翌朝、髪を梳かれる感覚に目が覚めたカミュを、笑顔のイレブン王子が見つめていた。
「おはよう、可愛い人。」
「…はよ。」
「早く君を両親と祖父に会わせたい。なるべく早く都合をつけるから待っててね?」
カミュはイレブンの言葉に一気に目が覚めた。逃げるつもりで求愛を受け入れたカミュには王子と結婚する気など毛頭なかった。
――どうすればいい?城の中に居る限り、イレブンか使い魔が近くにいるから逃げるのは不可能だ。チャンスがあるとすれば、城の外へ出た時だが…何を口実に外に出たらいい?
カミュはそこまで考えて、ふとあることに思い当たった。
――そうだ、エリックにも家族はいるはずだよな?
「あ…、なあ、イレブン。その…今日、家族んトコ行ってもいいか…?」
「ミアの所に?」
――ミア?家族ってのはミアって女性だけなのか?
「彼女には君を見つけてすぐに連絡したけど。城に訪ねて来ないってことは今忙しいんじゃないかな?まあ、会いに行きたいなら行けばいいよ。けど正午は必ず僕の部屋に居るようにしてね?」
「あ、ああ、わかった。」
――正午に俺がいるかどうかチェックするってことか?なら午後に決行だな。
「エーリック、」
イレブンがカミュに覆い被さる。間近で蒼瞳を覗き込み、
「…君と夜まで会えないのが辛い。」
とカミュに触れるだけのキスをすると身体を起こした。
「そろそろ公務に行く準備をしなきゃ。…じゃ、後でね、愛しい人。」
「…ああ。」
――ヘンな感じだぜ…。元の世界のイレブンとはただの仲間でしかねえのに、クリソツなこの世界のイレブンと結婚だって?…笑えねえ。
カミュは元の世界のイレブンにそっくりの、名前も同じ王子を見送った。
*
婚約したことに安心しきっているのか、今日のイレブンは使い魔にカミュを監視させていない。それでもカミュは用心深く逃亡の下準備を勧めた。午前中は城の中を歩き回り、構造を頭に叩き込む。決行するのが城を出た時とは言え、城の内部を覚えていて損はない。万が一連れ戻されたときも脱出を容易にしてくれるだろう。途中、何人かの兵士やメイドとすれ違ったが、いずれも慇懃な挨拶を受けた。‘エリック’の存在は城の中ではよく知られているらしい。
「…と、そろそろ正午だな。」
カミュは壁掛け時計を確認し、足早にイレブンの自室に戻った。てっきり使い魔が待ち構えているのかと思ったのに、予想に反して部屋には誰もいなかった。自身が早く戻りすぎただけで、今にもやって来るのだろうか?もう少しで正午になるところだった。
そして。正午を知らせる鐘が鳴り響く。カミュが異変を感じたのはまさにそのときだった。
「ひゃ!?あんっ!」
何かに素肌の腋を擽られてカミュはビクン、と身体を撥ねさせた。
「あ…あ…ん、や…」
腋の後は首に脇腹、臍も擽られ、カミュは立っていられずに床に頽れた。
「あっ…」
擽りの次は乳首をスリスリと擦られて掻かれ、湿った生温かいモノに絡みつかれてクニクニと弄られる。二つとも執拗に弄られた後、首、鎖骨、胸、腹、下腹と柔らかく温かいものが辿っていき、掌で撫でられるような感覚が続いた。
「あ…っん!」
急所を温かく湿ったものが包む。先端を舐られ、幹と双球は手で愛撫されるような感覚。
――な…何だよこれ…!
愛撫。口づけ。悪戯。まるで昨夜のイレブンの前戯をなぞっているかのようだった。
「あぁ…い…やぁ…は…っ、…!……」
カミュはどうすることもできず、快楽の幻覚が過ぎ去るのを身悶えながら待つより他なかった。
それから……昨夜と同じように、カミュがイく直前にそれは唐突に止んだ。
「はぁっ、はぁっ…」
カミュはやっと収まった現象に、絨毯の上で丸くなって横たわったまま、ゆっくりと目を開けた。
「…こ、こんなことが、正午になると…まさか、毎日…?」
――この魔術を解いてもらわねえと、到底逃げるなんて無理だ。
カミュは愕然として逃亡を断念した。そして今の刺激で勃ち上がってしまった自分自身の後始末をするため、よろよろと立ち上がった。
*
夜になってイレブンが自室に戻って来た。
「ミアには会えた?」
ハンガーの前で上着を脱ぎながらイレブンが尋ねるが、カミュが答えないので不思議に思い振り向くと、彼は暗い顔で円テーブルの椅子に座っていた。
「…会いに行かなかった。」
暫しの沈黙の後、答える。
「どうして?天気も良かったのに。」
――あんな目に遭った後、外出できると本気で思っているんだろうか?
暗い顔で俯くカミュを不審に思い、イレブンが近づく。
「どうしたの?エリック。」
「…イレブン!お願いだ!お前のかけた魔術を解いてくれ!」
突如椅子から立ち上がり、必死の形相で縋りついてきたカミュにイレブンは目を瞠ったが、すぐに冷静になって彼の肩に手を置いた。
「別に解かなくてもいいだろ?正午には僕の部屋にいるようにすればいい。僕の部屋なら午前中にメイドが掃除に入るだけで、他には誰も入ってこないよ?」
「そ…そういう問題じゃねえよ!あんな…あんなことが毎日なんて、耐えられねえよ!」
「……なら、僕が昼は君の所に戻って来るようにするよ。僕が近くにいれば魔術は発動しないから。」
「解いてはくれないのか?」
「それは…したくない。」
「なんでだよ!?」
「…ねえ、エリック。僕を裏切って捨てたのは君の方だ。」
「……」
「こうでもしないと君がまたいなくなってしまうんじゃないか、って不安なんだ。」
目の前の王子イレブンが危惧している通り、一刻も早く元の世界に帰りたいと思っているカミュには何も言えなかった。
絶望的な思いで、カミュはイレブンの身体にそっと腕を廻した。
「…わかった。明日から、昼は俺と居てくれ。」
「いいよ。」
イレブンは優しくカミュを抱き締めた。
*
寝る時間になって優しく押し倒してきたイレブンを、一昨日からの度重なる拷問や性交、強制的な快楽により疲れ切っていたカミュは必死に押し戻そうとした。
「ちょ、待っ…んな連日…!」
「君が失踪している間、僕がどんなに心配したと思ってるの?」
だがイレブンはくすくす笑い、手際よくカミュの寝間着を脱がせて彼を裸にし、触手スライムを召喚した。
「お、おい、イレブ…ひゃっ!」
触手がカミュをベッドの上に拘束すると、ヒトの指先に似た感触の、ツルツルした先端がカミュの首や腋、脇腹を擽り、乳首を弄り、臍を掻く。
「あ…ん!ふふ…やめ…あ、ああん!ふふ…やっ…ふふ…ん…あ…ん!」
「…可愛い。」
イレブンは暫く美しい婚約者の痴態に見入っていたが、触手の動きを撫でるような緩いものに変えさせると、カミュの大腿を両腕で抱え込み、脚を撫で、内腿をキスで辿り、彼自身を口に含んだ。
「あっ…ん!」
カミュがビク、と腰を震わせる。双球をやわやわと握りながら先端を舐め回し、裏筋に舌を這わせ、頬張る。
暫く彼のモノを堪能した後にイレブンは一度身を起こし、ベッドサイドテーブルから香油を取り出してカミュの後腔を解し始めた。
「あ…ん、イ、レ、ブン…これ、…ん…っ…や、めさせ、て…」
息を乱しながらカミュが必死に訴える。イレブンがカミュに奉仕している間もずっと触手に悪戯されていて、ゾクゾクした快感と疼くような快楽が波紋のように広がり、彼を苛んでいたからだ。だがイレブンは。
「ダメ。僕を心配させたお仕置きなんだから。」
「な…そ、ん…な…あ…ん…」
カミュの艶めいた喘ぎ声と時折ビクン、と撥ねる肢体を楽しみながら時間をかけて念入りにカミュの後腔を解すと、イレブンは彼の脚を肩に掛けて自身をゆっくりと挿入していった。
「あ…あ…あ…」
快楽に溶かされながら、カミュが圧倒的質量を受け入れる。
「エリック。」
イレブンの声にカミュは目を開けてぼんやりと彼を見た。
――エリックのこんなに溶けた貌は初めて見る。
王子が衝動のままに猛ったモノで激しくカミュを衝く。
「ああ、ああ、ああ、あっ…ん!ああ…ん!ああ、ああ、ああ、…」
そして…とうに透明な先走りを零していたカミュ自身は衝き始めてほどなく達した。
「あ…、イレ、ブン…」
果てた余韻でか、カミュが潤んだ蒼瞳をイレブンへと向ける。彼の眼差しに違和感を感じて王子は動きを止めた。それは崇拝にも似て……まるで命よりも大切な存在を見るような目だった。ふいに、イレブンは彼が自分を見ていないことに気付く。自分越しに遠くにいる誰かを見ているかのように。
「エ…リック?」
イレブンは戸惑い思わず呼び掛ける…が、次の瞬間カミュの蒼瞳は閉じられ、がくりと首が垂れる。気を失ってしまったようだった。
「エリック…?」
イレブンは呆然として呟いた。