会社員、依田隆史を、夜な夜な襲う見えざるナニカ。
金縛りの中、抗いがたい暴力と与えられる快楽に、心と身体は蹂躙され、調教されていく。
ここは檻か、それとも歪んだ愛の巣か。
蝕まれ、調教され、与えられる悦びに飼い慣らされていく中で、ボクは悟る。
自分はもう、逃れられない。この家の闇の中で、見えざる主人のためだけに啼く『夜鷹』になる運命なのだと――。
逃げ場のない檻の中で、青年は、家が求める『役割』へと、その身を変えていく――。
悍(おぞ)ましくも官能的な、ノンストップ・ノンストップ・ノンストップ・ノンストップ・ノンストップ・ノンストップ・ノンストップ・ボーイズ・ホラー。
ボク、
眠りに落ちると、無意識に、着ているものを一枚、また一枚と脱いでしまうのだ。それも、下着だけを残して綺麗に。
だから、彼の朝はいつも、パンツ一丁の姿で始まる。
「はあ、まあ。仕方ないよなぁ、だって暑いもん」
朝の陽ざし。畳まれもせず、脱ぎ捨てられたパジャマ。パンツ一丁の自分。
当然、新しい家の、自分の部屋でも癖は治らなかった。
そう、両親は、中古とはいえ念願だった一軒家を手に入れた。
庭では、両親が「マイホームだぞ、マイホーム!」と、バーベキューの準備をしている。
水を差すつもりは毛頭なかったが、越してきてからというもの、どうにも胸のざわめきが収まらない。
「子供みたいに。はしゃいじゃってもう……」
新居の自室になったばかりの和室の窓から、庭を眺めてため息。
どうしても、この家に馴染めない。特に、二階の角部屋である自室が。
リフォームされたばかりの部屋に、なぜか、鼻腔をくすぐる匂いが混じっているのだ。
古びた土と、むせ返るような白檀。そして、生々しい――湿った獣の体臭、
そして何より、視線。
障子を閉め切っても、どこかからか、じっとりとした視線を感じるのだ。
壁の染みや、天井の木目が、一つの巨大な『眼』となって、自分を観察しているかのような。
「……いや。気のせい、だよな?」
誰もいない。わかっている。なのに、じっとりと品定めをするような粘つく気配。
新しい環境に、神経が過敏になっているだけだ。そうに決まっている。
自分に言い聞かせても……この、首筋の鳥肌は収まらなかったんだ。
その夜、引っ越しの疲れもあって、ボクは早々と床に就いた。
落ち着かない水中にいるみたいに息がしづらい。それでも、意識がまどろみ始めると、無意識のうちに指がパジャマのボタンを外し、華奢な胸元をはだけさせる。
ついには、邪魔なズボンも脱ぎ捨てた。
さあ、汗ばんだ肌に夜気が触れる……そんな瞬間を待っていたかのように。
――異様な圧迫感が襲って来た。
金縛りだ。
意識は覚醒しているのに、指一本、動かすことができない。全身に分厚い鉛の板でも乗せられたみたいだ。
(なんだ…これ……っ!?)
パニックに陥りそうになるなかで、気づいた。
ねっとりと濃密な匂いが、場を満たしている。麝香の香りだ。
――ギシリ。
枕元の畳が、軋む。
誰かが、そこにいる。間違いなく。
姿は見えない。だが、確かな気配が、すぐそばで見下ろしている。
「かっ……はっ……ぐがっ」
恐怖で叫び出したいのに、声帯は縫い付けられたように動かない。意を決しても、ひゅう、と情けない空気の漏れる音しかでなかった。
(助けて、誰かっ!?)
気配は布団をはぎ取ると、ゆっくりとボクの身体にのしかかって来る。
直接肌に触れて来た。巨大な冷たい蛇が、絡みついて来ているような、ぬるりとした感触。
四肢を締め上げ、ボクの裸体を隅々まで確かめるように、這いまわっている。
「ひぅっ、うっ……や、あっ、めぇっ……?!」
肩から腕へ、胸元へ。見えない指先か、それとも舌なのか?
熱を探るように、胸の突起をなぞられ――。
「うぅっ……あっ!?」
さらには、カリと爪を立てられた。
粟立つような悪寒。同時に相反する、いやらしい痺れ。
「う、そ、だ……やめ……っ」
屈辱と恐怖に、目尻から涙がこぼれ落ちる。抵抗しようにも、ボクは指一本動かせない。
クスクスと、嘲るような気配。見えない凌辱者は、さらに大胆になる。腹筋の走るラインを、確かめるように滑っていく。
見えざる指は、さらに下へ、下へ。
腹を撫で、臍を弄り、そして、下着の薄い布の上から、やがて、下着の薄い布の上から、まだ柔らかいままの彼の中心に触れた。
「んっ、ぅあぁっ……っ!」
弄ばれる。乳首を細い舌に舐められ、腹筋を撫ぜられ、柔らかく肉棒をくるくると揉まれる。
抵抗の声は、か細い吐息に変わっていた。
「はぁ、ぁ……ふぁ、あっ! や、だ、ぁあっ……」
怖い。気持ち悪い。逃げ出したい。
なのに、ボクのアソコは、意思とは裏腹に、与えられる刺激に愚直なまでに反応してしまう。見知らぬ快感の兆しに、腰が微かに震えた。
「んんっ…!? ぅあ…!?」
やがて、身体を這いまわる感覚は尻をなぞりながら、ボクの身体を横向きにさせた。まるで、人形を扱うように軽々と。
――嫌な予感がした。
見えない力で下着を、ずり下げられて……そのまま経験のない場所に、ぬるりとした異物が侵入してきたのだ。
(嘘っ、マジかよっ!? ダメだっ、やめろ……そんなところっ!?)
秘められた
ヌルヌルの粘液みたいなものが、塗りたくられるように。繰り返し、細くて生暖かいものが、出入りする。
「はっ、はぁっ。ふぁっ……っ」
解されている。柔らかくなるまで、念入りに。
(嘘だ、嘘だ、嘘だッ!?)
ボクは、口をパクパクさせた。もう何が起きるかわかっていた。
もう、どんどん奥深くまで、細いヌメリが届いて行って。ビクンと震える。抗えない刺激に、腰が勝手に揺れ始める。
「嫌だ」と、首を振ることしかできない。そんな抵抗にすら満たない、ボクの足掻きすらも。
……ソレにとっては、喜びを煽るためのスパイスに過ぎないようだった。しつこく、執拗に胸を嬲ら続けながら、熱を帯びてしまった肉棒を握られる。
「んんっ……ぁ、は……っ、や、だっ……ぁ」
しごかれながら、肛門から奥深くを刺激。なぜか、そこをヌメリに突つかれると、ビクビクとボクのイチモツは反応してしまう。
辱められているのに、奥も竿も疼く。恐怖と快感がぐちゃぐちゃに混ざり合って、思考を麻痺させていく。理性が崩壊する寸前だった。出したい、出したいっ!
口からヨダレが流れて、どうにもなくなった頃。
スポンッ、とヌメリが引き抜かれ、「ぁふぅっ」と息が漏れた。しごかれる動きも止まる。
(えっ、なんで……?)
疑問と安堵。束の間、完全に下着をはぎ取られると、ボクはくるりと裏返された。うつ伏せにさせられ、抵抗できないまま、尻が高く持ち上げられる。
(まさかっ!?)
かつては固く閉ざされていたそこ。経験のない蕾が、今は開きかけている。
外気に無防備に晒された場所に、明らかに太く、硬くて、おぞましいほど巨大なナニカが、ゆっくりと押し当てられた。
「……っ!?!?! いっ、ぁ……あ……っ!?」
先端がめり込んだ。
裂ける。
激痛と、内側からこじ開けられる異物感に、意識が白く飛びかけた。涙とヨダレが、肌を伝って枕を濡らす。
だが、ソレは容赦しない。ゆっくりと未知の異物が、こわばる肉壁をどんどんこじ開け、侵入してくる。
(無理無理無理っ、いたい、こわい、たす、けてっ!??)
ブツリ、と何かが切れる感覚。
灼けつくような痛み。なおも、異物はさらに深く、ボクの奥深くと突き進んでくる。視界が滲み、布団を掻きむしることしかできない。
「ぐがっ、あ――ぉ゛お゛ッ!?」
誰にも届かない叫びが、心の中で木霊する。
最奥で、完全に埋め込まれた異物が、一度動きを止めた。
そして。
今度は、打って変わって、優しく、蕩かすような動きで、内側をゆっくりと撫で始めた。
「んぐッ!? な゛、に゛ぃっ…ごれぇ……っ、ぁ…はぅ゛……」
痛みのなかに、微かな甘い痺れが混じり始めた。
まず、内側から生暖かいものが、溢れ出してくるのを感じた。どんどん痛みがぼんやりしてきて……今度はソレは、ボクの身体の仕組みをすべて知り尽くしているかのように、一番感じてしまう部分だけを擦り上げる。
熱い楔が、何度も何度も、敏感な場所を抉るように。繰り返し。執拗に。
自分の意思ではない。身体が、この異物を、暴力を、歓びとして受け入れようとしている。腸壁が、勝手に蠢き、締め付け、もっと奥を、もっと激しい疼きを、求め始めていた。
(嫌だ。気持ちよくなんて、ない。……ない、んだ)
思いたくても、身体は正直だった。腰が、くなくへと砕け、快感に震え始める。
全身が痙攣したと思うと、ボクの溜まりにたまった猛りは噴出した。ブシュッブシュッと、これほど出したことがあるかと思うほど、濃厚な白濁液が出続ける。
「と、ま゛、でぇッ――ッ!?」
今まで知らなかった、肉体の奥深くを暴かれる倒錯的な快感。恐怖よりも、未知の悦びが、心と身体を蝕んでいく。
拒絶の言葉は、いつしか甘い喘ぎへと変わっていた。
見えない支配者は、なおも楽しむかのように、再び深く、激しく、突き上げを繰り返す。
快感の奔流に、意識が何度も白く染まり、ボクの思考が溶けていった。
どれほどの時間が経ったのか。
夜明け前、悪夢のような時間は唐突に終わりを告げた。
解放された身体で、ボクはシーツの上にうずくまる。全身が汗で濡れ、シーツには得体の知れない粘液と、微かな血の痕が滲んでいた。
「……ゆ゛、ゆめ、じゃ、ない」
出たのは、掠れた声。
肌には鬱血の痕が点々と残り、ボクの奥深くには、まだ消えない異物の熱と疼き。纏わりつく、麝香の残り香。
痕跡は、昨夜の出来事が紛れもない現実であったことを、残酷に物語っていた。
朝日が差し込む窓の外で、スズメが鳴いている。階下からは、母が朝食の準備をする音と匂い。いつもと変わらない、平穏な朝。
「うう゛……っ、うああ゛っ」
昨夜、この部屋で何が行われたのかを。念願のマイホームを買った両親に、こんな有様を、どう伝えればいいというのか。
(早く、ここから出なきゃ……じゃない、とボクは……)
お金を貯めて、一人で。この家から、この街から逃げ出そう。早く、少しでも早く。
そう、ボクは堅く決意を固めた。それだけがボクの精神を支えていた。
――でも、この時のボクは。
蝕む夜ごとの責め苦が、日を追うごとにさらに激しさを増し。
肉を、肌を、心を、逃れられないほどに変えていってしまうことを、まだ知らなかった。
つづ……かない
いや、つづきは考えてますよ? ぶっちゃけ。
書こう思えば、書けますよ?