計画的で手の込んだ「作品」は影山晶にもはや何の感動ももたらさなかった。
白石玲奈という女のプライドを時間をかけて崩壊させるプロセスは、彼の内なる渇望を満たすにはあまりにも冗長で、刺激が足りなすぎたのだ。
彼の本能は、もっと直接的で、野蛮で、原始的な屈辱を求めていた。
欺瞞に満ちた紳士の仮面を脱ぎ捨て、彼は再び飢えた獣として夜の闇に溶け込む決意を固めた。
次なる舞台に都心のエレガントな空間は相応しくない。
彼が求めているのは文明の光が届かない、無防備な魂が彷徨う場所。
インターネットの深層、法が及ばぬ闇市場で、彼は一台の車を調達した。
盗難車を改造し、登録情報を偽装した通称「ゴーストカー」。
それは影山の存在をこの世から一時的に抹消し、彼を純粋な捕食者へと変えるための完璧な道具だった。
彼はゴーストカーを駆り、高速道路を降りて、アスファルトのひび割れた田舎道へと入っていった。
街灯はまばらで、家々の窓から漏れる光もほとんどない。
こういう場所では人々の警戒心は都会の喧騒の中よりもずっと緩んでいる。
無防備に夜道を歩く、若い女。
それこそが、彼が今求めている完璧な素材だった。
闇に溶け込むような黒いセダンをゆっくりと走らせながら、彼は獲物を探す狼のように鋭い視線を左右に投げかける。
そして、ついにその姿を捉えた。
コンビニのビニール袋を提げ、スマートフォンの画面に目を落としながら、ふらふらと覚束ない足取りで歩く若い女。
イヤホンで耳を塞ぎ、外界からの音を遮断している彼女は影山にとってこれ以上ないほど都合の良い獲物だった。
彼は音もなく車を路肩に寄せ、エンジンを切った。
静寂が支配する夜の道に女のサンダルの音だけがぱたぱたと響く。
影山は息を殺して車外に出ると、まるで影のように女の背後に忍び寄った。
「あの、すみません」
穏やかな声だった。
女は驚いて振り返り、イヤホンを片方外す。
その無防備な顔に、影山は冷たい笑みを浮かべた。
女が何かを問い返すよりも早く、彼の右手に握られたカッターナイフの銀色の刃が月明かりを反射して鈍く光った。
「騒ぐな。殺されたくなかったら静かにしろ」
地を這うような低い声が女の鼓膜を震わせた。
彼女の瞳が恐怖に見開かれ、口が悲鳴の形に開こうとした瞬間、影山の左手が素早くその口を塞いだ。
抵抗しようともがく細い腕を力ずくでねじ上げ、用意していた結束バンドでその両手首を背後で固く縛り上げる。
そして、ポケットから取り出した黒い布で彼女の目を覆い隠した。
「いい子だ。そのまま静かにしていろ」
視界を奪われ、恐怖で全身が硬直する女を彼はゴミ袋でも扱うかのように車の後部座席へと乱暴に押し込んだ。
ドアが閉まる無機質な音と共に、女は完全な暗闇と絶望の中に置き去りにされた。
車は再び静かに走り出した。
行き先も、時間も分からない。
女にできることは後部座席の床で体を丸め、恐怖に震えることだけだった。
エンジンの振動と、時折聞こえるタイヤが砂利を踏む音だけが、自分がまだ生きていることの唯一の証明だった。
どれほどの時間が経っただろうか。
車は不意に速度を落とし、やがて完全に停止した。
エンジンが切られ、再び訪れた静寂が女の恐怖をさらに増幅させる。
後部座席のドアが開けられ、影山がその腕を掴んで引きずり出した。
「歩け」
短い命令。
目隠しをされたまま、おぼつかない足取りで数歩進むと、足元の感触がアスファルトからざらついたコンクリートへと変わった。
ひんやりとした空気が肌を撫で、カビと埃の入り混じった独特の匂いが鼻をつく。
反響する足音は、ここがだだっ広い屋内であることを示唆していた。
錆びた金属が軋む音を立てて巨大な扉が閉められ、女は外界から完全に遮断されたことを悟った。
誰にも使われなくなり、地図からも忘れ去られた廃工場。それが、影山が用意した新たなステージだった。
彼は怯える女の手を引き、工場の中心部へと歩を進める。
コンクリートの床に散らばったガラス片を踏む音が不気味に響き渡った。
やがて彼は歩みを止め、女の体を壁際に押し付けた。
「いいか、これから俺の言う通りにしろ。少しでも抵抗したり、変な気を起こしたりしたら、その綺麗な顔に一生消えない傷がつくことになる。怪我をしたくなかったら、死んだみたいにじっとしていろ」
耳元で囁かれる冷酷な脅迫に、女はこくこくと必死に
影山はその反応に満足したように
抵抗する気力すら奪われた女の体から、ジーンズと下着がずるりと引きずり下ろされ、無防備な下半身が冷たい空気に晒される。
羞恥と恐怖で女の体が小刻みに震えた。
影山は車のトランクから持ち込んだスポーツバッグを開け、中から目的の物を取り出した。
まずは、銀色の包装に包まれた小さな坐剤。
彼はそれを二つ、指先で摘むと、震える女の尻を片手で掴んで固定し、その冷たい塊を躊躇なく肛門の中へと深く押し込んだ。
「ひっ……!」
予期せぬ異物の侵入に、女が短い悲鳴を上げる。
しかし、影山は構わず、さらに奥へと指を捻じ込んだ。
それは水に触れると急速に炭酸ガスを発生させ、腸を刺激して排便を促す、遅効性の下剤だった。
だが、彼の計画はそれだけでは終わらない。
次に彼が取り出したのは、歪なS字を描く金属製のフックだった。アナルフックと呼ばれる、歪んだ性癖を満たすためのアダルトグッズ。
彼はその冷たく硬い先端を、坐剤を押し込んだばかりの女の敏感な粘膜に宛がうと、ゆっくりと、しかし確実に内部へと挿入していく。
「あ……ぁ……や、やめて……」
女のか細い懇願は虚しく空間に吸い込まれていった。
フックが完全に内部に収まったのを確認すると、影山はフックの外側の輪に、あらかじめ天井の鉄骨から垂らしておいたロープの先端を結びつけた。
そして、滑車を使ってゆっくりとロープを引いていく。
女の体が僅かに宙に浮き、全体重が臀部の一点、アナルフックに集中した。
わずかでも体を動かせば、内部のフックが敏感な直腸を抉り、耐え難い苦痛が走る。
女は生きるために、息を殺し、石のように動かないでいることを強いられた。
完璧な拘束。それは肉体だけでなく、精神をも縛り付ける地獄の吊り具だった。
その絶望的な姿を満足げに眺めながら、影山はバッグから最後の道具を取り出した。
強力なモーターを内蔵した黒いバイブレーター。
彼はそのスイッチを入れ、唸りを上げる先端を、なすすべもなく晒された女の股間へと当てがった。
「んんっ……!?」
強烈な振動が恐怖で麻痺していたはずの神経を無理矢理に叩き起こす。
快感というにはあまりにも暴力的で抗いがたい刺激が女の体の中枢を駆け巡った。
身もだえし、この屈辱的な刺激から逃れたい。
しかし、体をよじれば尻に突き立てられたフックが内側から肉を裂くような痛みを引き起こす。
快楽と苦痛。
逃げたいのに動けない。
女は地獄のジレンマの中で精神の均衡を失いかけていた。
喘ぎ声とも悲鳴ともつかない声が、目隠しの布の下からくぐもって漏れ出す。
腰が意思に反してびくびくと痙攣し、その度に肛門に走る激痛に顔を歪める。
「いいぞ……その顔だ。もっと感じろ。でも、動くなよ? 動いたら、どうなるか分かってるな?」
影山は悪魔のように囁きながら、バイブの振動レベルをさらに上げていく。
女の体は限界に達していた。
両膝ががくがくと震え、もはや自分の体重を支えることすらできなくなっている。
全身がフックとロープだけで支えられ、完全に宙吊りになったその瞬間を見計らい、影山はぴたりとバイブの刺激を止めた。
突然の静寂。
嵐のような刺激から解放され、女の体は安堵に支配されかけた。
だが、その一瞬の安らぎは次なる絶望への序曲に過ぎなかった。
体内に仕込まれた二つの坐剤が体温で溶けて効果を発揮し始めていたのだ。
ぐぅ、と腹の奥で何かが蠢く。
それは紛れもない便意だった。
それも尋常ではない、決壊寸前のダムのような抗いがたい衝動。
閉じなければならない。
しかし、アナルフックが物理的に肛門をこじ開けているため、括約筋に力を入れることすらできないのだ。
「あ……う……だ、め……」
我慢は不可能だった。
ぶちゅ、ぶちゅるる……。
女の意思とは全く無関係に、半ば開かれた肛門から、まだ形を保っていない泥状の便が次々と溢れ出てきた。
それはフックの金属棒を伝い、彼女の太ももを汚し、ぽた、ぽたと音を立ててコンクリートの床に染みを作っていく。
屈辱的な水音と、あたりに立ち込める耐えがたい悪臭。
その光景に女の理性の最後の砦が崩れ落ちた。
生理的な限界を超えたショックで、膀胱の括約筋もまた制御を失う。
じゃあっと熱い尿の奔流が、便で汚れた太ももを洗い流すように流れ落ちた。
その完全な崩壊の様を見て、影山の目に狂的な興奮の色が宿った。
これだ。
これこそが彼が求めていた、人間の尊厳が内側から汚物と共に流れ出す、究極の美。
彼は自らの欲望の昂りを抑えることなく、吊るされたままの女の前に立つと、その汚れた体に向けて自身の硬直を突き立てた。
事を終えた影山は、まるで機械のスイッチを切るように、冷静にロープを緩めた。
女の足が床に着き、体重の支えを失ったフックがずるりと尻から抜け落ちる。
その瞬間、最後の抑えが外れた肛門から、ムリムリと押し広げるようにして、固形の便の塊が押し出された。
女は完全に虚脱し、汚物にまみれたままその場にへたり込んでいた。
影山はそんな彼女の姿を冷ややかに見下ろすと、興味深そうにしゃがみこんだ。
彼は何の躊躇もなく、排泄を終えたばかりの女の尻の穴に指を差し入れた。内部の感触を確かめるように軽く探り、そして引き抜く。
「ほう……出血なしか」
彼は指先についた粘液を眺め、感心したように呟いた。
あれだけのフックの負荷と強引な性交にもかかわらず、内部が一切傷ついていない。
その事実に彼はある種の満足感を覚えた。
「大したものだ。あれだけの刺激を与えたのに最後までほとんど動かなかった。よく耐えたな」
それは、まるで調教に成功した動物を褒めるかのような口調だった。
彼は立ち上がると、財布から一万円札を十枚抜き取り、汚れた女の傍らの床に置いた。
「褒美だ。タクシー代くらいにはなるだろ」
それが、影山が彼女にかけた最後の言葉だった。
彼は背を向けると、一度も振り返ることなく、廃工場の出口へと向かう。
残されたのは暗闇と汚臭の中、心と体を完全に破壊された一人の女と、その屈辱の対価であるかのような十万円の現金だけだった。
重い鉄の扉が開かれ、そして閉まる。
影山はゴーストカーに乗り込みエンジンをかけると、何事もなかったかのように夜の闇へと消えていった。