ゴミ捨て場に捨てられていたエッチなフィギュア直したら、女神様にチート能力もろた 作:パコール・レオンハート
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次に俺が目を覚ました時そこはまたしても見慣れた自室のベッドの上だった。いい加減この光景にも慣れてきたぞ。
「……さて。今度の世界はどんなクソみたいな常識が待ってるんだか」
俺はもはや期待することをやめていた。どうせまたろくでもない価値観が支配する狂った世界に決まっている。
体を起こし深呼吸を一つ。すると案の定ふわりと頭の中にこの世界の名前が浮かび上がってきた。
──『ここは異世界、パコパ・コーポレーション』
「コーポレーション……会社か?」
なんだか嫌な予感がする……。でもそろそろマシな、普通なエッチな世界をひけてもいいはずだ。
窓の外を見ても至って普通の日本の街並みが広がっているだけだ。通勤ラッシュの時間帯なのかスーツ姿の男女が足早に駅へと向かっている。おかしな光景は何一つない。
「……まさかな」
一縷の望みが胸に湧いた。もしかしたら、もしかするとだ。四度目の正直でまともな世界に来られたのかもしれない。
ただの会社勤めが待っているだけだとしたら? それはそれで退屈かもしれないが、これまでの地獄に比べれば天国のようなものだ。
俺はクローゼットにかかっていたいつものスーツに袖を通し、自分の会社へと向かった。
会社までの道のりもオフィスの中も、全てが普通だった。前の世界のような異常な光景はどこにもない。俺は自分のデスクに座ると安堵のため息をついた。
「おはよう、山田君」
声をかけてきたのは隣の席の佐藤さんだった。すらりとした長身にウェーブのかかったロングヘア。いつも朗らかな同僚だ。
「あ、おはようございます。佐藤さん」
「昨日大変だったみたいね。部長がカンカンだったわよ」
佐藤さんは心配そうに眉をひそめた。どうやら前の世界の記憶はないらしい。
「山田! 突っ立ってないで仕事しろ!」
フロアに響き渡る怒声。鬼の形相で睨んでくるのは鈴木部長だ。相変わらずだなあの人も。
だが俺は感動に打ち震えていた。
(普通だ……! なんて普通なんだ……!)
女性に精液をねだられることもなければクンニを強要されることもない。見慣れたオフィス。見慣れた同僚。
なんて素晴らしい世界なんだ。俺はここで生きていく。そう固く決意した。
数時間が経ち昼休みになった。俺が弁当を広げていると佐藤さんが声をかけてきた。
「山田君、午後から高橋社長との打ち合わせが入ってるから準備しておいてね」
「高橋社長……? ああ、あのクライアントの」
「そうよ。うちにとって大事なクライアントなんだから。失礼のないようにお願いね」
「は、はい! わかりました!」
俺は気合を入れた。この平和な日常を守るためにも仕事はきっちりこなさなければ。
そして午後。俺は佐藤さんと共に取引先の会社を訪れていた。応接室に通され待っていると一人の女性が入ってきた。
恰幅のいいやり手といった雰囲気の中年女性。彼女が高橋社長らしい。
打ち合わせは滞りなく進んだ。俺たちの提案に高橋社長も満足しているようだ。
「素晴らしいご提案ね。ぜひ前向きに検討させていただくわ」
「ありがとうございます」
俺と佐藤さんは深々と頭を下げた。
「では山田君。仕上げの方をお願いするわ」
佐藤さんが俺に言った。
「仕上げ、ですか?」
「ええ。契約締結のための大事な儀式よ。さあ社長、こちらの『特別応接室』へどうぞ」
佐藤さんに促され高橋社長は隣の部屋へと入っていく。俺もわけがわからないまま後に続いた。
その部屋はホテルのスイートルームのようだった。豪華なベッドが中央に置かれている。
高橋社長は慣れた様子で服を脱ぎ始めた。
「ちょっ……!? 社長!? 何を……!?」
俺が動揺していると、佐藤さんが俺の耳元で囁いた。
「何驚いてるのよ。契約の最後はセックスで締めくくるのが常識でしょう?」
「じょ、常識!?」
そんな馬鹿な。
「クライアントを満足させられるかどうかで契約内容も変わってくるの。あなたの腕にかかっているんだからね。ちなみに高橋社長は正常位がお好みよ。健闘を祈るわ」
そう言い残し佐藤さんは部屋を出ていった。いつもの優しい笑顔で。
残されたのは俺と全裸の中年女性。
「さあ、始めましょうか」
高橋社長は爛々と輝く目で俺を見つめていた。
……終わった。この世界もやっぱり狂っていた。
◆
それからというもの俺の日常はセックスにまみれた。
朝出社すればまずは女性の鬼課長との「朝礼」。個室で課長の体を満足させることから一日が始まる。
日中は女性クライアントとの打ち合わせという名のセックス。新規契約を取るために体を張る。時には複数のクライアントを同時に相手にすることもあった。
社内の会議ももちろんセックスだ。企画をプレゼンし、その内容が良ければ女性役員全員とセックスすることで承認される。
俺は心身ともにすり減っていくのを感じていた。確かにえっちな世界ではある。だがそこには感情の介在する余地など一切なかった。
これはただの労働だ。セックスという名の労働。
そしてこの世界で最も恐ろしいルール。それは「勃起不全は業務上の重大なミスと見なされる」ということだった。
ある日のことだ。俺はその日すでに三件の「打ち合わせ」をこなしており、疲労困憊だった。四件目のクライアントは若い女性だったが、俺の息子はうんともすんとも言わなかった。
「……あの、まだですか?」
クライアントの女性が怪訝な顔で俺を見る。
「す、すみません! 少々お待ちください!」
俺は必死に息子に意識を集中させる。だが焦れば焦るほど息子は萎縮していくばかりだ。
結局その日の打ち合わせは不調に終わり、会社に戻ると部長室に呼び出された。
「山田君。君、今日の高橋商事との打ち合わせでやらかしたそうじゃないか」
鈴木部長は心底軽蔑したような目で俺を睨みつけていた。
「申し訳ありません……」
「謝って済む問題じゃないだろう! 我が社の信用問題だぞ! なぜ勃たなかったんだ!」
「そ、それは……疲れが溜まっていて……」
「プロ意識が足りないんじゃないのか? 体調管理も仕事のうちだぞ。人事部に行けば精力剤が支給される。今後はそういうものも活用したまえ。いいな!」
「は、はい……」
俺は頭を下げ続けることしかできなかった。
その日を境に俺のデスクには毎朝栄養ドリンクと精力剤が置かれるようになった。佐藤さんの差し入れらしい。その優しさが逆に辛かった。
俺は死んだ魚のような目で毎日セックスをこなした。
女性社員のみで行われるチーム結束のための「研修」という名の乱交パーティー。
ミスをした佐藤さんを慰めるためのセックス。
女性上司との出張先での夜の付き合い。
もう何も感じなかった。快感すらなかった。ただひたすら業務として射精するだけの日々。
そんなある日、俺は見てしまった。同じ部署の井上さんという五十代のベテラン社員が廊下で倒れているのを。
すぐに救急車が呼ばれ井上さんは運ばれていった。
「井上さん、過労で倒れたみたい。最近ずっとED気味だったし、無理してたのよ」
給湯室で佐藤さんが他の女性社員と噂話をしていた。その口調はいつもの世間話と何ら変わりない。
「ああ、これで井上さんもクビね。代わりの若くて元気な子、早く入ってこないかしら」
俺は背筋が凍るのを感じた。
ここでは男の社員はただの道具だ。使い物にならなくなればすぐに捨てられる。井上さんの明日は我が身だ。
俺はこんなところで朽ち果てたくない。
その夜、俺はアパートの部屋で一人決意を固めた。
(もうたくさんだ……こんな世界、こっちから願い下げだ!)
確かに俺は「えっちな異世界」を望んだ。だがこんなのは違う。俺が求めていたのは、好きな女の子と心を通わせる甘くて優しいセックスだ。
こんなのはただの地獄じゃないか。
俺は最後の力を振り絞り、心の中で叫んだ。
「転移だ! 今すぐ次の世界へ行かせろおおおっ!」
ぐにゃりと視界が歪む。眩い光が俺の体を包み込んだ。
意識が遠のく中、俺は神に祈った。いや、あの全裸の女に祈った。
(次こそは! 次こそは頼む! 普通の、本当に普通の恋愛ができる世界でありますように!)
もはやえっちである必要すらない。ただ、まともな人間関係が築ける世界であってくれ。
俺の切実な願いは、果たして今度こそ届くのだろうか。