魔族の女たちが徹底的に尊厳を奪われる話 作:サプリメント田中
私のせいだ。
あの日
2日目、また奴等が隊長を連れて行こうとした時、私が代わりに行くと言うつもりだった。覚悟を決めたはずだった。どんな辱めを受けようとも、今度は私が隊長をお守りするのだと、そう決めたはずだったのに。
日没が近づくにつれ、私の体から汗が噴き出し足が小刻みに震え出した。それに気づいた時、呼吸が乱れ始めた。心臓の音がドクドクと高鳴り加速していく。私は何もされていないはずなのに、奴等の所業にはとても耐えられないと思った。隊列が止まり、頭の中が真っ白になった。奴等がキャンプの準備をしている間の記憶がない。
そしてとうとう時間が来た。男の足音が近づいてくる。隊長の鎖を引き、引きずるようにして連行していく。
私の口は、足は、動かなかった。
今までどれだけ隊長に助けて頂いたのか。終わりの見えない戦いの中、あの人の凛とした姿にどれほど救われたのか。それがわからない私ではない。心の底から隊長を尊敬している。彼女のためならこの身など惜しくはない、そう思っていたのに。
私のこれまでの隊長への想いは全てまやかしに過ぎず、私は保身しか考えていないクズだということが証明された。
それを理解した瞬間、子供のように泣いていた。当然、周囲の仲間たちになぜお前が泣くのかと責められた。お前が撒いた種だと、お前が引き受けるべきだったと、口々に罵詈雑言を浴びせられた。私は何も言い返せなかった。
そこから時間はあっという間に過ぎた。日に日に私たちの中に恐怖と絶望、そして怒りが蓄積していった。奴等が隊長を使っている間、奴等はこっちを監視していない。その間に部隊の者同士での言い争いが頻発するようになり隊の秩序は崩壊した。当然最も虐げられるのはカースト最下位の恥知らずである私だった。
この時既に私の半ば心は折れていた。最早皆と懸命に過ごした日々が戻ることはないのだと、そしてこの惨状を招いたのは、他でもない自分なのだと理解してしまったのだ。
そうしている間に、とうとうその時がやってきた。帝国領魔族収容所、通称「工場」に到着したのである。
「おーし、全員いるな?」
「後はよろしくお願いします。」
「任せて下さい。きっちり仕上げるんで、後でいくらかお譲りしますよ。」
兵士たちと施設の職員が何やら話しているが、どうせ碌でもないことだろう。最早どうとでもなれと諦念が湧き上がるが、それ以上に恐怖が体を強張らせる。
その後私たちは鎖を引かれ、地下にある牢獄に閉じ込められた。かろうじて横になれるほどの空間しかない独房は廊下の片側のみに配置され、向かい側から仲間が見えることもなく、隣の部屋の者の声がかすかに聞こえるのみだった。
カツカツと靴の音が響く。どうやら端から一人づつどこかに連れていかれるようだ。ここでは外を見ることもできず時間感覚は曖昧だが半日程たったのち私の番がやってきた。これから何をされるのか。私の胸中はそのことだけに支配されていた。
手錠をかけられ施設内の兵士に連れてこられたのは、一転して明るく清潔な、診察室とも言える部屋だった。そして中には茶髪で眼鏡を掛け、白衣を着た医者のような男が座っている。薄く笑みを浮かべているが、これまで兵士たちに向けられていた下卑た笑いでなく、貼り付けたような軽薄な笑みだった。
「初めまして。俺はここの所長で、魔族の研究を専門にしているクラウンだ。君、名前は?」
これまでずっと人間たちは私たちと奴隷、家畜と蔑み虐げてきた。このような気さくさと馴れ馴れしさは今まで経験したことがない。どう考えても裏がある。だが奴はもう私たち相手に何かを取り繕う必要などない。一体何を企んでいる…?
「答えろ」
困惑と警戒から黙っていると背後に控えている兵士に腹を殴られた。連れてこられた時に両手口を肘掛けに、足首を椅子の足に拘束されているため、防御できずまともに貰ってしまう。
「ぐっ…エレナ……ノクシエル……」
呻くように言葉を絞り出す。これから尋問や拷問が待っているのだろうか。身構えていると、目の前の男から予想だにしない名前が飛び出した。
「ん?ノクシエル?もしかして君、セラフィのお姉さんかな?」
「…ッ!?何故貴様がその名を知っている!?妹に何をした!」
セラフィ=ノクシエル。私の最愛の妹であり共に人間への復讐を誓った仲間でもある。幼い頃、「魔族狩り」にて人間たちに殺された両親の仇を討つ、それが私たち姉妹の心をかろうじて保っていた。しかし彼女は3年前、別部隊に配属された直後の作戦で消息を絶った。目の前の男がセラフィを知っているならば、まさか彼女はもう…
「答えろッ!」
クラウンと名乗った男は身を乗り出し、薄く閉じた目をゆっくりと開く。黄金の瞳が私を覗き込み、ぼんやりと妖しい光を放った瞬間、一瞬眩暈がして意識を失いかけた。
「まあまあ、
「………っ、ああ……そうだな……?」
「え?あれ?なんで……」
「はいはい、こっち見てくださいねー」
クラウンは両手で私の顔を掴み再びその瞳で私を覗き込む。その瞬間また意識が飛びかけた。
「じゃあ、今から診察始めますね。口開けてください。」
「…?承知した。」
言われるままに口を開く。そのまま診察は進んで、血を取り、身長体重を計測し、視覚聴覚嗅覚の検査も行なった。特になんということはない、普通の健康診断だった。
「…いや、なぜ私は健康診断を…?」
「はい、次はベットに寝転がって。」
「…?了解した。」
全裸のままベットに寝転がる。そういえば診断をしていた間ずっと全裸だったのに気付かなかった。あれ?服着ないのっておかしいんじゃないか?
「じゃあ最後に使用感確認して終わろうか。そっちも待ちきれないみたいだし。」
「やっとですか先生。もう待ちきれませんでしたよ。」
兵士がやって来て、ズボンを下ろしチンポが露わになる。ガチガチに勃起したまま興奮気味に私の上に跨り、私のマンコに入れようと迫る。生臭い匂いが鼻を突き刺し、ぼんやりとしていた意識が戻ってくる。
「待って、やっぱりおかしい、お前何かしてーー」
「オラァッ!」
「グッ、うぁあ、アンッああ♡」
勢いよく兵士のチンポが挿入される。おかしい、なんでこんなに気持ちいいんだ!?こんなに乱暴にピストンされて、男が気持ちよくなるためだけのオナニーみたいなセックスで!?いや、そもそも人間如きにこの私が感じさせられているというのか!?
「待って、一回、アァっ♡アンッ♡」
「うるせぇ!こっちは長々と待たされたんだ!黙って締め付けろ!」
「うぐぅ!ハァァッ♡ンッ、ダメぇ♡」
なんだこの声は!?本当に私の口から出たものなのか!?こんな人間に無理矢理犯されて媚びるような声が出てしまっているというのか!?
気づけばクラウンがいつの間にか枕元に立っていた。
「やっぱり魔法のかかりが弱いな。この個体は繁殖用だね。」
「ンァッ♡何を、言って…」
クラウンが私の額に手をかざした瞬間、完全に意識が塗りつぶされた。
ーーー
数日後、魔族収容所のB区画「繁殖棟」にエレナの姿があった。否、エレナだったものと言うべきかもしれない。今の彼女は首と両手を晒し台に拘束され、巨大な牛型の魔物、ミノタウルスと交配させられていた。
ミノタウルスの目は酷く充血し、明らかに正気ではない。魔法と薬物投与により完全に制御下にあり、知性ごと肉体の自由を奪われている。かつて一体で村を滅ぼすと言われた魔物も今では労働資源なのである。
そしてそれはエレナも例外ではない。
「オ゛オオッ♡アア゛ッ♡ンオ゛オオオッ♡」
エレナは獣としか思えないような声でよがり、ミノタウルスの巨大な生殖器を受け入れている。既に五回は射精され、異常な精液量で彼女の腹はパンパンに膨れ上がり、腰を打ちつけられるたびにビタンビタンと波打っているがミノタウルスが性交を止める様子はない。
このような屈辱を受け望まぬ妊娠を果たすくらいならば、かつてのエレナは舌を噛み切り自殺していただろう。しかし今の彼女にはそんなことを考える余裕も権利も存在しない。
「ひっでぇな。どうやったらサキュバスがこんなんなるんだ?」
飼育員の男は厩舎を清掃しながら呟く。独り言のつもりだったが、思わぬ返答が返ってきた。
「僕の魔法は特殊でね。魅了に耐性のあるサキュバスにも効くのさ。」
声の主はクラウンだった。嬌声と水音が反響する厩舎に似合わず、こんな時でも白衣を着ている。
「先生、いらしたんですか。」
「ああ、そろそろかと思ってね。」
クラウンの言葉に飼育員が首を傾げると、眼前のエレナが苦しそうな呻き声を上げ始めた。
「ハァッ、ハァッ、ウヴッ♡私は、一体…」
「目が覚めたかな、もう5分は夢の中かと思っていたけど。」
「なんだ、これ……きっ…貴様がやったのか!?私に、何を…」
エレナは困惑と怒りが半々といった様子だ。いつの間にか自分の腹が妊婦のごとく膨らんでいれば当然かもしれない。周囲には同じように縛りつけられている魔族と魔物が少なくとも150人以上見えた。
「簡単なことだよ。僕の魔法で君を支配し家畜小屋に放り込んだだけさ。」
「そんなバカなことがあるか!?人間如きに私たちサキュバスが操られるなど……ありえないっ……あってはならない!」
エレナは拘束されたまま吠える。本人としてはサキュバスの誇りを酷く傷つけられて怒っているようだが、ミノタウルスに犯されながらでは滑稽だと飼育員は思った。
「君たちが耐性があるのは魅了…いわば精神支配の魔法だろ?僕の魔法は物体の状態は動作を支配する。君たちモノには相応しいだろ?」
「なっ……」
エレナは絶句した。サキュバスの魅了耐性を貫通するカラクリを淡々と話す男は異常極まる。あの将校のように魔族をモノ扱いする人間は多いが、心のどこかで同じ心を持つ生物であるという認識があるからである。
だというのにこの男は魔族を心の底から喋って動くだけの物体と認識している。魔法とは認識の世界であり、できないと思ったことはできないと言われている。魔法をかけることができたということが何よりの証明なのだ。
「……ッだが、私は意識を取り戻した。お前の支配も完全でないということだろう!?」
「そうそう、たまに君みたいなのがいるんだよねー。だからさ…」
クラウンは鞄からペンのようなものを取り出した。エレナの体がビクリと震える。虚勢を張ったものの全く恐怖を隠し切れていない。震える声で
「なっ…なにを、する気だ…」
「よく聞いてくれたね。今から君の頭に直接魔術刻印を施して支配を強めるんだ。そうだな…ホラ、君と交尾してる彼みたいになれるよ」
クラウンは自慢する子供のように話す。恐怖に歪むエレナとは対照的だった。いつの間にかミノタウルスは電源を切ったように動きを止めており、クラウンが操っていることは明白だった。
「アッ、えっと…た、頼む、やめ…」
「だいじょーぶ。痛くないしすぐ終わるから安心していいよ!」
ニコニコと笑いながら近づくクラウンは今から手品を披露するかのような様子だ。
「………クソ……私たちが……私たちが何をしたと言うんだ!?貴様らに家族も仲間も全て奪われた!止めろ!!そんなこと許されない!!ここから出せェ!!やめっ、ウッ!?アアッ…ガアァッ……」
エレナのヒステリックな叫びを遮るかのように、脳天にペンのような魔道具を押し付ける。魔道具の先端とクラウンの瞳が妖しく光り、それだけでエレナは喋ることすらできなくなった。
「どうしようかな……肉体の感覚と魔力制御は弄るとして…反抗的だし、知能も思考も制限しておこうか。」
「そんなことまでできるんすか?やっぱ先生すごいっすね。」
今まさに人生が終わっていくエレナの前で呑気に話す二人。彼らによってはよくあることであり、そうやって何人もの魔族を破壊してきたのだろう。エレナは混濁した意識の中で怒りを燃やすが、すぐにその思考も霧散し永久に封じられる。
「あぁあ、あぁ……………」
完全にエレナの意識が失われる。ポタポタと涎を垂らす様からは最早尊厳の欠片も失われていた。
「よし、こんなもんかな。また何かあれば遠慮なく言って、これも僕の仕事だから。」
「ありがとうございます!」
ーーー
「アァッ♡アッアッ♡もっとぉ♡もっとください〜♡イクゥッ♡」
三ヶ月後、エレナは完全に正気を失い番の魔物との性交を楽しんでいた。ドクドクと精液が注がれ、改造された肉体にはとても耐えられないレベルの快楽がエレナの脳内を駆け巡る。
「ああああっ♡死ぬぅ♡ハァッ、ハァッ、うううっダメェ♡」
「よしよし、術式は安定してるね。これなら大丈夫かな。」
「あっ♡ご主人様ッ♡エレナはたくさん赤ちゃん産みます♡もっとお役に立てますぅ♡だからもっと気持ちよくしてぇ♡」
嫌悪していたはずのクラウンをご主人様と呼び、屈服して快楽を懇願する。その姿を見て満足そうにする飼育員。
「こいつもう今月に五匹は産んでます。優秀な個体ですよ。ご褒美やってください。」
「へぇ、流石サキュバス。この子の同期から一体も労働用は出てないし、優秀なんだねえ。」
「あああっ♡ありがとうございますぅ♡嬉しいですっ♡」
彼らに優秀な道具だと褒められ、頭を撫でられるだけでエレナはあまりの歓喜に潮を噴き出した。彼女にかけられた魔法が完全に肉体も精神も支配しているのだ。
一つ、人間は魔族の主であり、例外なく敬い従い尽くすこと。今の彼女は与えられた命令はその命を懸けてでも果たす。
二つ、人間から与えられた全ての行為に快楽を感じること。今の彼女は例え首を刎ねられても絶頂する。
三つ、人間に対して悪感情を持たないこと。ひいては魔族に対して仲間意識を持たないこと。今の彼女は命じられれば仲間を殺せる。
四つ、肉体の動作、魔力の操作、一定以上の思考を命じられない限り限り行わないこと。今の彼女は許可を得なければ呼吸、排泄も許されず、簡単な計算すら満足にできない。
額、右肩、背中、下腹部に刻まれた魔術刻印の呪縛が完全に彼女を縛り、家畜としての生を歩ませている。
「どうだい彼女は。幸せそうだろう?」
クラウンは隣に立ち尽くす
「…………そんな………姉さん………」
身も心も服従し、かつての復讐どころか家族の顔も忘れてしまった姉の姿に、彼女の心の支えは完全に折れた。
「どうしたの?今まで君もやってきたじゃないか。せっかく会いたいと言うから会わせてあげたのに。」
「………」
打ちひしがれた彼女の様子にクラウンは全く理解を示さない。幼い子供のように疑問を口にした。
「前は狂ってしまった方が幸せだと言っていたじゃん。」
「…………っ……」
かつて彼女が自分を正当化するための言葉が彼女の心を締め付ける。眼前の最愛の姉は最後まで抵抗したのだろう。ここまでの処置をされる魔族は稀だった。裏を返せば、彼女はもう二度と戻ってこれないほど改造されてしまっている。
「そうだ。君がご褒美をあげなよ。ほらこれ。」
クラウンが手渡したのはこの厩舎で優秀な魔族に対して与えられるドラッグである。人間には致死量だが、魔族に対しては天国を見せる。サキュバスのエレナも魔力操作ができない今例外ではない。
震える手で姉の体に注射を近づける。エレナはこれを与えられたことがあるのか、期待に満ちた眼差しを向けている。
「姉さん…ごめんなさい……」
セラフィは泣きながら注射を打つが、エレナは何故泣いているのか、何故謝っているのか理解することもできない。
「あはぁ♡ありがとうございますぅ♡これっこれすごいの♡あっ……ああ♡あああ〜♡」
エレナは完全にトリップしてしまい、感動の再開は終わりを迎えた。これからも彼女は命じられるまま死ぬまで人間に尽くすだろう。
「そろそろ行こうか、今日も捕まった魔族が移送されてくるし。」
「……………はい。」
セラフィは踵を返してクラウンに追従する。狂ってしまった姉を残し、今日も同族を狂気に堕とす。いつも獣の喘ぎ声が鳴り響く厩舎の中で、姉の声だけが良く通って聞こえた。