俺を好きな【悪霊】が、美少女に【憑依】してくれる話。さっそく【銀髪美少女】を寝取ります。 作:BIBI
第16話 どしたん? 話聞こか?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
霊媒師にとって――『自業自得』だと突き放すのは、一般的な選択と言える。
その仕事柄、碌でもない人間を何人も見てしまう所為だろう。だからどうしても負の感情が溜まりやすい。
クズから助けを求められても、知らねぇよと突き放したくなる。自分で何とかしろと見捨てたくなる。
だから岩瀬ナギが呪われた時も、修祓院は取り合わなかった。自ら神に近づき、祟られたなんて、自業自得だろと冷たく突き放した。
そんな時――。
「どうした? 話を聞こうか?」
彼女に声を掛けたのが、工藤ハジメというチャラい男だった。
その結果として――。
「…………」
岩瀬ナギを祟った神――眠リ猫。小さな、普通の猫に見えるそれは、血塗れで、砂利道に転がされていた。
「――不憫な猫だ。喧嘩を売ってきたくせして、あまりに弱すぎる。ここで息の根を止めるのも良い。でも、俺は優しいからな。償い次第で許してやるよ」
月の光が目立つ夜空の下。猫を見下ろすのは、工藤ハジメだった。シガリロを片手に、爽やかな微笑を浮かべている。
神扱いしてない。ただのか弱い小動物を見ている様な、優しい表情だった。その優しさが眠リ猫には本当に恐ろしくて、神より不気味な何かを感じさせた。
これは半年前――。
彼がまだ呪難と出会う前の出来事だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
寂れた町の端。みすぼらしい神社。其処には神が住んでいた。小さな猫の様な見た目の神――眠リ猫。
それなりに神の中でも格が高く、人並みの知性を持つ。昔の傷は癒えて、今は心地良く寒空の下で涼んでいたのだが――。
つい今しがた、心臓が痛くなる程の緊張を味わっていた。
「…………」
「…………ッ」
ジッと見つめるハジメに、賽銭箱の上に居た眠リ猫は息を呑む。涙を浮かべ、怯えた様に眠リ猫は駆け出し、神社の奥に逃げてしまった。
短い足で器用に埃を被った小さな箱を空けて、飛び込んで隠れる。こんな所に隠れても仕方がないのだが、それでも本能的な習性で狭い所が落ち着くのだろう。
「…………?」
ナギは不思議そうに神社を見つめた。
「…………」
アミは神が慌てて姿を消したことに違和感を抱く。明らかに眠リ猫は工藤ハジメを見つめていた。
「申し訳ありません……。本当は迎えに行こうかと思ったんですけど……、少し此方で用事があったので……」
聞きたい事は幾つかあるが、とりあえずアミは軽く頭を下げた。
「いえ、現地集合の方が俺としては楽ですよ。ある程度、時間が融通ききますからね」
ハジメのチャラい見た目では似合わないが、丁寧な口調で話す。
「そう言って頂けると助かります……。あの……、リリさんは何処に?」
気遣われたのだと判断しつつ、アミは疑問に思っていたことを尋ねた。
「――ココよ」
「「…………ッ⁉」」
いつの間にか近づいていたリリに、ハジメ以外の者が驚愕する。
私が気配を察知できないだなんて……。
特にアミは狼狽している。表情にはあまり出さないものの、霊媒師としてのプライドも傷つき、少し悔しい気持ちになっている。
「先に来ていたのよ。少し結界の方が気になってね」
リリは横を向き、遠くの山の頂上を見つめる。
「……どうでした?」
彼女と同じ方向をチラリと見て、アミが神妙な面持ちで尋ねた。
「私でも侵入は不可能ね。雨や雪みたいな魂を持たない物は入れるけど、私達みたいな魂ある存在は拒んでる。流石は神を封じる結界なだけはあるわ。壊すだけなら、まぁ簡単だけど……、侵入となると……、ね」
バチバチと霊力が電流の様に音を立て、リリの指先に集まっていく。
「止めて下さい……! 神をこの地に封じる結界なんですから! 禍津神なんて解き放ったら、瞬く間に町が焼け野原になりますよ!」
慌てた様子のアミ。冗談なのは察しているが、それでもリリなら気軽にやりかえないという懸念もあったので、気が気でない。
「えぇ……。あの結界って、人の手で壊せるの……?」
焦げ茶色の髪を腰まで伸ばした少女――ヤチヨは、黒いコートの衣嚢に手を突っ込んで呆れた様に肩を竦めていた。
彼女はリリの噂を聞いていたが、噂以上に無茶苦茶な力だと呆れているのだろう。
「君が、あの……」
「――彼女が朔衣ヤチヨ。今代の〈巫女〉です」
察するハジメに、アミは頷いてヤチヨを紹介した。
「神を封じる様な強力な結界……。一体どんな代償で成立させたのか。少し気になっていたんだけど……、そういう事ね」
ヤチヨの頭のてっぺんから足先まで見て、リリは不敵な笑みを浮かべた。
「…………?」
ハジメは状況についていけず首を傾げている。あくまで彼は霊媒師としては素人同然なので、話についていけないのも無理はない。
そんな彼に対し、「彼女の先代は、強力な結界を成立させる対価として、呪いを背負ったのよ。そして呪いは代々、子供に受け継がれているわ」とリリが補足してくれた。
「要は供物とか、人柱の類か……。珍しくもない話だな」
腑に落ちた様子で、ハジメは溜息を零す。そして「呪いって具体的に、どんなものなんだ?」と尋ねた。
「えーと……、まぁ、大した呪いじゃないよ? ただ余命が20年程度になるってくらい」
「くらいって……、そんな軽い話じゃないだろ……」
頬を掻いて明るく苦笑するヤチヨに、ハジメは気まずくて少し引いていた。
「…………ッ」
ナギが悔しそうに歯噛みする。それはきっと彼女がヤチヨを親友だと思っているからであり、無力な自分が許せないが故だろう。
「……呪いを解く方法はあんの?」
「あるにはあるわね」
「だったら……」
「それをしたら結界が崩れるのよ。言ったでしょう? あの結界は呪いを背負う代償を払うことで成立してるの。呪いを解いてしまったら、結界はいとも容易く崩れ去るわ。そうなれば――神が結界から解き放たれて、今まで封印されていた恨みを晴らそうと暴れ回るでしょうね」
ハジメの問いに、リリは残酷な現実を告げる。これには周囲の者も暗い表情で黙り、数秒の沈黙が訪れた。