ゴミ捨て場に捨てられていたエッチなフィギュア直したら、女神様にチート能力もろた 作:パコール・レオンハート
◆
次に俺が目を覚ました時、そこは見慣れた自室のベッドの上だった。もはや様式美だなこれは。
「さて……次はどんな世界だ?」
俺は天井を仰ぎながら呟いた。これまでの経験からして、まともな世界である可能性は限りなく低い。期待するだけ無駄というものだ。
体を起こすと、頭の中にいつものように世界の名前が響いてきた。
──『ここは異世界、ハーレム』
「ハーレム……」
そのものずばりな名前に俺は思わず乾いた笑いを漏らした。もう隠す気もないらしい。
とはいえ、ハーレムと聞いて男なら誰しもが一度は夢見る桃源郷を思い浮かべるだろう。だが、これまでの経験が俺に警鐘を鳴らす。この世界の「ハーレム」が、俺の想像するような甘いものであるはずがない。きっと何かとんでもない裏があるに違いない。
「まずは情報収集だ」
俺は慎重に行動することにした。スマホを手に取り、この世界の常識を調べる。検索窓に「ハーレム」と打ち込むと、トップに政府広報のページが出てきた。
『ハーレム法(正式名称:多夫多妻関係推進法)について』
嫌な予感しかしない。俺はそのページをタップした。
そこに書かれていたのは俺のちっぽけな想像を遥かに超える狂った法律だった。
・全ての国民は複数のパートナーと恋愛関係を結ばなければならない。
・男性は最低三人以上の女性と、女性は最低三人以上の男性とハーレムを形成することが義務付けられている。
・単独のパートナーのみを愛する行為(いわゆる純愛)は本法律において「偏愛罪」と見なされ、二十年以下の懲役または一千万円以下の罰金に処される。
・ハーレムに所属する全てのパートナーを平等に愛さなければならない。
「……なんだこれ」
俺はスマホを落としそうになった。純愛が罪? 一人だけを愛したら懲役? 頭がどうにかなりそうだ。
ページを読み進めると、さらに衝撃的な事実が書かれていた。
『愛は分かち合うもの。独占するものではありません。より多くの愛を育むことが、この国の発展に繋がります。さあ、あなたも素敵なハーレムを築きましょう!』
国を挙げて多情を推奨している。愛が多い世界。それは聞こえはいいが、実態はただの強制的な乱交推奨社会じゃないか。
「冗談じゃねえぞ……」
俺は頭を抱えた。これまでの世界も大概だったが、ここはまた別のベクトルで狂っている。
俺は恐る恐る外に出てみることにした。街の様子はこれまで通り普通の日本のそれだ。だが、道行く人々の関係性だけが異様だった。
腕を組んで歩く男女三人組。カフェで談笑する一人の男と四人の女。どう見ても全員が恋人同士といった雰囲気だ。公園のベンチでは学生らしき男女のグループが互いにキスを交わしている。それがこの世界の日常風景なのだ。
俺が呆然と歩いていると、不意に声をかけられた。
「あの、すみません」
振り向くと、そこに立っていたのは黒髪ロングの清楚な美少女だった。大きな瞳でじっと俺を見つめている。
「ははい。なんでしょうか」
「あなた、もしかしてハーレム、まだ組んでない方ですか?」
少女は少し恥ずかしそうに頬を染めながら言った。
「え? あ、まあ……」
「やっぱり! なんだかそんな気がしたんです。あの、もしよかったら……私をあなたのハーレムに入れてもらえませんか?」
「へ?」
いきなりの告白に俺は間抜けな声を上げた。
「あなたのこと、見かけた時から気になってて……一目惚れ、です。私、あなたの最初の彼女になりたいです」
真っ直ぐな瞳。真剣な表情。冗談を言っているようには見えない。
「い、いや、でも俺は……」
俺が戸惑っていると、今度は別の方向から声がかかった。
「ちょっと待ったー!」
現れたのは金髪ショートの快活そうなギャルだった。
「抜け駆けはずるいよ、サヤカ! 私もこのお兄さんのこと狙ってたんだから!」
「ミキまで……! でも私の方が先だったわ!」
「早い者勝ちとかないし! ねえ、お兄さん! 私とも付き合ってよ! 絶対楽しいって!」
二人の美少女が俺を挟んで言い争いを始めた。まるで漫画みたいな展開だ。
「え、ええと……」
俺がオロオロしていると、さらに状況は悪化した。
「あらあら若い子たちに囲まれて大変そうね」
おっとりとした声。そこにいたのは豊満な胸を持つお姉さんタイプの美女だった。
「あなたみたいな素敵な殿方、放っておけないわ。私も仲間に入れてくださらない?」
「あの……」
気づけば俺は三人の美女に囲まれていた。道行く人々が「お、新人さんか」「いい子が見つかってよかったな」と微笑ましそうにこちらを見ている。
この世界ではこれが普通なのだ。断れば不審者扱いされるかもしれない。最悪、偏愛罪の容疑をかけられる可能性だってある。
「……わ、わかりました。よろしくお願いします」
俺がそう言うと、三人はぱあっと顔を輝かせた。
「やったー!」
「これからよろしくね、ダーリン♡」
「うふふ、末永く愛してちょうだいね」
こうして、俺がこの世界に転移してわずか三十分で、俺のハーレムが結成された。メンバーは黒髪清楚系のサヤカ、金髪ギャルのミキ、おっとりお姉さんのアスカさんだ。
俺たちはとりあえず自己紹介を済ませ、俺のアパートで共同生活を始めることになった。六畳一間の安アパートに男一人と女三人。どう考えてもキャパオーバーだ。
その日の夜から俺の地獄のような、それでいて天国のような日々が始まった。
「ねえダーリン、一緒にお風呂入ろ?」
ミキが甘えた声で誘ってくる。
「こらミキ。ダーリンは疲れてるのよ。私が背中を流してあげるわね」
アスカさんが優しく言う。
「二人ともずるいです! 私も一緒に入ります!」
サヤカがむくれる。
結局、四人でぎゅうぎゅうになりながら風呂に入ることになった。もちろん、ただ入るだけでは終わらない。
「ダーリンの、おっきい……」
「こっちも見てよ~」
「あらあら元気ねえ」
狭い湯船の中で、三人の女たちが俺の体を好き放題に弄んでくる。俺はされるがままだった。
風呂から上がれば、今度はベッドだ。万年床のシングルベッドに四人で寝るなど不可能に近い。
「私がダーリンの隣!」
「ずるい! 私が!」
「喧嘩しないの。みんなでくっついて寝ましょうね」
結局、俺は真ん中に寝かされ、三人が左右と足元から俺に密着する形で眠りについた。両手に花どころではない。四方八方が花だ。
そして夜はこれからだった。
「ダーリン……もう我慢できない……」
誰かの吐息が耳にかかる。それが合図だった。
三人の女たちが一斉に俺に襲いかかってきた。
「んっ……!」
サヤカの清楚な唇が俺の唇を塞ぐ。ミキの器用な指が俺の下半身を刺激し、アスカさんの豊かな胸が俺の顔に押し付けられる。
抵抗などできるはずもなかった。いや、そもそも男として抵抗するという選択肢はなかった。
その夜、俺は三人の女たちと朝まで何度も体を重ねた。一人ずつではない。三人同時だ。いわゆる4Pというやつだ。
サヤカに奉仕しながらミキに後ろから迫られ、アスカさんの胸を揉む。もはや自分が何をしているのかわからなかった。快感と疲労がごちゃ混ぜになった感覚。
翌朝、俺が目を覚ました時、体は鉛のように重かった。腰が砕けそうだ。
だが、女たちは元気いっぱいだった。
「ダーリン、おはようのキス♡」
「朝ごはんできてるよー!」
「ダーリン、今日もお仕事頑張ってね。夜は私たちがたっぷり癒してあげるから」
地獄の予告だった。
それから毎日がその繰り返しだった。
朝は三人からのキスで起こされ、夜は三人との乱交。休日になれば「ダーリン、デートしよ!」とせがまれ、四人で水族館や映画館に行く。もちろん、帰り道でラブホテルに寄るのがお決まりのコースだ。ホテルでも3P、4Pは当たり前。
俺の体は日に日に衰弱していった。目の下には隈ができ、体重も落ちた。
「ダーリン、最近元気ないね。もしかして、私たちの愛が足りない?」
サヤカが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「そんなことないよ……」
「じゃあ、もっといっぱい愛してあげる! 今夜は5Pしよっか!」
ミキが無邪気に言う。
「5P?」
「うん! この前ナンパした子、ダーリンに会いたいって言ってたから今日呼んじゃった!」
「ええええ!?」
その夜、俺のアパートには見知らぬギャルが一人増えていた。そして宣言通り、地獄の5Pが繰り広げられた。
俺はもう限界だった。
確かに彼女たちは俺を愛してくれている。それは疑いようがない。家事もしてくれるし、いつも俺の体を気遣ってくれる。
だが、その愛情表現が過剰すぎるのだ。そして何より辛いのが「全員を平等に愛さなければならない」というルールだった。
少しでもサヤカを贔屓すればミキが拗ねる。アスカさんと長く話し込めばサヤカが嫉妬する。常に三人の(今や四人だが)顔色を伺い、愛情を均等に分配しなければならない。しなければ違法行為となる。
精神的なプレッシャーも半端ではなかった。
セックスはもはや快感を得るための行為ではなく、愛情を証明するための義務になっていた。ノルマをこなすだけの作業だ。
ある夜、俺は四人の女たちが寝静まった後、一人ベランダでタバコを吸っていた。
(俺は何を求めていたんだろうか)
えっちな異世界。それは確かに望んだことだ。だが、こんなのは違う。
俺が欲しかったのはたった一人の女性と心を通わせ、お互いを深く理解し、その上で結ばれるような、そんな関係だったはずだ。
ハーレムなんて、俺には荷が重すぎた。
「……もういいかな」
俺は空を見上げた。月が綺麗だった。
この世界も俺の居場所ではなかった。
俺は部屋に戻ると、そっと荷物をまとめた。彼女たちを起こさないように静かに。
そして玄関のドアを開け、最後にもう一度だけ部屋を振り返る。
四人の寝顔はとても幸せそうだった。
(ごめんな。俺はお前たち全員を幸せにはしてやれない)
心の中で呟き、俺はアパートを後にした。
誰もいない深夜の道を歩きながら俺は能力を発動させた。
「転移」
視界が歪み、光が俺を包む。
もうえっちな世界なんてこりごりだ。
次こそは本当に本当に普通の、平和な世界でありますように。
俺の願いはもはやそれだけだった。