毒親に虐げられた青年は宝籤で大金を手に入れたので母親に復讐する話 作:葛轍偲刳
「誠二」
『おう、宗一郎。さっき二人で帰ってきたところだ。土産も買ってきたんだ。今からそっちに行ってもいいか?』
「悪いがダメだ。野暮用がある」
『野暮用? なんだよ』
「真由さんの両親が離婚する」
『え?』
「で、だ。そうなると香織さんはどうなると思う?」
『あ、えーっと……どうなるんだ?』
「それを決める必要がある。今も話し合い中だ」
『……いるのか?』
「いるとも。だから、今日はダメだ」
『わかった。真由にも言っとく』
「それでいい。また後でな」
そう言って電話を切る。
座っている足元には、その香織が全裸で跪き、今も口で性器を舐る奉仕に耽溺しているのだが。約束通り、香織は夫と離婚する手続きに入ったのは事実。であれば、当然のように宗一郎も褒美をやる。勃起した性器を舐め回す香織は、呆けたようにうっとりと陶酔している。
「ご主人様のオチンポ、美味しい……」
麻薬中毒者もかくやと思うほどに多幸感に酔った表情で、勃起に繰り返しキスをする。最初の精飲の時の印象がよほど頭に強く焼き付いたらしい。
宗一郎は冷徹な眼差しでその光景を見下ろす。香織は既に完全に堕落していた。かつての高慢で自己中心的だった態度はどこにもない。ただ卑屈に媚びへつらい快楽を求め続けるだけだ。
(これでいい)
この女には復讐以上の価値はない。真由と誠二の結婚を妨害していた障害を排除できればそれで十分なのだ。
「もっと上手くできるだろう?」
低い声で促すと香織は顔を上げて熱っぽい目を向けてきた。
唇から涎を垂らしながら舌を伸ばし裏筋に沿ってねっとりと舐め上げる。睾丸までも口に含むと吸い付いて揉みしだく。
丹念に丁寧に奉仕することで気に入られようと必死な様子が見て取れる。
(面白いな)
宗一郎は薄く笑う。この雌は自分の命令を忠実に守ることに意義を見出しているようだ。自分の価値を認められることで存在意義を感じているのだろう。
そうなるように仕向けたのだから当然といえば当然だが――それでも興味深い現象ではあった。
「上手いぞ」
そう言いながら頭を撫でてやると香織は嬉しそうに目を細めた。そして再び夢中になってしゃぶり始める。
(この女の生きる意味は、現在のところ俺の性奴隷になることでのみ満たされている)
自尊心を奪った。尊厳を奪った。自分を飾る全ての虚飾を剥ぎ取った。残された脆弱な自我は、そのままでは死んでしまう。
だから、新しい結びつきが必要だった。精液と尿という味覚の刺激によって、香織はそれを見出した。男に奉仕すること。男の精を飲むこと。尿ですら飲み干すこと。それが唯一の生の実感となった。
だから彼女は必死に尽くす。生きるために。快楽に溺れるために。自分の存在意義を保つために。
「もう一度飲みたいか?」
尋ねると香織は大きく頷いた。
「飲みたいです! ご主人様のザーメンをもっともっと飲ませてください!!」
懇願の言葉を口にしながら亀頭の先端を舐め回す。尿道口に舌先を差し入れようと躍起になっている。
その熱心さに宗一郎は思わず苦笑してしまう。
(狂っている)
だがそれこそが彼の目的でもあった。毒親への復讐。その一環として香織を徹底的に堕落させることでその価値観を破壊する。
今こうして見下ろしている熟れた雌の姿こそが答えだ。母親も同じように扱えばいい。いや、あのアバズレはこの程度では済まさないが。
「よし、口を開けろ」
香織は素直に大きく口を開く。宗一郎はその喉奥に向かって一気に精液を放出した。
大量の白濁液が直接胃に注ぎ込まれる感覚に香織は目を見開いて震える。噎せ返るような匂いと味に溺れながらも幸せそうに微笑む。
喉仏が上下し全て飲み干すと放心状態になり動かなくなった。
(さて)
宗一郎は立ち上がって香織の髪を掴み顔を上げさせる。痴呆にも似た恍惚の表情が露わになる。
「美味かったか?」
「――…は、い」
人間として言葉を紡ぐことすら忘れていたように、やや遅れて返事をする。
「美味しかったです。とても、とても。ご主人様のザーメンは、本当に美味しいです。ああ、なんで、こんなに美味しいんでしょう……?」
宗一郎は冷ややかに見据えながら考える。
今の香織にとって宗一郎の精液とは麻薬以上に依存性が高いものだ。そして尿もまた同様である。これらを与えることで彼女の脳内物質の分泌量を操作しているわけだ。
(次はどうするか)
このまま続けてもいい。だがまだ足りない。もっと壊さなくてはならない。
母親への復讐の準備も進めているが、その前にこの雌を完璧に仕上げておくべきだろう。
「おい」
「はい?」
「幾つかの書類にサインしてもらう。それから、夫……ああ、もう前の、か。とにかく、真由さんの父親に電話しろ」
「はい……」
香織の恍惚とした表情は消え失せ、ひどく陰鬱な、そして倦厭の情が浮かぶ。香織にとっては宗一郎の意思が全てにおいて優先する。しかし、他の男への情が消えてなくなったわけではない。
もともと夫婦仲は冷え切っていたようだが、それ以前に決定的に破綻している二人だった。
お互いが自分のことしか考えていない。香織は男を金づるや身を飾るアクセサリーとしてしか見做していなかったし、夫はそんな妻に心底うんざりしていた。香織自身、夫が海外で別の女と浮気していると半ば確信していたらしい。それでも動かなかったのは、夫が振り込む生活費と立派な家がある安定した生活を手放したくなかったからだという。
とはいえ、夫の側に現地妻がいて、その証明が出来るなら先に浮気したのは夫ということになり、慰謝料も請求できる。調査のための興信所と手続きのための弁護士に頼む費用が別途で必要になるが。
「面倒なのはわかっている。財産分与にしろ慰謝料の支払いにしろ、相手が素直に応じてくれればいいが、ごね始めると時間を要する。最終的には裁判所に訴えるしかない」
「……」
「とはいえ、解決までに時間がかかればかかるだけ、お前はずっとこの家に入り浸れるぞ。俺に相談すると言う口実があるからな」
すぐに香織の目が輝いた。わかりやすい反応に宗一郎は苦笑する。
「……はい。頑張ってみます。どうせ私には他に何もありませんし」
「いい子だ」
宗一郎は香織の頬を撫でてやった。
すると彼女は嬉しそうに頬ずりしてくる。猫のようだと思った。完全に馴らされた雌猫そのものである。
(もう少しで完成だ)
宗一郎は頭の中で復讐計画の段取りを整理する。
母への報復。叔母への依存。そしてこの雌の堕落。
全てのピースが嵌れば完璧な復讐が成就する。
「もう一つ」
宗一郎は香織の首輪を引っ張って耳元で囁く。
「今夜は徹底的に可愛がってやろう」
「……! ありがとうございます!!」
香織の瞳が爛々と輝き始める。媚びるような笑顔は歪んだ幸福感に満ちていた。
それは狂気と紙一重の表情だった。完全に堕落しきった者の顔つきだ。
その歪んだ笑顔を見つめながら宗一郎は思う―――これは新たな始まりに過ぎない。