※この作品はR-18です。

Fate/afterglow renew–uplift   作:神谷萌

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パトラのアルバム

 松原地区にある4DKの、経年しているがリフォームがされている小綺麗な戸建て、クレオパトラ49世(パトラ)邸。

「だぁぁぁっ」

 その、パトラの自室。

 OAデスクの上に、iMac以前のシンプルなベージュのケースを使ったミニタワーの自作機、そのすぐ左側、座席の正面に19インチスクエア、右手側に4K対応の23.8インチワイド、左手側に10.5インチの、それぞれLCDディスプレイが置いてある。

 デスクの下には、パトラが動画配信の為に使う動画撮影・編集特化機と、リムーバブルディスクラック式の自作NASが置いてある。

 ちなみに、動画配信者でもあるパトラの、動画を撮影する舞台になる部屋は、この部屋の隣にある別の部屋だ。

 その他、Dellの市販機を中古で買って魔改造を執行した予備機と、予備のPCパーツや、配信でも使う新旧のゲーム機が収められた、プラスチックボックスが置いてある。

 生活の空間としては、質素な洋服箪笥と、それなりの幅のある本棚、それに金属フレームだが、幅があってそれなりに上等なベッドがある。

 一見、特にOAデスク周りに雑然としている印象はあるものの、実際には床に無造作に散らばらせたり、生活動線が阻害されたりしないよう、きちんと整頓されている事が解る。

 ────そのメインのPCの画面が表示されているディスプレイの前で、パトラは声を上げながら、頭を抱えていた。

「どうなされました? マスター」

 ちょうど、昼食時ということで手製のサンドイッチを持って入室してきたセイバーが、自身のマスターの素っ頓狂な声を聞いて、背後から覗き込むように問いかける。

「いい歳だし自分で稼いでるから仕送りなんて要らねぇって言ってるのに、また黙って振り込みやがった、母ちゃん……」

 パトラは、頭を上げたまま両手で抱える仕種から、段々と項垂れるようにしながら、最後は歯切れ悪い口調になりながらそう言った。

「…………ま、まぁ、私にはよく解りませんが、親心っていうのはそう言うものじゃないんですか?」

 セイバーは、少し引き攣った笑顔になってしまいながら、パトラを宥めるように言う。

「それにしたって生活費程度でいいよ。半年に一度程度ってもいきなり6桁7桁は勘弁しろって。ビビる」

「6桁7桁……────」

 パトラがうんざりするように言うと、セイバーは片手の指を反対側の手で指を数えるようにする。

「────数百万……半年分なら、驚くほど多いってほどでもないのでは?」

 セイバーは、どこかキョトン、としたような表情を、パトラに向けて言う。

 パトラは、自身でも株式取引や不動産運用をしているので、その程度の額は割と動かしている。

「あ、しまった。違う違う。日本円じゃない。USドル」

 パトラが、OAチェアを回してセイバーの方を向きながら、パタパタと手を振りながらそう言った。

「…………今のレートは?」

 セイバーは、再び引き攣った笑顔になって、問いかけた。

「ついさっき、149JPY/USD」

「……………………千万!? 億!?」

 パトラが脱力した口調で答えると、ざっと暗算したセイバーが素っ頓狂な声を上げた。

「ご、御母堂はなにか事業でもなされているので?」

 セイバーは、じっとりと汗をかいたような感覚を覚えながら、たじろいだような姿勢になりつつ、パトラに問い返す。

「経営者だよ。一応」

「はぁ、 …………何をなさっているので?」

 パトラの脱力感を共有した様子で、セイバーは重ねて問い返す。

「P(Private)M(Military-service)C(Company)」

「み、民間軍事会社……ですか」

 あっさりと答えるパトラに、セイバーは言葉を詰まらせながら返す。

「そ」

 パトラはそう言いながら、OAチェアをPCディスプレイに向き直り、マウスでWebブラウザを最前列に出させ、Google検索、ではなく手打ちでURLを入力し、Webサイトを表示させた。

「『Integrated Security Services Provider(総合警備業) Pharaoh’s Mirage Light(ファラオの幻光)』……ですか。と言うことは、マスターは御母堂の家系で?」

 画面を覗き込むようにして企業名を読み上げてから、その名前に思い当たって、パトラに問いかける。

「え、ああ、まだ説明したことなかったっけ」

 パトラは言う。

「母ちゃん、婚歴ないよ」

「えっ?」

 あっけらかんというパトラに対し、セイバーは反射的に聞き返す。

「アタシがデキたのは、若(・)気(・)の(・)至(・)り(・)ってやつ。まぁ、だからといって母親の責任を放棄してたとは、アタシは思ってないけど。アタシはね」

「あー…………」

 パトラの説明に、セイバーは、複雑そうな顔をして、前髪を手でくしゃりとする。

「御母堂の方はそう思ってないんですね」

 セイバーはそう言った。だから、事あるたびに常識ハズレの送金をしてくるのだ、と、理解した。

「たぶんね。実際、忙しくて人任せにしてることは多かったとは思う。アタシの方としては、時間が愛情の重さと比例するわけじゃないと思ってるけど」

 そこまで言って、パトラは、椅子の背もたれにもたれかかりつつ、軽くため息を吐(つ)いた。

「マスターの御母堂……と言うことは、その……48世、ですか」

 セイバーは、苦笑しつつ、話題を振(・)る(・)ように問いかける。

「まぁ」

 パトラは、短く答えてから、

「見てみたい?」

 と、PCの方を向いていた顔をセイバーの方に向けて、訊ねる。

「……言うつもりはありませんでしたが、見せていただけるのでしたら」

 セイバーの方も、興味はあるといった様子で訊ねた。

「それじゃ……」

 パトラはOAチェアから立ち上がり、本棚に向かった。

「あれ、アナログな保存方法してるんですね?」

 てっきり、PCやスマートフォンに保存されていると考えていたセイバーは、パトラが、本棚から、小さいが少し上等な装丁のアルバムを取り出すのを見て、意外そうに言った。

「デジタルって、意外と保存性悪いんだよ。フラッシュROMって20年保たないし、HDDは駆動部のある機械だから幅はでかいけどいつかは壊れる。CD-RやDVD-Rも記録面って結構すぐ劣化して読み取り不可能になる。プレスのディスクとマスクROMは強いんだけどね。意外に長持ちするのはテープなんだけど、カビが大敵だし」

 そう言いながら、パトラはアルバムを開き始める。

「だから大事な写真は、いちいち印刷してこうしてと……ああ、これこれ」

「見させていただきます」

 パトラが開いたページを、セイバーが見る。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「え…………?」

 その写真を見て、セイバーは顔を顰(しか)める。

「マスターが2人……?」

「え? セイバーにもそう見えるの?」

 セイバーの呟きに、パトラは、困惑に僅かに不快感の混ざったような表情の歪め方をして、そう言った。

「……そういうってことは、こちらのどちらかが……」

「アタシ、そんな大時代的なヒラヒラした服着ないよ」

 どこか気まずそうな笑いを浮かべつつ写真を指差しながら問いかけるセイバーに、パトラは苦笑しながら答える。

 写真の中の、まるで瓜二つのクレオパトラ49世と、その母────クレオパトラ48世だが、はっきりと違うのは衣装だった。

 49世(パトラ)の言葉から判断するのなら、アウターのチューブトップにパーカー、ショートパンツという、夏の彼女の定番の服を着ている方が49世で、背景が日本の都市である事を考えると明らかに場違いな、映画や演劇に出てきそうなエジプト宮廷風の衣装を着ている方が母親、48世ということになる。

「立香にも慎二にも散々からかわれたんだけど、そんなに似てるかなぁ?」

「ええ、まぁ……かなりそっくりっていうか、衣装を交換されたら見分けがつかないと言いますか……」

 一卵性双生児にありがちな話で、パトラにとっても、母親と自分とが「見分けがつかないほどにそっくりか」というのが、いまいち理解できていないようだった。

「私も、顔だけだったらそっくりって言われるサーヴァントがよくいるんですが、全身ここまでそっくりっていう相手はいないですからね……」

「ふーん……」

 フォローしているんだかいないんだか、気まずそうな苦笑のままで言うセイバーに、パトラは面白くもなさそうな気の抜けた返事をした。

「他のページも見させていただいてよろしいですか?」

 気を取り直すかのように、セイバーは問いかける。

「あ、それはどうぞ」

「では、失礼して」

 パトラの返事を待ってから、セイバーはページをめくる。

「あっ、これは……マスターが少し幼い時の写真ですか?」

「まぁ」

 セイバーが、一旦視線をパトラに向けて問いかけると、パトラも機嫌を直したかのように笑顔になって、

「人並みに子供の頃の思い出はある……と思ってるよ」

 と、言う。

「これは……テーマパークのようですね」

 まだ、今の2/3ほどの身長のパトラが、老いというものを知らんのか、先程の写真とほとんど差異のない母親と、某浦安植民地(巨大テーマパーク)の園内で撮影したと思しき写真を見つけて、言う。

「なるほど、人並みに子供の頃の思い出はある、というのは本当なんですね」

「もちろん」

 セイバーの言葉に、パトラはどこか無邪気そうな笑顔で答えた。

「ああ……そうだ。今度はセイバーとそこへ行ってみる? 琉希とかも誘って」

「えっ?」

 唐突なパトラの提案に、セイバーは、一瞬、困惑したような声を出す。

「できるんですか? 瑞苑町(この街)は、確か……」

 緩い仕掛けではあるが、瑞苑の聖杯が、魔術的観測からその姿を隠し、住民を虜にしている閉鎖世界。 ────それがここ、瑞苑町。だが、

「いや、確かに居住地を変えようとすると出られなくすることがあるけどね、旅行とかで一時的に外に出るだけだったら、どうってことない仕掛けだよ」

 と、パトラが苦笑しながら言う。

「だいたい、それだったら琉希が引っ越しに戻ることもできなくなってるはずじゃない」

「そう言えばそうでした」

 セイバーも、仕組みを思い出して苦笑し返した。

「まぁ、一時的に完全に閉鎖されることもあるんだけど。聖杯が、この街と住人を守るために」

 口元で笑みつつも、些か真剣な表情になって、パトラが言った。

「マスターは、それに居合わせたことが?」

 セイバーの方も、少しだけ表情を締めて聞き返す。

「ちょっと、アルバム貸してくれる?」

「あ、はい」

 パトラは、セイバーからアルバムを受け取ると、ページをいくつかめくった。

「ああ、これだ」

 そう言って、パトラはそのページを広げて、セイバーに見せる。

 まず目に入ってきたのは、パトラ────いや、エジプト宮廷風の衣装を着ているから、母親のクレオパトラ48世の方だろう。

 そして、一緒に写っているのは……────

「狼男…………いえ、もしかして、サーヴァントですか?」

 セイバーは、若干、怪訝そうに眉に皺を寄せて、視線を一旦パトラに向けながら、問いかけるように言う。

「そう。10年前、瑞苑の前の聖杯戦争の時の写真だ」

「御母堂は、その時のマスターだったんですね」

「うん。サーヴァントはアーチャー。真名はパツシィ」

 セイバーは、パトラの答えを聞いて、更に怪訝そうな表情をする。

「聞いたことのない名前ですね……」

「…………こ(・)の(・)歴(・)史(・)上(・)の(・)人(・)物(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)からね」

「! つまり、サーヴァント・ユニヴァースのように、可能性が大胆に異なる世界の……」

「そう」

 ますます険しい表情をするセイバーに対し、パトラはあっさりと答える。

「でも、この方……わかりにくくはありますが、男性の様に見えるのですが?」

 セイバーは訊ねる。

 瑞苑の聖杯戦争のローカルルールのひとつに、「この地の聖杯戦争においては、身体か精神の少なくともいずれかが女性である英霊しか、仕える騎士(サーヴァント)として召喚されません。」というものがある。

 だが、

「いや、男性だよ。トランスジェンダーでもない。瑞苑の聖杯戦争としては、イレギュラーだったんだ」

 と、パトラは答えた。

「よほど特殊な召喚だった、とか?」

 セイバーが、怪訝そうな表情のまま、聞き返す。

 すると、パトラは、頷いて、自身も少し真剣な表情になって、説明する。

「母ちゃんがそんな事をしたわけじゃないと思う。ただ、イレギュラーな召喚だったことは確かだよ。パツシィは多分、メッセンジャー兼、観測者として、それに足るバックボーンのある母ちゃんの召喚に送り込まれたんだと思う」

「送り込まれた? 聖杯にですか? メッセンジャー兼観測者として、というのは?」

 セイバーが聞き返す。

「まず、さっき言ってた “瑞苑町から完全に出入りできなくなった時期”、それがこの、瑞苑の聖杯戦争の最中だった」

「!」

 セイバーは、それを聞いて、怪訝そうな表情にも、どこか色めきたったような瞳の色を見せた。パトラは、それを見つつ、

「それを前提に、その隣に貼ってある2枚の写真を見てみて」

 と、言う。

「これは……ほぼ同じ場所を写した写真……いえ……」

 2枚の写真には、セイバーが口にしたとおり、ほぼ同じ場所、ビルの正面出入口が撮影されている。

「字が……」

 セイバーは、光線の加減などではない、明らかに異なる場所を見つけて、呟いた。

 写真には、このビルがどこに所属する建物なのかの記述が写っている。

 1枚目には、「東日本旅客鉄道株式会社水戸支社」、と書かれている。

 2枚目には、「東日本旅客鐵道株式會社水戸支社」、 ────

「次のページに、もっと決定的なものがある」

 パトラに言われるままに、セイバーはページをめくる。

 同じように、ほぼ同じ場所────赤塚駅の自動販売機の前の排水溝の鉄蓋を写した写真だった。

 鉄蓋には、設備所有者の表記があるのだが────

 1枚目の鉄蓋には、「コクテツ」。

 2枚目の鉄蓋には、「省道鐵」。

 そして、もう1枚、写真ではなく、絵はがきが挟まれていた。

「これ……は……」

 絵はがきには、銀座か新橋辺りだろうか、正装姿の多くの人々が、何かの式典か、大きな日の丸を振りながら、行進している。

 なにより、その絵はがきに書かれている文。

『大東亞戰勝七〇周年記念式典』

「一応、召喚の時にこの世界の基礎的な社会知識は伝わっていると思うけど……」

「ええ……ええ解ります」

 ニュートラルな口調で言うパトラに対し、セイバーは、喉がカラカラに乾いたような様子で、言う。

「この戦争は……80年前の戦争は、立香や慎二達には申し訳ないですが……大日本帝国、ドイツ第三帝国、イタリア王国の属する陣営の敗北で終わったはず……」

「一応、アタシも今は、法律上は日本人なんだけどね?」

 セイバーの、記憶をなぞるような言葉に、戯け混じりにムッとした表情をつくって、パトラはそう言った。

「あ、すみません」

「あ、いや……まぁ、そう言うことなんだけど……その写真は、つまり、2015年の聖杯戦争の最中、瑞苑の住民が完全に出入りできなくなった状況下で、パツシィが写してきたもの、調達してきたものなんだ」

 手振りを加えつつ、パトラは説明した。

「彼は外に出入りできた?」

「そう」

 セイバーの言葉に、パトラは答える。

「ただし、アタシ達の知っている外の世界じゃない。ある一点での分岐が極端な形に遷移した可能性世界の “外の世界”。パツシィはそれを、異聞帯(Lost Belt)と呼んでいた」

「ロスト・ベルト?」

 その部分を聞いて、セイバーは怪訝な表情をする。

「それではまるで、その可能性世界が存在していけない存在のようではないですか」

「そうなんだ。おかしい話なんだよ」

 セイバーが疑問を呈する形で言った内容に対し、パトラは、頭を掻く仕種をしながら、自身も不可解、と言った様子で言う。

「パツシィが言うには、剪定事象と言われて、本来は可能性収束範囲(アトラクタフィールド)ごと斬り落とされ、存在や存続すら否定された可能性世界なんだそうだ」

「…………剪定事象の、条件は?」

「進化を止めてしまった、あるいはほとんど止まってしまって変革の期待できない可能性世界」

 セイバーの問いに、パトラはシンプルに答える。

「…………いえ、逆にそうだとするなら、今のこ(・)の(・)世(・)界(・)が剪定されていておかしくないはず……」

「そうなんだよねぇ……」

 思考を巡らしつつ、呟くように言うセイバーの言葉を聞いて、パトラはどこかニヤニヤとした苦笑を浮かべる。

「母ちゃんもずーっと疑問に思ってたことなんだけど、アタシのところにセイバーが来たことで余計にハッキリした。やってることにツッコミどころはあるみたいだけど、宇宙のエネルギー効率を考えてこんなマネするってんなら、唯一の最適解はサーヴァント・ユニヴァースだ。今のこの世界なんか比べ物にならない完成度だし。物質世界を延々続けてる現状の…………パツシィ言うところの、 “汎人類史” 丸ごと続ける意味がない」

 そこまでパトラが言ったところで、一度、沈黙が流れた。

「あるいは……」

 セイバーが、言う。

「あるいは、誰かが、剪(・)定(・)さ(・)せ(・)る(・)た(・)め(・)に(・)創(・)っ(・)た(・)?」

 その、呟くような言葉を聞いて、パトラはニヤリ、と笑った。

 

 

 ────────2016年新春、瑞苑町。

 谷地(やち)の石切場。

「セ(・)イ(・)バ(・)ー(・)・メ(・)ディ(・)ア(・)、あなたのマスターに伝えてほしいことがあるの」

「何かしら? アーチャーのマスター」

 クレオパトラ48世は、外部からの来訪者のマスター、マリスビリー・アニムスフィアのサーヴァントを、人気のない休日の石切り場に呼び出し、そう切り出した。

「人が神を創り出すな。人が神を気取るな。そして、神が人間より完成されていると思うな」

「…………」

 クレオパトラ48世が、どこか険しい表情で、メディアに伝える。

 それに対して、メディアは一見、澄ました表情で聞いていたが、僅かに焦りの様子を見せたことを見逃さなかった。

「魔女メディアだけあって、気付いてはいるようね、アニムスフィアの…………カルデアスの危険性を」

「…………肯定も、否定もできないわ」

 クレオパトラ48世の指摘に、メディアは、平然の体でそう答える。

「でもあなたの言葉は受け取った。必ずマスターに伝えるわ」

「お願い」

「…………私を、信じるの?」

 メディアの返答を、疑う様子もないクレオパトラ48世に対し、メディアは僅かに怪訝そうな言葉を返した。

「それは、あなたが “裏切りの魔女メディア” だから?」

「ええ」

 クレオパトラ48世が問い返すように言うと、メディアは悪びれた様子もなく言う。

 だが、それに対して、クレオパトラ48世は返す。

「でも、今(・)回(・)の(・)あなたは、 “セイバー” でしょう?」

「ふふ、そう言うことね」

 魔女メディアにまつわる剣のエピソードと言えば、息子メドゥスに与え、親子の復讐を成したそれだろう、と、クレオパトラ48世は想定していた。

「私も人の親だしね。それで裏切られたら、私が情に流されただけよ」

 クレオパトラ48世はそう言うが、それを聞いて、メディアは唖然とした表情を向けた。

「……………………は? あなたが? その形(ナリ)で?」

「うるさい!」

 クレオパトラ48世は、憤り混じりの苦笑で抗議の声を上げた。

「ああ、そうだ。それともうひとつ」

「まだ?」

 クレオパトラ48世に呼び止められて、メディアが、若干うんざりしたような表情を見せた。

「これはアニムスフィアに伝えなくてもいい。むしろ、下手な伝え方をして、却って彼を煽ってしまわないように、思慮が必要」

「…………それは……?」

 先程よりも、更に重々しくなったクレオパトラ48世の表情に、メディアも緊張する。

「第一魔法か第三魔法、あるいはその両方は、まもなく魔法ではなくなる。早ければ10年後には崩壊が始まり、20年後にはそれは確実になる」

「…………!」

 クレオパトラ48世の言葉に、メディアも目を見開いた。

「種はもう10年以上前に蒔かれている。魔術師が見向きもしていなかった間に。科学者ですらそれに思い当たる前に。日時は2003年9月23日。もう過去改変は許されない」

 

 

『皮肉なもんだ。俺達を異聞帯として剪定さ(・)せ(・)た(・)カルデアが、事(・)実(・)上(・)の(・)唯(・)一(・)の(・)異(・)聞(・)帯(・)と(・)し(・)て(・)剪(・)定(・)さ(・)れ(・)ち(・)ま(・)っ(・)た(・)……』

 ────────現在、202x年、瑞苑町、クレオパトラ49世邸。

「────と、パツシィは言ってた」

 クレオパトラ49世(パトラ)は言う。

「まぁ、そりゃその “カルデアのマスター”、本当に二度もの人理修復をしたってんなら、完全に新しい神様ですからねぇ……そりゃ世界から叩き出されても無理ないですよ」

 セイバーも、苦笑しながら言った。

「サーヴァント・ユニヴァースでは、神様も現存してるんじゃなかったっけ?」

 パトラが、意外そうな表情と口調でそう訊き返す。

「あくまで存在していた神様は、ですよ。近年になってからは、早々新しい神様なんて誕生しません」

 セイバーは、苦笑したままそう答える。

「まぁ、確かに日本の八百万の神がいるって考えたらそれだけで神様の権能カブりまくりか……」

 パトラのその言葉を聞きながら、セイバーはページをめくった。

「…………? この絵は?」

 アルバムのそのページには、やはり写真ではなく、薄い用紙に描かれた人物画が挟まれていた。

「パツシィが描いた、 “カルデアのマスター” だよ」

 パトラが言うと、セイバーは更にそれを凝視した。

「…………これ……どう見ても────」

 唖然とした様子のセイバーを見て、パトラはなぜか、可笑しそうにニヤニヤとしている。

「────立香さんじゃありませんか?」

 





具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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