※この作品はR-18です。

鳥籠   作:ハシビロ7723

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2人組

 

ルイスは砂浜に降りたことを強く後悔していた。

 

オスカーの警告の後、息が詰まりそうになりながら森の方を見る。あいつが潜んでいる筈のバリケードより奥は、漆黒の闇が広がっており、何も見えない。どこに潜んでいてもおかしくない。

 

今、あいつが暗闇から飛び出してきたら、ルイスはなす術もなく、顔面に食いつかれ、内臓を引き出されるだろう。

 

「おい!!見つかったか!!?」とルイス。

 

「いない!!早くこっちへ戻れ!!!」波の音に紛れてオスカーの叫び声が聞こえた。

 

ルイスはM4を強く握りしめた。彼の耳には、いつの間にか風と波の音が消え、ドクンドクンと鼓動の音が激しく響いている。

 

オスカーを見ると、暗闇の中ではよくわからないが、暗視スコープで必死にあいつを探しているだろう。

 

オスカーの方へ戻ろうとした時だった。ルイスの視界にあるものが写り、背骨に電流が走り叫んだ。

 

「そっちにいるぞ!!!」

 

オスカーの奥に広がる岩壁沿いに、彼に近づく大きな影が目に入った。

 

「わっ!!!」

 ガガガ!!ガガガ!!

 ギャー!!!

 

悲鳴と共に銃声、閃光、そして圧倒される迫力の生き物の咆哮が暗闇から響いてきた。

 

 ガガガ!ガガガ!

 

オスカーは続けて発砲している。

 ルイスはオスカーへの誤射を躊躇して、その瞬間を、暗闇の閃光をただ見ているしかなかった。

 

ズサッ!!と重々しい音がして、銃声が止んだ。

 

 閃光が止むと、オスカーがいた筈の場所にあいつの影がある。怪物はこの数秒の間に彼に飛びかかったのだ。

 

 ガガガ!ガガガ!

 

 ルイスはリミッターが外れた様に構えていたM4を連射した。

暗くて良く見えない中、恐竜がブルッと首を振った後、体を深く沈めている。

ルイスは夜に車の前に飛び出した猫の様に、目を見開き、体が硬直した。脳裏に巨体に飛びつかれ、体中の骨が砕かれる映像が過ぎった。

 

 ズガーン!!!

 

 1発の銃声と同時に恐竜の動きが止まった。

 暗闇の中で恐竜の頭がゆっくりと下がっていくのが見えた。

 

 ド!!

 

 砂浜に波の音にも負けない、重量物が落下する音が響いた。

 

 

「おい!大丈夫か!?」バリケードの方からオスカーの声が聞こえた。

 

ルイスは目を丸くして声の方を見た。よく見ると暗闇の中、バリケードの前でオスカーがライフルを構えていた。

 

「やられたと思った!」とルイスは珍しく感情的になっている。

 

「間一髪こっちに逃げこんだよ!!そんで脳天に1発ぶち込んでやった!!人間様に勝てるわけないだろーがよ!!!」オスカーは酷く興奮している。

 

「……助かった……あと数秒遅れてたら肉片になってたよ……」とルイス

 

「あと何匹いても全部やってやるよ!!くそが!!」

 

 2人ともその場に座り込んだ。

 

「あいつどこから来やがった!?一生分ビビらせやがって!」オスカーが笑いながら言った。

 

「完全に甘く見てたな……」

 

「ちくしょう、今日は疲れた……とりあえず休もう」

 

「そうだな……またヤシに登るか?」とルイス。

 

「念の為……そうしようぜ」

 

 ルイスは放心状態で上をむくと、そこには雲一つない夜空に不自然に丸い月が浮かんでいた。その月が放つ薄明かりが、波の音が響く砂浜を青白く照らしていた。

 

 

*

 

 

 仮面の2人組が巨大な屍の側に立っている。

 太陽は登り、彼らの立つ砂浜をジリジリと照らしていた。オスカーがちょうどこの浜に上陸してから4日目。時間は9時40分。

 

 倒れている恐竜は昨晩、オスカーの銃弾に脳味噌を破壊された個体だ。

 

 

「……これは……自信が無くなるな」ルイスが恐竜を見ながら言った。

 

 戦闘は2人掛かりでライフルを乱射し、それなりの弾数を使ったが、恐竜の体に刻まれた銃創は予想よりかなり少なかった。

 

 頭部は致命傷となった側面からの風穴以外は、擦り傷状のものが一箇所あるのみ。この傷は前方からの銃弾が頭蓋骨に沿って弾かれて出来た。

 

体にも尻尾の付け根や胴体、首等にいくつか銃創が有ったが、表皮をかすったり、浅い箇所を貫通しているものが多い。いずれも致命症にはならない傷だ。暗闇だったとはいえ、酷い命中率に2人は落胆している。

 

「暗がりだったからな……その上、動きが速すぎる」オスカーは仮面の下で苦笑いをした。

 

「真正面に立って思ったのが……結構細い……幅は人間とそんなに変わらないと感じたよ」とルイス。

 

「そりゃバリケードと岩壁の隙間もすり抜けるわけだ……ところで本当に食うのか?」

 

「ああ……もし食えたら、食料の問題が解決する」

 

「毒持ちだぞ?」

 

「毒蛇とかも肉は食える。腿とかならよっぽど問題無いだろ。毒自体も焼けば分割される可能性も高い……ほら蟹が食ってる」

 

 傷に小さな蟹が集まっており肉を食べている様だ。 2人は周りに蟹の死骸は転がっていないことを確認した。

「あと……腹に人間が入ってるぞ……」とオスカーが呟いた。

 

ルイスはその言葉にピクリと一瞬止まったが、ナイフを取り出して腿の肉の一部を切り取った。切り取った肉の断面を見ると、きめ細かい赤身だった。

 

 ルイスが肉を手に取り言った。

「それじゃ焼いてみるか」

 彼は一口大にした肉片をナイフの先端に刺し、直火で炙った。肉が焼けると食欲をそそる匂いがしてきた。

 

 焼けた肉を見ながらルイスが言った。

「……じゃあ食ってみるよ」

 彼は仮面をずらして一口分の肉を口に入れた。

 

「どうだ?」とオスカー。

 

「……うまいよ……まずは、これだけにして様子を見よう」

 

 ―その後、ルイスの体調は崩れることが無かった為、2人は貴重な蛋白源の確保に成功した。食料は他にもアサイー等のベリー類、ヤシの胚乳が容易に確保できるので、当分困ることは無くなった―

 

 

 2人は拠点としているヤシの木に戻って来ると、仮面を外し、ヤシの上の安全区域へ登った。そこで再び棄権の申請を試みたが、結果は昨日と同じだった何も起こらない。

 

「今後どうするべきか……」ルイスが携帯を見ながら呟いた。

 

 オスカーがライフルを片手でブラブラと持ちながら言った。

「……救出されても、また捕虜に逆戻りだしな」

 

「そうならない可能性もあるぞ」

 

「え?」とオスカーがルイスの方を向いた。恐竜の毒にやられた彼の顔は、僅かに腫れている程度まで回復している。

 

「……南軍のやつらはこの島を放棄したかもしれんよ」

 

「ああ、なるほど……丸一日経っても復帰してないもんな。あり得る……俺は、奴らも恐竜に襲われたと思ってた」

 

「さすがにそこまで間抜けじゃ無いだろ……仮にそうだとしても、すぐに代わりが来る筈だ」ルイスが笑いながらかぶりを振った。

 

「だよなっ、あっ!」

 その時オスカーの手からM4カービンが滑り落ちた。

 ガサッ!数メートル下からM4が地面に叩きつけられた音が響いた。

 

「しまった!壊れてないよな!」オスカーが焦っている。彼は急いでヤシに縛ったザイルを伝って下に降りた。

 

 一方、ルイスは携帯の画面をじっと見ていた。何かに気が付いた様だ。その後、おもむろにライフルを持ち、ガシッと音を立てて、ライフルのストックでヤシの幹を突いた。

 

 下の砂浜で落としたライフルの様子を確認しているオスカーが見上げて言った。

「どうした?」

 

「こいつは陰湿だな」ルイスが神妙な面持ちをしている。

 

「え?」

 

「どうやら銃に衝撃を加えると、アプリのマップ上に位置が表示されるみたいだ」

 

「マジかい……気が付かなかった」

 

「俺もだ……オスカー、銃は大丈夫そうか?」

 

「手で動かす限り、問題は無さそうだ。バレルも曲がって無いと思う」

 

「試しに1発撃てるか?」

 

「そうだな、確認しておいた方が良いね」

 手際よくチャージングハンドルを引き、海へ向かってM4を構えるオスカー。

 

 ガーン!

 

 砂浜に銃声が響いた。

ルイスは相変わらず携帯を見ている。ルイスが言った。

「なるほど………発砲するとマップに表示される仕様だ」

 

 オスカーはその発見より銃が壊れていなかった喜びが上回っている様だ。オスカーが言った。

「今となっては、どうでも良いけどな……」

 

「……いや……これは使える……むしろ他の奴らに見つかりたいからな」

 ルイスが再びストックで幹を叩いている。

 

 彼はしばらくそれを続けた後、珍しく声を張った。

「おい!!……アプリのマップを見てくれ、ここから北西3キロぐらいのところだ」

 

 オスカーは急いでアプリを確認した。アプリのマップ上では、ルイスが幹を叩くと自分達がいる地点に点が表示された。

 その直後だ。ルイスが言った地点付近にも点が現れた。

 

 オスカーが驚き、目を丸くした。

「他のプレイヤーだ!俺たちに反応してる!―

 

 

 二人は砂浜におり、しばらくライフルで交信を続けた。しかし、向こうからこちらに向かって来る気配が無かった。

「中々来ないな、向こうは動けないのかもしれない」とオスカー。

 

「そうかね?向こうも俺達が行くのを待ってるかもな」

 

「もしかして…こっちから行くのか?」

 

「そうするしかないかもな」

 

「……罠かもしれないぞ」

 

「そうか?」

 

「待ち伏せしてるかもよ」

 

「どうやって?」とルイスが肩をすくめ、手のひらを空に向けた。

 

 オスカーは少し考えて答えた。

「……囮のライフルをワイヤーとかでうごかしてるかも」

 

「だとしたら、そいつはライフルを二つ以上持ってるよな……そんな手練れならさっさとフェンスを超えるのでは?」

 

「わからない、金稼ぎかもしれないぞ……俺たちは金持ちだしな」オスカーがニヤリとした。昨晩、死闘が終わると、彼らの端末には驚くべき金額が表示されていた。

 

「向こうは俺達が幾ら持ってるかわからないだろ……まあ、襲われたとしても……こっちは二人いるから負けないだろう」

 

「向こうも2人以上いるかも」とオスカー。

 

ルイスがニヤリとした。

「それなら尚更、敵の可能性は低いな。向こうも棄権希望者達ってことだ……それなら大歓迎だ、仲間は多いに越したことはない」

 

「わかった、わかった……行くよ……で、どうやっていくんだ?」

 

「そうだな……時間は11時20分か……余裕は無い……」

 

「このままビーチ沿いを西に行って、山に入れば良いだろ?」

 

「それが早いかもしれないが……山道が危険だ。前と左右を警戒しないといけないし、恐竜にしろプレイヤーにしろ、出会ったらこっちが下側になる可能性が高い」とルイス。

 

「じゃあ、昨日のルートか?」

 

「距離はかなり伸びるけど、そっちの方が安全だろ―

 

 

 *

 

 

「あれがゲートか?」とオスカーがフェンスに取り付けられた建造物を見て言った。

 

「たぶん、そうだな……俺も初めて見た」

 

2人は昨日の岩壁沿いのルートを登り、支給箱で補給をした後、フェンス沿いを西に進んでいた。箱から少し進んだところで建造物が彼らの前に現れたのだ。

 

 彼らが『ゲート』と呼んでいるそれは、フェンスに比べると真新しい建造物だった。支給箱の様に、はたから見てフェンスに後付けされた代物だ。

 

 それを2人はゲートとは言うが、電気柵で囲われたハシゴである。ハシゴがフェンスの上まで伸びており、フェンスの向こう側でも同じハシゴが架けられている。ハシゴを囲っている電気柵は直径1メートルほどで、フェンスの基礎の半分を占めている。

これは、うっかり『ゲート』の電気柵にぶつかりそうで極めて危険なレイアウトである。

 

『ゲート』に近づく2人。こちら側に扉があり、それも電気柵の一部となっている。中にはハシゴが見える。そして扉の真ん中には縦長の溝が有った。

 

「ここに入れるのか……」とオスカーは自分のM4カービンをその溝に近づけている。

 

「そうだろうな……どうする?開けて滑走路目指すか?17時まで時間はある」

 

 その時、フッとあの臭いが漂った。生臭く、そして本能的に危険を感じるあの臭いだ。オスカーは咄嗟にフェンスの向こうにある林に目をやった。そして、彼は凍りつき、そしてドクンと心臓が鳴った。

 

 フェンス越しの数メートル奥の林の中、オスカー達の頭より少し低い位置に、それはあった。

こちらをじっとこちらを見ている恐竜の顔があったのだ。細い縦長の瞳孔がオスカーの視線をとらえている。

 

「おい、フェンスの向こうにいる」オスカーは動揺している事を相方に悟られない様、冷静を装って言った。

 

「ああ」ルイスにも緊張が走っている。

 

「……こいつ、これまでの奴らと違う」

顔の作りはこれまで遭遇した2匹とは異なり、派手なV字のトサカは無かった。何より小さい。半分程の大きさに見える。

 

「良く見ろ……群れだぞ」

 

 ハッとして、周囲を隈なく見渡すオスカー。すると同じ顔が一つ、二つ、三つと林の中に見つけた。

 

「……何匹いるんだ?」オスカーの声が震えている。

 

「わからない……見えてるだけで4匹か?」

 

「こんなの……滑走路までどうやって行くんだ?」

 

「少なくとも……1人じゃどうにもならないだろうな」

 

 ガーン!!

 ガサガサガサ!!

 

 森に銃声が響いた。それと同時に林にいた群れは奥に消えて行った。オスカーが威嚇射撃したのだ。

 

「くそっ!!」とオスカーが吐き捨てた。

 

「……フェンス越しじゃ何もされないだろ」

 

 オスカーが仮面の下で険しい顔をして言った。

「……まあ、ここを越える選択肢は無いな―

 

『ゲート』を通り過ぎて、基礎の上を少し進むと見慣れた物体が見えた。支給箱だ。彼らが先ほど補給したものとは別の箱だった。

 

「やっぱりフェンス沿いだったか」オスカーが小声で言った。

 

 ルイスは先程補給出来なかった分があった為、足りない分をここで補給する。そして、その箱から西側を見ると木々の隙間から僅かに次のゲートが見えた。

 

「箱とゲートを交互に配置しているみたいだな。距離は3〜400メートルおきぐらいか」とルイス。

 

「そんなもんだな。隣の箱とこんなに近かったとは―

 

 

 2つ目のゲートに近付く2人。やはり扉はこちら向きに付いている。扉を見ると何やら扉の真ん中に嵌めてある。M4カービンだ。

 

「向こうに進んだ奴がいるんだな」オスカーが扉を見て言った。

 

「恐らく、俺の目の前で恐竜を倒した奴だ。その時既に二丁持ってたよ」

 

 扉の溝に嵌められたM4は、ロックがかかり外れない。

 

「ここを超えた奴はどうなったかね?」とオスカー。

 

「……1人じゃあ……半日も持たないだろ」ルイスはかぶりを振り、肩をすくめた。

 

 ルイスはふと時間を確認しオスカーへ言った。

 

「少しペースを上げよう―

 

 その後は箱とゲートは無視してひたすらフェンス沿いを西に進んだ。木々が遮り、基礎の周りの視界が悪い箇所は威嚇射撃を行い、恐竜の確認をした。

また、合間合間に向こうのプレイヤーとライフルでの交信を続けた。しばらく進み、5つ目のゲートを越えた時だった。

 

……おーい!こっちだ!

 

「……おい何か聞こえないか」とオスカー。

 

 2人はライフルの交信をすると、向こうのプレイヤーの表示位置と声がしてくる方向が一致している。

 

ルイスが興奮気味に言った。

「みつけたな―

 

 

 更に基礎を西側に進むと6個目の支給箱が見えた。ここまで来ると声は真南の森から聞こえ、何を言っているか少しわかるぐらいになった。2人はそこから基礎をおり、森に入った。森から声が響いてくる。

 

  ゆっくり!! 来てくれ!! 恐竜が―!!

 

 声の感じからして数十メートル先だ。

 

「やっぱり、恐竜がいるみたいだな」オスカーが囁いた。

 

ルイスは頷いて言った。

「ここから森に入って行く。並列に並んで君は右側を警戒してくれ」

 

オスカーはゆっくり頷いた。

 

 2人はゆっくりと基礎から降りると、声のする広葉樹とシダ、ヤシが入り乱れた森に入っていった。

 

ゆっくり!!静かに来てくれー!!ここに恐竜がいる!!

 

少しづつ声の方に向かうと森の声が鮮明に聞こえてきた。声の種類からして2人いる様だ。

 

  ここに2人いる!!岩の間に隠れてる!!

恐竜に出口を塞がれた!!

 

声を聞きながらジリジリと少しずつ前に進むオスカーとルイス。

 

  弾持って無いかー!!?今ならコイツをやれる!!

 

 オスカー達の目の前の林の密度が高くなった為、そこからは匍匐前進で進んだ。地面を這っていると目線の先が崖になっていた。崖の下から声が聞こえる。

 

「おい!!弾持ってないかー!!?」

 

 声と一緒に巨大な動物が激しく動く音がする。間違いなく恐竜がいる。オスカーは恐る恐る崖に近づいた。

崖に差し掛かり、ゆっくりと下を覗く。まず目に入ったのは恐竜の尻尾だった。恐竜はブンブンと音を立てて尻尾を振っている。興奮している様だ。

 

 崖は地面まで5メートル程の高さだ。そして崖に隣接する形で巨石がある。巨石の大きさは高さ3メートル。恐竜は巨石と崖の間に首を突っ込んでいる状態である。

 

「おっ!!助かった!!弾くれ!!」

 

 真下から声が聞こえた。巨石と崖の間、恐竜の首の先に仮面が二つ見えた。隙間は人1人がギリギリ入れる程のサイズだ。仮面の男が叫んだ。

 

「今ならやれる!!」

 

 もう1人の仮面の男も叫んだ。

「そっちで撃っても良いが!!やれるか!!?ここから抜けられると厄介だぞ!!」

 

 オスカーは顔を引っ込めルイスに目を向けた。するとルイスが頷いた。オスカーはリュックからマガジンを取り出すと、再び崖から下を覗き、マガジンを巨石の隙間にスッと落とした。

 

「ありがとよ!!」

 ジャキッとチャージングハンドルを引く音が聞こえた。

 

 ガガガ!!ガガガ!!ガガガ!!

 

 

 *

 

 

「すまんな!助かった!!」

 

 隙間に入っていた男の一人がオスカー達が投げたザイルを伝って巨石の上に上がってきた。仮面を被っているが髪型はオスカー達と同じく坊主頭だ。ガッチリした体型で身長は190センチ程か。隙間はさぞ狭かっただろう。

 もう1人の男も上がって来た。頭はやはり坊主に仮面だ。身長はオスカーぐらいで170センチ半ば。体型は痩せ型だ。4人の中で一番軽そうだ。彼がボソッと喋った。

「……助かった。礼を言う」

 

 ガッチリした方が張りのある声で言った。

「悪いが、一旦カメラ切らないか?」

 

 ルイスが返した。

「そうだな―

 

 カメラを切り4人は仮面を外した。ガッチリした方は体の通り、厳つい顔をしているがどこか人懐っこい感じが漂っている。呼び名はバルと名乗った。年齢はルイスと同じぐらいで30前後に見える。

 

 細い方は、やはりほっそりした顔をしており、ルイスより神経質そうだ。見た目の通り寡黙だが年齢はオスカーと同年代で二十代半ばだろうか。彼はアールと呼んでくれと、オスカー達に言ってきた。

 

アールは巨石の外にライフルを落としていたらしく、岩の隙間から出ると走り出し、真っ先にそれを回収した。

 

 ルイスがふと時間を確認すると16時を過ぎていた。少し焦った彼が皆に言った。

「日が傾いて来た。もう北の滑走路はどう考えても間に合わない……」

 

「まあ、そうだな」とバル。

 

「速やかに下山しよう……最適なルートはわかるか?」ルイスがバルとアールに聞いた。

 

バルがアールの方に向くと「わかる……」とアールが小さい声で頷いた。

 

 

 4人はアールを先頭に固まり、足早にその場を離れた。南側に斜面を下りビーチに向かう。流石に4人いると森の真ん中を突っ切っても、十分に周り警戒する事が出来た。

彼らは順調に下山し、1時間もかからないうちに波の音が聞こえて来た。

森を抜けた場所はビーチの西端付近。西側は岩場が海まで続いている。オスカー達が入山したビーチの東端は遥か遠くだ。背景の空は、薄暗くなりはじめ、オレンジ色の雲が広がっていた。

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