※この作品はR-18です。

Fate/afterglow renew–uplift   作:神谷萌

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秋の瑞苑町
彼女(カレシ)と彼女(カノジョ) (NSFW)


 瑞苑町、下(しも)谷地(やち)地区。

 路面電車の瑞苑街線が、併用軌道から、梅瑞石の石切り場のある谷地(やち)地区へ伸びる専用軌道に入る、その北側の沿線。

 ちょっとした住宅街になっているが、北川端以南に比べると、都市内交通網から若干離れており、商店も少なく不便感があり、瑞苑町街区の中心部に比べると、若干寂れたイメージがある。

 そう言う場所ではあるのだが、鷺ノ宮琉希が物件を探していた時、ちょうど築浅で(琉希やクレオパトラ49世(パトラ)の金銭感覚では)手頃な価格の中古戸建てがあるということで、瑞苑に転居してくる琉希が新居とした。

 元々は若干小ぶりだが3LDK+Sの間取りの注文住宅だった。注文住宅が築浅で手放されているのは、何らかのい(・)わ(・)く(・)があることが多い。しかし、この家の場合は、建主が独身時代に将来に備えて建てたが、結婚するにあたってその後の生活についての話し合いで、相手の両親と同居することになり、この家は手放したということだった。

 ちなみに、義親と建主の趣味が一致して、同居しても趣味のスペースに困らないという。

 そこに琉希達が転居してきてから数週間────夏の強烈な暑さも和らぎ、晴天日の真昼以外は家庭に冷房も要らなくなった時期。

 シャァアァァァ……

「ふぅ……」

 その日の夕方、入浴中の琉希は、洗い場で身体を洗い終えた後、バスチェアに腰掛けて、僅かな間、視線を少し上に向けながら、ただぼうっとしていた。

 浴室は、新築時にタカラスタンダードが商品としていた、ステンレス浴槽システムバス『エメロード』。継ぎ目が細かいタイル張りではなく、パネル仕上げで、清潔感がある。

「…………」

 誰が見ているわけでもないが、気恥ずかしさを感じて、赤面しながら、おずおずと言った様子で視線を下げ、自身の股間を気まずそうに見る。

 琉希は────生来の男性だが、女性的な身体を求め、それを維持するように努めている。それも、乳房の発達まで始まっている。 ────が、所謂性同一性障害(トランスジェンダー)、ではない。性自認はあくまで男性であり、なんなら性愛対象も若干特殊な性向があるものの女性であり、またそれを異性愛(ヘテロ・セクシャル)として認識している。男性であることに不都合はないが、自(・)身(・)の(・)外(・)見(・)の(・)理(・)想(・)が(・)女(・)性(・)型(・)である、というものだ。異性装の極まったものである、と言えば解りやすいだろうか。

 また、三人称において、“纏うものの一部” として、She/Her(彼女)を望む。なので、以降は琉希をその様に表現する。

 彼女を天使のような見た目、と評するものも居るぐらいだが、実際が天使というわけではない。同年代の同性と同様に性欲はあるし、劣情を抱くこともあり、それに身体が男性としての生理的な反応をする事もある。それに対して拒絶感はない。

 ただ、現在起きたそれは、若干の罪悪感と言うか、バツの悪さがあった。

 体格に見合った大きさだが、キメの細かい色白な柔肌とも釣り合って、薄いピンク色をしているそれが、いきり立ってしまっている。

 琉希は、少しだけ自身のそれをじっと見つめた後、手を伸ばし、それを弄び始めた。

「ん……ふぅ……っ」

 ややハスキーがかりつつも高い声が混じった、吐息を出す。

 そこに至るまでは、少しおずおず……としていたが、一度握ってしまってからは、柔軟に握る力を変えつつも、積極的に自身のペニスを擦り始める。

「んっ……はぁっ……」

 途切れ途切れに漏れる声は、それこそ女性のそれそのものだった。

 ────この家は、玄関が東に面しているが、その前の中央線もない県道を挟んで、谷地へ向かう瑞苑街線の専用軌道区間がある。

 そのため、1階は水回り、台所、浴室、洗面所が玄関と同じ面に集めてある。同じ並びの戸建て住宅は、そのような構造の家が多かった。

 そして────

 ヴォアァァァ……

 ドドン、ドドン、ドドン、ドドン……

 1日1往復だから苦情もないが、電車より数段大きな抵抗器ブロアの音を立てて、谷地へ石材出荷のコンテナを積みに、東武から来たED46形電気機関車(元ED5050形)が、コキ107形貨車と軌道線内分離監視用のホフ1形緩急車を牽いて通過していく。

 ────その騒音のせいで、琉希は洗面・脱衣所に入ってきた人物……人(・)物? とにかく、それに気付かなかった。

「ふ、ぁぁ……あ、ぁぁっ!!」

 絶頂がスロースタートする女性のような、クライマックスの声を上げながら、琉希はバスチェアの上で身を仰け反らせ、一瞬後にビュク、ビュクッ、と、ペニスから精を放った────────

 ガチャッ

「ばぁっ!」

 突然、扉が開き、同居人、弓塚さつきが、入浴するつもりの裸体で入ってきた。

「うわぁっ!?」

 余韻に浸るまもなく、仰天した琉希は、バスチェアから転げ落ちかける。

「あ…………」

 体勢を崩した琉希、洗い場の鏡の下辺りに飛び散った白濁液を見て、さつきは、凄く気まずそうな表情になる。

「あー……えっと……その……ごめん?」

 いいつつも、さつきは裸体のまま、浴室内に入って屈むと、シャワーヘッドを手に取り、シングルレバーの水栓を開き、出るお湯の温度を確かめながら、琉希が浴室の床に撒いてしまった精液を洗い流す。

 床を流してから、さつきはそのまま、琉希の股間をもシャワーで洗い流そうとした。

「やっ……ぁ、じ、自分でやるよっ」

 そこでようやく我に返った琉希は、彼女にしては珍しく、そう言いながらシャワーヘッドをさつきからひったくるようにした。

「うう……」

「ごめんごめん。やっとお風呂に入れるようになったからさ、せっかくだから琉希クンと一緒に入ろうかなって……思っちゃった」

 さつきは、いくらかの気まずさを伴いつつも、悪戯っぽく笑いながらそう言った。

 ────地方のLPG地区では昔はよくあり、今も見られるのだが、建主が新築した時の給湯器は、ガス会社の無償リースだったらしく、撤去されてしまっていた。物件そのものの価格が手頃だったのは、その分もあったらしい。

 それで、給湯器を再設置するとなって、当然、ガス栓は給湯器設置場所のそばまで来ていたのだが、

「なぁ灯油にしよう? あたしがクチ聞いて安く着けるからさぁ、ねぇ、ねぇ、ねぇ?」

 と、今まで仲間内で唯一石油給湯器だったものだから、安マンション住みの立香にまで下に見られていたパトラにそう言われ、師匠と言って付き合っている関係もあって断りきれず、長府の石油給湯器を取り付けることになって────それを選んだからというわけではないが、工事待ちでようやく今日から自宅でお湯が使えるようになった。

 ちなみに「少しでも安く着ける」と言った手前か、どこで拾ってきたんだかパトラが中古美品の164lタンクを持ってきてさっさと取り付けてしまい、2週間ばかりタンクだけがトマソンと化していた。 ────閑話休題。

「別に────普段女の子扱いされるのは構わないし、その、嬉しい面もあるんだけどさ……部屋のこととか、ボクは自分の認識としては男だからさ……」

 僅かに憤りを交えつつ、言いにくそうにくぐもりがちな口調で、琉希はさつきに言う。

 さつきの再実体化から、琉希としては、寝室は別室、のつもりで、急遽3DKもしくは3LDKで探して貰ったにも関わらず、いざ入居するとなると、さつきは当然のように私室を共有したがるし、四六時中琉希ベッタリの生活をしている。

 聖杯戦争の間は、それも当然か、と琉希も、容認、というより自身からも積極的にそうしていた為、琉希の方も距離の近さを意識しなかった。

 だが、平時の生活に戻る過程でこうなると、琉希にとっては性愛対象の異性なわけだ。少女のように振る舞い、女性と同性的に戯れることは苦ではないし、むしろ好むところだが、24時間完全ボーダーレスとなると、生理的にいろいろ不都合が出てくる。何より、性欲がないわけではないから、その発散もおちおちできない。

 徒歩圏の食品・生活品販売店がコンビニエンスストア『デイリーヤマザキ瑞苑下谷地店』しかないことをいいことに、さつきに買い物に行ってもらって、その間に、それも万一戻ってきてもすぐには目にされないようトイレなどで処(・)理(・)する、というようなことをやっていた。

 流石にこれでは鬱屈がたまる。それに、買い物の方も自分も(・)行きたいという欲求があるからその面でもストレスになるし、ついでに師匠(クレオパトラ49世)ともども短期間で売買を繰り返すタイプではないとは言え、ストック(株式)トレーダーでもあるからそれにも多少とは言え支障をきたす。

 困ってはいたが、今までは、今後の関係も考えて、どう言ったものか……と悩んでいた琉希だったが、自分の入浴中に全裸で踏み込んでくるとなって、流石に釘を差さないと駄目か、と覚悟を決めた。の、だが────

「自分を大切にして…………と、言うのはなんかおかしいのかもしれないけれど、もうちょっと自覚してって言うか、意識して欲しいって言うか……」

 琉希が、自分でもどんな表現が適当なのか困りつつもそう言うと、さつきは、キョトン、とした様子で、琉希を見る。

「えっと……理解したうえでしてるよ?」

 と、さつきが言った。

「え?」

 今度は、琉希の方が呆気にとられた表情をする。

「うん。確かに琉希クンの見た目がハードル下げてるなぁとは思うけど、琉希クンをその……つまり、誘惑、って言っていいのかなぁ……とにかく、そのつもりでやってる」

「え、え?」

 琉希は困惑の様子を隠せない。

「え、だって、確かに濃くはあったかもしれないけど、ボクとさつきは会ってからそんなに日だって……」

「…………うん、私、ね、自分でも両極端だなぁとは思ってるけど、 …………前(・)の(・)人(・)のときは、慎重になりすぎて、バッドエンドだったから……さ」

 どこかしんみりした様子で、さつきが言う。それがまた、見た目の年格好からは不釣り合いな、寂寥感の混じった色気を感じさせる。その顔に、琉希は現状を一瞬忘れて、見とれてしまった。

「…………その、生(・)前(・)の(・)生(・)前(・)、のとき、だっけ……」

 琉希が、口調を重くしながら、言った。

 さつきの生前は、死徒、一般的なところの所謂、吸血鬼だった。それも、並大抵のレベルではない。元が魔術とは無縁な一介の学生だったとは思えないほどのポテンシャルを持ち、短期間────1年経たずに固有結界まで発現させるようになるほどの。

 …………しかし、それはつまり、普通の人間の少女だったさつきが、死徒となり、生活面でも、行使できる力的にも、それまでの日常から突然にドロップアウトさ(・)せ(・)ら(・)れ(・)た(・)ことを示す。

 それに、現在はサーヴァントとして魔力供給を受けている形態だから大丈夫だが、本来の死徒としてのさつきは、ブラム・ストーカーの吸血鬼像よろしく、日光や流水が致命的となりうる存在だった。

 さつきは頷く。

「だから、琉希クンには積極的にいこうかな、って…………一応、覚悟も決めてるつもり」

 少しだけ照れ隠しにもじもじとしつつも、手で覆い隠す意図も見せず、充分に悩ましげな裸体で、そう告げる。

「それに……」

「え……? あ……」

 さつきの視線が、一度そこに向かったことに、琉希も気がつく。見惚れているうちに、琉希のペニスは、また力強く上を向いてしまっていた。

 さつきが、妙な妖艶さをもった笑顔になって、琉希に迫る。

「今の私、吸血鬼だからさ、その、人間だったときよりも、欲しいモノに対する我慢がしにくくなってるっぽいんだよね……」

「わぁっ!」

 まるで覆いかぶさってこようとするかのさつきに対して、琉希は驚いたような声を上げて、慌てて押し返した。

 すると、さつきは、一瞬ニュートラルな表情で琉希の表情を見てから、少し寂しそうに苦笑した。

「やっぱり……ダメかぁ……私って」

「だぁっ……そ、そうじゃなくて……」

 そう言われると、琉希は慌てたように手を振る。

 さつきが琉希に視線を向け直すと、琉希は照れたように視線を逸らして、

「その……そう言う目で見てなかったらこうなってないって……」

 きまり悪そうにしつつも、今度は自分の方が、裸体を見せるようにバスチェアに座った状態でそう言った。

 気まずさがあるが、不快さはない奇妙な沈黙が流れる。

 ヴァアァァァン……

 バタンバタンバタンバタン……

 すでに陽の落ちた外から、電車の通過音が響いてくる。

 それが過ぎていったのを、まるで合図にしたかのように、

「お風呂場でそう言うコトするのってあるけどさ……その……やっぱり初(・)め(・)て(・)はそう言う場所とかムードとかも大事だと思うし……」

 と、琉希はそう言いつつ、覚悟が決まったかのような表情でさつきに視線を向け直した。

「初めて……」

 琉希は、お(・)互(・)い(・)相(・)手(・)と(・)し(・)て(・)初(・)め(・)て(・)、という意味で言ったのだが、さつきは、若干の誤解をしつつ、先程までの態度とはまた変わり、恥ずかしそうに赤面して軽く俯く姿勢になった。

「そ、そうだね……」

 

「だから、この後……」

 

 この琉希邸には、間取りが3LDK+S、としたとおり、実質的には1階にLDKと和室1間、2階に洋室1間と和室1間の他に、4畳ほどの広さの、質素な板張りの部屋がある。

 納戸と言うよりは、建主の趣味部屋として使うつもりだったようだ。ちなみにこの部屋は2階の最も東寄りにあり、窓を開けると、県道を挟んで瑞苑街線の専用軌道区間が見える。

 ────が、今は真逆に最も西側の部屋。

 琉希が私室、2人の寝室として使われている、8畳の和室だった。

「あはは……改めてこうなると、恥ずかしいね……」

 敷かれた1枚だけの布団の上に、緩く膝を曲げた状態で座り、さつきは、照れくささを苦笑で誤魔化し、頬を掻く仕種をした。

「…………どうする?」

 それを聞いて、琉希は、一旦口元から笑みを消し、訊ねる。

 生物学的には琉希はあくまで男性だし、さつきが死徒となって身体の変化が固定された時の歳より、すでに自動車運転免許証を持っている琉希の実年齢のほうが上だが、体格は、少なくとも身長ではさつきの方が高い。と言っても、さつきが特段大柄というわけではないが。

「あ、ううん。嫌になったとかじゃないから……あ、えーっと……」

 逆にさつきの方は、照れ隠しの苦笑を強め、

「さっきはああ言ったけど……その、 ……私の方が貰って……貰われたいかな」

 と、冗談めかして言い、口元で笑んだまま、琉希の顔をじっと見つめた。

「うん、じゃあ……」

 琉希は、そう返事をすると、照明の紐スイッチを引こうと手を伸ばす。すると、

「あ、待って」

 と、さつきが制した。

「点(つ)けたままでいいよ」

「えっ?」

 主照明のない方が雰囲気もそれらしくなる、と思っていた琉希は、意外そうな声を出した。

「ほら、私は部屋を暗くしても普通に見えちゃうからさ」

 さつきは、苦笑交じりにそう言った。

「それは……そうかも知れないけど……」

「私からだけ見えてたら、不公平でしょ?」

「そう……かな」

 奇妙な感覚を受けながら、琉希は手を下ろす。

「その、さ……」

 むず痒そうな表情をしている琉希を見て、さつきは、決まり悪そうに苦笑する。

「だから、見て欲しいの」

 そう言われて、琉希は、思わず、さつきの肢体を凝視してしまった。

 自身では知識しかなかったが、まずは、覆いかぶさるような位置関係になりつつも、さつきに体重をかけないようにしながら、きゅっとさつきを抱き締めた。

 全裸同士で、肌が密着する。

「琉希クン」

 さつきが、どこか真顔で言う。

「体重かけても、私、支えられるから……」

「え、でも……」

 先程のやりとりで、自身ははっきりと男性的な振る舞いを求められているのだと理解していた琉希は、少し戸惑ったように言葉を出す。

「だから、もっと、ぎゅっと抱き締めて。距離がとにかく近くなるように。もう、冷たい世界で生きてるんじゃないって解るように……」

「…………解った。じゃあ」

 さつきの吐露に、琉希はその切ない気持ちを受け止めつつも、それに自身の欲求も混ぜ合わせ、ぎゅっとさつきの身体にまわした腕に力を込め、お互いの柔肌を押し付ける。

「さつき……」

「んっ……琉希クン……」

 さつきの方も、琉希の体重を受け止めながら、自分からも抱きつき返す。

 まずは、お互いの距離を限りなく近づけようと、身体という境界線も煩わしく思っているかのように、強く深く抱き締め合う。ひとしきりお互いの肌と体温を感じあった後、どちらからともなく腕の力を少し緩めると、もう一方もそれに従い、上半身を軽く離す。

 横になった状態だが、まるで琉希の方が背伸びをするかのように、キスを交わす。

「ちゅ……ちゅっ……」

「んちゅ……ちゅっ……」

 最初にしっとりと唇を重ね、吸いあった後、唇の浅い位置でだが、舌を出して相手の舌や唇と触れ合う。

「はぁ……んっ……」

 存分にお互いを近づけあった後、息を整えながら一旦、琉希が布団に手を突き、さつきの方も腕を緩めて、ゆっくりと離れる。

 お互い、息が少し荒くなっている。人間で酸素を要する琉希はもちろん、さつきも興奮で発生した熱を吐き出す。

 少し息を整えたところで

「……改めてこうすると、本当に琉希クンって、肌がすべすべで柔らかい」

 と、さつきが、気恥ずかしさを誤魔化すのも兼ねて、いたずらっぽく笑いつつも、感心したような口調でそう言った。

「う、うん……気はつけているつもりではあるけど……こうしてても?」

「うん……嫉妬しちゃいそうになるぐらい」

 少し戸惑ったように返す琉希に、さつきは、そう言うと、下から琉希の身体に手を伸ばす。

「胸のあたりとか……ほら、完全におっぱいじゃない」

 ふに……と、女性のシルエットとして差し支えないなで肩ながら、明らかな男性の胸郭に形成された明らかな乳房を、少し圧しつつ撫でる。

「んっ……ふっ……ぁ……」

 拒絶はしない。乳房を刺激されて、琉希は、うっとりしたように軽く目を閉じて、軽く震えつつ、声を漏らす。

「ふふ、声まで女の子みたい」

 恥じらいと興奮に頬を染めつつも、さつきは、どこか楽しそうに笑ってしまう。

「んっ……えっと……そ……その、さ、ボク……」

 どう言ったものか、と、力は緩めつつもさつきの指先で自身の乳房を弄ばれながら、琉希は、それを心地よく感じつつ、言葉を発する。

「嬉しいんだよね? 女の子みたい、って言われるの」

「うん……」

 普段はそれに恥じることはないと振る舞う琉希だが、それは、琉希の個人だけの範疇にとどまっていたということもある。セクシャルなパートナーができるとなると、その相手がどういう感情を抱くのか、それは気になってしまう。

「えっと……ごめん、少しだけ、変わってるな、とは思ってる。でも、蔑んではないよ」

 さつきは、紅い顔でニコニコと笑いながら、軽い口調で言う。

「もう、羨ましくなっちゃうぐらい可愛いんだから」

 さつきは、対比になる自身への自嘲も絡めた苦笑で言うが、

「うん……うん、でもさつきだって、その……魅力的だし……」

 と、琉希は、自分は悪い気はしないが、自身を褒めるのに自身を低くさつきをフォローするように、返した。

「うん、ありがとう」

 さつきは、そうは言うものの、容姿については、どこか自己評価が低いことを、琉希は以前から気づいていて、それが出ているなと感じた。

「さつき、さ、ボクって、その……好きになったりとか、その、そう言う気持ちになる相手って、“男性として、女性が対象” なんだけど……」

 琉希は、覚悟を決めたように、熱のこもった視線をさつきの顔、それにその肢体に向けながら、彼(・)女(・)に(・)し(・)て(・)は(・)少し低い声で言う。

「え、う、うん、それは解ってる……け……ど……?」

 さつきは、少し戸惑ったように語尾を上げる。琉希は決して常に優柔不断なタイプではないのだが、今のは少し直前までと変化が大きいように感じた。

「ボクはさ、普通の男の人と同じように……うん、タイプなのは綺麗って言うより、可愛いっていう感じなんだけど……その、ドキドキしたり、エッチな気分になったりするんだけど、それと同時に、『ああなりたい』って思う気持ちが伴うんだ」

「えっと……えっと……え? それって言うことは……」

 さつきは、琉希が言っていることがどういう意味か、徐々に理解して、驚いたような表情になる。

「私みたいに、なりたい?」

「うん」

 さつきの言葉に、琉希は即答した。

「それも、かなり理想的。ボクって、今だと、ただ痩せてるようにも見えるからさ……さつきみたいに、その、少しふっくらした感じになりたいなって……」

 琉希は、そこまで、断定するかのように言ってから、

「って、あ、その、ふ、太ってるって言うか、そう言う意味じゃないよ?」

 と、キメきれずに、慌てたフォローが入った。

「うん、悪意がないのは解ってるよ。でも、私それほどかな。琉希クンが理想って思うぐらい……」

 恥ずかしそうに顔の紅みを増しながら、さつきはそう言った。

「て、照れちゃうよ……」

「わっ……」

 さつきは、思わずという感じで、半ば抱(かか)えるかのように琉希に抱きついた。

 すると、それが琉希が意図しない動きだったからか、さつきは、自身の腹部に異物が触れるような感触を感じた。

「あっ……えっと……琉希クン……」

「う、うん……」

 さつきが腕を緩め、身体が少し離れると、その異物感の正体────力強く勃起した、琉希のペニスが視線に入る。

「その……改めて見ると、結構大きいんだね……」

 思わず、さつきはそう言ってしまっていた。

「うん……嫌ではないけど。肌の色は黒ずまないように気をつけてはいるけどね……」

 流石に、少し決まり悪さを感じつつ、琉希はそう答える。

「充血して、濃いピンク色になってて……綺麗だけど、はち切れそうで、辛そう……」

 目を細めながら、さつきは言った。

「辛いってほどじゃ……でも……」

 琉希がそう言うと、さつきは、こくん、と頷きつつ、自身も熱に浮かされたような紅い顔に、口元で笑む。そして、軽く脚を開いた。

「いいよ……琉希クンのそれ……」

 陰毛は生えているが、陰唇の上部に刈り込んだ部分を残して、恥丘の部分は剃り落としてある。

「その、いきなりじゃ……」

 ウズウズとしつつも、琉希はさつきを気遣うが、さつきはうっとりしたような笑顔で、

「大丈夫だよ、ほら……」

 すでに、恥丘の周辺には、形の綺麗な陰唇から愛液が滲み出していたが、それをさつきが、自身の指で少し刺激すると、潤った陰唇が綻び、さらに溢れ出してくる。

「じゃ、じゃあ……」

 琉希は、姿勢を軽く直すと、自身のいきり立ったペニスを、その僅かに開いた陰唇に、そっと当てる。

「あ、あっ」

 琉希の方が、驚いた、慌てたような声を出した。慎重に推し進めようとしていたのが、力加減を誤って、強く押し込んでしまう。

「ん、つ、痛(つ)ぅっ……」

 さつきの身体が強張る。琉希のペニスが膣内に押し入ってくると、鋭い破瓜の痛みが走る。身体の力を抜くように努力しつつ、息を深く吸って痛みを制御しようとするが、うまく整わない。

「さつき……って、あ、は、初めてだったんだ……」

「ふぅ、ふぅ…………え……?」

 琉希がの軽い驚愕の声に、息を整えながら、さつきの方も驚き返す。

「琉希クン、さっき、その、初めてって……あれ?」

「え、う、うん……?」

 両者、言葉の齟齬があったのはなんとなく気づいたのだが────

「ううっ……」

「って、さつき……大丈夫?」

 さつきが表情を歪ませて声を漏らすと、琉希が驚いた様子で、不安気に問いかける。

「大丈夫……痛いけど、それだけじゃないから……うん、最初は痛いばかりだって言われてたから覚悟してたけど、なんか、こう……痛いんだけど……痛くて、ジンジンして、疼くところが凄く熱くて……私の中に……こんな熱いのが……ふぁ……」

 痛みの為に引きつりがちな表情であるものの、さつきの言葉や息には、浮かされてうわずった様子がだんだんと混ざってくる。はっきりとした快楽ではないが、抗いがたい感覚を感じていた。

「それに……慣れないと、多分……ん……私、処女膜……再生しちゃう、から……」

「あ……」

 ヒトから死徒になったさつきは、その時点で身体の変化が固定されている。

 髪や爪のように神経も血管も通っていない場所ならある程度なんとかなるが、そうではない部分は、傷つくと────つまり、変化があると、原状に復帰しようとする。

 復元呪詛────回復能力と見れば有利な能力ではあるのだが、その言葉で分かる通り、傷つくことができない、死ねない、という、呪い(●●)でもあるわけだ。

「琉希クン……その、ゆっくりと動いて……」

「う、うん……」

 さつきの方にねだられて、琉希は返事をしてから、慎重に、すーっ、と、深いストロークで中を往復しようとする。

「んっ……あ゙っ、あ゙っ……あ……はっ……」

 さつきが、痛みに耐えるくぐもりの混ざった声を漏らすのに対して、

「んっ、はっ……あっ……、包まれてて、引っ張られて……はっ、ぁっ……」

 と、琉希の方も、さつきにはそう意識したものの、自身も脱童貞(ロストバージン)になる経験に、まるで女性のように声を漏らす。

「ぁっ……ぁ……っ」

「琉希クン……琉希クン……」

 抗い難く魅惑的な痛みと疼き、熱が、自分の中でゆっくりと移動する感覚に、さつきは、うわ言のような声を漏らす。

「さつき……ふぁ……さつき……ぁっ……ボク……」

「うん……うん……」

 琉希は、ゆっくりと丁寧な往復を続けていく。琉希の性的絶頂の特異性もあって、烈しくがっつくことのないそれが、長く時間をかけて行われていく。

「っあ……さつき……ひぁ……さつき……っ」

 一定のペースで動き続けながら、琉希は、さつきの乳房に手を伸ばし、触れた。

「ぁっ、わたしっ……ひ……っ」

「さつきの……胸……っ、綺麗……で……」

 その形を確かめるかのように、撫でるように乳房全体を手で弄んでいく。

「はぁっ、はぁっ……ぁ……っふーっ……ふーっ……」

 ある程度、時間が経過したところで、さつきの息が、にわかに、徐々に苦しさを増していく。

「はぁっ、はぁっ、……ひゃっ……ん、ぁっ……」

 琉希の方は、奥まで差し込む度に、強い刺激を受けたような声が漏れるようになる。

「ぁ、……あ、ぁ……っ」

 琉希は、脚を震わせた後、往復を止めて、じっくりとだが強く、届くところまで深く差し込み、身体を密着させようとする。

「あっ、あっ、深い……あっ、私っ、私っ……」

 さつきの方も、震える腕で琉希に抱きついた。

「ふぁっ、ぁっ、ぁっ、はっ、ぁぁぁっ……っ」

「あっ、あ゙っ、あ゙っ、あっ……はぁっ……っ」

 2人は、深くまで繋がったまま、抱き合って、びく、びく、と身体をビクつかせていく。

 琉希の女性のようなスロースタートのオーガズム。少しだけズレてさつきも上り始める。

 その行程のクライマックスで、琉希のペニスからさつきの膣内に精液が放たれる。

「あっ、はっ……はっ……はっ……ぁっ……」

 力尽きかけた様子の琉希は、腕や脚を震わせながら、さつきの中から引き抜いて、それから、さつきに抱きつき直しつつ、崩れ落ちた。

「琉希……クン……」

 まだ力には余裕があるさつきは、それを受け止めて抱き返しながら、そっと言う。

「大事にしてね……マスター……」

「…………」

 その表現に、琉希は思うところがあったものの、彼女の方には、もう思考する体力の余裕がなかった。

「うん……大事に……するよ……」

 

 

 ────────瑞苑の聖杯戦争の前。

「美味しい!」

 転居前の琉希邸。

 召喚の翌日の昼食。

 琉希が出発の準備に忙しい中、さつき(アサシン)はチーズだけ買い足して、遠征前の残り食材で作ったドリアを、琉希に振る舞った。

「ボクも料理には自信がある方だったけど、これは本当にお店に出してもおかしくないよ!」

「やだなぁ……大げさだよ。ありあわせだし、時短レシピだし……」

 オーバーリアクション気味に興奮して言う琉希に対し、さつきは苦笑して、そう謙遜する。

「…………あ、でもさ」

 その事に気づいた琉希が、言う。

「次からはさ、作るときは2人分作りなよ」

 自分は特に食事する様子もなく、ただ、席について琉希を眺めていたさつきは、それを聞いて、キョトン、とする。

「2人分?」

「うん。さつきの分。手間が増えるって言うなら、ボクも手伝うからさ」

 問い返すさつきに対し、琉希は、彼女の外観も相まって無邪気そうに答える。

「え……でも、私は、ただサーヴァントってだけじゃなくて……」

 さつきは、琉希の提案に困惑する。

「でも、食べられないわけじゃないでしょ?」

「うん……まぁ」

 さつきが、琉希の問いかけに答えると、琉希は、少女のようにいたずらっぽく笑った。

「ボクは、さつきと一緒にご飯が食べたい、かな」

 

 

 あのときも、最初の1歩を踏み出してたら、また、違ったのかな……

 

 ────────現在。

 ヴォアァァァ……

 ドドン、ドドン、ドドン、ドドン……

 電気機関車が、石材出荷用の20ftコンテナ3個を載せたコンテナ車と、緩急車を牽いて、東瑞苑へ向かって走っていく。

 緩急車では、専用軌道内では椅子に座って待機していた保安係が、立ち上がり、併用軌道内の分離監視に備える。

 東瑞苑で緩急車は切り離し、瑞苑貨物取扱所で待機している6両のコンテナ車を連結して赤塚に向かう。

 時間は21時を僅かに過ぎた頃。まだ、現代日本の成人にとっては宵の口にもなっていない時間だが、疲弊のためか、琉希は早くも寝息を立ててしまっている。

「でも」

 自分の身体が落ち着いたさつきは、琉希を観察していたが、やがて、呟きにしては妙にはっきりと、言う。

「代替品(かわり)だなんて、思ってあげないからね」

 

 





挿絵(別アカウント)
https://x.com/mSq20U7Q2QIQDg6/status/1975261953359814773
でも、これ生成したときはまだ、和室の設定じゃなかったんだよね。(汗

新琉希邸の給湯器 CHOFU EHK-4771DKAF

具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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