アスファルトを叩くヒールの音だけが、やけに大きく響く夜道だった。
街灯の頼りない光が作る長い影を引きずりながら、斎藤美咲は今日の業務報告書の内容をぼんやりと反芻していた。
月曜の夜はいつもそうだ。
週末の余韻は跡形もなく消え去り、始まったばかりの一週間という名の長いトンネルに気が滅入る。
疲労で重くなった瞼をこすり、早く暖かいベッドに潜り込みたい一心で駅からの道を急いでいた。
その単調なリズムは、背後から伸びてきた一本の腕によって唐突に断ち切られた。
「っ……!」
悲鳴は呼気となって喉の奥に詰まる。
肉厚な手が強引に彼女の口を塞ぎ、もう片方の腕が抵抗する暇もなく胴体に回された。
男物の安っぽい香水の匂いと、汗の酸っぱい匂いが混じり合って鼻をつく。
訳も分からないまま、美咲の体は宙に浮くような感覚と共に、街灯の光が届かない闇の中へと引きずられていった。
足がもつれ、履き慣れたはずのパンプスが無様に脱げ落ちるのも構っていられない。
植え込みの生臭い土の匂い。
そこが近道としてたまに通り抜ける、今は閉鎖されている小さな公園の入り口だと気づいたのは、背中を冷たい地面に叩きつけられてからだった。
「騒ぐな。殺すぞ」
耳元で囁かれた声は、まるで温度というものが存在しないかのように平坦で、その無機質さ故に本物の殺意を感じさせた。
美咲は全身の血が凍りつくのを感じ、必死に
男は満足したように口を塞いでいた手を離したが、代わりにその剛腕で美咲の両手首を掴み、頭上で強く押さえつけた。
硬い小石が背中に食い込み、鈍い痛みが走る。
「いい子だ。これからお前をめちゃくちゃにしてやるから、おとなしくしてろ」
男はそう言うと、美咲の膝を無造作に蹴って両脚を開かせた。
タイトスカートの裾が無防備にめくれ上がり、夜の冷気が直接ストッキング越しの肌を撫でる。
羞恥と恐怖で目の前が白く染まっていく。
やめて、と声にならない声が喉で震えるが、男はそれを楽しむかのように、スカートのジッパーを乱暴に引き下げた。
布地が裂ける鈍い音。
そして、最後の砦であった下着に指がかけられる。
「や……やめてください……」
かろうじて絞り出した懇願は男の嘲笑にかき消された。
「今さら何を言ってんだ? もう手遅れだよ」
ブチリ、と嫌な音を立ててレースが引きちぎられる。
恥丘が完全に闇夜に晒され、美咲は奥歯を食いしばった。
屈辱に涙が滲む。
しかし、男の次の行動は彼女の想像を絶するものだった。
男が取り出したのは自身の欲望の象徴ではなく、冷たいプラスチックの感触が予想される、見慣れない器具だった。
それは紛れもなく、薬局で売っている使い捨ての浣腸だった。
「な……何を……?」
「黙ってろ。汚い腹の中を綺麗にしてやる」
男は悪意に満ちた笑みを浮かべ、少し温い液体の入った容器の先端を、抵抗する美咲の体にねじ込もうとする。
その冷たい感触が入り口に触れた瞬間、美咲の体は恐怖に強張った。
「いやっ! やめて! そんなの……!」
「抵抗するなって言ったよな?」
男の声が一段と低くなる。
押さえつけられた手首にギリギリと骨が軋むほどの力が込められ、美咲は短い悲鳴を上げた。
その隙を突いて、ぬるりとしたノズルが抵抗虚しく内部へと侵入してくる。
異物が体内に入り込む不快感と、これから何が起きるのかという想像を絶する恐怖。
男はゆっくりと、しかし確実に容器を握りつぶし、中の液体を彼女の体内に注ぎ込んでいく。
冷たいような、生温いような、形容しがたい液体が腸壁を撫でながら奥へと浸透していく感覚。
それは暴力的なまでの異物感で、美咲は腹の底からせり上がってくる未知の圧迫感に息を詰まらせた。
「うっ……ぁ……」
苦しげな呻き声が漏れる。
男はそれを聞きながら、愉悦に浸るように二本目の浣腸を用意した。
一本目の液体がまだ馴染みきっていないうちに、追い打ちをかけるように二本目のノズルが差し込まれる。
先ほどよりも容易く侵入を許してしまった体に絶望が広がっていく。
再び液体が注ぎ込まれ、腹の中でグリセリンが効果を発揮していく。下腹部が重く、熱を持ち、まるで内側から焼かれているようだ。
「どうだ? 腹ん中、すごいことになってるだろ」
男は美咲の苦悶に満ちた顔を覗き込み、満足げに囁いた。
美咲はただ首を横に振ることしかできない。
便意とも違う、内側から破壊されるような強烈な圧力が、彼女の理性を少しずつ削り取っていく。
漏らしてはいけない、という最後の羞恥心が、必死に括約筋を締め付けさせていた。
だが、男の目的はそれだけではなかった。
腹部の膨満感が限界に達しようかというその時、男は自身の硬く膨れ上がったそれを、何の躊躇もなく美咲の足の間に押し当てた。
先ほど浣腸のノズルが通ったばかりの場所が、今度はさらに残忍な熱と大きさでこじ開けられる。
「あ゛あぁっ!」
引き裂かれるような激痛。
しかし、それと同時に、腹の内部で渦巻いていた圧倒的な圧力が、その暴力的な侵入によって奇妙な方向へと攪拌された。
痛みと、内圧と、そして男が与える無慈悲な抽送。
三つの異なる感覚が渾然一体となり、美咲の脳を麻痺させていく。
「こんな……汚いもので……イくなんて……最高だろう?」
男は喘ぎながら、美咲の耳元で卑猥な言葉を吐き続ける。
美咲の意識は朦朧としていた。
腹の中の圧力が、男の律動に合わせてぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。
それはもはや苦痛だけではなかった。下腹部の奥深く、これまで感じたことのない場所から不本意な熱が生まれ始めていた。
「いや……っ、やめ……!」
否定の言葉とは裏腹に、腰が微かに揺れ始める。
男の動きに呼応するかのように。その事実に気づいた瞬間、美咲の心は完全に砕け散った。
そして、限界を迎えたのは精神だけではなかった。
腹の中で飽和しきった圧力が、男の突き上げる衝撃をきっかけに、ついに決壊した。
ぶちゅ、と生々しい水音と共に熱い奔流が溢れ出す。
それは男の性器を、美咲自身の太ももを、そして冷たい公園の地面を汚していく。
自分が汚物を漏らしている。その認識が、雷のように美咲の脳天を撃ち抜いた。
羞恥と絶望の極致。
しかし、その瞬間だった。決壊と同時に下腹部を突き抜けるように、鋭い快感の痺れが全身を貫いた。
「ん……んんっ……!?」
信じられない。信じたくない。こんな状況で。こんなに汚されて。快感を感じている。
括約筋の弛緩と同時に、体の別の部分が硬く収縮し、強烈な痙攣を引き起こす。
男の抽送は止まらない。
汚物に塗れながら、彼はさらに速度を上げて美咲の体を突き続けた。
一度壊れてしまった堰は、もう元には戻らない。
漏れ続ける汚濁の中で、美咲の体は正直に反応してしまっていた。
男が腰を打つたびに、腹の奥の奇妙な熱が膨れ上がり、何度も何度も、抗うことのできない絶頂の波となって彼女を襲った。
意識が飛び、現実感が薄れていく。
自分が誰で、どこにいて、何をされているのかさえ曖昧になっていく。
ただ、終わることのない屈辱的な快楽と、自らが撒き散らした汚物の不快な温かさだけが、そこにあった。
男が満足してようやく動きを止めた時、美咲はぐったりと汚泥の中に横たわっていた。
空虚な目で見た夜空には、気味が悪いほど月が明るく輝いていた。