夜になり、公務が終わり自室に戻って来たイレブンをカミュは笑顔で迎えた。イレブンが微笑んで腰を引き寄せキスをするとカミュも王子の髪や頬を撫でながらキスに応えた。
「ん…ん…」
舌を絡め、互いの咥内を探り合う最中、イレブンが掌で脇のラインを辿り、親指で薄いシャツ越しに乳首を擦ると、カミュはふる、と身を震わせた。次いで腋を指先で撫でられてカミュは思わずイレブンの肩を押した。
「ばか、悪戯すんな。」
カミュが頬を染め目を逸らすとイレブンがクスクス笑い、
「昼間の君があんまり可愛かったからさ。」
と悪びれずに言い、顔を寄せ耳元で囁いた。
「一緒にお風呂、入ろっか?」
「…ああ。洗いっこ、しようぜ?」
カミュはにやりと笑ってイレブンの耳元に囁いた。
侍女が王子の帰る時間を見計らって用意していた、ソープの白い泡が雲のように溢れる温めの湯船に入ると、カミュはイレブンに後ろから抱き締められた。そのまま共に腰を下ろされる。
「…おい、これじゃお前のこと洗えねえだろ?」
横をを向いたカミュの顎を捉え、イレブンが身を乗り出して唇を塞ぐ。
「ん…」
「僕はいいよ。」
口づけを解くとイレブンは言い、ソープをたっぷりつけたスポンジでカミュの身体を洗っていく。スポンジが敏感な処を擦る度にカミュは喘かな声を洩らして身を震わせた。洗い終えると、イレブンは湯から出て棚からバスタオルと小瓶を持って戻って来た。そしてバスタブの縁の床にタオルを敷いて腰を下ろす。
「カミュ。こちらに来て、僕の方を向いて膝に座って?」
カミュは大人しく従い、イレブンの膝に彼と向かい合って座り、首に緩く腕を廻す。イレブンは小瓶の液体を利き手の指に垂らすともう一方の手でカミュの細い腰を抱き、彼の尻の奥まった処に伸ばした。
「…あっ…」
イレブンの中指がそこを浅く掻き、縁をなぞってから徐々に奥まで入ってきて、探るように動き出す。カミュは艶めいた喘ぎを零し、イレブンの首に廻す腕に力を籠めた。その最中、指先が腹側の一点を掠めたとき、カミュは痺れるような快楽にくぐもった呻き声を上げ、背を撓らせた。
「あ…そこ…、ヘン、だ…」
イレブンはカミュの腰を抱く腕に力を籠め、そこを繰り返し優しく撫でる。後腔を侵す指は一本、二本と増えていき、最終的には三本の指で愛撫される。
「あ…っ…」
イレブンの愛撫が続けられるうちに、勃ち上がった自身の熱を解放したくて堪らなくなり、カミュは身体を震わせながら片手で自身を慰めだした。だが。
「僕がイかせてあげる。君はしっかり僕に捕まって。」
イレブンが後腔を弄る手はそのままに、もう一方の手をカミュの手に手を重ね促すと彼は素直に自身のモノから手を放しイレブンに両腕でしっかりと抱きついた。すぐにイレブンの手が緩急をつけてソレを扱き出し……
「あ…っ…、あ…あ……くっ…!」
絶頂はほどなくして来て、二人の腹の間に白濁が弾けた。その頃には三本の指も難なく出し入れできるようになっていたため、漸くイレブンはそこから指を抜き去る。
「…もういいかな。さ、洗い流そうか?」
イレブンが肩で息をするカミュに囁いた。
*
風呂から出たときには、カミュは一度イッたことや局部を執拗に弄られたことでくったりと疲れていた。脱衣室でのろのろと身体と頭を拭いた後、裸のままイレブンに横抱きにされて抵抗もせずに寝室へと運ばれベッドの上に下ろされる。すぐにイレブンが覆い被さって来て、何度もカミュの上唇と下唇を食み、カミュはイレブンの髪を撫でながらキスを受け入れた。
――コイツを愛しているフリをするんだ。……魔術を解いてもいいと思うほどの、信頼を得られるまで。
カミュが自身に言い聞かせ、自ら口を開いてイレブンを招き入れて互いの舌を絡め、擦り合わせる。カミュは怠い腕を持ち上げてイレブンの首に廻し、彼との口づけを深めた。信頼を得るためにはそれなりの時間が必要だと言うことはカミュも理解しており、暫くの間は元の世界のことを考えないことにする。そうと決まればイレブンに身を任せ、彼とのキスに没頭し始めたのだが……カミュは自分でも不思議なくらい、キスが気持ちいいと感じた。そしてキスに夢中になればなるほど、腹の奥で燻る熱がじくじくともどかしく思える。
――めちゃくちゃに突いて欲しいぜ。
ふいに思って、はっとして我に返った。
「…カミュ。」
「…ふっ…はぁっ…」
その時イレブンが口づけを解き、カミュも大きく息をした。
「…いいぜ、来いよ。」
口が解放されて、すかさずカミュから促すが。イレブンは微笑んだだけでカミュの頬をそっと撫で、首筋に貌を埋めた。
「ちょ…、もう準備はできてるはずだろ?」
焦れったくなって押し戻そうとしたカミュの手首を掴み、ベッドに縫い付ける。
「まだ、ダメ。」
イレブンがカミュの首から鎖骨、胸へと唇で触れていく。
「んっ…」
乳首を含まれ、カミュはピク、と身体を震わせた。
「そこ…昼間、散々…!」
カミュが嫌がって頭を振るが、イレブンはちゅ、ちゅく…と唇と舌を使って丁寧に愛撫する。昼間執拗に弄られて過敏になったそこが甘く疼き、カミュの下腹に更に熱が溜まっていった。
「あ…も…!」
カミュはイレブンの腕を振り解こうと手首に力を籠めたが、僅かばかりも動かすことはできず、ただ自由になる頭を振り、腰を揺らし脚をシーツに滑らせるだけだった。
「あ…ん…あ…あ…ん…」
イレブンの唇と舌に溶かされ、カミュが甘い声で喘ぐ。二つとも十分に愛しむとイレブンは上体を起こした。解放されたのにほっとしてカミュははあっと、艶っぽい吐息を洩らした。…のも束の間、ずり下がったイレブンがカミュの腰を掴み腹へと顔を埋める。
「ひゃっ…」
臍やその周りを唇で食まれて、擽ったさにカミュが身を竦めてイレブンの髪を掻き回すが、イレブンは構わずちゅ、ちゅ、とキスを降らす。そして脚を開かせるとカミュ自身に指を絡め、先端を口に含んだ。
「あっ…ん!」
カミュが白い咽喉を晒して仰け反る。
「さっきイッたばっかで、そこ、だめ、だっ…」
引き離そうと頭に指を掛けるが、イレブンは構わずそこを扱き、舌で愛撫し始めた。カミュは急所を苛まれて大した抵抗もできず、ただ押し寄せる快楽の波に腰を蠢かせるだけだった。
「あ…ん、あ…や…」
手と口で愛撫して充分にソレを勃ち上がらせると、イレブンは身を起こし、カミュの脚を胸につくほど折り曲げ、細い腿の裏側を押さえつけた。イレブンの貌がカミュの中心に近づく。
「あっ…!」
イレブンに双球を食まれてカミュが再び仰け反る。舌で擽り、軽く吸って離す。ちゅぱ、とリップ音がしてカミュは居た堪れなくなった。イレブンはそこを何度もはむ、と唇で食んでは、舌で擽ったり、吸ったり、甘噛みしたりということを繰り返した。一方的に与えられる快楽にカミュがシーツをぎゅっと掴み、足先を揺らす。双球がイレブンの唾液でベタベタになり、後腔に垂れてそこをしとどに濡らした。
「イ…レブン!そんな、トコ…」
イレブンの舌が白く円やかな尻たぶを這った後、尻の奥まりに触れるの感じ、あまりの羞恥にカミュはより一層激しく抵抗したが、腿を抑えるイレブンの手はビクともしなかった。
イレブンの舌が周りをなぞった後、中と外を浅く出入りする。
「あっ…あん…あ…や…ん…」
そしてソコが十二分に濡れて解れ、柔らかくなったと思われる頃、イレブンは顔を離し、熟れた双球をかぷ、と軽く噛んでから顔を上げた。すると……
「……カミュ。どうして貌を隠しているの?」
「…見んな。」
両腕で隠しきれないカミュの頬は赤く染まっていた。イレブンが彼の脚を放し、上へと這い上がる。
「カーミュ」
イレブンがカミュの腕をそっと掴み、退けさせる。潤んだ蒼い双眸がきっ、と睨む。
「……いい加減、早く突っ込めよ。」
「うん。もういいと思う。」
イレブンはくすくすと笑い、ベッドサイドテーブルの引き出しから香油を取り出して中身を掌に垂らし、自身の怒張に満遍なく塗り付けた後、カミュの脚を両肩に乗せ、彼の後腔にももう一度馴染ませてからそこに自身のモノを当てがった。
「…はっ…」
圧倒的な質量が身体を押し拓くのにカミュは息を詰めた。痛みはない。イレブンが堪えるような貌で身体を前に進める。
「…全部、入った。」
お互い、肩で息をしながら見つめ合う。常夜灯の淡い光の中に浮かび上がるイレブンの裸身は彫像のように美しく、澄んだ碧い瞳が至高の宝玉のように煌めいていた。
「……」
「動くよ?」
イレブンの言葉にはっと我に返ったカミュは自分が彼に見惚れていたことに気づき、慌てて返事をする。
「ああ、いいぜ。」
カミュが両腕を伸ばすと、イレブンも上体を傾けて背に掴まらせる。律動は、ゆっくりと始まり、徐々に激しさを増していく。
「ああ、あぁ、イ、レブン、あ…ああ!」
イレブンがナカの一点を擦る度に電流のような快感が流れ、カミュ自身も何時しか透明な先走りを律動に合わせ、零していた。
「くっ…」
イレブンの身体が震え、彼が達したのがわかった。達してもナカのモノはほとんど硬度を失わず、カミュから抜こうともしない。
「…おい…?」
「…ごめん、このまま、もう一度…」
「え…あぁ!」
再びイレブン自身がカミュの奥を衝く。その動きは更に激しさを増し、カミュの腰を掴む手は痣になるのではないかと思われるほどキツくなった。最中、カミュも再び達し、何も考えられなくなるまで喘ぎ、啼き続ける。
結局、三度イって、漸くイレブンは彼自身をカミュから引き抜いた。己の放ったもので腹から胸にかけて白く染まり、ぐったりと横たわるカミュの青髪をイレブンが撫でる。
「…カミュ。」
「おま…絶倫過ぎ。」
「…ごめん。久しぶりだったから。」
「……」
数か月もの間、彼を放っておいたカミュには何も言えなかった。
「…愛してる、カミュ。」
「……」
今まで幾度となくイレブンの愛情には触れてきたのに。元の世界のことを(一時的に)忘れ、彼に全力で向き合っている今、その言葉は心理的抵抗を擦り抜け、カミュの心に自分でも信じられないほどの衝撃を齎した。カミュ自身に向けられた愛の言葉。エリックにではなく。
「あ…」
言葉が出て来ない。カミュがイレブンを愛していると信じさせるならすぐに『俺もだ。』と言うべき場面だったが、カミュは酷く動揺して何も言えなかった。イレブンはカミュの返事を待ってじっと見つめている。不自然なほど長い”間”の後、
「……俺もだ。」
とカミュは言った。イレブンが、静かな双眸でカミュを見つめ――
「後始末はしておくから、君はこのまま眠ってしまってもいいよ?」
そう言ってにっこりと笑った。
「あ、ああ。…ありがとな。」
「お寝み。」
カミュも微かに笑みを浮かべて『おやすみ』と返し、目を閉じた。イレブンがカミュの身体を拭いたりして甲斐甲斐しく後始末をする間、彼に自身の心を見透かされている気がして落ち着かなかったが、ほどなくして睡魔はやってきた。
*
それから。イレブン王子との結婚の準備も着々と進む中、マリーナ女王から送られてくる映像で元の世界の勇者一行が順調に世界を救う旅を続けていることをカミュは知る。
そんなある日。カミュは王子の両親であるエレノア王女と彼女の夫であるアーウィン王とも引き合わされた。庶民で男の自分との結婚に当然反対するだろうとカミュは思ったが、『王子が愛する人と結婚出来て嬉しい』とひどく喜ばれて、結婚話が立ち消えになるかもというカミュの一抹の期待はあっけなく砕け散った。聞けば、先王ロバートも市井の女性と結婚したのだという。
朝も昼も夜も、一緒に居られる時間は毎日のようにイレブンと微笑み合い、囁き合って触れ合う甘い日々。彼の澄んだ碧瞳を間近で見つめているとき。カミュの心に光が差し込み、暖かさが揺蕩う心地がする。彼がカミュを見て微笑むとき。胸が締め付けられるかのように苦しくなることがある。彼が『カミュ』と呼ぶとき。彼の唇の動きと声の響きが堪らなく――嬉しく思える。その笑顔も声も、温もりも。彼のすべてが、愛しい。
ある時、カミュはふいに気付いた。
――俺は本当にイレブンを愛している……?
だが。それを自覚した瞬間、彼の脳裏に自身に向かって必死に手を伸ばす、物言わぬ冷たい黄金に変貌した妹の姿が浮かんで、消えた。
カミュがダンドラシルに戻ってから、ふた月が過ぎた。
――そろそろイレブンに打診してもよい頃だろうか?
結局のところ、カミュはイレブンへの想いを自覚しようが、当初の目的を忘れてはいなかった。
「…なあ、俺に掛けた魔術を解いてくれよ?婚約してるってのに信用されてねえみてえでヤなんだよ。」
正午近くなって、いつものように自室に戻ってきたイレブンに寄り添い、ソファに座っていたカミュが何気なく切り出すと、彼は凪いだ双眸でカミュをじっと見つめた。陽に透ける碧い海を思わせるその眼差しにカミュが固唾を呑む。
――しまった。早まったか?まだ俺のことを信用させるには足りなかった?
カミュが内心焦るが。
「……わかった。…解くよ。」
イレブンが長い沈黙の後に答え、彼が何かを呟くとパリン、とカミュの周囲で薄いガラスが割れたような感覚がした。
「解いたよ?」
イレブンが碧い瞳に微かに寂しげな色を浮かべて微笑む。
「サンキューな。」
カミュは自然に見えるように笑ってイレブンに触れるだけのキスをした。が。カミュが離れると同時にイレブンは彼を引き寄せ、きつく抱き締めた。
「君が好きだよ。」
――…イレブン……
その時、カミュは悟った。イレブンは“どうしても自分と離れなければならない何らかの事情”ごと、カミュを受け入れ、希望を叶えてくれたのだと。
――すまねえ、イレブン。俺は過去の贖罪を果たすどころか、お前にも酷いことを……
「あ…そ…ろそろ、公務に戻る時間じゃねえか?」
気張っていなければ泣いてしまいそうだった。カミュは努めて何気ない風を装って言うと。
「そうだね。そろそろ戻るとするよ。」
イレブンが抱擁を解き、ゆっくりと立ち上がる。そして。彼が部屋を出て行った後、カミュは一人、頭を抱えた。
「ああ、くそ…何で…マヤ……」
カミュの呟きは誰にも聞かれることなく、消えた。
*
結婚式が日に日に迫って来る中で。魔術が解けていつでも去れる身になったにもかかわらず、イレブン王子への愛惜の念からカミュはあと一日だけ、と毎日のように言い訳しつつ未だに城を去れずにいた。
そんなある日。カミュは部屋に置いてあるマリーナ女王からもらったオーブが淡く輝いているのに気づく。女王から新たなレコードが届いた印だった。カミュがオーブに近づき、女王から習ったワードを唱えると、オーブに映し出されたのは――
「マヤ!」
黄金の椅子にふんぞり返って座る妹の姿にカミュは思わず叫び、食い入るようにオーブを見つめた。カミュが見つめる中でマヤは黄金の獣となり、勇者一行と戦ったが、敗れた。宙に浮かぶ球体の中で助けを求めるように手を伸ばすマヤ。そのとき勇者が”印”の力で黄金のツタの動きを少しの間抑制し――ここでエリックが信じられない動きを見せる。華麗な身のこなしでツタをいなし、マヤの囚われている球体に跳び上がると彼女の手を掴み抱き寄せた。黄金の呪いがエリックを蝕むが、マヤの涙で呪われた首飾りが砕け散ったことでエリックは元の姿を取り戻し、黄金も消え去る。黄金の城での出来事の後、気を失ってしまったマヤはクレイモランの教会に預けられたようだった。
――そこで、映像は終わった。
「マヤ…」
カミュはオーブを手に持ったまま呆然と呟いた。
「呪いが…解けたんだな。…よかった……」
カミュは泣きながらその場に頽れた。