いつもと同じ天井。いつも使っている布団の感触。首だけ動かし、机の上に置いた目覚まし時計を見てみると、時計の針は10時30分を少し過ぎたところをさしていた。
ボクは時計から視線を戻して天井を見上げる。
そのままボーッと天井を見上げながら、ふと思い出す。
「そういえば昨日もリビングで天井を見上げてたっけ……」
あの時は麗さんと静香さんが隣で寝てて驚いた。今も、静香さんが隣で寝てる状況だけど、ボクの心は落ち着いていた。
おそらく、静香さんに自分を『女』と意識させると宣言されてから、朝までとはいかないまでも夜遅くまでセックスし続け、ボクが静香さんへ向けていた感情をきちんと整理したからなんだろう。
一晩じっくり考え、整理した自分の気持ち。
静香さんに対する気持ちを、ちゃんと正直に伝えよう。
「ん……。……ぅん?」
ボクがそう覚悟したとき、ちょうど目を覚ましたのか、静香さんの目がゆっくりと開き始めた。
静香さんはまだ半分閉じかけてる瞳をボクに向けたあと、口元に手を当てて小さくあくびをした。
「ふわあぁぁ……おはよう、カズくん」
まだはっきりと回っていない呂律でそう挨拶してくる静香さん。そんな姿をかわいらしく思いつつ、いつも通りの挨拶を返す。
「おはようございます、静香さん」
「ん」
挨拶を返された静香さんはトロンと瞼を下げていき――再び夢の世界へと旅立ってしまう。
「スゥ……スゥ……」
…………。
かわいらしい小さな寝息を立てて、気持ち良さそうに眠る静香さん。
その一方でボクはすっかり目も覚ましてしまい、その場に放置されている。
ちなみにボクの腕は、ほとんど静香さんの爆乳に挟まれて身動きが取れない状況である。
「あのぅ……静香さん?」
「……ぅ、ん……? む~……どうしたの、カズくん?」
「おやすみ中、起してすみません。――でも、ボク……。これでも一応静香さんが起きたら整理した気持ちを伝えようと思ってて……」
ボクは静香さんを正面から見つめて言う。
「ボクは静香さんのこと……たぶん、リカさんのことも……」
「――やっぱり、『女性』として『好き』でした」
「はい……って、静香さん!?」
なんでボクが出した結論を先に!?
静香さんはさらに体を密着させ、驚いているボクに向ってニッコリと笑顔を浮べる。
「だって、『女性』と思ってない相手に昨日みたいな愛情たっぷりエッチなんてできないでしょ♪」
「静香さん……」
「ふふっ」
やさしく微笑む静香さん。ボクは改めて静香さんを見つめて言う。
「ボクは、ひとりの『女性』として静香さんが『好き』です」
ボクの告白に静香さんは目を大きくさせて驚き、
「私も。リカと同じぐらいカズくんを好きよ♪」
と、返事を返した。
「リカさんと同じぐらいですか……」
「あらぁ? リカと同じは嫌?」
「『男』としては……ですけど、リカさんと同じぐらい好かれてるなら、むしろ光栄です」
「ふふっ、大丈夫よ♪ 『男の子』だったらカズくんが1番だから、ね」
静香さんはそう微笑んでボクの頬にキスをした。
◆
午前11時。ボクも静香さんもやっとベッドから起き上がろうとしたわけだけど……。
「――っ。はあぁ……やっぱり痛い……。これって完全にやりすぎが原因ですよね……」
「そうねぇ。結構赤くなってるし、今日1日は絶対安静にしといたほうがいいわね」
下半身……ペニスの表面がヒリヒリと痛んだり、腰痛だったりとボクはベッドから起き上がれなかった……。
一方の静香さんは少し腰とオマンコが痛いと言いつつも元気のようで。ベッドから降りたあと、ベッドの足元に置いていた、クリスマス兼正月用にと静香さんとリカさんがネットで購入して数日ほど前に届けられた大きな2つのダンボール箱のうち、ひとつを開封し始めた。
起き上がれないので、首だけ向けて静香さんの様子を窺っていると、目的のものを見つけたのか、いくつかの袋を抱えてベッドに腰掛けてきた。
「静香さん?」
「むふふ……ちょっと待っててね、カズくん♪」
「?」
静香さんは疑問符を浮べてるボクを放置して、袋を開封し始めた。
まず最初に空けた袋からは……白のガーターベルトにストッキングが出てきた。
静香さんはまずそれらを装着して、次の袋を開封する。今度は白の、Jカップを包み込むための巨大なブラジャーと、両側が紐のTバックが出てきた。どちらもバラの刺繍が施されていて、スケスケだった。
「ぅんしょ……っと、カズくん。ブラジャーのフック、止めてくれる?」
「は、はい……」
金色の長い髪を掻き分けて、ブラジャーの紐を受け取り、背中でホックを留める。
「ありがと♪」
「どう、いたしまして……」
ブラジャーを装着し終えた静香さんはすぐ後ろにボクがいるというのに、Tバックを穿き始める。
両足に通し、太ももまであげてから立ち上がる。ボクの目の前で静香さんのお尻が振るえ、お尻の穴がチラリと覗けたが、静香さんは気にした様子もなくそのままTバックを装着した。
突然の着替えシーンを見せられ、地味に興奮し始めたボク。そんなボクの興奮に気づいた様子もなく、静香さんは黙々と作業を続ける。
今までよりも大きな袋を開けて、静香さんは中からある衣装を取り出した。
静香さんはその衣装を両手で広げて確認しながら満足そうにうなずいて、着替え始める。
数十秒ほどで着替えを終えた静香さんはその場でくるりと回り、ボクに見せてくる。
「どうかしら? 似合ってる?」
少し照れくさそうに微笑んだ静香さん。
「…………」
「……似合わない?」
ワンピースタイプで、太ももとストッキングの間の絶対領域が大きく見えてしまうほど短いミニスカート。
頭にはナースの目印ともいっていいだろう、ナースキャップ。
そのすべての生地は神聖さや純潔を示す白で統一されて、首にはおもちゃの聴診器がかけてあった。
――そう、静香さんが取り出して着替えた衣装とは、ナース服だった。
「ねえ、何か感想言ってくれないのぉ?」
沈黙するボクの顔を静香さんはさらに顔を近づけて覗き込んできた。
はちきれんばかりにナース服を内側から押し上げるJカップの爆乳が、静香さんの顔の下で振り子のように揺れている。
ナース服もコスプレ用……いや、プレイ用らしく、生地がすごく薄くてブラジャーに刺繍されてるバラが浮かび上がり、なんだかボクをいけない気分にさせる。
邪念をふり払うように視線を下げても、そこにあるのはミニスカートとストッキングの間から覗けている太ももの肌色……俗に絶対領域と呼ばれるものだった。
「……すごく、似合ってます」
かろうじでつぶやけたボクだったけど、余裕はなかった。
なにせ、あの静香さんがコスプレナースに変身してるのだ。やわらかい雰囲気をいつも身に纏わせ、いかにも天然そうな微笑みを浮べてる、やさしい爆乳お姉さんの静香さんが、だ。
エッチなイタズラをしたくならないわけなんて、ないッ!
むしろ、こんなエッチなナースさんにはイタズラをすべきなんじゃないか?
うん、そうだ……。
ちょっどナース服のボタンも脱がせやすいようにミニスカートの先まで着いてるし、ここはまず診察してもらって、その途中で事故に見せかけてイタズラを……。
「カズくん?」
「――っ、は、はいッ!」
「さっきオオカミさんみたいになってたわよ? それも、今にも私に襲い掛かってきそうな」
「そっ、それは……静香さんが……」
エロくてかわい過ぎるから……。
「ふふっ、この衣装を気に入ってくれたのはうれしいけど、今日は1日絶対安静よ。代わりにこの美人でやさしいナースさんが手厚く看護してあげるから、ね♪」
「ハハハハ……逆にナースさんが原因で症状が悪くなってしまいそうなんですが?」
「じゃあ、まずは診察から始めましょうか♪」
無視……というか、聞いてない静香さんはボクの体にかけていた布団を隅に寄せて、診察を開始する。
「はーい……まずはお口を大きくあけましょうねぇ~」
「……はい。あ~……」
「……うん。腫れもないし、異常なしね。次は……」
テキパキと診察をしていく静香さん。
…………。
……ボクが思ってた診察と、だいぶ違う……。
というか、ガチ診察だよな? ナースっていうか、もはや女医さんだよ。もしかして職業病?
通常の診察を終えた静香さんは、ペニスを触診に移った。
まず静香さんは最後の袋を開けて薄いゴム手袋を取り出し、しっかりと両手に装着する。……あれ、袋に貼られてたハート型のシールに、アナルプレイ用って書かれてなかった?
半起ちになってるペニスに、静香さんの両手が触れる。
「――っ」
いつもの手とは違う、吸い付くようなゴム越しの感触。
「うーん……血が出たりとかはしてないみたいだけど、やっぱり少し腫れてるわねぇ」
つぶやきながらペニスに顔を近づける静香さん。そのまま慎重に竿を動かして、玉袋の裏側まで念入りに調べられる。
「し、静香さん……」
「あら? 痛かった?」
「そうじゃなくて……」
ボクが向けた視線に、静香さんは「あ……」と小さく声をだして気づいた。
フル勃起してしまってるペニスと、そのペニスを調子近距離から観察していた自分に。
「あらあら、ごめんなさいね」
笑って誤魔化す静香さんだけど、その頬は赤かった。静香さん、完全に無意識だったな。
じーっと静香さんの顔を見つめると、静香さんはさらに誤魔化すように視線を泳がせ、
「まあ、とりあえず……お薬ぬりましょ」
と言ってきた。
「……お薬、ですか?」
「ええ。ほら、前にもやりすぎて腫れちゃったことがあったでしょ? あのとき使ったお薬よ」
「ああ……あれですか……」
そういえばあのときって、リカさんが面白がって買った大量のオナホールで散々イジメられたりして腫れたんだよなぁ……。
しかも、腫れたペニスが痛くて静香さんに泣きついてみれば……実は大量のオナホールたちは静香さんがネットショッピングで見つけて面白がり、カートに入れてしまい、リカさんが知らずに決済してしまったものだったことを教えられたんだよなぁ。
「オナホールの感触とオマンコの感触の違いとか、オナホールごとで感想しゃべらされたのはきつかった……」
「で、でも、あのあとすっごく謝って、色々慰めてあげたでしょ? ほら、幼児プレイとかしてかわいがってあげたりぃ……」
「ハハハハ。別に怒ってないので、そのことについては思い出させないでください。お願いですから……」
「そぉ? おっぱいちゅーちゅー吸われたり、ご飯食べさせたり、甘えられたりって私やリカは楽しんでたけど?」
「幼児プレイじゃなくて、ほんとに幼児退行してたからマズいんじゃないですか……。あのままだったら確実にボクの精神は幼児に戻ってましたよ」
――と、まあ、昔話はこの辺りで置いておこう。
「それより、お薬お願いします、静香さん」
「はぁーい♪」
静香さんは元気よく返事を返して、触診につかったゴム手袋をゴミ箱へ捨ててから、部屋のクローゼットを開ける。中から中身が見えないアクリルケースを取り出した。
静香さんはアクリルケースを空けて、平べったい楕円型の薬瓶を取り出し、持ってくる。
「じゃあ、お薬塗るわね」
そう言って薬瓶の蓋を開封し、片手に新しいゴム手袋を装着する。ゴム手袋を装着した手で軟膏のような塗り薬を少量掬い取り、竿全体に塗っていく。
「――っ」
ビクッと体が反応する。
ひんやり冷たい薬。静香さんの手で薬が温まり、ヌルヌルし始めて……。
「はーい、もう少しの我慢よぉー」
「静香さん、これ……やっぱりヤバいです……ッ」
まるでローションプレイ……しかも、ローション(薬)は肌に染み込んで不思議な快感を送り込んでくる。
「よし、終わりね♪」
竿の根元から雁首まで丁寧に塗り終え、静香さんはペニスから手を離す。
「はぁはぁ……はぁはぁ……あ、危なかったぁ……」
もう少しで射精しそうだった……。
天井を見上げながら大きく息を吐いて呼吸を整える。まだ薬が染み込んでいく感覚に感じてしまうが、触られていないのならギリギリ耐えられる。
「偉いえらい。いい子ね、カズくん」
「うれしいですけど、今は頭を撫でないでください。……射精しそうなので」
「あらぁ? そんなにこの衣装が気に入ったの?」
「ええ。エッチなイタズラしてみたいです」
「ほんとにしちゃう?」
「今は……ううっ……イタズラじゃすまなくなるので我慢します……」
そう言って大きくため息を吐くボクに、静香さんはニッコリ微笑んで立ち上がる。
「じゃあ、もうお昼だし、私はご飯作ってくるわね」
「それならボクもお手伝い……」
起き上がろうとして、止められる。静香さんは口元に指を当てて、
「今日のカズくんは絶対安静。今日1日は大人しくこのナース静香に看護されてなさい♪」
そう言うと、部屋から出て行ってしまった。
◆
コスプレナース服の静香さんに手厚く看病されてから2日。
麗さんを留年から救うチャンスは、思いのほか早くやって来た。
「……ここまでは、順調だな」
時刻は午前9時丁度。現在ボクは、職員室近くの廊下、階段の踊り場の下に隠れていた。
「体育館で朝礼が始まったのは今さっき。職員室はおそらく無人のはず。それに、ここの教師は朝礼ぐらいでは職員室のカギを閉めない」
完全に人の気配がしなくなったのを確認してから、慎重に廊下へと出る。
物陰に隠れながら職員室へと進んで行き、職員室のドアに手をかける。
やはりドアの施錠はされておらず、ボクは簡単になかへと侵入できた。
ドアを閉めてから、一応、誰もいないか視線で確認する。このとき誰かいた場合は、少し怒られるぐらいですむからだ。
「誰も、いないな……」
完全に無人の職員室。ボクは外の窓から見られないよう中腰で紫藤先生の机に向かい、私用のパソコンを確認したあと、両手にゴム手袋を装着する。一応、ゴム手袋は指紋を残らせないようにするためだ。
机の横のホックにかけられた鞄からパソコンを取り出し、電源を入れる。
「パスワード設定されてなければいいけど……。――ふぅ、よかった。されてない」
無用心な紫藤先生に感謝しつつ、ボクは急いでマウスを動かし、目的の情報を収集……。
「……ん?」
デスクトップに変なフォルダがあった。フォルダの名前は紫藤議員の名前で、開いてみると――、
「これは……どういうことだ?」
パソコンに写し出されたフォルダの中身に、しばしボクは固まった。
「後援者献金一覧に会計記録? いや、でも……」
フォルダの中には、紫藤議員の内部情報が記載されているだろうフォルダがいくつも存在していたが、その他にもいくつかフォルダが存在していた。
そして、それらのフォルダの名前は、どれもが『新しいフォルダ』のままだった。
「空……じゃないな?」
一応、『後援者献金一覧』と『会計記録』の存在を確認できた時点で当初の目的は達成済みで、時間があればUSBに情報をコピーして自宅で調べるつもりだったのだけど……。
『新しい記録』と表示されたままなのに、他のフォルダとそう容量が変わらないフォルダの中身が気になった。
ボクは残り時間を確認したあと、試しにフォルダのひとつを開いた。
フォルダの中身はワードで書かれた文章がいつくも……。
「…………」
ボクは、一度開いた文章ファイルを閉じて、違う『新しいフォルダ』を開く。
違う『新しいフォルダ』も文章ファイルで、もうひとつの『新しいフォルダ』はエクセルと文章ファイル。
『新しいフォルダ』の中身がどういうものかをすべて確認したところで、ボクはノートパソコンの電源を落とした。
ふぅっと息を吐いてから、ノートパソコンを元の場所へと戻し、痕跡を残さないように足早に職員室から脱出し、そのまま保健室へと向った。
「はぁぁ……疲れた。……まあでも、とりあえずは何とかなりそうだな」
「何が『何とかなりそう』なのかしらぁ?」
「な、なんでもないですよ、静香さんっ……」
「むぅ~……怪しい。朝礼前に具合が悪いからって保健室に着たのに、朝礼が始まったらトイレ行くからって出て行って10分以上帰ってこないしぃ」
「そ、それは……」
「具合のほうもほんとは悪くないようだし……。それに、なんだかスッキリしてる」
「うっ……」
「もしかしてカズくん……」
「な、なんでしょうか?」
「トイレで麗ちゃんとエッチ……」
「違います」
「そうよねぇ。だったら……」
「ひとりでもしてませんからね? というか、ひとりでする余裕はないです」
「そうなの?」
「はい。ちなみに女子更衣室や体操着を盗んだりとかもないですからね?」
「ふふっ、誰もそんなこと思ってないわよ」
「それはそう、ですよね……」
「ええ♪ だってカズくん、体操着ならもう何枚も持ってるんだし♪」
「…………」
「ん~……でもぉ、よく考えるとその体操着って全部プレイ用だしぃ、女子高校生の体操着が欲しくなってもおかしくは……」
「ちょっと黙ってくれますか静香さん……」
「そんな……黙れなんて……。ダメよ、カズくん。ここは学校の保健室で、私は保険医で先生、なんだから……。あと、学校では『鞠川先生』って呼ぶ約束……」
「はぁ……いい加減にしないと本当に押し倒して黙らせますよ」
「――あらぁ、意外と元気そうじゃないの、カズ」
「――っ!? 麗さん!?」
「やっほー、麗ちゃん♪」
「おはようございます、鞠川先生」
「麗さん、なんで保健室に……?」
「なんでって、それは……カズが、保健室に行ったから……」
「もしかして心配して?」
「当然でしょ、彼氏……なんだから。――そっ、それより! 保健の先生押し倒すぐらい元気なら休む必要ないでしょ! 教室行くわよ、ほらっ!」
「あっ、うん! わかったよ。静香……鞠川先生、じゃあ失礼しました」
「ええ。じゃあね、カズくん♪ ――あと、さっきの続きは今晩、ベッドの中でね♪」
「――っ!」
「ふふっ、体操着用意しといてね♪」
「カズッ! 早く行くわよ!」
「う、うん!」