絶歌~destrudo~ 作:柳川 秀@尾上 愛‗VTuber
背丈は一般的な成人男性程だったがそれなりに筋肉質な身体を保っていた祖父は、ボクが十三歳の時の冬、突然倒れた。
脳出血だった。
中学校から帰って来たボクはそのことを聞いた直後、初めて身内の死に直面することになるかも知れないという恐怖に襲われた。
だが、その時点で既に母は兄の運転する車で病院へ向かい祖母と一緒に祖父の様態について説明を受けて来た後だった。
だから、その騒動については一応の収束を迎えていた。
兄の説明によると、運動機能と言語能力に影響が現れることは避けられないが、祖父の命がすぐ脅かされるような事態はないとのことだった。
その時はまだ肩透かしを食らったような気分で、一気に緩んだ緊張の糸を笑うくらいの余裕が家族にはあった。
しかしその二つの影響は想像以上に重いものだった。
前述の通り健康な身体を持っていた祖父は病気を患った母より自由に動き回れていたのだが、退院後は杖を付いての歩行も危なっかしくて見てられない程の状態になっていた。
言語能力の低下もあり、元来の語ることが趣味であるかのような性分はそのままであったためか母の場合よりもそのことは著しく見受けられた。
ボクの中で祖父の「カッコよく働く身内の大人」としての姿は崩れてしまったのだ。
何よりもボクにとってそれが衝撃的だったのは、その次の年度からボクと母は祖父母の家に移り住む予定があったからだ。
就職先が決まった上の姉が、厄介払いされた下の姉を連れて少し離れた町に引っ越す。
既に兄は一人暮らしをしていて病気の母と中学生のボクだけが残ることになってしまうから、母とボクは姉たちが引っ越す際に借家を出て同じ町の祖父母の家へ移る。
そしてボクが中学を卒業するまでそこに住む。
それが本来の予定だった。
満足に荒れることは叶わなかったものの、その町にはボクの仲間がいた。
全部全部一々口に出さなくても通じ合えるアイツらがいた。
ボクのこの世界で唯一の居場所があった。
ボクは何が何でもその町から離れたくなかった。
だからボクは姉たちと一緒に行かず、保護者である母とそこに残るハズだった。
ボクの行く先は祖父母の家で確定していたし、家族の誰もがそうなるものだろうと思い疑わなかった。
だが、実質的に保護者として頼りにする予定だった祖父が脳出血の影響でそんな風になったことで、母とボクが祖父母の家に住むことは難しくなってしまった。
つまり、ボクは町を離れて姉たちと一緒に住むしか、自分の居場所から去るしか道がなくなってしまったのだ。