※この作品はR-18です。

砂漠の国のえっちな儀式   作:産みの扉

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黒猫さまが満たすもの

 太陽が地の果てを赤く染め、死の淵へと旅立つ頃、わたしは最後の夜を楽しんでいた。

 街は大勢の人々で賑わう。酒が川のように流れ、歌い、踊り、笑い声と楽器の音を夜空に響かせて盛大なお祭りを楽しむ。

 

 今宵は満月。年に一度、黒猫の女神様をもてなし、豊穣と繁栄を祈願するお祭の最終日。

 そして10年に一度、黒猫の女神様がこの地に降り立つ日でもあった。

 

 今年で10歳くらいになるわたしは、この日のために生かされてきた。

 身を削ぎ、心をすり減らし、神様をその身に降ろす――文字通り身を捧げるための依代として。

 

 大昔には生贄の血と肉が供えられていたらしい。それに比べれば恐怖はなかった。

 いや、比べるまでもなく恐怖はなかった。黒猫さまは捨てられていたわたしに居場所と役割を授け、無意味だった生を豊かにしてくれたのだから。

 

 言い伝えでは、黒猫さまは幼い少女の姿をしているらしい。そのため、依代に選ばれるのは背丈の似通った少女に限られる。

 だからだろう、飢えと寒さに震えていたわたしは司祭さまに拾われ、今日まで生き長らえることができた。

 

 わたしはきっと、黒猫さまに救われた。

 今夜はただ、与えられた命を育んだ実りとともに返すだけなのだ。

 

***

 

 月は空高く輝き、星々は瞬く。広場には篝火が赤々と焚かれ、揺らめく炎が夜の闇を温かく照らし出していた。

 これから披露されるのは、女神様に捧げられる神聖な舞。このお祭りの最も華やかで、最も待ち望まれた時間だ。

 

 見物客が肩を寄せ合い、広場を埋め尽くす。

 わたしはそんな人混みの最前列、まるで特等席のような場所にちょこんと座っていた。幼いわたしに気づいた大人たちが気遣って道を譲り、いつの間にか押し出されてここにいる。

 もしかしたら白い麻の服を見て、良いトコロの子だと思われたのかもしれない。わたしは胸の内で司祭さまに感謝した。

 

 楽師たちが太鼓と笛の音で舞の始まりを告げ、乾いた土に水が染み入るようにざわめきが静まる。踊り子が篝火に照らされ、しなやかな足取りで広場の中心へと歩み出た。

 わたしと同じくらいの女の子が二人、太陽に灼けた褐色の裸体を惜しげもなく晒し、生まれたままの姿が月の下で艶やかに輝く。

 

 楽器の音が一斉に鳴り響き、舞が始まる。

 二人の舞は、まるで一つの魂が二つの身体で踊っているように調和し、息がぴったり合う。

 彼女たちが身を捧げる姿に、わたしは思わず息を呑んだ。

 

 やがて舞が終わり、広場は歓声と拍手の洪水に包まれる。

 心からの拍手を送っていると、踊り子の二人と目が合い、笑顔で手を振ってくれた。わたしも慌てて小さく手を振り返す。

 

 彼女たちの舞は、黒猫さまへの捧げ物としてふさわしい見事なものだった。

 それだけに怖くなる。わたしは、依代として役割を果たせるだろうか、供物にふさわしい身体だろうか。鼻の奥がつんとして、目尻から涙があふれ出す。

 

「そろそろ行かなくちゃ」

 

 涙を拭い、人波を縫って広場を後にする。

 わたしは小さな胸に不安を抱き、静かに歩き出した。

 

***

 

 出店から漂う食べ物の香りが鼻をくすぐり、お腹がくぅくぅと鳴った。

 儀式のため空っぽにした胃袋に空腹感が蘇る。わたしは蛇のように這い寄る誘惑を振り切り、足早に帰路につこうとした。

 

「にゃー」

 

 路地の暗がりから鳴き声が響いた。声の主を探すと黄色いまんまるが二つ、闇を裂くように輝く。目を凝らすと、毛並みを暗闇に溶け込ませた猫がこちらをじっと見つめていた。

 黒猫だ。儀式を控えた今、こんなところで黒猫さまの眷属に出会えたのは縁起が良い。

 

「どうしたの? こんな暗いところにいないで、人のいる場所でごはんでも貰えば良いのに」

 

 わたしはしゃがみ込んでそっと手を差し出すも、黒猫はただ瞳を向けるだけだった。そのそっけない態度も猫らしいな、と思って立ち上がろうとした瞬間、黒猫は滑るように足元にすり寄る。

 

「ふふっ、しょうがないにゃー」

 

 わたしは微笑みながら顎をそっと撫でた。人に慣れているのか、黒猫はおとなしく撫でられ、目を細めてゴロゴロと喉を鳴らす。

 

「わたしね……これから、あなたのご主人さまの所に行くんだ」

 

 黒猫は続きを促すように、ただ耳を傾ける。

 

「でもね……ちょっとだけ不安になっちゃって。ちゃんと依代になれるのかなって」

 

 広場で舞う彼女たちの姿が浮かび、自分と比べてしまう。

 胸の奥に芽生えた小さな不安を吐き出すと、黒猫はそっと腕に顔をすり寄せてきた。

 

「慰めてくれるの?」

 

 柔らかい温もりに癒やされていると、不意にざらりとした感覚が走った。

 黒猫は手をペロペロと舐め続ける。執拗な舐めっぷりにさすがに痛みが強くなるが、その愛らしい姿に思わず笑みがこぼれた。

 

「ぷっ……あっはは、わたしってそんなに美味しいの? ……ありがとう黒猫さん」

 

 最後にひと撫でして、黒猫に背を向ける。今度は呼び止められることも、引き止められることもなかった。路地の奥から冷たい風が吹き抜け、黒い髪を優しく揺らす。

 

 きっと大丈夫、わたしだって積み重ねてきたんだから。

 背中を押すような風を受け、わたしは猫のように軽やかな足取りで一歩を踏み出した。

 

***

 

「ただいま戻りました、司祭さま」

「おかえりなさい、お祭りは楽しめましたか?」

 

 月明かりが照らす夜道を抜け質素な居住区に戻ると、司祭さまが優しく迎えてくれた。広い背中と力強い身体は頼もしくて、低く響く声は聞くだけで心が落ち着く。

 

「はい、今年も人がいっぱいで賑やかでした。それに今年はわたしと同じくらいの子が踊り子だったんです。初めてなのに堂々と舞っていて、とても綺麗だったなぁ……」

 

 司祭さまは静かに聞き、時折目を細めて嬉しそうに相槌を打つ。

 頭を撫でる手の温もりに目を閉じると、これまでの日々が鮮やかに蘇った。

 

 初めて胸を撫でてもらった夜、わたしは何も感じることができなかった。

 それでも司祭さまは根気よく愛撫を続け、幼い胸に小さな心地よさを芽生えさせてくれた。芽吹いた感覚を慈しみながら育み、今では花を咲かせ、実を結んでいる。

 

 なかなか濡れなかった秘所も、手を重ね合い敏感な場所を探していった。

 陰裂に蜜が滲み、粘つく音を立てたとき、「よくできましたね、蜜の一滴も黒猫様への捧げ物となるのです」と褒められた喜びはいまも胸に残っている。

 

 未知の感覚に涙する夜もある。心の壁が悦びをせき止め、苦しんだ夜もある。

 不安に蝕まれそうな夜にはわたしを抱き締め、温もりで心と身体を溶かしながら説いてくれた。

 

 甘く蕩ける感覚に浸るほど身体は熟し、供物としてふさわしいものへ近づく。

 ――だから受け入れても良い、溺れても良い、快楽を余すことなく味わいなさい。

 

 司祭さまは、そう教え諭しながら導いてくださった。

 

「さて、そろそろ儀式の準備をしましょうか」

 

 司祭さまの声に促され、わたしたちは神殿の池へと足を向けた。

 麻の服を脱ぎ、裸のまま聖なる池のほとりに立つと、月の光を映した水面は静かに揺れる。透き通った水は底まで見えるほど清らかで、まさに聖池の名にふさわしい神秘を湛えていた。

 

 足を沈めた瞬間、思わず息を呑む。肌を包む冷たさに心が澄み渡り、全身が清められていくようだった。月の光を浴びながらゆっくりと身を濯ぎ、一日の汚れを洗い流していく。

 

 わたしは清めを終え、礼拝堂へと導かれた。

 蝋燭の灯りが柔らかく揺れ、小さな祭壇に猫の像が鎮座している。光に照らされた像は、どこか優しげに微笑んでいるように見えた。

 寝台は清潔な布が丁寧に整えられ、傍らには香油と張形が並ぶ。焚かれている香は頭の奥が溶けそうなほど甘くて、意識を遠く誘うようだった。

 

「司祭さま……今まで教えを授け、育ててくださり、本当にありがとうございました」

「あなたの心も身体も十分に熟しています。……どうか恐れないでください。快楽を愉しむ心は、そのまま黒猫様に捧げられる祈りとなるのですから」

 

 扉が閉められ、閂の音が静かに響いた。

 甘美な記憶に浸るだけで身体は火照り、心臓は高鳴っていく。

 わたしは静寂の中、黒猫さまに祈りを捧げた。

 

***

 

 儀式は、文字通り黒猫さまに身を捧げるための行い。

 わたしは供物になるために、夜通しの自慰で身を削ぎ、快楽で心をすり減らしていく。

 神様を降ろすために、身体に「わたし」が残っていてはいけないのだ。

 

 蝋燭の柔らかな灯りが部屋の暗闇を溶かす。

 わたしは寝台に腰を下ろし、胸にそっと手を伸ばした。控えめな膨らみの先端、色濃く浮かぶ乳首はすでに硬く尖り、触れる前から期待に震えている。

 指先でそっと摘み、焦らすように転がす。急がず、丁寧に、下拵えをするように感覚を塗り込み、ゆっくりと身体を目覚めさせていった。

 

「ふっ……んぅ……♡」

 

 吐息は湿り気を帯び、腰はもどかしさに小さく揺れる。

 乳首を捏ねるたび、甘い疼きが下腹から波のように押し寄せ、胸の奥を柔らかくしていった。

 

 深い快楽のため、一番気持ちのいい触り方を避けて気分を高めていく。

 ――つもりだったのに、指先で乳輪をなぞると子宮がきゅっと締まる。ぞわぞわとした感覚が背筋を走り、乳首を反射的につまみ上げてしまった。

 

「あっあっあっ……♡ だめだめっ……まだ、きちゃ♡ あっ、あうぅぅぅ……っ♡」

 

 快感は蜜のようにじわりと滲み出す。全身を浸す甘い痺れに指は止められず、乳首を揉み続ける。

 絶頂の波が治まる頃には、寝台の布はぐっしょりと濡れていた。反り返った身体からゆっくりと力が抜け、わたしは肩で荒々しく呼吸を繰り返す。

 

「はぁ、はあっ……こんなに早くイッちゃうなんて……」

 

 

 どろりと蕩けた秘所に指を這わせ、蜜を掬い取っていく。陰裂をなぞるたび、ぐちゅりと艶めく音が静寂に溶け、わたしの身体が供物として熟していくことを告げる。

 蜜に濡れた指を、そっと後ろの膨らみへと滑らせる。ぷにぷにとした柔肉は撫でられるたび嬉しそうに震える。

 かつて排泄の役割を果たしていた窄まりは、今や快楽を貪る入口として生まれ変わっていた。

 

「んっ♡」

 

 甘い声が漏れる。中指を押し込むと媚肉はひくひくと収縮し、待ちわびたようにわたしを導いた。

 呑み込まれた指を馴染ませるように動かし、薬指も滑り込ませる。熱を宿した内壁が柔らかく絡みついた。

 

「ふぁ、あぁぁぁ♡ お尻っ、きもひぃ……♡ んぅ、気に入って、もらえる……かなっ♡」

 

 指が馴染むのを待ち、静かに抽挿を始めた。ぎこちなさは染み出した腸液によって、次第に滑らかな律動へと変わっていく。

 肛門の中を擦れば鋭い快感が下腹を突き抜け、内壁を抉れば子宮がゆるやかに揺さぶられる。ぐちゅぐちゅと響く音がわたしの理性を溶かし、快楽の深淵へと沈んでいった。

 

「あっあっん゛っ♡ 気持ぢ、いっ♡ んふぅぅぅっ♡」

 

 腰がびくんと跳ね、指に絡みつく肉壁がぎゅっと締まる。子宮の痙攣が内側の震えが響き、わたしをさらに深い悦びへと引きずり込んだ。

 

 二度の絶頂を経て、意識は薄靄に包まれるように霞み始めていた。

 それでもまだ足りない。もっと甘美な悦楽で身体を浸し、心がぐずぐずになるまで蕩けなければ、黒猫さまに捧げる供物にはなれない。

 

 夜はまだ始まったばかり。満月の光が冷たく輝く中、わたしは再び身体に手を伸ばした。

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