※この作品はR-18です。

Re:ビルドハレム   作:たっぷり

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・010 うわ出た

──◆──

 

 アキラの強化服はカツラギから半ば譲渡された商品だ。基本となる強化服で2000万オーラム。そこに上から外套を羽織っている。防護服と同(おな)じように単なる衣服とは別格の強度と靭性(じんせい)を備えているおかげで、強化服の出力で動いている四肢と触れても破けたりしない。そもそも強化服が前提のオプション品なので相応に調整されているだけでもある。

 

 値段もそこらのハンターが買うには高く、そのうえアキラが着れる程度には小さいことから需要は低いだろう。購入者は非常に少ない。そんな商品が何故カツラギのトレーラーに乗っていたのか。それはクガマヤマ都市のとある徒党が子供のハンターを増やし、比例するように実績も重ね始めたのを見た別の徒党が真似をし始めたことが発端だ。

 

 彼らもスラム街や下位区画でハンターを目指す子供を集め、必要最低限の試験をクリアしたものを徒党に招いた。そして荒野でやっていくのに最低限の教育を施したあと、装備をどうしようかと考えていた折り、カツラギがその話を酒場で小耳に挟んだ。

 

 ハンターは危険な職業。当然生き残るには才覚と運、そして生き延びるための利口さは必須といえる。そして子供はその利口さをはき違えている者が多く、間違った判断の結果、命を落とすことも多い。残った若手ハンターも時間が経つにつれ大人に変わる。装備の需要も大人向けが多くなるのは必然で、比較的低価格の商品は体格調整機能などの生存能力に直結しない機能は二(に)の次(つぎ)、三(さん)の次(つぎ)。

 

 需要が低ければ供給も少なくなる。

 

 そして数日後、それを調達したカツラギの下(もと)に届いた知らせは、その装備を着るやつがもういないというモノだった。強化服は決して安い買い物ではない。着る奴がいない子供向けの強化服を買う金があるならば他へ回した方が良いという判断から、一着、余ったのだ。

 

 カツラギは結果として黒字にはなったのだが、それはそれ。置いておくにも場所を取る。だが子供向けの強化服を買いたいという奇特なハンターなどいない。

 

 それはアキラが受領するまで、カツラギのトレーラーの隅で放置される運びとなったのだ。

 

 いずれ別の商売人に多少安くして流すつもりになっていただけあって、外套以外のオプション品を仕入れることはしてなかった。もししていれば、シェリルを紹介したあの日に購入していただろう。

 

 売れるときに売るため、仕入れておく。アキラ相手にこれが出来なかった。お得意様に出来なかったことで、カツラギの運の無さはその日まで続いていたとも言える。

 

 ──

 ────

 

 アキラはシズカから連絡を貰い、情報収集機器と車載用の索敵機器を購入した。

 

 エレナ達を酷使したことを楽しそうに話しながら、シズカは索敵機器をバイクに、そして強化服に情報収集機器を取り付けていく。

 

 アキラも手伝おうとしたが、素人が手を出すのはどうかと見るに徹した。

 

 総合系のオーソドックスなタイプの情報収集機器。そしてその情報収集機器との相性で選んだ車載の索敵機。合計で約1500万オーラム。

 

 これにより、アキラの戦力は明確に向上した。ア(・)キ(・)ラ(・)と(・)い(・)う(・)ハ(・)ン(・)タ(・)ー(・)のであり、アキラ本人ではない。強化服を着ているアキラ(アルファが外側から操作可能なハンター)の戦力、だ。

 

 アキラは初めて情報収集機器に触れる。当然その操作方法など分からない。訓練は必須となり、アルファが情報端末や強化服と同様、ソフトの書き換えに一日使った後、ヒガラカ住宅街遺跡へと足を向けた。

 

「……ここか。…………確かに多少入り組んでるから訓練には丁度良いか」

 

 アキラは感慨に耽っていた。当然、一読者だった時に想像していた場所に来たのだ。聖地巡礼気分もある。

 

 クズスハラ街遺跡の時もその気分はあったが、真面な装備の無い時だった。感慨に耽(ふけ)る前にモンスターに出会わない様にしなければという気持ちの方が強かった分、高揚するのは後回し。なにより、その場での一番の衝撃と言えばアルファとの遭遇とその後のウェポンドッグとの交戦だ。感慨など余裕で吹き飛んでいる。

 

 対して現在、アキラは強化服にAAH突撃銃、CWH対物突撃銃も備えているのだ。この一帯にこれでダメージを与えられないモンスターはいない。であれば倒せる。多少は気を緩めることが出来るため、アキラはこの遺跡の高台から全体を見下ろしていた。

 

『今回の遺跡探索は私の調整も含んでいるわ。情報収集機器と索敵機器の使用感のね』

 

「アルファでも調整とか必要になるんだな」

 

『あら、私の評価、随分高いのね? これでもいろいろやっているのよ?』

 

「そうなのか。なんでも出来るスーパーウーマンだと思ってたよ」

 

『そう、なら今後もそう思って貰えるように最大限サポートするわ。例えば、あそこにエレナ達が居るわよ』

 

 そう言ってアキラの視界に情報を追加する。アキラがそれを頼りにエレナ達を直視すると、結構な距離があるにも拘らず以前よりも鮮明な映像として出力される。

 

「これって……」

 

『気付いてくれてなによりよ。今後は情報収集機器で取得した情報も使えるから、サポートの質も上がる。期待しててね?』

 

「それ、この前みたいな戦闘が起こること前提じゃないか?」

 

『…………、♪』

 

「そんな満面の笑みをしたって騙されんぞ」

 

 そんなこんなでアキラはエレナ達のところへバイクを走らせる。

 

 アキラの顔を見たエレナ達は少々疲れた顔を一瞬浮かべた。が、すぐに笑顔に戻してアキラを迎え入れる。その顔になる理由に思い当たる節のあるアキラもそれは流して挨拶した。

 

 もうすぐ依頼が始まるエレナ達とそう長話も出来ない。しかしその短い時間を使って、アキラはそれとない苦情を貰った。

 

 情報収集機器は強化服のオプション品があることから悩まずに済んだらしいが、車載の索敵機器はエレナが必死に探したのだ。モンスターの大襲撃で疲弊していた所へのムチ打ちのような所業だったが、例の一件、アキラは謝礼も受け取らなかった。多少は良いかと頑張った結果だ。

 

 それが今アキラの力になっているのなら、命の代金としては立派だろうか。そう思いながら、アキラとそれはもう楽しそうにお話ししているサラと一緒に使用感など、触りでも良いからと付け加えてそっち方面に詳しい自分の方へ、アキラの注意を奪ったりなどしていた。

 

──◆──

 

 ドランカムの車両が見えた時点で、原作通りに進んでいるのだと察したアキラは、依頼の邪魔にならないようにエレナ達に「ではまた」と言い残して離れる。開放型の車両だったおかげで情報収集機器によってカツヤ達3人を見つけたからでもあった。

 

 下手にストーリーを変える気もないため、原作アキラと同(おな)じ行動を取ったのだが、アキラからカツヤ達が見えるということはその逆もありうるということ。

 

 カツヤは独り戦場へ向かったアキラが五体満足でそこにいる。死んだと思っていた者が、もうハンター稼業に戻っていること。そしてそのアキラに対し、自分が尊敬する女性2人がとても楽しそうに歓談しているのだ。驚愕し、そして疑問が膨れ上がる。

 

 その後、カツヤはエレナ達と合流したあと、アキラとの関係性を聞いたり、なぜそれを聞くのかという問いに、先日のモンスターの大襲撃時アキラだけが独り巡回用トラックから降りて他の車両の救援に向かったことを話したりしていた。

 

 しかし返答は非常に簡素なもの。今回の依頼に必要のないことを考えていることがどれ程恐ろしいか体験してきなさいとバッサリ斬り捨てられて終わりだ。エレナの威圧の籠った顔を前に、カツヤ達は急ぎ足で遺物収集に向かった。

 

「良かったんじゃないの? 少しぐらい」

 

「その少しぐらいを切っ掛けにあれやこれや聞かれないための措置よ。人は信じたいモノを信じるの。たとえ事実であっても食い下がられて捩じ曲げられたくないわ」

 

「ああー、そゆこと……。エレナを交渉担当にしてて良かったわ」

 

「交渉の席だと表情とかも判断材料になるの。少しは鍛えて欲しいところなんだけど?」

 

 エレナの悲哀に満ちた言葉にも苦笑が返ってくるだけ。エレナもサラも気心知れた仲だ。仕方がないとカツヤ達の様子を見るために高所へと向かった。

 

──◆──

 

 アキラはヒガラカ住宅街遺跡の中を進んでいる。バイクの操作も色々あって基本的な部分は問題無いほどに熟達した。それもあって、現在は情報収集機器の訓練に明け暮れている。

 

 そのため、アルファからのサポートを一部受けていない。壁の後ろや柱の陰に潜むモンスターが居ても、的確に対処出来るように、アキラは真面目に訓練を熟(こな)していた。

 

 AAH突撃銃の銃口を下げ、今しがた倒したばかりのモンスターの横を通過する。

 

『これで3体目。……なんかこのまえ戦った奴らがいるな』

 

『あの防衛戦で全て殲滅されたわけじゃないからね。アキラが遭遇しただけでも結構な量いたでしょ? 逃げた奴を追ってまで殺す暇なんて無かったはずよ』

 

『そうして逃げた奴らがここら辺のモンスターを食ったから弱いやつらが減って、そこそこ強いやつがちょっと住み着いたのか。

 変なのいないと良いな……』

 

『アキラがそう言うと……ねぇ?』

 

『喧嘩か? 白旗に出す金は無いぞ』

 

『なら、出たら出たで頑張りましょうか』

 

 そのままアキラはヒガラカ住宅街遺跡の中をバイクである程度の速度を出しつつ、情報収集機器での周辺情報を得られるようにと訓練を続けていた。

 

 この遺跡には人がいない。既に、過去多くのハンター達によってこの遺跡にあった価値のある遺物は持ち去られており、稼働している遺跡のように補充もされない為、もはや稼ぎを期待出来ないほど寂れているのだ。

 

 人はいないがモンスターはそこそこ居る。住宅街も損壊した建物が多く、入り組んだ地形も多い。アルファがこの遺跡を訓練場所とした理由がこれだった。

 

 何もなしでは危機感を持たなくなる。それは良くない。なにごとも程よい緊張と弛緩のバランスを保つべきである。

 

 アキラはそのバランスを実地訓練で磨いていた。

 

──◆──

 

 ヒガラカ住宅街遺跡の中には一際大きな邸宅が建っている。当時の価値観を知っている者など既にいないが、それでも比肩する程の建築物は他にはない。集合住宅ならば張り合えるが、逆に言えば集合住宅並みに広い敷地を占領していると言える。アキラはそこへ着いた。

 

『これ、恐竜みたいだな』

 

『言い得て妙ね。あれは暴食ワニ。合食系再構築類の爬虫類タイプで東部では一番多く見られるタイプね』

 

『動かないけど、死んでるか?』

 

『安心して、死んでるわ』

 

『そうか……』

 

 その邸宅の近くには2階にまで口を届かせるほどの巨大なモンスターが横たわって死んでいた。

 

(これ、確かカツヤ達が倒した奴だよな……。あそこで介入すればエイリアスの契約阻止が出来るんだろうけど……、する意味よなぁ…………。

 どうせ今後どっかで勝手に危険な目に遭って契約する羽目になるだろうし、変にいじらない為にも無視安定っと)

 

 アキラはその暴食ワニを無視して邸宅の中へと足を踏み入れる。

 

 その直後、物珍しそうな顔でアルファがアキラを誘導した。

 

 その先には、地下への隠し扉が浮かび上がっている。アキラの視界をアルファが拡張した結果であり、その扉の輪郭を強調表示していたのだ。

 

(さてと、原作アキラは問題無かった……。オレが問題無いかはまた別、賭けでもあるが、どうなるか)

 

 自分は旧領域接続者としてどの程度なのか。アキラには見当も付かない。アルファ達も当時の基準からすれば低レベルな存在と認知しているが、完全な対処ができない時点で別の技術が混入している。それは間違いない、とアキラは思っており、実際それは正解だ。

 

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 ────

 

(漫画でも見たこと無いな……。オリビアでもないし……。てか東の方の瀟洒な世(ザ・ワ──)────)

 

 アキラは普通に見ていた。そしてナチュラルに会話へ移行し、アルファに怒られた。

 

──◆──

 

 日も暮れ始めた時間帯。ヒガラカ住宅街遺跡の大通りで大きな爆撃音が響いていた。

 

『絶対このバイク、こんな使い方想定してないと思う!』

 

『良いのよ。今使えてるのだから』

 

『そういうもんか!? そうかっ! なら、最大限使わないとな!』

 

 アキラが窓枠の出っ張りにバイクの車輪を引っ掛けて上へと、地面と平行方向へと跳ぶ。そのまま地面へと着地しては不味いので、強化服の力で強引にバイクのタイヤを下へと向けて着地。同時に再加速。

 

 その横では先程まで走っていた家屋の外壁が飛んできた砲弾により粉砕された。

 

『いつまでも追い掛けてくるんじゃねぇっ!』

 

『一度ボコボコにされたから怒ってるんじゃない? 食事をして元気も戻ったから仕返しに来てるのよ。きっとね』

 

『最初に攻撃してきたのは向こうだけどな! 逆ギレも甚(はなは)だしい! アルファ! 使うぞ!!』

 

『そうね。いい加減帰りましょうか』

 

 アキラは蛇行運転によって後ろから追走してくる暴食ワニの背から生える2門の大砲の狙いを攪乱(かくらん)し、そして敢えて一瞬だけ直進する。それを暴食ワニは見逃さず、即座に照準を合わせ、発砲。当たればアキラの装備でも流石に吹き飛ぶ威力の砲弾が2発。宙を裂く。

 

 だがそれは誘いだ。バイクは勢いよく地面へ倒れると同時に90度方向転換。広い大通りの端から端まで移動して、また90度転換。アキラと暴食ワニの視線が交差した。

 

 アキラはバイクの速度を更に加速させ、暴食ワニへ向かう。砲弾が空気を押し出して、そのすぐ下を通るアキラに不快な圧を掛けるが、知らぬ存ぜぬとばかりにCWH対物突撃銃を構えた。

 

 バイクはアルファの制御によって安定した足場となっている。

 

 暴食ワニの撃つ砲弾は生体部品を変換したモノ。砲弾が再装填されるまでの猶予は、数秒だけ。固定化されたバイクのシフトペダルの上で、アキラはしっかりと狙いを定め、引き金を引いた。

 

 CWH対物突撃銃から放たれた専用弾が大気を裂いて一瞬で暴食ワニの二又の頭部の中間、首と胴の接続部位に着弾する。そのまま生物系モンスターの生命力を抉るように暴食ワニの体内を貫き、余波で大穴を開けてアキラの視線の先へと消えていった。

 

 全身の制御を仕切っていた頭部が身体から離れたことで、暴食ワニの身体から力が抜ける。先程までアキラを追っていたこともあり、その勢いのまま地面を滑っていく。だが、アキラはその目前へ走っていたのだ。このままだと不味いと思ったのも束の間。バイクが近くの大きめの岩を台にして宙へ跳んだ。

 

 背骨を沿うように削られた暴食ワニの上を、アキラは通過し、安全に着地する。左右には先程まで目を血走らせていた暴食ワニの頭が一つずつ。頭だけでもアキラよりも大きいソレが、光を失くした瞳で虚空を見つめていた。

 

『こんな体験は要らないんだよなぁ』

 

『巨大なキャノンインセクトに強装弾が効かないからって、普通サイズのキャノンインセクトを嵌めて砲塔ごと吹き飛ばしたでしょ? 今更よ』

 

『投げれるからって投げるのはいま考えるとやっぱりおかしいっ!』

 

『今更よ』

 

 アキラはそれ以上苦情を言った所で無駄だろうと考え、都市へと帰ることにした。

 

 CWH対物突撃銃の専用弾を撃ったことで赤字の可能性もあったが、それは汎用討伐依頼でカバーする。それに加え、暴食ワニの背中に生えて遂次(ちくじ)壊しては修繕されてを繰り返していた大砲を持ち帰ることにした。

 

 戦闘により飛び散ったそこそこ大きな瓦礫を台とし、大砲を2門並べロープで縛る。瓦礫は元が旧世界製の建築物の欠片だ。都市へ戻るまで荒野の地面と削り合ってもきっと耐えてくれるだろうと祈り、アキラはバイクを走らせる。

 

 カツラギの下で、500万オーラムとなった。

 

──◆──

 

 ドランカムの本部。そこでカツヤ達の訓練の評価をエレナ達がしていた。

 

 暴食ワニとの戦闘。これに関しては見事だった。正直な話、倒せるとは思っていなかった分、その点に関しては評価は上がる。それ以外にも旧世界の遺跡内での遺物の探し方、周囲の警戒の仕方、暴食ワニを除くモンスターの対処。どれも初心者や未熟者とは呼べない域にいると。

 

 カツヤ達もそれにはアガった。実力も経験も格上、そして何より美人なハンターに認められたという点で、カツヤはユミナやアイリよりも喜んだ。

 

 しかし、空気が変わる。なぜ暴食ワニと戦闘したのか、と。前提として今回の訓練は遺跡内での遺物収集を主としたもの。ヒガラカ住宅街遺跡にはもう碌な遺物が無いことぐらい、ドランカムもエレナも知っている。カツヤ達ですら知っていることなのだから当然だ。

 

 その上でヒガラカ住宅街遺跡を選んだのは、その先入観にどれだけ足を引っ張られないかのテストでもあった。だからこそ途中までは充分合格点を超えていたのだ。

 

 だがカツヤ達は暴食ワニを発見し、そして討伐を敢行した。何故? 倒せる保証が無い相手を、エレナ達の存在を保険にしなければならない相手を、その場に居るチームメンバー全員の火力を集中させる必要のある相手を、逃げられたのにも拘らず刺激して危機的状況を生み出したのは、いったい何故なのか。

 

 その返答はハンターランクや報酬、ハンターとしての自信にベテランに舐められないためなどなど。色々な言葉が出て来たが、エレナとしてはそれらはそんな危険な行動を起こしてでも得るモノじゃない。自分たちが組織人じゃないことも含め、既にハンターとしてある程度の地盤形成が成っている点を加味しても、そこまで性急に求める事ではないと、先輩として説(と)く。

 

 しかし返って来たのは暴食ワニを倒した。その一つの功績のみ。確かに危険で賭けでもあったが、勝利を収めた。成果となったのだ。功績を挙げたのだからそれまで被ってきた負債はチャラになったはずだという言葉のみ。

 

 エレナにとって、それは許容できない思想だ。

 

 事務や金融で金が飛んでいくのとはわけが違う。自分たちはハンター。荒野に出て危険なモンスターと交戦し、生き残るのが最低条件。負債とはつまり仲間の死なのだ。

 

 エレナにとってはサラで、サラにとってはエレナだ。必要な危険なら自ら飛び込むが、わざわざ目に見えて危険な罠に相棒を連れて飛び込む気は無いと切り捨てた。

 

 話を終えたエレナに代わり、サラが比較的オブラートに包んだ言い方でカツヤ達を諭す。自分たちの基準では危険は避けるモノ。命を賭ける以上、報酬には見合った額を要求するし、そう言った依頼を選択する。それを良しとする者がいれば、そうでない者もいる以上、一緒に行動するのはお互いに不幸を生むだけだと。

 

 エレナ達が帰ったドランカムの一室で、エレナ達の評価を聞く為に同室していたアラベがドランカム側の評価を伝えて、今後のカツヤ達の扱いを軽く話す。暴食ワニに勝てる実力者にベテランを付ける余裕もない。そう言って部屋を出る。

 

 廊下へと出たアラベはカツヤ達の行動の危うさを危惧し、それが今回エレナ達の勧誘を台無しにしたことで軽く舌打ちをした。今までそれとなく依頼を回していたのが全てダメになったのだ。カツヤ達を抱え込むと経理から文句が来そうだと考え、同時にこれ以上カツヤ達に脳のリソースを割(さ)きたくないと別のことに思考を回す。

 

 部屋に残ったカツヤは1人、ただ「ちくしょう…………」と自分でさえ聞き取れない声で呟いた。

 

 数日後、カツヤの管轄がアラベ達古参の幹部から、ミズハという事務側から上がってきた幹部としては新人の女性へと受け継がれる。

 

 エレナ達にダメ出しを受けたとはいえ、今のカツヤは既にハンターランク20以上の期待の新星。優秀なハンターであることに違いはない。

 

 ミズハはカツヤ達を取り込むべく、カツヤ達の利益となる依頼を沢山用意した。その善意とやる気に圧され、カツヤが自分自身で選ぶという選択肢は消えて、ミズハの用意した依頼へとアサインされることとなった。

 

 ──

 ────

 

 カツヤ達がエレナ達に評価を受けている頃、カツラギに暴食ワニの大砲を売った金に満足しつつ、借宿の一室でアルファと話していた。

 

「リオンズテイル社……?」

 

『そうよ。今日アキラが勝手に、……そう勝手にっ! お話していた企業よ』

 

「悪かったから抑えてくれ。態々キンキンする声質で話を続けないでくれって」

 

 CWH対物突撃銃の整備する手を止めて両手を合わせて勘弁してくださいというアピールをする。ぷくーっと頬を膨らませ顔を逸らしているアルファがアキラへ少しだけ視線を向けて、問う。

 

『じゃあ何が悪かったのかしら?』

 

「オレとアルファ間の通信は相性がいいからこうやって鮮明に見えるし聞こえるしサポートも十全に受けられていること。

 逆に相性の悪い通信相手もいて、そこと繋がると最悪脳死する。相性が良くてもオレがギリギリ認識できて且つ、処理できない量の情報を無理矢理流されたら同(おな)じく死ぬってこと」

 

『ふーん? 分かってるなら良いわ』

 

 アキラの視界上にいるアルファには重力というモノはない。描写情報でしかないのだ。それを活かしてアキラの周りをグルグルと回り、少ししてアキラの理解度を把握。それで一応機嫌を戻した。

 

『続きを話すわね』

 

 そうしてアルファが今日得た情報をアキラに話していく。リオンズテイル社というかつての東部で様々な事業で巨大化した企業。そこは基本的に人材派遣により利益を上げていた。当然だが迅速な対応の為に色々な地域に支店が存在している。

 

 今後はその支店が残っているであろう地点を回ることで、高価な遺物を大量に見付け、稼ぐ。そういう方針となった。

 

 アキラも異論はない。原作をなぞるには必須事項であり、第二目的もこれで掴める可能性がグッと伸びる。

 

 ハンターとしての躍進と湧き上がる欲の実現。アキラはそれを願って、まずは寝る。明日に備えて。

 

 その前に風呂へ向かった。




 この頃のドランカムって本当影響力デカいよなーって思う。他のハンターが疎ましく思うぐらい。
 今後さらにデカくなるんだけど。カツヤ側の幼女の所為で…
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