毒親に虐げられた青年は宝籤で大金を手に入れたので母親に復讐する話 作:葛轍偲刳
誠二たちを逃がした後、俺は幾つかの手を打った。
まずは足掛かりとして地方都市の不動産情報に目を通す。閑静な別荘地帯。シーズンオフで管理人もいないような物件を選ぶ。不測の事態にも備え、ある程度の纏まった期間を借用する契約で申し込んだ。
次にレンタカーの手配。目立たない平凡な中古車を予約。念のため、複数の店舗でいくつかの車を確保する。
次に食料と燃料。非常食も含めて最低でも一週間から十日は軽く持ちこたえられる量を確保する。長期間の保存が効く食品や水。調理器具や寝具も一通り揃えた。キャンプ用品として扱えば怪しまれることはない。
「宗一郎」
ベッドで俺の体に裸の叔母さんがしなだれかかっている。先程までの交わりで汗ばんだ肌が俺の肌に密着する。
「叔母さん?」
着々と準備を進めていく俺を、何も言わずに見守っていた美和子が突然俺を呼んだ。
「私も行くわ」
言葉少なに俺の耳元で囁く。甘えと懇願の響きが混ざった声音。
だがそれは同時に覚悟を決めての宣言でもある。
「……。叔母さんには、留守番してもらおうと思うんだけど」
「どうして?」
叔母さんは俺の胸板に顔を埋めながら抗議する。
俺は溜息をつくしかない。叔母さんの意志は固い。これ以上は説得の余地はない。
「……危険だからだ。俺がこれからやろうとしていることは、叔母さんが関わるべきではない」
「どうして? 私は宗一郎の愛人で、家政婦よ。そういう契約でしょう? 私は宗一郎の傍にいるわ」
美和子叔母さんが俺を見上げる。潤んだ目で訴えかけるように。その眼差しは愛する男に対する深い情愛と忠誠心に満ちている。
その目を見てしまうと俺は何も言えなくなってしまう。この女はもう俺のものなのだという実感が募るばかりだ。
「それに私だってもう決めたのよ。宗一郎が何をしようと私は一緒に行くわ」
「だが――」
「いいえ、ダメ。絶対にダメよ。あなた一人では行かせない」
美和子叔母さんの声には悲壮感すら漂う。自分一人を安全地帯に置き去りにする俺に怒りすら覚えているようだった。
「私は宗一郎の叔母だし、愛人だし、家政婦よ。私はあなたと一緒にいる。それが私の決意なの」
「……」
俺は黙って叔母さんの言葉に耳を傾けた。俺には拒否権がないと悟った。この女の覚悟は既に決まっているのだ。
「わかったよ」
美和子叔母さんは安堵したように微笑むと俺の首筋にキスをする。その唇が徐々に下へと移動していく。鎖骨から胸へと舌を這わせる。乳首を舐められるとゾクリとした感覚が走った。
「……美和子」
叔母の名を呼ぶと彼女は嬉しそうに反応する。猫のような仕草で甘えるように俺の体にしがみついてきた。
「はい」
そしてまた唇を重ねてきた。今度は舌先を絡めて濃厚なキスとなった。
「ん……っ♡」
お互いの唾液を交換し合いながら俺たちは何度も繰り返し口づけを交わす。それは愛を確認するための行為でもあり、これからの行為に対する前戯でもあった。
暫しの後、美和子叔母さんは俺から離れた。濡れた口元を手の甲で拭いながら上目遣いに俺を見上げる。
「宗一郎の望みを果たすためなら私は何でもするわ」
「……」
俺は無言で彼女を見つめ返す。
「他の女の世話も、調教の手伝いも。言うことを聞かせられるようになるまで。宗一郎のどんな命令にも従順に従う奴隷になるまで」
俺の心を読まれていたのか、悟られたか。誠二からある程度の事情を聞いた可能性もあるが。
真由さんの母親を、まず自発的に改心させるのは不可能。そんなあやふやで不確かな低確率に賭けるより、もっと確実で簡単な方法がある。
「私ならきっと役に立てると思う」
美和子叔母さんは自信ありげに胸を張る。裸の胸が揺れる。
「だって私は女なのよ? 同じ女としてわかるの。女の気持ち。女の弱さ。女の脆さ。女という生き物がどれだけ狡猾か。でもその反面、女はとても弱い生き物だってことも知っている」
そう言いながら彼女は自分の乳房を持ち上げるようにして揉みしだく。その指先は次第に乳首へと向かっていく。
「女っていう生き物はね。心も体も弱い存在なの。だから簡単に壊れてしまうわ。壊れやすく儚い存在だからこそ壊してしまいたくなるものじゃないかしら?」
美和子叔母さんは妖艶な笑みを浮かべる。
「壊してしまえばそれで終わりだけどね」
彼女の瞳の奥には狂気が宿っている。あるいは憎悪と怨嗟の炎が燃え盛っている。
「だからこそ私は宗一郎に尽くすのよ。――…姉さんにも、そうするつもりなんでしょう? そのための予行演習ってところかしら?」
「……よくわかるね」
あのアバズレも、いずれ機会があれば復讐するつもりでいた。だが、そう簡単に壊してしまってはつまらない。もちろん殺してしまっては意味がない。
生かさず殺さず、壊さず再生不能にし、その精神を粉々に砕いて塵芥にまで磨り潰す。廃人としての余生を送らせることこそ最大の復讐というものだ。
あの女はそれだけのことをやってきたのだ。幼い俺を虐げ、妹の美和子にも迷惑をかけて生き続けてきた。自分と美和子の両親にも迷惑をかけた。絶縁されるまで、どれほど尻拭いをさせ続けてきたか。
しかし、人間というものは扱いが難しい。一つ間違えれば簡単に壊れてしまう。だからといってそうそう練習する相手は見つからない。いなくなっても良い人間などそうはいないし、やり過ぎれば簡単にバレる。そうなれば身の破滅だ。
復讐さえ叶えれば後はどうなってもいい、というわけではない。あのアバズレが惨めに落ちぶれ果てて死ぬまでの時間、俺は、俺たちは安楽に生きる。俺と美和子は二人で愉しみながら暮らす。そうであってこそ復讐する意味と甲斐がある。そうでなければリスクを冒す必要はない。
「真由さんのためにも、そうするだけの理由があるからこそ、練習相手としてはうってつけなのよね?」
「そうだね」
そういう意味でも、今回のことは降って湧いたような絶好の機会だった。真由さんのことを思えば幸運だとは間違っても言えないが。偶然にも都合良く練習台が転がり込んできた。
美和子叔母さんは満足げに微笑んだ。
「なら、いいじゃない。私だって姉さんの時は手を下したいわ。間違って殺してしまわないように、今のうちに練習させて」
酷い話だ、と思う。あの優しかった叔母さんが、こうも変わってしまった。変えたのは俺だが。
俺に顔を寄せてきた美和子が唇を重ねてくる。ねっとりと舌を絡め合う。唾液を交換しながらお互いの口内を蹂躙していく。
「ふぅ……ん…」
美和子叔母さんは鼻から甘い吐息を漏らす。俺の唇から舌を引き抜くとペロリと舌先で唇を舐めた。
「これで私たちは共犯者。私と宗一郎は一蓮托生。ずっと一緒。宗一郎と一緒に堕ちていくわ」
「そうだね。俺は叔母さんを絶対に離さない」
俺は諦めた。俺が地獄に堕ちる時も、美和子は釜の底まで追いかけてくるだろう。
「わかってくれた?」
「わかったよ。俺には叔母さんが必要だ」
「嬉しい……」
美和子叔母さんは俺を強く抱き締める。
「それじゃあ、さっそく練習しましょう?」
彼女の瞳が爛々と輝きを増す。欲望と期待に満ちた眼差しで俺を見上げる。その様子は淫猥で美しい。
「まず最初に、どんな命令をするの?」
美和子は俺の耳元で囁く。艶めかしい声が鼓膜を通して脳髄まで響いてくるようだった。
俺の思考は停止する。理性は霧散する。残るのは獣性と情欲だけだ。
「そうだな…――」
俺は美和子の胸を掴んだ。
「命令するよりも前に、とりあえず弱らせるところからかな。余計なことを考えられなくなるまで、じっくりと」
「どんな風に? ずっと飲まず食わずで犯しっぱなし?」
「俺一人ではそこまでは出来ないよ。それに、そういうのは途中で休みを入れたら効果が薄い。叔母さんを放置して、ずっとかかりっきりで相手をしてやる方が俺にとっては不快だし」
柔らかい乳房をじっくりと揉む。豊かで弾力のある感触を堪能しつつ親指と中指で左右の乳首を同時に摘まんだり引っ張ったりすると面白いほどに反応する。叔母さんの乳首はすでに硬く勃起していた。コリッとした感触が指先に伝わってくる。
その度に美和子叔母さんは甘い声を漏らしながら背中を仰け反らせる。その姿は非常に扇情的だった。
「もう、宗ちゃん、ダメよ、今は大事な話を……」
「ちゃんと聞けよ、美和子。俺の話を」
自分で美和子の集中を妨げているのは百も承知で、俺は傲慢にも嘯く。なんて身勝手なと思いつつも、だからこそ俺はそうする。そうすることで、甘えている。こんな理不尽をさえ受け入れてくれると信じているから。
だからこそ俺は傲慢に振る舞えるのだ。
「地下室に入れて、体は動けないようにして、目隠しをしてやって、その上で放置する。股間にはローションまみれのバイブをぶちこんでやって、口には輪っかのついた猿轡をつけて。飲み物は水、食べ物はエナジーゼリーだけ。低ナトリウム血症を誘発させて逃亡を防ぎつつ思考力を低下させる」
体内の塩分が低下する低ナトリウム血症は軽度なら疲労感、頭痛、食欲不振といった症状が出る。重度になると錯乱やひきつけ、筋肉の痙攣など。大抵の場合は汗をかき過ぎた時に水ばかり飲んで塩分を摂らない時に発生することが多い。今回は水を大量に飲ませた上で股間を継続的に刺激してやることで排尿を促し、少しずつ塩分を排出させる。
「美和子は一日に三回ほど世話をしてやるだけでいい。拘束が緩んでないかを確認し、口に水と食べ物をぶちこみ、バイブが外れていれば軽く洗ってからローションを塗りたくってオマンコに入れ直す。あとは風邪を引かない程度に一日一回は体を拭いてやって、垂れ流しの排泄物を綺麗に洗い流すぐらいは必要かな。これなら掃除と炊事の領分を越えない範囲内で済むだろう?」
逆に水を与えすぎて溺死させないように注意しつつ、適度に排尿させて水分と塩分を調整すれば、死なない程度に弱らせることが可能だ。もちろん多少のリスクはあるが。
美和子は恍惚とした表情で俺の言葉に聞き入っている。その目は妖しく輝いていた。
「宗ちゃんったら……」
美和子は呆れたように微笑むと俺の唇に吸い付いてきた。
「どういうところからそういう素敵な考えを思いつくの」
「あのアバズレを苦しめるために決まってるだろ。ガキの頃から考える時間だけはたっぷりあったからな。なるべく手間をかけずに、可能な限り苦しめて弱らせていく方法は幾つも考えた。そのうちの一つだよ」
「宗ちゃんのその捻くれた発想は大好き」
思わず苦笑する。褒めてるつもりなのかもしれないが、褒めてるように聞こえない。だが否定するのも野暮なので肯定する。
「だけど、幾ら思いついたところで実際に使えるかどうかは別の話だ。試してみないことにはわからないことも多いだろう」
「私も間違って殺してしまわないように注意するわ。だから、宗ちゃんは私の仕事を傍で見ていて。何か間違いがあったら叱って、ちゃんと指導してちょうだい」
家政婦としての考えが、しっかり板についている。
「わかった」
「お願いね。……ねえ、私も一つ思いついたんだけど」
美和子は悪戯っぽく、婀娜っぽく、何より楽しそうな笑みを浮かべて俺の耳元で囁く。
「真由さんの母親って、ずいぶんと『ご無沙汰』なんでしょう?」
「そうらしいね」
夫婦仲は冷え切っていて、旦那は海外に行ったきり何年も帰ってきていないらしい。
「そんな状態でバイブを入れられて放置されたら、さぞ辛いことでしょうね。そんなところに――」
美和子は俺の耳に唇を寄せて、小さく囁いた。
「いいね。それはいい。とてもいい」
「気に入ってくれた?」
「とても」
「良かった」
嬉しそうに微笑む美和子を、俺はベッドに組み敷く。
「宗ちゃん♡」
「いい考えを思いついてくれたんだから、美和子にはご褒美をやらないとな」
「嬉しい♡」
「今夜は朝まで寝かせない。たっぷり可愛がってやるよ」
「はい♡ たくさん可愛がってください♡ 宗ちゃん♡」
美和子は幸せそうに微笑んで俺を抱きしめる。
「宗ちゃんの、宗ちゃんだけの淫乱雌奴隷の美和子に、どうか今日もお情けを恵んでください♡」
可愛いことを言う。目の前で脚を開いて甘えるようにねだる美和子の体に、俺は今日もたっぷりと溺れると決めた。
この甘美な肌と蜜壺に蕩けるように酔い痴れる夜が永遠に続けば良いと心から願いながら。だけど、そんな永遠は決して存在しないのだという諦観と共に。
この瞬間を一秒でも長く味わうためだけに。俺は美和子の体を抱きしめ続けた。