坊主頭の顔に何か当たった。眠そうに目を開ける。
「よく寝たか?もう9時だ」
先程、ルイスと名乗った男が隣のヤシの枝から話しかけてきた。彼は風にゆっくりと揺れるヤシの上でヤシの実から胚乳を飲んでいた。
坊主頭は先程、自分をオスカーと名乗った。2人はそれぞれ別のヤシの木に登り、ヤシの枝の上で休んでいる。
「ああ」とオスカーが頷いた。
「左目はどうした?」とルイス。
「…あの化け物は見たよな?」オスカーが腫れた顔で言った。
「ああ……見た」
「あいつにやられたんだ。毒を持ってる」
「毒も有るのか?」ルイスは勘弁しろよとでも言いたそうだ。
「銃を向けたら、何かを吐きつけられた……そしたらこれだ」
「それは大変だったな」
「噛まれたっぽい奴にも会ったんだが、呼吸や口がおかしくなってたよ……そいつはまともに喋れなかった」
それを聞くとルイスの神経質そうな表情が暗くなった。
「左目は生きてるか?」
「失明はしていない」
「そいつは不幸中の幸いだ」
オスカーは腕を組んで言った。
「ところで……さっき言ってた、棄権出来ないってどう言うことだ?」
「言葉の通りだ。アプリで棄権申請しても何の反応も無い……申請したら、管理してる南軍のやつらに連絡が繋がるって聞いたよな?」
「ああ、そう言う説明だったぞ……もともと棄権何て出来ないんじゃないのか?漁船じゃピックアップも出来ないだろ」
「いや、棄権はできるはずだ。ピックアップも……ヘリぐらい持ってるだろ。あの小船から上陸させたのは下手に海に出ない様に、波の強さを体感させる為じゃないか」
「まあ……そうだろうな……しかし、そもそもだな、あいつらに俺たちの意思を守る義務何てあるのか?」
「有る。このゲームは、あいつらと俺たち捕虜だけじゃなくて、第三者も関わってる……いわゆるビジネスだ。勝手にルールを破れば信用を失い、次が無くなる」
「じゃあ……何で棄権出来ないんだ?」オスカーが両手を広げてかぶりを振った。
「……わからない……もしかしたら戦況が変わって、ここは放棄されたのかもな」ルイスもかぶりを振った。
「それこそ信用0だな」
「まあ、そうなるよな。いずれにせよ、あいつらは現場を管理をする役目が出来なかったってことだからな」
「ところでルイス、あんたも北軍の捕虜なのか?」
「そうだ……恐らく、これに参加してる奴らはみんなそうだろうな」
「……やっぱりそうか……」
「とても残念だよ」
少しの間、砂浜を通り抜ける風の音以外は沈黙が漂った。
「……ところで、今後どうしようかね?」オスカーが沈黙を破った。
ルイスは現実に引き戻されたかの様にハッとしている。
「とりあえず、もう一度申請をしてみるか―
―アプリ上で申請画面には管理組織へのホットラインが設けられていた。ルイスは何度か掛けたがやはり繋がらなかった―
「やっぱりダメだ」とルイス。
「……プレイヤー同士の共闘は失格だよな?」
「そのはずだ」
「そうなら、俺は既に失格している」
「何でだ?」
「まあ、あとで話すよ。とりあえず、カメラを回してプレイヤー数が変わるか確認しよう。管理状態なら、あんたの分が減るはずだ」
ルイスは少し怪訝な表情をしたが賛同した。
「やってみるか……仮面は持ってるな?」
「ああ」
2人が仮面をつけた後、ルイスはカメラをオンラインにした。その後、となりのヤシの木の上でオスカーが佇む様子を流した。オスカーは仮面をずらしてヤシの胚乳を飲んでいる。
ルイスが携帯を見ている。様子がおかしい。
「……減らない、それどころか増えた」
「どういう事だ?俺のカウントが復活した?」
「そうかもな」
「人数はちゃんと管理状態に有るんだな。なのに失格にならないとは……いよいよ何か起きてる」オスカーが腕を組みながら言った。
少しの間端末を見てルイスが言った。
「観客には受け入れらてる様だ。投げ銭が入って来ている」
「……殺し合いを見に来てるんだよな?」
「まあ……ありがたい事だ」
「で、今後どうしようかね?……ここ(ヤシの木の上)にずっといるか?」
「それも良いが……体力と物資が徐々に減って行くからな。弱った所を襲われたら生き残れない」
「海に逃げるのも無理だし……2人で北の滑走路まで行くか?」
「フェンスの向こうは、もっと危なそうだ。そもそも、どうやって“追加の銃“を手に入れる?」
「冗談だよ」
少しの間、彼らがいるヤシの上に沈黙が漂った。海からの風がオスカーの耳の横を通り抜ける。
昨日の悪魔が支配している地獄の様な山頂に比べたら、ここは天国だ。神経質そうで疲れが滲み出ているルイスの顔もここなら天使に見えなくもない。
オスカーは当分このままここにいる事が最適な選択だと考えていた。
ルイスがカメラを外し電源を落としている。その後仮面を外し、深刻そうな顔でオスカーに向き直った。
「今一度、お互いの辿ったルートや恐竜について知ってる事を話さないか―
―オスカーは上陸からここに来るまでの出来事やルートの特徴について説明した。他のプレイヤーが目の前で殺された事や2匹の恐竜に遭遇した事だ。ルイスからも同様に確認した。彼から幾つか有益な情報が出てきた。
彼のボックスもフェンス沿いにあった事、あと、他のプレイヤーが恐竜を倒すのを見た事など―
ルイスはオスカーの情報を聞いた後、考え事をしている。ヤシの木の上で、海を背にして森の方を見ているが、目線は遥かに遠くを見ていた。
オスカーは彼の様子を、生きている右目で観察していた。数分後、考えがまとまった様でルイスが切り出した。
「2人とも体力の有るうちに……君のルートでその2匹を狩らないか?」
オスカーが失笑し、ルイスを見た。
「……本気かよ?」
「本気だ」
「……見かけによらず大胆だな」
「今のうちにその2匹を撃退しておいた方が、生存確率は高くなる。こっちは徐々に体力が無くなるが……下手したら何か感染症になる可能性もある。しかし、向こうは飢えで凶暴さが増すかもしれない」
オスカーは沈黙している。
ルイスは沈黙しているオスカーの様子を伺って言った。
「目的は狩りだけにはしない。君の支給箱に行って物資を手に入れることもするよ。これはどちらにせよ必須事項だろ?」
オスカーはルイスの話を聞いていたら、昨日の山頂での出来事がフラッシュバックしてきた。
羽毛が薄ら生えた鱗の巨体と理解できない速度の動き、見つめられると体が動かなくなる瞳孔。地獄の花の様な毒々しい色の襟巻き。
そして、何より、思い出すだけで全身の毛が逆立ち、胃酸が噴き上がってくる様なあの残忍さ。ボロ切れの様に振り回され、岩に叩き付けられた男、上半身を無理矢理へし折られた青年。
それらが頭をよぎると、鼓動と呼吸が荒くなるのと同時に、あいつの毒で焼かれた左目がズキズキと痛んだ。
そして、暗い夜空に轟く遠雷の様な腹痛と、ひどく酸化した廃油を一気飲みした様な胸のムカつきに襲われた。
「……」
オスカーの内心を知らずにルイスは続けた。
「俺が言った通り、ここの前方の森にいた恐竜は他のプレイヤーが倒した……プレイヤーとの人数のバランスからして、この周辺に残ってるのはその2匹の可能性が高い」
「そうであって欲しいな」とオスカーは半分聞き流している。
「仮に、他にいたとしてもだ……2匹を倒せば投げ銭が入る、そして、支給箱までのルートも確保できる。つまり物資が手に入るから、何かしら他の手が打てる」
「……」オスカーは少し聞き耳を立てたが、すぐに嫌そうな顔をしてまた沈黙した。
「更にそのルートは右手が岩壁なのだろ?前と左だけに注意すれば良い。2人なら行ける」
「そうだけどな……」
「アイツらは倒せる……話を聞く限り、何度か倒すチャンスがあっただろ?」
オスカーは、奴らに気付かれずに何度か銃口を向けているタイミングが有った事を思い出した。
「……有ったよ」
「その時倒せなかったのは、得体の知れない怪物にビビったからだ。それは当たり前の反応だ。俺も同じだったよ……でも、あいつらに何度か遭遇し、俺とも情報を共有した今なら、それなりの免疫ができただろ?」
「わかった!わかった!……行けばいいんだろ」オスカーは思わずこう言った後、すぐさま大いに後悔した。
「良い選択だよ」ルイスが笑みを浮かべた。
「……補給するなら、暗視スコープが有ると安心なんだが」
「そうだな、上手く行ったら手に入れよう」
「……そういえば、2日目に暗視スコープを手に入れようとしたんだが……」
「値段が上がって買えなかったか?」
「そうだ、あれは何でだ?」
ルイスが端末のアプリを見せてきた。
「これはプレイヤー全員の所持金合計だろ」彼は左上の下段の数字の母数を指刺している。
「知ってる」
「これに連動して物品のコストが変わるみたいだ」
「は?そういうこと?」
「つまり、稼げない奴は支給品を入手出来なくなる」
「……余計なことしやがって」
「このゲームは、難易度とかバランスとか、何かと調整不足だよ。俺が思うに、まだ試行段階だ。もしかしたらこれが最初なのかもな」
「それはあり得る。支給箱が真新しいからな……そもそも、こんな火力不足の長期戦、人気出ないだろ」とオスカーは再び腕を組んだ。
「いや、目玉は恐竜だよ。俺たち人間はおまけなんだろ。恐らく人気は凄まじいはずだ……投げ銭の額も凄いよな」
「……そうだな」
「ところで、アイツらの撃退方法について話そうか」
「ああ」
「あの怪物に対峙する上で一番心配な点は、M4の火力不足だ」
―M4は対人用に設計されたアサルトライフルである。使用される銃弾はライフルの中でも比較的小さい5.56ミリNATO弾。弾頭の直径は僅か5.7ミリであり、大型動物にとっては針の様な大きさである―
「アイツらにとったら、豆鉄砲の様なもんだろうな」
「そうだ」
「あんたが見た、怪物を倒した奴は、どうやってたんだ」
「あれは……たまたまだったと思う。突進されたところに、至近距離で撃った弾が脳天に直撃したんだ。再現性は無い……そいつは危うく潰されるところだったよ」
「そうか、まずは近付かれない様にしないとな」
「そうだな……俺の考えは、遠くから足を狙うって作戦だ」
「頭じゃ無いのか?」
「あいつらの頭は鳥みたいに良く動くだろ?それに、体の割に小さくて狙うのは至難の技だ」
「口はバカデカいんだがな」とオスカー。
「心臓もどこにあるのかよくわからない……それに対して足は……的がでかいし、立ち止まってる時は比較的動きが止まってた。何より二足歩行だ。片方潰したら動けなくなるぞ」
「確かに、頭はチョコチョコ動いていたけど、足はどっしりと構えてた気がする」
「だろ。あ、そうだ。あと、足といっても、膝下より下だぞ。あのぶっとい腿はM4じゃどうにもならなそうだ」
「わかった。でもよ、アイツらのゴツい足の骨にコイツの弾が食い込むかな?」とオスカーはM4を見ながら言った。
「確かに心配だ…しかし、M4は威力は心細いが、貫通力は期待できないかな?弾丸が小さいからこそ弾かれず入っていきそうだが。運良く倒したやつも頭蓋骨を貫通させたんだ」
「……そうか」
「もう一つ……先程言った事とは矛盾するが、至近距離まで近付かれたら、頭を撃って即死を狙った方が良いかも」
「それじゃあ、あんたが見た男と同じじゃ無いか」
「近づかれたら、やはり俺が見た男と同じ方法しかない」
「あの大きさだもんな。至近距離なら、足を潰したとしても危ない……か」
「そうだ。至近距離なら即死させないと危険だ。一か八か、脳みそを破壊するしか無い……君の言う通り、1番重要なことは近づかれない事だ」
「わかった……攻撃の指示はあんたが出してくれ」
「任せてくれ……ところで弾は何発ある?俺は90、マガジン2本追加して1発も撃ってない」
「……18だ」
「俺のマガジンを一本やる。貸しはチャラだな」ルイスは渋面を作り、少し落胆した様子で言った。
「助かる」
「……じゃあ、さっそく準備をするか―
時間は9時34分。
2人はヤシの木からビーチへ降りた。
*
ビーチの東端、オスカーが上陸した地点まではおよそ1キロだろう。昨晩休んだヤシの木の地点から、目視で十分に確認できた。
砂浜を、先頭はルイス、後ろはオスカーで縦に並び歩く2人。会話は無く黙々と歩いた。波打ち際すれすれを歩く2人の左手にヤシから始まる森、右手に数十メートル先で白波が崩れている海が広がっている。
オスカーは左目が見えない為であろう、森側を警戒する時は大袈裟に左側を向いている。それも頻繁にだ。
数分歩くと河口に着いた。水深は膝ぐらいで幅は20メートルといったところか。波来ると逆流が発生している。
「ここは、俺が落ちた川の終点だな」とオスカーが言った。
ルイスが頭を少し、振り向いて頷く。
バシャバシャと川に入り、河口の真ん中程来た時だ。向こう岸の地面の様子が目に入っていた。
それを見たら、オスカーは再び腹痛と胸のムカつきに襲われた。
向こう岸の砂浜が無数の巨体な足跡で荒れているのが、少し離れていてもわかった。
昨晩ヤシの木から見えた奴のものだろう。森では足跡がよく分からなかったが、その砂浜には鮮明に残っている。
河口を渡り切ると、2人は荒れた砂浜で立ち止まった。
「これは、昨晩見たって奴のだな?」とルイスは足跡をみている。
オスカーはルイスと目が合うと頷いた。
ルイスが左手の親指と小指を開き、足跡の大きさを測った。一番長い中指の先から踵はルイスの親指から小指までの長さが2.5個分有った。つまり、50センチは有る。
「……ゾッとするな。なんて爪だ」ルイスは爪の先部分でできた凹みの深さを人差指と中指で確認している。
3本指の足跡は鋭い爪の形を見ていたら、オスカーは再び、彼の目の前で男達が踏みつけられた光景と骨が砕け、服ごと皮膚が裂かれる音、彼らの悲鳴がフラッシュバックしてきて、同時に胃酸が逆流してきた。
「ビーチまで降りて来るのは確かだった。あんたの言う通り、早く倒した方が良いな」オスカーは、恐怖で押しつぶされそうなのを必死で隠そうと試みたが、その声には震えが滲み出ていた。
*
更に少し歩き、オスカーの上陸地点に着く2人。オスカーは、僅か2日前の上陸が大昔の事の様に感じた。ここから見る森の景色も違って見える。
時間は9時55分。
「ここからの岩場沿いに上がるんだ」とオスカー。
「君は左目が見えないから、右側で前方の10時、2時方向の範囲を注視してくれ。俺は左側で6時から12時を確認する」
オスカーが頷いた。
2人はヤシの林を足早に駆け抜け、その奥に広がる鬱蒼とした森へ足を踏み入れた。
オスカーは、昨日とは打って変わり冷静になっている。心拍数は程よく高くなっているが、昨日の様に視界が狭まり、頭が真っ白になる様な事は起きていない。
むしろ頭は冴えていた。これは、奴らに対する免疫が出来たことも有るかも知れないが、やはりルイスという相棒の存在が大きそうだ。
彼の的確な指示は勿論のこと、何より2人いるってことがオスカーの精神的支柱になっていた。
そんな、気が緩みかけた時だった。視界に嫌なものが入り込んだ。咄嗟にオスカーは立ち止まった。
アイツだ。オスカーは頭頂部から背骨に電流が貫いた様にビクリとした。
あの化け物が堂々と襟巻きを広げて威嚇している!
「ウワー!!!」
ガガガ!ガガガーン!!
森に悲鳴と銃声が響いた。
「いたか!!」ルイスの声が響いた。
オスカーは銃弾が届いた先を見ると、不思議な事が起きた。確かにあの恐竜がいたのだが、そこには、シダの葉がうなだれ始めた枯れかけのヘゴの木があった。オスカーは我に返った。
「準備運動だ」とばつが悪そうにオスカーが言った。
「君の弾が少なかった理由がわかったよ」とルイスは皮肉を吐いた。
しかし、オスカーの消沈した様子を見てルイスはすかさず宥めた。
「まあ、もう少しリラックスしよう。昨日と違って今日はピンピンした2人だ。負けるはずがない」
「ああ、わかってるよ」
*
その後は、順調に山を登って行き何も起きず箱までの道の半分を過ぎた。ふと、オスカーが呟いた。
「この辺かも」
「何か言ったか?」とルイスは周りを見ながら言った。
「昨日、二匹が鉢合わせしたって言っただろ」
「それがこの辺か?」
「たぶん」
「川は無いぞ」
「もう少し西に行ったらあるよ……とりあえず、もう危険地帯に入ったのは間違い無い」オスカーの声は微かに震えており、恐怖が滲み出ている。
「そうか。まあ、順調なのは良いが、このまま箱に到着しても金が足りないからな……恐竜がいないのも困る」ルイスはどこか楽観的だ。
移動していると、先に開けたエリアが見えた。昨日、恐竜がいた所だ。
オスカーの視界に何かが写り、背筋にゾクりと戦慄が走った。そして、
彼はサッと反射的にかがみ込み、同時にルイスを引き止めた。
オスカーは視線の先をまじまじと見た。そして、今度こそ見間違いではない事を確認する。
「いる」オスカーが目を見開きながら囁いた。
腰を屈めながらゆっくりと後退する2人。
「どこにいる?」ルイスの声にも恐怖が滲んでいる。
「10時方向。50メートル先。少し開けてる場所だ」
恐竜は昨日は、斜面下側、つまりオスカー達が今いる方を見下ろしていた。しかし今はキョロキョロと頭を動かしながら西側を向いている。2人は運が良かったのだろう。
「見えた……あんなに堂々と」
「昨日もあそこに……身を隠さずに居たよ」とオスカー。
ルイスが右手の岩の斜面を確認している。何か見つけた様だ。
「あそこ……あの高台に移動しよう」
そこは、岩の斜面の上にベランダの様な平坦部が有る所だった。地面から3メートル程、高い所に有る。静かにそこへ移動し、岩の斜面を登る2人。広さは2人で銃を構えるのに丁度良い。
2人はコソコソとそこに移動した。オスカーは移動のする間、移動先より恐竜から目が離せなかった。そのため、ルイスに連れられて移動する形になった。
無事高台に着くとルイスが囁いた。
「作戦通り足を狙おう。膝の周辺だ」
「どっちの足だ?」とオスカーが聞き返した。
「右にしよう」
「わかった」
狙いを定める2人。ルイスが囁く。
「狙ったか」
「……ああ」
オスカーはリアサイトで恐竜の足を覗いている。すると不思議な事に恐怖心が消え去り、全く別の感情、何か熱いものが下腹部から湧き上がり、そして視界がチカチカする様な間隔に襲われた。
ルイスが合図を出す。
「……撃て」
ガガガ!!
銃口から火を噴いたのはルイスの銃だけだった。オスカーが舌打ちをしてイラついている。
彼の銃は弾が詰まった様だ。チャージングハンドルを素早く動かし、詰まりの解消を試みる。
オスカーは焦りながら再び標的を見る。そいつは体制を変えこちらを向き、バッチリと視線を合わせていた。頭を低くし、襟巻きを広げて威嚇している。
ルイスは合計3発放ったが、当たったのだろうか。俊敏な動きを見るとダメージは無い様だ。
「外した……多分逃げるぞ」とルイス。
恐竜は数秒、威嚇し大きく口を開けた後、頭を下げながら山肌を下りこっちに突進して来た。
「こっち来たぞ!!」オスカーが激しく動揺している。
「そんなばかな」ルイスの声も震えている。
「よし、頭を狙う!」ルイスはM4を構えた。
「ああ!」
「合図を出す!」
「いつでも!!」