※この作品はR-18です。

異世界にて   作:ちま

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変態貴族Ⅰ ダーティー・ディナー

 

 

 ダンドラシル城を去った後カミュはミアと合流し、偶々公演で城下町に来ていた彼女の “船を持ってるダチ”旅芸人シルヴァンドの楽屋を訪ねた。彼とは彼女が仕事で砂漠の王国ガロポリスに赴いた際に知り合ったのだという。

「…で、お城を飛び出して来たってワケね?」

 カミュの話を一通り聞いた後、シルヴァンドが頬に手を当てて言った。彼はシルビアにそっくりだった。

「婚約したばかりのあんたがワケわかんねえ探索に行くのをよくイレブンが許したな。」

 ミアが首を傾げる。カミュはイレブンが許した経緯を思い出して微かに頬を染めた。

「ま、まあ、イレブンも話せばわかるヤツだった、ってことだよ。…それで、何かわかったのか?」

「…ああ。仕事仲間に訊いたんだが…、どうやらズワールスラスト王国の貴族、ヘンドリック卿がマーメイドハープを持っているらしいぜ?」

「ズワールスラスト?」

「ダンドラシルの南東にある、広大な小麦畑やトウモロコシ畑、牧草地を有する高原の国だ。」

 ――ユグノアの南東…バンデルフォンか!

「ああ…それでヘンドリック卿ってのは……」

「ズワールスラストの英雄って二つ名の、武勇で知られる巨漢の将軍で、オクタゴニア周辺のモンスターを一掃したのは彼だ。オクタゴニアの門にはデカい彼の胸像が飾られている。数か月前ロナルルの漁師たちに請われて化け物イカ討伐に遠征したとき、件のハープを手に入れたらしい。その討伐隊に参加していた兵士から得た情報だってことだから信頼できると思う。」

「……」

 ――ヘンドリック卿ってのは黒い鎧を着た誰かを彷彿とさせる人物だな。オクタゴニアはグロッタの位置にあった街だよな?ロナルルはナギムナーだったか?

カミュがミアの話を頭の中で整理していると、シルヴァンドが口を開いた。

「…実はアタシ、ヘンドリック卿とは知り合いなのよね。」

「本当か!?」

「あ、でも事情があって直接は会えないの。だからカミュちゃんがハープを借りに行くなら彼に手紙を書いてあげるわ。それがあれば会うことはできるはずよ。」

「マジかっ!?助かるぜ!」

「…でも、気を付けてね?彼、あなたのようなコに目がないから…」

「……は?」

「彼、可愛い男の子が好きなのよ。もちろんそういう意味でよ?」

 シルヴァンドが心配そうな目でカミュを見る。

「頼みごとなんてしたら、その見返りに何をされるかわからないわよ?」

ミアも不安そうな目をカミュに向けた。

「…オレも行こうか?」

「だめよ。彼は女の子だって大好きなのよ?」

「俺一人で行く。俺の事情だしな。そいつに会って頼むしかねえならそうするしかねえだろ?」

 一瞬盗むことも考えたがエリックと元に戻ったとき、彼に盗みを働いた過去を背負ってイレブン王子と結婚させるわけにはいかなかった。

「…なあ、カミュ、どーしても行かなきゃなのか?ヤラしーことされっかもなのに。ロト…何とかのことは忘れてこの世界で王子サマとシアワセになればいーんじゃねーの?」

「…ミア。だが俺は…」

「あー!もう、わかったよ!けど頼むから無理すんなよ?キモい要求されたらブッ飛ばして逃げてこい!他にも方法があるかもしれねえ。」

「そうよ!相手の言いなりになんてなることないわ!」

「……ああ。」

 カミュは知り合ったばかりの自分を気遣ってくれる二人に心が暖かくなる。

シルヴァンドはすぐに手紙を認め、封筒に入れてカミュに手渡した。

「はい、これ。ヘンドリック卿の屋敷はズワールスラストの市街図にも載っているはずよ。」

「ありがとな。」

 カミュが何気なく手紙の裏を見ると、‘ノルベルト’と書かれていた。

「ノルベルト?」

「アタシの昔の名よ。それ以上は聞かないでちょうだい?…もしヘンドリック卿がアタシのこと何か尋ねてきたら、ただ『元気だ』とだけ言ってやって?」

 シルヴァンドが困ったような顔で微笑む。

「わかった。俺が帰ってきたら船を動かしてくれよな?」

「ええ、いいわよ。」

「あ、あとこれ。ギルドの通行証。これがあれば関所を通れるはずだぜ?」

 カミュは手紙を懐に仕舞い、ミアから通行証を受け取ると、心配そうな面持ちで見つめる二人に別れを告げ、楽団のテントを後にした。

 

*

 

 数日後、カミュはズワールスラスト王国に到着した。風車が点在する広大な農地と牧草地が広がり、和らいだ午後の光が小麦畑の揺れる穂を輝かせている。カミュは真っすぐに王都を目指した。

王都はロトゼタシアのバンデルフォン地方と違い、壮大な都市だった。城下街の入り口に大きな市街図があって、ヘンドリック卿の屋敷はすぐにわかった。

「バカでけぇ屋敷だな…」

 ヘンドリック卿の邸宅に辿り着くとカミュはその豪奢な様に圧倒されたが、臆せずに門を叩いた。やがて現れた執事と思しき男にシルヴァンドの手紙を手渡す。一旦奥へと消えた執事は戻ってくると『こちらへ』とカミュを屋敷の中へと導いた。そして通された一室には――

 ――グレイグ将軍!?

 グレイグ将軍にそっくりな人物がソファに深く腰掛け、待っていた。立ち上がり、カミュの前まで来て右手を差し出す。

「ヘンドリックだ。」

「カミュだ。」

 カミュも差し出された手を握り返した。

「掛けたまえ。ノルベルトの知り合いだそうだな?」

ヘンドリック卿が再び腰を下ろし、カミュも彼の前に座った。

「ああ。」

「彼は今何処に?何をしているんだ?」

「彼は世界中を旅していると言っていた。俺も知り合って間もないんだ。何をしているかは知らない。」

カミュが当たり障りなく返す。

「…そうか。もう彼とは十年以上会っていなくて、生家にも帰っていないというし、心配でな。」

「元気そうだったぜ?」

「それはよかった。…ところでマーメイドハープを借りたいと?」

「ああ、そうだ。」

「貸してもいいが…一つ、条件がある。」

「条件?」

「それは夕食のときに。せっかく来てくれたんだ。少し話そうではないか。」

 ヘンドリック卿は一度執事を呼び、彼に何かを耳打ちすると、お茶を飲みながら外海に出た際に不思議な島に迷い込んで桃色の髪の美しい人魚に会ったこと、ロナルル近海で化け物イカを討伐したこと、討伐後に人魚の願いを叶えたこと、そのお礼にハープをもらったことなどを話した。

 ――この世界にも白の入り江とロミアは存在しているのか。ってことは海底王国も存在している可能性が高いな。

 カミュが考えているとヘンドリック卿が話題を振ってきた。

「君の話は?ノルベルトの手紙には婚約者がいると書いてあったが…」

「あ、ああ、まあ。」

「どんな人なんだ?」

「あー…俺より三つ年下で…美しい…人だ。」

「それは羨ましい限りだ。私はこの歳まで縁がなかったのでな。」

 そう言ってヘンドリック卿が苦笑したとき、部屋の扉がノックされ、執事が夕食の準備ができたことを知らせた。

 

*

 

「……は?」

 カミュはヘンドリック卿の出した“条件”に呆気にとられて間抜けな返事をしてしまった。

「聞こえなかったのか?もう一度言うぞ?‘男体盛り’だ。」

 聞こえなかったわけではない。脳が理解するのを拒否していた。広い食堂の片隅に用意された、食事を摂る場所には到底似つかわしくない代物――拘束台。その前にヘンドリック卿とカミュと無口な老執事は立っていた。

「異国の“変態”な文化である女体盛りはやったことがあるが、男体盛りはやったことがなくてな。一度やってみたいと思っていたのだ。」

 きっと主の悪趣味には慣れているのだろう、老執事は顔色一つ変えずに控えている。ヘンドリック卿がカミュに向き直った。

「お前次第だ。俺の願いを聞き入れてくれるのならハープを貸そう。断るならこの話は終いだ。」

 カミュがまず思ったのは、ミアを連れて来なくてよかった、ということだった。ミアならもちろん断るだろうが、こんな提案をされた時点でトラウマになる可能性がある。そしてカミュ自身はどうするか…。ミアの言う通り“ブッ飛ばして逃げ”るか、この“キモい要求”に応えるか。前者を選べば元の世界に還る手がかりに辿り着くための有力な手段を失うことになる。後者であれば、その手段を得られる。

 ――……仕方ねえ。ここは我慢するしかねえか。

不承不承、カミュは頷いた。

「…やるよ。どうすればいい?」

「では上を脱いで台の上に横になってくれ。」

 カミュはヘンドリック卿に言われるまま上を脱ぎ、通常のテーブルより低い位置にある拘束台の上に横になった。老執事がカミュの手首と上腕の肩に近い部分と足首、腿、腰骨をベルトで幅の狭いX字に固定すると、ワゴンの上の濡れ布巾を取り、カミュの上半身をテーブルでも拭くように拭いた。ヘンドリック卿が拘束台の傍にある椅子に腰を下ろす。カミュの半裸を見る、彼の舐めるような視線。特に乳首そしてローライズボトムを履いていたことで露わな臍を見て卿がいやらしい笑みを浮かべたのに、カミュの背に悪寒が走った。

「始めてくれ。」

「畏まりました。」

 ヘンドリック卿が合図をすると老執事が一礼して食前酒を卿の前に置き、ワゴンから料理を取り出す。

――料理の前にカトラリーを用意しないのか?

カミュが不思議に思う。老執事が前菜である一口大に切られた魚のマリネをカミュの乳首と臍の上に置き、やはり一口サイズの仄かに温かいフリッターにキッシュ、豆の入ったポテトサラダをスプーン一杯分ずつ、カミュの胸から腹にかけて置いていく。

「これは美味そうだ。」

「!?」

 ヘンドリック卿が食前酒をグイと飲んで唇を舐めると、上体を傾けてカミュの乳首の上のマリネを口で取った。このときカミュはカトラリーがないことと拘束台がダイニングテーブルよりも低い理由を理解した。卿は一度顔を上げてマリネを咀嚼し、もう一度顔を近づけて乳首についたオイルをその肉厚の舌で舐めとる。その際、悪戯に舌先で先端を弄られ、カミュは小さく呻いて唯一動かせる首をその悍ましい光景から背けるように動かした。卿はもう一つの乳首に載ったマリネも身を乗り出して同じように食べ、オイルを舐めとる際に舌先で擽る。カミュはピク、と身体を揺らして首を反対側へと動かした。卿は次に臍の上のマリネを頬張る。予想はしていたが、そこもオイルを掬い取るように臍に何度も舌を突っ込む。

「ひっ…」

 擽ったさとあまりの不快感にカミュが声を上げると。

「こら、皿が声を上げるな。声を出すとペナルティーがあるぞ。」

 ヘンドリック卿がニヤリと笑って片手を伸ばし、カミュの股間の膨らみを布越しにするりと撫でた。

「…っ…」

 急所に触れられてカミュが息を詰める。ヘンドリック卿は何ごともなかったかのように食事に戻った。

ヘンドリック卿がカミュに盛りつけられた料理を食べ終える度に執事は濡れ布巾でカミュの身体の汚れを拭き取り、バケット、パスタ、リゾット、メインディッシュ、と黙々と給仕し続けた。

そして漸く最後のデザートとなった。カミュの身体に盛られたフルーツのジュレを、ヘンドリック卿が素肌を舐め回しながら掬い取っていく。

「あっ…ん!」

 載せられた料理を卿が口で取る度に舌先で弄られていた乳首をこれが最後とばかりにレロレロと押し潰すように舐められてカミュは思わず声を上げてしまった。ヘンドリック卿がニヤニヤしてカミュの股間に手を伸ばし、撫でる。

「声が大きかったからこれはオプションだ。」

 そう言って指先に触れたカミュ自身の先端をすりすりと擦った。カミュは歯を食いしばって声を出さないように耐えた。もう一つの乳首と臍も執拗に舐ってカミュに声を上げさせようとしたが、果たせなかった。ヘンドリック卿は残念そうに顔を上げ、椅子に座り直す。老執事が唾液とデザートの汁でベタベタになったカミュの胸から腹を拭くが、不快感は消えなかった。

「こんなに楽しい食事は久しぶりだ。」

執事が入れた食後のコーヒーを飲みながら、ヘンドリック卿が息を乱しぐったりしているカミュを見下ろす。

「約束通りハープは貸そう。アーノルド、彼を客室に案内してやってくれ。」

「畏まりました。」

 老執事は心得た様にカミュの拘束を解いて助け起こし、用意してあったシャツを羽織らせると、彼が着ていた上衣を持ち、客室へと案内した。

「今日は夜も遅いのでお泊りになりますように。」

と言い、客室のドアの横に置かれたワゴンを示し、

「そちらが夕食です。部屋の中にあるものはご自由にお使い下さい。明朝、我が主は約束の品をお渡しします。」

と言ってカミュに上衣を手渡し、一礼して去って行った。

 

 

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