絶歌~destrudo~ 作:柳川 秀@尾上 愛‗VTuber
そもそも皆がボクと同じような家庭にいれば、ボクと同じような状況下にあれば、ボクはボクのことを「皆とは違う」と思わずに済んだハズなのだ。
だから、ボクにそのことを認識させる世界、即ち周りの子どもたちが悪い。
ボクがこうまで悩まなければならないのは、悩んでいない奴らのせいだ。
「本当にそうなの?」と、決まってそう考えているとボクの中にいる別のボクが言ってくる。
良心とか道徳心とか超自我とか言われる、他者からすれば「優しいボク」がボクの本能とかイドを邪魔しに来る。
そしてボクのエゴはその声に耳を貸してしまい、また悩み出すのだ。
ボクの中で、一方では
「誰も傷付けてはいけない」
「受け入れられなくても愛したい」
という気持ちが叫び、他方では
「誰かのせいにしたい」
「受け入れられないことが憎い」
という気持ちが嘆いている。
「人と違うことを認識させる世界が嫌い」
「そんなことを考えてしまう自分が嫌い」
「でもそれを意識させるのもこの世界で、だからこの世界が嫌い」
「悲劇の主人公を気取っているだけで、だから自分が嫌い」
「自分のことを普通だとは思えないから仕方ない」
「普通の人や家なんてどこにもない」
「それを頭で理解できても心は納得していない」
「納得せずに我が儘を言って大人にならないだけ」
「いつ子どもを卒業しなければならないのか」
「二十歳を過ぎてまだ悩んでいるのは甘えているから」
「人はひとりでは生きていけない」
「ひとりで生きることのできない弱さの言い訳に過ぎない」
「強くなりたくてもなれないし、どうすれば良いかも分からない」
「人に教えてもらおうともしないクセに」
「どうせ人に聞いたことで納得できる訳がない」
「そうやって他人を見下しているから誰も信じられない」
「信じさせてくれない奴らが悪い」
「いつまでも人のせいにする自分が悪い」
「疑われても無条件に歓迎してくれない世界が嫌い」
「無条件に歓迎されても疑ってしまう自分が嫌い」
ヒーローは「無償の愛」を持っていた。
「相手がどう思っていようが関係ない。自分が愛したいから愛す」という、ある意味「理不尽な愛」を持っていた。
でもボクにそれはない。
どうしてその人が自分のことを愛してくれているのか、理由や根拠がほしい。
こんな自分のことを無条件に好きだと言われても、疑うことしかボクにはできない。何か納得いく理屈がないと不安で不安で堪らなくなる。
そうやってボクが悩んでいる時、そんなことにも気付かずヘラヘラと笑っている周りの人間が憎く見えて、そんな風に思ってしまう自分のことも憎く見えた。
ボクはいつの間にか自分も含めた全ての人間を見下し、蔑むようになっていた。
そしてその笑顔に対し憎悪を抱くようになっていた。
それは、ボクが憧れたあのヒーローの姿とは正反対のものだった。
もしも彼がボクのことを知ったら、どんな顔をしてどんな風に接してくれるだろうか?
こんなボクにもあの青空のような笑顔を見せてくれるのだろうか?
苦しみも悲しみもない世界へボクを連れて行ってくれるだろうか?
ボクは、そんな無償で理不尽な愛を疑わずに受け入れられるだろうか?
最後の戦い、他者を傷付けることを快感とし笑いながら血を吐く怪物に対し、彼はそうとしかできない事実に、そうとしかしてこられなかった自分に泣きながら拳を振るった。
ただ気楽に笑顔のまま冒険だけしていたかったのに、手は笑顔とサムズアップのためだけに使いたかったのに、その自分の想いをベルトに封じ込めて、涙を仮面の下に隠して、皆の笑顔のために大嫌いな力を振るった。
そして全てが終わった後、彼は自らの心を癒すために誰にも言わず度に出た。
ボクは、青空になりたかった。
また彼の笑顔が見られるように、彼が笑顔を取り戻せるように、彼を癒し笑顔にできるように。
でも、ボクは誰の青空にもなれなかった。
始まりが何だったのか。
そうだ、ボクはそもそもこの世界に生まれてこなければ良かったんだ。