その日イレブン王子が公務を終えて自室に戻ると、懐かしい顔が待っていた。
「よォ、王子サマ。久しぶりだな。」
「カ…カミュ!?」
イレブンが驚き、駆け寄ってカミュをきつく抱き締める。
「カミュ…!」
「おいおい、熱烈な歓迎だな?」
カミュが笑って優しい手付きで王子を押し戻す。
「喜んでくれ、エリックの行方がわかった。」
「エリックの?」
「ああ、これを見てくれ。」
カミュは懐から掌に乗るほどのオーブを取り出した。カミュがオーブの持ち主――マリーナ女王から教わったワードを呟くとオーブの中に靄が渦巻き、靄が晴れると薄暗い船倉らしき場所が映し出される。
折しもそこで食べ物を漁っているフードを被った小柄な人物を5人の男女が見つけたところだった。
「…あの紫のコートの人、僕にそっくりだ。それにあの老人と女性…」
「あいつはイレブン。ロトゼタシアの勇者だ。」
「あっ…!」
オーブの中の小柄な男が驚いて振り向いた拍子にフードが脱げ、彼の露わになった顔を見てイレブンが思わず小さく叫んだ。
「エリック!?」
それはカミュに瓜二つの青年だった。映像の続きからすると、どうやら彼は勇者一行についていくことになったらしい。映像はそこで終わった。
「どうだスゲエだろ?このオーブ、マリーナ女王…って海底王国ノウティカの女王サマな?――にもらったんだ。エリックに関する情報を送ってくれることになったんだぜ?…ただ異世界の情報だから、大樹に導かれた勇者を追跡してしか映像を見られないらしい。」
そう言ってカミュはオーブを懐にしまい込んだ。
「今のところこれだけだが…それでも随分な進展だろ?」
カミュは得意げにニッと笑った。イレブンもそれに微笑み返したが、すぐに切なげに貌を歪め再びカミュを抱き締めた。
「会いたかった…どんなに心配したか…」
「おいおい…俺がそう簡単にくたばるワケねえだろ?」
王子の背をポンポンと安心させるように叩いたカミュは、突然の浮遊感と、次に背を柔らかいものに叩きつけられる感覚に目を見開いた。カミュは王子のベッドに組み敷かれていた。
「…な…」
「寂しかった。」
「ま…待て待て待て!」
口づけようとしてきた王子を寸でのところで押し戻す。
「今の見ただろ?エリックはロトゼタシアにいるんだ。俺はカミュだ。」
「? そんなことわかってるよ?君はカミュで、僕の婚約者だ。」
「え…ちょ、ちょっと待――」
「もう!少し黙って?」
「んう!?んんーー!」
手首をベッドに抑え付けられ、咬みつくように唇を塞がれる。カミュは抵抗しようとしたが、体格でも力でも負けているイレブン相手ではどうにもならなかった。
「はぁっ…」
漸く口づけが終わり、息を乱しつつ、二人は間近で見つめ合った。
「これからは、ずっと僕の傍に居て?」
「…まだエリックのこと、調べてる途中だぜ?」
「無事なのがわかったんだ。これ以上調べる必要なんてないだろ?というか最初から調べる必要なんてなかった。彼は僕の幼馴染で初恋の人だけど、もう過去の人だ。僕の求愛を受けて婚約したのは紛れもなくカミュ、君なんだから。」
――…………おい、ちょっと待てよ。
ここに至って、カミュは自身がひどい思い違いをしていたことに気づいた。カミュはイレブンが愛しているのはエリックで、カミュをエリックだと思い込んでいたからこそ、求愛したのだと思っていた。だが王子は今、目の前にいるのがカミュで自身の婚約者だと明言した。
――…ってことは、コイツは”俺”と結婚するつもりなのか?
「…カミュ。」
衣服に手を掛けられ、カミュははっと我に返った。慌ててイレブンの手を掴み引き離す。
「ま、待てよ!」
「?」
イレブンが不思議そうに首を傾げた。それは、そうだ。数か月ぶりに婚約者が帰ってきたというのに、拒まれるとは思わないだろう。カミュがどう言ったらいいのか焦る頭で考えている隙に、首筋に顔を埋めたイレブンの唇が素肌に触れる感触に意識を引き戻された。慌ててイレブンを力いっぱい押し戻す。
「イレブン!ちょっと待ってくれ!」
「もう、何なの?」
イレブンが年相応の少年のような膨れっ面をする。
「あ…その、俺、旅から戻ったばかりで埃っぽいから、さ。」
「別にそんなの気にしないけど。」
再びカミュに触れようとしたイレブンはまたもや押し戻された。
「頼むから、先に風呂に入らせてくれ!」
――とにかく、今は逃げるしかねえ。確か浴室には窓があったはず。そこから――
「…もう。わかったよ。じゃあ、一緒に入ろ?」
「…………へ?」
「僕もまだ入ってないし。君がそこまで気にするなら、お風呂に入ろっか?」
「だ…駄目だ!」
カミュはムキになって言った。
「どうして?」
「そ…そんなの、は、恥ずかしいだろ?」
――コイツについてこられたんじゃあ、逃げられねえ。
「今更何を言ってるの?お互いの裸なんて何度も見てるでしょ?」
「う…そりゃそうだけどよ。」
「じゃ、いいでしょ?」
「…けどよ、」
「もう!ごちゃごちゃ言ってないで、ほら!」
有無を言わせずにイレブンはカミュの腕を掴み、浴室の方へと引っ張っていった。
――仕方ねえ。コトが済んだ後にコイツが眠るのを待って逃げるしかねえか。
カミュは心の中で溜息を吐いた。
*
服を脱いで浴室に入った二人は早速言い合いになった。
「何で僕に洗わせてくれないの!?」
「自分の身体くらい自分で洗える!」
前のように身体を洗ってあげるつもりでいたイレブンはカミュに激しく拒絶され、ワナワナと震えた。
「一度は洗わせてくれたじゃないか?」
「あのときは疲れ果てていて気力がなかっただけだ。そもそも俺は誰かと一緒に風呂に入りたいとは思わねえ。」
「……」
拳を固く握り締めて立ち尽くすイレブンを残し、棚にあったスポンジを掴むとカミュは(恐らく王子が入浴する時間を見計らって侍女が用意しているに違いない)白い雲のような泡が溢れる、床面の窪みに造られた円形の広いバスタブに一人でさっさと入り、温い湯の中で身体を擦り始めた――
「うわっ!?」
――のだが、突然何かに両手首を掴まれ、お湯から引き上げられる。自身の手首を見ると、緑色の蔦…もとい、触手が絡みついていた。
「なん…!?」
触手は両腕を上に引っ張ってカミュを立たせると彼の身体をイレブンの方へと向けさせ、触手の丸い先端を彼の身体に伸ばした。白い泡が纏わりついているカミュの肢体を太い触手がツルツルと滑るように擦り、首、腋、脇腹、臍を擽り出し、胸にぽつりと見え隠れする茶色の乳首も正確に探り当て、クニクニと弄った。
「やっ…ああん!ふふ…あん!ああ…ん、ふふ…やぁっ…」
「フン!君の弱いところはぜ~んぶわかっているんだから。」
目の前で繰り広げられる擽りショーを見ながら、イレブンが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「イ…レブン!あんっ!は…早くコレ、どうにか、んっ、…してくれ!」
「ダメ。身体を洗わせてくれない君が悪い。」
「あん、ふふ…あ、…っ、洗わ…あ…ん、洗わせる、からっ…やっ…」
「…何ヵ月も僕を放っておいたこと、もう少し反省して?」
「そ…ん…あっ、ああ、ん、ふふ…や…ん、あっ…ん!」
イレブンは腕を組んで暫くの間カミュが身悶える様を眺めていたが。
「…そうだ、こんなのはどう?」
イレブンが何かを呟くと、身体を弄っていた触手が一旦離れ、カミュは両腕を吊られて高く持ち上げられた。そして暗緑色の触手スライムの真上へと運ばれる。
「!?」
カミュが見下ろすとぐぱぁ、とスライムの上部がまるで口のように大きく開き、内部の表面には先端の丸い、まるで短い触手のような太い突起がびっしりと生えていて、ウネウネと蠢いていた。
「なん…ひっ」
恐怖に青褪め、まるで自身が二輪車にでも乗っていて、ペダルを漕いで逃げるようとするかのように脚を動かしたが、そんな足掻きも空しく両腕を吊るされたカミュが中に下ろされる。
「あ…ああああーー!!」
カミュが首の半分までスライムの”口”の中に沈むと“口”が閉じて隙間なく収縮し、彼を包み込んで身体中をその柔らかい突起で弄り始めた。
「ひゃ…」
もはや彼の弱点は学習済み、とでも言いたげにスライムは腋の窪みや乳首、脇腹、臍、性器へは特に巧みな愛撫をそのヌメヌメとした柔突起で施してくる。
「や…あ、…ん、ああ…ん、や…んっ、も…イ、レ、ブン、…やめ、させ…あ…ん…っ」
気持ち悪くて堪らないのにカミュの全身にゾクゾクと快感が広がる。
「僕が洗い終える間、そこでちゃんと反省してね?」
イレブンはカミュの懇願など聞く気もなく平然と身体を洗い始めた。
「そん、な、…たの、む、イレ、ブン、…あんっ!」
カミュはイレブンに尚も嘆願しようとしたが、柔突起に鈴口を強く擦られて悲鳴を上げ仰け反った。
「あ…あ…」
身体中と、とりわけ性器への直接的な愛撫でカミュが早くもカウパーを溢れさせる。急速に溜まり始める下腹の熱にカミュはいっそイかせてくれることを期待したが、達するには愛撫の摩擦が足りず、もどかしい中途半端な刺激にただ喘ぎ続けるしかなかった。そして…
「うわ、ドロドロ…」
イレブンが漸く身体と髪を洗い終え、触手スライムの柔突起の肉壺から引き上げられた、浴室の床にぐったりとして横たわる、息も絶え絶えなカミュを見て、言った。彼はスライムの分泌液と自身の先走りでぐちょぐちょだった。
「安心して?僕が君をキレイに洗ってあげるから。」
「あ…?」
手首に絡みついた触手が自身を吊るのを感じてカミュが怠そうに目を開けると、中空を浴槽の上まで移動して湯の中に下ろされた。胸まで浸かった湯面には夏の白い雲のような泡が浮かんでいる。両腕は水平に拘束されたままだ。ぱしゃ、と水音がして、イレブンが自身の背後に腰を下ろしたのを感じた。イレブンは先ほどカミュが落として湯に浮いていたスポンジと自分のスポンジを左右の手に持ち、カミュの身体を洗い始めた。項、頸、肩、背中、腰を往復した後、脇のラインへ。
「は…っ…」
脇腹から腋を優しく擦られるとカミュは擽ったさに震え、喘かな息を吐いた。イレブンが悪戯に繰り返しスポンジを往復させる度にカミュの身体がピク、と反応する。イレブンはクスクス笑い、次にカミュの腕を片方ずつ洗ってから、ほとんど密着するほど近づいて後ろから彼の前身へとスポンジを滑らせた。胸元から胸へと擦っていき、そこでつんと存在を主張する小さな粒を探り当てる。
「あ…」
乳首をスポンジで優しく擦られて艶めいた吐息を零したカミュの反応に気を良くしたイレブンがそこを指先で掻く。
「ん…っ」
「…硬くなってる。」
「や…めろ、あっ…ん…」
イレブンは逃れようと身を捩るカミュに軽く笑い、追いかけてそのコリコリとした感触を楽しむ。
「イ…レブン、いい加減に…ぁ…っ」
「…カミュ。外にいた間、浮気してないよね?」
「あ、当たり前だろ!…んっ…」
イレブンの呟きに咄嗟に答えたものの、ヘンドリック卿のことがカミュの頭に浮かんだ。
――別れ際のアレは違う、よな?口に触れたわけじゃねえし…
カミュは自分の中で結論付けたものの、ハープを手に入れるためにされたことやその後のことの方がよほど問題で、イレブンが知れば大喧嘩になるのは必至だったが、幸いにも彼がそれを話すことはなかった。
イレブンはカミュの答えに満足そうにふふ、と笑い、再びスポンジを手に持つと下へと滑らせる。
「あっ…」
「お臍は念入りに洗わなきゃね。」
腹を擦られる擽ったさには何とか耐えたものの、臍を指先で直に掻かれてカミュが思わず声を上げ、そして…
「あ…そんなとこ、まで…」
臍を洗い終えるとイレブンの手が下腹に伸び、手で直に芯を持ち硬くなっていたカミュ自身をやんわりと掴んだ。
「カミュ、スライムに感じさせられちゃったの?」
「あ…あ…」
後ろから耳元で囁かれ、掌全体で幹を、親指の腹で先端を洗われて、疼くような快楽にカミュが甘く喘ぐ。
「あ…も…」
次に双球、奥まった処を洗われてカミュは羞恥でどうにかなりそうになりながらも快楽に震えた。
イレブンは丁寧にそこを洗い終えるとカミュの前に移動し、彼の脚を洗い始めた。無駄な肉のない太腿から足先へとスポンジを滑らせていく。足裏や足指の間を擦ったとき、カミュは擽ったそうに軽い笑い声を立てた。
両脚を洗い終えたとき明らかにこれで終わった、とばかりに安堵したカミュの顔を見て、イレブンの胸に彼に会えなかった時間の寂しさと腹立たしさが急に込み上げてきた。だから。もう少し悪戯することにした。
「やっ…!」
イレブンがカミュの腋を指先で掻くと彼の身体が面白いように撥ねた。
「ふふ、すべすべ。」
「ああ…ん、ふふ…あ…ん、ああ…ん…」
擽り続けると苦しそうにも見える笑顔を浮かべながら、カミュが身を捩る。イレブンは暫くの間、腋だけでなく首に乳首、脇腹、臍も擽ってカミュの反応を堪能すると、漸く触手スライムにカミュの拘束を解かせ、元の世界へと還した。そして自身を支えるものがなくなって湯の中に頽れそうになった彼を抱き留めて立ち上がり、支えながら浴槽から出て、壁の高い位置にある樋から湯が流れ落ちている洗い場へと導く。そこでカミュの頭を洗ってやり、泡風呂でついた泡とともに洗い流すと、ともに浴室を出た。
*
――くそっ!風呂でかなりの体力を消耗しちまった。コトが済んだ後、眠っちまわないように気をつけねえと…
数か月間、快楽とは無縁だったカミュはイレブンにベッドに押し倒されながら、疲労した頭で思った。……の、だが。彼の脱出計画は次の瞬間、頓挫する。
ふいに、イレブンの口が何かを呟くのが見えた。
「!?」
現れたのは以前見た、使い魔の”手”だった。瞬く間に手首を掴まれ、ベッドの上で十字に拘束される。カミュは怪訝な顔で自身に覆い被さるイレブンを見上げた。
「何の真似だよ?」
「…もう待つのは嫌なんだ。」
イレブンは痛みを堪えるように微笑むと、またカミュの知らない言語で何かを呟き、両手を順に自身の唇に触れさせる。王子の唇と手が一瞬淡く輝いた。その光景にカミュはゾッとするような記憶を思い出す。
「お、おい、まさか…!」
「うん。”お呪い”。」
「よ…止せ!」
カミュは焦って、戒めを外そうと腕に力を籠めたが、使い魔の”手”はびくともしなかった。王子の残酷な声が夜のとばりに響く。
「もう二度と君を離さない。たっぷりと快楽を刻み込んであげる。」
「あ…ああ…ん…あ…や……」
常夜灯が淡く照らす、静かな寝室に衣擦れの音と艶を帯びた息遣い、喘ぎ声が響く。食卓に出された熱いスープがすっかり冷めてしまうほどの時間をイレブンが前戯に費やす頃には、カミュは完全に快楽に溶かされていた。
「あ…ん…」
イレブンが色づいた乳首を指先で優しく掻くと、カミュが目を閉じたままと身体を震わせ彼の勃ち上がった先端からとぷ、と透明な先走りが溢れた。片方は指で掻き続けながら、もう一つの乳首を口に含んで優しく吸い、舌先で擽る。
「あ…ん…あ…ん、…あ…ん… …」
疼くような快感が小さな胸の粒から広がり、カミュが嫌がるように首を振る。そしてイレブンは空いた手をカミュ自身に伸ばした。
「あ…」
カミュがぴく、と震え、腰を蠢かせる。イレブンが彼の最も弱い三点に優しい愛撫を続けるうちにがくりとカミュの頭から力が抜けたのがわかった。滑らかな頬に濃い影を落とす睫毛は僅かに水を含んでいた。
「お寝み、最愛の人…」
イレブンは愛し気にカミュの青い髪を梳き、蟀谷にそっと口づけた。