毒親に虐げられた青年は宝籤で大金を手に入れたので母親に復讐する話 作:葛轍偲刳
ソレは、その始まりは何だったろうか。
「はぁんっ……」
声が聞こえた。最初は幻聴かと思った。とうとう自分は狂ってしまったのかと。
「あはぁ……」
だが、違った。声が聞こえた。間違いなく声だった。
「あぁ、イイ……」
甘ったるい、雌の声。悦びと、甘えと、そして何より幸福そうな、女の声。
「素敵よ、あぁ……」
あの女だろうか。いつもの、あの女だろうか。だが、その声はいつもとは違った。あまりにも違い過ぎた。
「ダメよ、ダメ……あぁ、抜かないで……」
しっとりとした快楽、甘美な雌の悦びに満ちた睦言だった。一人ではない。絶対に一人ではない。誰かがいる。そこに、誰かが。
「あぁぁああぁぁっ!!」
思わず、叫んだ。それは怒りだった。恨みだった。――そして何よりも、嫉妬だった。
「あら、起きたの?」
そして、それに初めて女が応えた。冷ややかで、軽蔑に満ちた、それは嘲笑だ。自分だけが幸せで。自分だけが独り占めしている。そして、持てる者が持たざる者を見下す。その優越感。
「もっと寝てても良かったのよ?」
「あぁあああぁっ! あああああぁっ!!」
叫ぶ。意味ある言葉が出てこない。頭の中は真っ赤だった。この激情を吐き出さずにはいられなかった。
「煩いわねぇ。まるで猿みたい。檻の中で叫ぶ猿。ほら、もっと鳴いてみなさいな? ウッキッキー、って」
「ああああああああ!!!」
挑発する言葉を掻き消そうと必死に叫ぶ。叫び過ぎて喉が痛い。だが叫ぶ。叫び続ける。それ以外に何もない。何も思い浮かばない。ただの感情の爆発。衝動の迸り。
「あはははっ、無様ねぇ」
しかし、それも長くは続かない。叫び過ぎた喉が、声が掠れる。ヒューヒューと笛のような音を立てる。そんな私を女は嘲る。
「いいのよ? もっと叫んでみなさいな。他に出来ることなんて何もないんだから」
「あ、あぁ、ああ……は、ああ、あっ……!」
息を吸う。声を出す。喉が痛い。水が欲しい。だが、こういう時は何も与えられない。それはそうだ。水を与えてくれるのは、目の前のこの女だ。この女が水をくれるはずがない。
「ふふふ、ざまあないわね」
そう呟いた女が、ひっそりと囁く。
「娘の処女を売りつけようとした若い男に、自分自身が色目を使う節操なしのアバズレが、いい気味ね」
「……」
私の体が凍り付く。女は私のことを知っている。私が何を企んでいたのか。すべて知っている。ならば、だから、私はこんな目に遭わされているのか。
「あはははっ」
私の絶望を感じ取った女が笑う。楽しそうに嗤う。
「でも、勘違いしないでね? あなたの娘は今頃あなたと違って天国で暮らしているわ。栄養のある美味しいものを食べて、綺麗で可愛い服を着て、あなたみたいな下品な真似なんかせずに素敵な彼氏と仲良く暮らしているわ。ああ、もう今頃は結婚しているのかしら。優しい旦那さんと毎日抱き合って、甘いキスをして、毎晩布団の中で幸せな子作りに励んでいるわ」
「う……うぅっ……!!」
頭に血が昇る。頭の血管が破裂しそうだ。娘は私の所有物だ。私が産んで育てた子供だ。私が手塩にかけて磨き上げてきた私の物だ。それを――!
「だからね」
「あ……」
女の指が私の喉元に触れる。冷たい。爪が食い込む。苦しい。
「あなたは地獄に堕ちなさい」
「んぐっ……!」
爪が皮膚を裂く。痛みで声も出ない。だが声が出ても意味がない。意味のある言葉を発することは出来ない。
「ほらほら? どうしたの? 叫ばないの? さっきまで大声で叫んでたじゃない?」
爪が喉笛に食い込む。息が出来ない。苦しい。肺が破裂しそうだ。
「もう一度叫んでみなさいよ。ウッキッキーって。さっきみたいに鳴いてみなさいよ」
「……」
指が離れる。息を吸う。吐く。吸う。吐く。
「もう一度ね」
「……」
もう一度指が喉に掛かる。今度は指の腹ではなく爪で引っ掻かれる。
「ほら、さっきまでの威勢はどうしたの?」
爪痕から血が滲むのがわかる。熱い。痛い。苦しい。
「やっぱり動物に人の言葉は通じないのかしら」
「あ……」
そして唐突に指が外れる。再び肺に空気が流れ込む。
「でも、これでもまだ足りないわね」
「……?」
女が、女の足音が離れていく。
「ねえ、お願い。また私のオマンコに入れて?」
「っ!?」
そうだ。ここにいるのは女だけではない。他にもいるのだ。誰かが、ここに――!
「あぁ……来る……奥まで、ああ……キモチイイ……」
微かな、粘ついた水音。淫蜜で濡れそぼった雌の膣孔が、牡の勃起を飲み込む音。膣孔の襞が男根に絡みつく。膣孔が子宮口を押し上げられて快感に喘ぐ。膣孔の収縮が男根の脈動を捉えて快楽を得る。雌の官能が高まる。雌の子宮が熱く火照る。子宮が牡の精を求め始める。子宮が精子を欲しがる。子宮が妊娠を欲する。子宮が新しい生命を産み出すための雌としての本能が昂ぶる。
「あぁ……イイ……もっと……もっと来て……あぁっ!」
雌が悦びに打ち震える。男が腰を打ち付ける。ジュプッという音、雌の尻肉と男の腰が打ち合わされる音。聞こえる。わかる。音だけでもわかる。目が見えずとも、まざまざと瞼の裏に浮かび上がるのだ。その光景が。
牝馬のように尻を突き出した格好で、女が後ろから貫かれる。男の律動に合わせて雌は腰を揺らす。子宮口と亀頭がキスする。精液を催促する。
「あぁあぁっ! 出して! 中に! 出してぇ!!」
雌の絶頂が近い。子宮口が開く。精液を待つ。オスの遺伝子を受け入れる。
「んぁあああっ!!」
女の喘ぎ声が響く。射精と絶頂が同時だったか。それとも男が少し早かったか。
「あぁ……お腹が……熱い……あぁ……」
雌が満足げに呟く。子宮に注がれた精液が子宮壁にぶつかる感触を楽しむ。
「ふふ……いっぱい出してくれたわね。すごい、子宮の中でタプタプいってるのがわかるもの……」
男は何も言わない。しかし、女に対して何かをしたようだ。
「ああ、嬉しい……もっと撫でて……」
甘えている。あの女が、いつも冷淡で私には何一つとして情を向けず、今でさえ軽蔑と嘲笑しか寄越さない女が!
幸せそうに、心から幸せそうにしている。牡の抱かれる幸せ、男に求められる幸せ、私には決して向けられないものを独占している。
「はぁ……ああ、まだ大きいままだわ。ねぇ、今度は前から抱いてほしいの。キスしながらしたい。奥まで入ってくるのが感じたい……」
女が甘えながら男にねだる。男がそれに応える。
「あはっ……素敵。やっぱり正面から抱き合ってするのもいいわね……」
女と男が抱き合う。肌と肌が密着する。
「ん……んん……」
舌と舌が絡み合う音が聞こえる。唾液と唾液が混ざり合う。
「ん……んぅっ……んんっ……」
舌が動くたびに女の体が震える。快感に悶える声だ。
「はぁ……あっ……んんっ……!」
乳首が抓まれる。乳腺が刺激される。子宮の奥が疼く。
「あぁ……乳首、感じるわ。もっと苛めて……あはっ……乳首をカリカリってして……ああっ……!」
男の指先が女を責め立てる。女は悦ぶ。私の眼前で。私の目の前で。いや、正確には眼前ではない。目隠しをしているから。
「あはっ……イイ……乳首が気持ちいいわ……あぁんっ! ……でも、まだ足りないの。もっとよ。もっと私を苛めてほしいの」
「うぅっ!!」
私は悲鳴を上げる。この屈辱的な状況に耐えられず叫ぶ。だが何も出来ない。手足は拘束されたまま。声も轡によって制限されている。
「ふふっ……何? 羨ましいの? だったらあなたもそうしてあげようか?」
「あっ!!」
私の股間にバイブが挿入される。突然のことに思わず仰け反る。
「あぁ……あぁっ……!!」
膣孔の内壁をバイブが擦り上げる。バイブの振動が子宮口にまで響く。
「ああぁっ!! んんっ!!」
腰が痙攣する。膣孔がバイブを締め付ける。
「ほらほら? どうしたの? もっと締めなさいな」
「ひゃめぇっ!!」
バイブの振動が強くなる。膣孔が拡げられる。バイブの形がはっきりとわかる。バイブの凹凸が粘膜を抉る。
「あぁっ!! あぁあぁあっ!!」
バイブが抜き差しされる。膣孔の締め付けを楽しむようにバイブが出入りする。
「あぁああぁっ!!」
バイブが膣孔の奥深くに突き刺さる。子宮口を突き上げる。膣孔全体がバイブに蹂躙される。
バイブの振動音と膣孔からの粘液の音が混ざり合って卑猥な響きになる。
「ふふっ……すごい音よ?」
「うぅ……ぐぅっ……!」
私は必死に喘ぐ。バイブを拒絶する。だが無駄だ。私の膣孔はバイブを締め付けて悦んでいる。子宮口はバイブの亀頭型の先端に吸い付いている。膣壁はバイブの刺激に翻弄されて快感に溺れている。
「ふふ……そんなに嫌なら抜いてあげましょうか?」
「あ……うぅ……!!」
女がバイブを引き抜く。だがそれは一瞬だけのことだ。すぐに再び突き入れられる。
「ほら、ほらほら!!」
今度は乱暴に奥まで突き入れられる。バイブの先端が子宮口を抉る。バイブの振動が子宮を揺さぶる。子宮が刺激される。
「ああぁああぁっ!! ああぁっ!! あぁっ!!」
子宮が刺激される度に膣孔が収縮する。バイブを締め上げる。膣孔全体が痙攣する。
私は喘ぐ。喘ぎ続ける。快感が止めどなく押し寄せてくる。膣孔から全身に、膣孔から脳天に、しかし満たされない。何かが足りない。快楽も快感も全てが虚しい。これはただの拷問だ。心を挫くための拷問だ。私が苦しむためだけに与えられる苦痛だ。
「はぁ……あぁあああぁああっ!!」
私は絶頂に達した。達したはずなのに何も感じなかった。虚しい。こんな玩具で。こんな機械で。ただ弄ばれて。
私は泣いた。啜り泣いた。死んでしまいたい。死んで楽になってしまいたい。こんな生に何の意味がある? ただ生かされているだけの時間に何の意味がある。このまま少しずつ老いて、醜く老いさらばえていくくらいなら。
「……ひょろひて」
私は、呻いた。殺して。もういっそ、ここで楽にして。その方が、ここで生かされ続けているよりも遥かにマシだ。
もう、生きていたくない。死んだ方がいい。そう思った。心から思った。既にひび割れていた心が、粉微塵に砕け散った。完全に。跡形もなく。