミュが深緑のマントを靡かせたイレブンとともに広間の中央に足を踏み入れる。二人が向かい合うと、周囲から感嘆の溜息が漏れた。
カミュが軽く膝を折ってお辞儀する。応えてイレブンが腰を折って一礼すると、右手を彼の腰に廻し、左手で彼の右手を恭しく掬い上げた。カミュが自身の左手をイレブンの肩に乗せたとき、それが始まりの合図であるかのように優美な旋律が奏でられ始めた。見つめ合い、微笑み合って、2、3度左右に揺れた後、二人でステップを踏みながら踊り出す。
イレブンが腰を抱いていた手を放し、繋いでいた手を頭上へと上げてカミュを一回転させた。次いで手を繋いだまま彼を優しく横へと放り、引っ張って引き寄せ、手を入れ替えて放り、引き寄せる。何度か繰り返した後、カミュの右手を自身の右手で取り、左手で腰を抱いて横並びになって回る。
そして再び最初のように向かい合い、時折繋いだ手を頭上に挙げてカミュをくるりと回転させたり、お互い離れて一回転してから再び向かい合ったり、中央の空いたスペースを滑るように動きながら踊る。
最中、イレブンがカミュの腰に廻した腕で彼を軽々持ち上げて半回転して下ろすと周囲からどよめきが起こった。それからまた向かい合って踊った後、今度は両手でカミュの腰を掴んでリフトしたとき、周囲が再び騒めく。イレブンは持ち上げたカミュを高く掲げて一回転すると、優しくすとん、と彼を床へと降ろした。二人は高揚した貌で一瞬、見つめ合ってすぐに適切な距離を取って踊り出す。
クライマックスでイレブンはカミュの腰と繋いだ手で力強く支え、彼をぐっと後ろへ倒してから引き上げて元のように立たせる。そして踊っている間中ほぼずっと繋いでいた右手を放し、胸に当てて一礼した。カミュも膝を軽く折って一礼する。
広間は歓声と鳴り響く拍手に包まれた。
「…あー、疲れたぜ。」
イレブンの自室に戻ってきたカミュはどさりとベッドに腰を下ろした。皆の前で踊った後、付き合いが悪いと思われない程度に会場の人々に混じって踊り続けたのだが、さすがに疲れてしまった。
「とても素敵だったよ、カミュ。みんな君を見てた。」
「俺じゃなくてお前を見てたんじゃねーの?この服ありがとな。すげー気に入ったぜ。」
「気に入ってもらえてよかった。君にすごくよく似合ってる。」
イレブンはカミュの隣に腰を下ろした。
「…君のお披露目が無事に終わってよかった。」
「上出来だっただろ?」
カミュがふ、と笑う。イレブンは微笑み返してカミュの手に手を重ねた。
「うん。最高だったよ。愛しい人。」
二人は見つめ合うと、ごく自然に唇を重ねた。
「……」
イレブンは目を開けた。見慣れたベッドの天蓋が目に入った。隣には、誰もいない。
「…夢?カミュ、君は今どこにいるの…?」
イレブンが起き上がり、顔を覆う。カミュがダンドラシル城を去って数か月が過ぎていた。