※この作品はR-18です。

Re:ビルドハレム   作:たっぷり

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・011 やたら多いヤラタ

──◆──

 

 アキラがクズスハラ街遺跡の外周部。そこに幾らでもある廃ビルの前に来ていた。乗っていたバイクを地面に書くだけの駐輪場に停車させてから入っていく。

 

「……ここか」

 

『ちょっと違うわ』

 

『違うって何が?』

 

『入り口ってだけよ。下へのね』

 

 アルファが指した方向は地面の先。つまりは地下だ。アキラはその事実に嘆息しつつ、それでも労働時間を消化する為に進んでいく。

 

 廃ビルの内部には多くのハンターと彼らを取り纏める都市の職員がいた。場を指揮している職員が広間に入って来たアキラに気付くと手で招き寄せる。

 

 アキラと都市の職員の間で少々胡乱な空気が発生したが、アキラも都市の職員に銃口を向けることはしない。職員も態々地下に潜ってくれるハンターを減らす必要もない。

 

 例え面倒だという表情を隠していなかったとしても、例え目の前にいるハンターがガキということで湧きあがる忌々しい気持ちを顔に出していても、お互いここには仕事をしに来ている。淡々と職務を済ませて終(しま)いだ。

 

「お前は防衛側に行け。14番防衛地点だ。良いか? 14番防衛地点だ。間違えるなよ。

 貸し出し端末に移動ルートが表示されている。さっさと行け」

 

「へーへー」

 

 アキラはそのまま広場を歩いていった。

 

 その後ろ姿を見ていた職員が僅かに疑問を抱く。

 

 アキラのハンターランクは21。一端(いっぱし)のハンターとも言えるが、駆け出しハンター卒業といえる程度でしかない。安全面を考えれば良くて部隊で運用すべき弱者でしかないのにも拘らず、アキラは今回の依頼、1人のハンターとして雇われているのだ。

 

 他の若手ハンターはチームかつ子守(こも)りもいたような、と都市の職員が覚えた疑問を解消すべく、アキラの情報を集める。ハンターオフィスにはそのハンターの経歴などが載っている。依頼の達成率。換金した遺物の量や金額。所属する組織。

 

 これを見れば何となくでもそのハンターのおおよそが測(はか)れる。

 

 だがアキラはその掲載情報を非表示設定にしていた。本来ならば見れない。だが都市の職員が少し操作するだけで非表示設定が解除された。

 

 都市の長期戦略部はハンターオフィスと強い繋がりを持つ。このことから、この場に居る男には、今回依頼を受けた者の中からハンターランクの低い者に限り、該当者の非公開情報閲覧権限が持たされていた。

 

 それを用いてアキラの戦歴などを見ていた職員の表情が驚愕へと変わっていく。

 

 そしてその驚愕は次のハンターが自分の配置場所を聞きに来るまで続いた。

 

 少し前まで画面に表示されていたモノで、職員に衝撃を与えたモノは以下の三つ。

 

 ハンター歴、6ヶ月。

 

 遠距離武装を持つまで変異した暴食ワニの単独討伐数、2体。

 

 ヤラタサソリの単独討伐数、427匹。

 

 アキラは、先日地上まで湧き出してきたヤラタサソリを1人で倒し続けた。終わりの見えない群れの多さに怖気(おじけ)付いた救出対象のケツを蹴り上げさっさと仮設基地へ走るように促す。殿(しんがり)として働く為、両手にAAH突撃銃とCWH対物突撃銃を持って持ち込んだ拡張弾倉を使い切る勢いで倒し続け、他の場所へ救援に行っていた都市の兵士が到着したころには、その場はヤラタサソリの死骸で埋まっていた。

 

 一つ一つであれば、「まぁ、やるな」という感想で終われるが、それが1人の戦歴に集約されているのだ。単独と記載されている時点で他所の存在、子守(こも)りという保険は無いということ。

 

 実力で捩じ伏せたということになる。

 

 職員は称賛よりも先に、得体の知れない実力者へ畏怖(いふ)を抱いた。

 

──◆──

 

 アキラはヒガラカ住宅街遺跡へ行った日からは、都市やハンターオフィスが掲載している依頼を受ける運びとなった。

 

 ヒガラカ住宅街遺跡の地下で見つけたリオンズテイル社の端末設置場所の探索を行ないたい気持ちはあったが、今のアキラの乗り物は小型のバイクのみ。たとえ未発見の遺跡を発見したところで持ち帰られる遺物は微々たるものになるだろう。往復すればいいのだろうが、それではアキラの様子を訝しんだ者が後を尾(つ)け、遺跡を横取りされるだけ。最悪まだ他の遺跡を知っているだろうと荒野で襲われかねない。

 

 暫くはハンターランクを上げて、荒野仕様の大型車両をレンタル出来るようになるべきとなった。*1

 

 そこからアキラは原作同様、仮設基地構築補助依頼を受けて廃ビルの制圧作業を遺跡探索中の索敵技術向上に使ったり、制圧作業に不適格とされて救援班に回されて大量のヤラタサソリの相手をする羽目になった。

 

 その後、シェリルがカツラギの移動店舗の一部を借りてホットサンドを販売しているところを見かけたり、シズカの店で身体のラインを強調するような強化服を着たエレナをみて「綺麗なスタイルしてるなー」と感想を漏らしてしまってエレナの顔が朱に染まったのを見送ったりとしていた。

 

 数日おきにシェリルの拠点に顔と精を出しに行ったり、シズカのもとで元気を貰ってもらい過ぎた分を還元したりしていると、ヤラタサソリが巣を張った地下街攻略依頼が舞い込んできたのだ。

 

 とうとう来たか、と思っても避けられない。この依頼にはキバヤシが絡んでいることは原作知識のあるアキラは知っている。キバヤシが信じた先日のキャノンインセクトとの戦闘やその後日討伐した暴食ワニの討伐記録、ヤラタサソリの討伐数などを考慮すれば、例えアキラが単独で活動する若手ハンターだとしても、今回の依頼を1人で参加させることぐらい、訳なかった。

 

 ──

 ────

 

 そして現在、アキラは14番防衛地点でげんなりしている。

 

 勿論、アキラが何かをした訳でもないのだが、巻き込まれたことには違いない。

 

『滅茶苦茶空気悪いなぁ……。地下だからってこんなに陰鬱な空気にならんでも』

 

『自分で1人になることを決めたアキラが言うの?』

 

『1人になることと空気が悪化することは違う気がするんだけどなぁ……』

 

『元から二つに分裂していたのだからどっちかに加われば不可侵状態に持っていけたかもね』

 

『さっきの様子からそれでも文句を言いに来そうだったけど……?』

 

 14番防衛地点に着いたアキラの目の前には、原作通り大人チームとカツヤチームで分裂した防衛班があった。

 

 アキラはどちらかに与(くみ)する気など無い。

 

 大人チームはこの後依頼を無視して周辺に隠されているであろう遺物を探しに行く。

 

 対してカツヤのチームはリーダーであるカツヤの統率が出来ていない。アイリはカツヤの意見に完全同意を基本としているので危うさもあるが、チームに属しているのだから彼女のスタンスは正解とも言える。つぎにユミナ。彼女は自分の意見をキチンと言う。危険な時はカツヤを引き戻せるストッパー役なのだが、そこに感情を入れ過ぎている所為でカツヤを止めるのが遅くなる。

 

 そんな危険な状況と隣り合わせの状態でありながら、そこにレイナという存在が加わった。彼女の生まれは非常に良い。スラム上がりのアキラとは比べられない。孤児院出身のカツヤさえ足下に及ばない出自だ。

 

 中位区画どころか上位区画で生活していても可笑しくない。そこから、その血筋、遺伝子は優秀といえる。潜在能力は非常に高い。

 

(問題はカツヤの周囲への影響だよなぁ……。本人が、カツヤの方が強いと思えばカツヤの認識も加わった認識が戻って来て、それが上限をカツヤの実力に固定させてくるもんなぁ……。カツヤ自体も才能あるからさっさと強く成るけど、真面目に害悪すぎる……)

 

 原作アキラと関わることで、カツヤよりも強力な通信能力によりその制限が外れることになった。少なくともそれで実力を伸ばしたキャラが居たのだ。アキラの推測はそこまで外れてなかった。

 

 ──

 ────

 

 アキラのいる14番防衛地点にはアキラ以外に大人のハンターが数名、ドランカムのカツヤが率いるハンターで組まれた計5名。アキラを入れても10人には届かない。

 

 防衛と付いてはいるが、あくまで保険。そこをヤラタサソリに再占拠されると面倒だという意識からハンターを派遣しているに過ぎず、基本的にその場所で戦闘が起こることはない。

 

 その所為でその場に居るハンターの警戒意識は非常に緩んでいた。

 

 最低限、大人組もカツヤ達も順番に目の前にある通路を少し奥まで確認してヤラタサソリの影や気配でもあれば、即時対応が可能な状態で構えている。

 

 だが来(こ)ない。何も起こらない。変化の無い状況が続けば、たとえそれが安全であろうと人は飽きる。結果、全員の頭から旧世界の遺跡にいるという危機意識が抜け落ち始めていた。

 

 そしてそれはカツヤも変わらない。その場にアキラが来たことで、先日エレナ達と話していたのは何だったのかと聞こうとしたが、レイナが先にアキラに突っ掛かったことでその機会は流れてしまった。その上、軽く流されたことでレイナがアキラを無視する流れをチーム内に作ってしまった影響で、「さっきのは悪かった」というのも難しい。

 

 なんとかもう一度機会でも来ないかと時折りアキラの方へ目を向けていた。そしてそれはユミナやアイリ、レイナも気付いており、「どうしてそんなにアキラのことが気になるのか」、「今はチームメンバーのことを気にするべき」と詰め寄られることとなる。

 

 自分を慕ってくれる美少女たちに囲まれてたじたじになったカツヤではなんとなくのそれっぽい返答しか出来ず、その時間は緩やかに、ただ何事もなく過ぎていった。

 

 ──

 ────

 

『アキラもああいうのを目指しているの?』

 

『どれだよ』

 

『あのカツヤって子が率いているハーレムチームのこと』

 

 そういってアルファがアキラの視界にカツヤ達が乳繰り合っている映像を映す。

 

 カツヤを中心にユミナやアイリ、レイナが詰め寄り、その近くにはシオリと呼ばれる大人の女性が侍っている。シオリだけ何故かメイド服を着ている所為で、その整った容姿と相まって時折り大人組の視線を受けていたりするが。

 

『そんな予定は今のところないな』

 

『あら、意外』

 

『心外だ。そもそもチームを組む相手もいないしな。依頼中に上からの指示とかでもない限り、基本的に単独(ソロ)だろうな』

 

『ふーん?』

 

『それに、下手に同行者がいるとアルファとの戦闘訓練が出来なくなるからな。それは困る』

 

『へぇ~』

 

『んだよその顔は……』

 

 視界に映っていたカツヤ達が消えたことを契機にアキラが自分の訓練へ戻る。微笑みを強くしているアルファを無視して。

 

 再度アキラが情報収集機器の調整を繰り返して、先程アルファによって映されていた映像と同じ解像度に出来ないかと努力していると、14番防衛地点に設置された大型の通信機から職員の声が広がる。

 

──◆──

 

「27番だ。27番が行け。後は適当にそっちで選べ。27番を含めて多くても3名だ。27番だけでも構わん」

 

 本部の職員の声が全員の耳朶を打つ。

 

 先ほど15番防衛地点がヤラタサソリの群れに襲撃されたという話を聞いただけあり、そこへ行く途中にあるかもしれない未調査ルートの先にはヤラタサソリがまだまだ多数生息している可能性がある。危険性は高い。にも拘らず、職員は27番1人だけでいいと言う。

 

 大人組は依頼中にも拘らず周囲の探索に出てサボる。ドランカム側は子供が多く、最近信用を落としている。どちらも選ばれなかった。

 

 では27番は誰なのかと両方が首を傾げたが、そこへ、通信機へ声が掛かる。

 

「27番。了解」

 

 声の主であるアキラに視線が集まるなか、アキラは2挺のAAH突撃銃とCWH対物突撃銃、そしてリュックサックを背負い、広場から消えていった。

 

 その後ろ姿に驚きや困惑などを向けていた者たちも、我に返る。そして本部へ怪訝そうに聞き返す。「ガキだったが問題無いのか」、「なぜ27番だったのか。適当に選出したのならこっちで選びたい」など各々聞いたが、返答は一つ。問題無い、それだけだった。

 

 カツヤ達が自分らの戦歴を話してその選出は可笑しいと言おうが、ひっくり返ることはない。暴食ワニの討伐を出されようとも、その程度の相手ならば多少腕に覚えのあるものならば討伐歴ぐらいある。アキラには遠距離武装持ちに変異した個体を倒した戦歴もあり、今回の依頼の相手はそもそもヤラタサソリだ。でかぶつをでかぶつで吹き飛ばす類いの戦闘ではない。戦闘状況も異なる状況下、戦果を挙げたアキラを優先するのは間違いではない。

 

 カツヤ達の戦歴を聞いた大人組もその戦果なら選ばれても可笑しくはないと思い、アキラの戦歴を聞けば、顔が引き攣る程の説明が返ってくる。それを全て個人で成し遂げているのであれば、頷くしかなく、それでも信じられず冗談だと疑ってしまう。

 

 しかし本部の職員から「ハンターオフィスが認めた戦果だ。お前らが納得する必要は無い」と言われ、その場は静まり返った。

 

 レイナは何となくだがカツヤはアキラに対抗心のようなものを抱いていると感じていた。アキラの戦歴を聞いてからは、それを根拠に自分の予想は正しいのだという思いを強めていく。

 

 自分がその実力を認めるカツヤ。そのカツヤが対抗心を燃やすアキラ。そのアキラに付いていけば何かが得られるのではないか。自身の実力を自分で誇れるようになる切っ掛けが、契機が、機会が、何かが。

 

 レイナはそう考えてしまった。荒野で一番大切な安全を軽んじるほどに。自分から危険を望むほどに。

 

「……枠はまだ2名分残っているわよね?」

 

 レイナの質問の意味を察したシオリが思わず声を上げる。

 

「お嬢様!?」

 

「あいつを追いかけるわ。用意して」

 

 レイナは選択した。安易な選択でも覚悟を決めた決断でも、選んだ結果は背負わなければならない。その自覚も薄いままに。

 

──◆──

 

『再度空気が悪くなったわね』

 

『最悪だ』

 

 アキラは原作通り集団行動を無視したレイナに追い付かれ、そしてシオリからの質問に正しく、自分の思った通りの答えを返した。「要らない」と。

 

 更にその答えが出て来た理由などをシオリから聞かれた為、同じく心の内を吐く。その全てが無駄に安全性を無視する行動を取っていたレイナの心に突き刺さり続けた。

 

 結果、シオリから戦闘も考慮に入れた質問が、そしてアキラも交戦を前提にした返答を返す羽目になった。

 

(まぁ、あれも今後のことを考えれば全くの無意味でもないんだよなぁ……。レイナが強く成れば……、それでカツヤに迎合されたら最悪だけど)

 

 一歩間違えるとカツヤ側の戦力が跳ね上がる可能性が出て来たことを憂慮しながらもアキラは索敵を続けている。レイナ達も先程の剣呑とした空気はなく、一ハンターとして協力していた。役割分担が出来たことで、アキラ1人で進むよりもずっと早く進んでいく。

 

 そして、アルファがヤラタサソリの死体を見つけた。

 

 それは簡易マップに記載されていない大きな横穴を見つけるきっかけとなる。

 

──◆──

 

 アキラのCWH対物突撃銃から装填されていた弾倉が地面へ落下する。そして即座に替えの弾倉が装填され、アキラが狙いを定めて引き金を引く。

 

 轟音と共に放たれたCWH対物突撃銃の専用弾が、大気を貫いてアキラ達へ迫って来ているヤラタサソリの群れの先頭へ着弾。しかし1匹程度で専用弾の威力が全て持っていかれることはない。後続のヤラタサソリも含め、1発で十数匹という数を一瞬で肉片と血粉へ変える。

 

 それでも通路に空いた大きな横穴から出てこようとするヤラタサソリの群れに終わりは見えない。1発撃てば十数匹が更に肉片へと変わる。しかし後続のヤラタサソリはそれを恐れることなくアキラ達へと向かう。負傷して動けないだけの個体も同様に踏み潰されていく。撤退する様子など微塵(みじん)も感じられない。

 

 レイナ達はアキラの指示通り通路側の警戒を受け持ち、別方向からの敵増援や奇襲に備えていた。勿論アキラに助けを求められたらすぐに加勢するつもりだ。だがアキラからその要請はなく、少々必死な様子を見せてはいるが一人で敵を押し切っている。

 

 あの戦歴は、実力は、真実だった。そう示すようなアキラの奮闘を見て、レイナ達は半ば呆気(あっけ)に取られていた。

 

 アキラがCWH対物突撃銃の専用弾を使用していることにレイナが気付く。そして床に散らばっている予備の弾倉も全て同じ専用弾であることに気付いた。

 

(凄い! 専用弾の反動なんてそこらの強化服じゃ制御できないってのに……、体勢も照準も、全くブレてない!)

 

 専用弾の価格と威力を知っているレイナが驚きながらアキラに尋ねる。

 

「どうしてCWH対物突撃銃の専用弾なんか持ち込んでいるのよ!? ヤラタサソリを相手に使う弾じゃないわよね!? アキラだけ戦車でも狩りに来たの!?」

 

「俺の実力不足を補うためにできるだけ良い弾を用意しただけだ! 戦車なんかと戦う訳がないだろう!」

 

「こんなに大量の専用弾をどうやって用意したのよ! この量の専用弾だと相当な額になるはずよ! そんなに稼いでいるの!?」

 

「弾薬費は依頼元持ちだ! CWH対物突撃銃の専用弾を山ほど使うって了承も取った! 嫌なら依頼を受けないってごねたんだ! そういう条件を出せば向こうから断ってくるって思ってな! そんな条件が通ったから俺はここにいるんだよ! そうだよな! あんだけの量殺しても地下にいるってんならこれはありえるよなぁ!」

 

 先日地上に出て来た数など全体の一部。更にそのまた一部でしかない。

 

 そしてそれを再度肯定するかのように、アキラ達のいる通路の両端からヤラタサソリが現れる。

 

「こいつらどこから来たの!? 穴はここだけじゃないの!?」

 

「お嬢様! 来ます!」

 

 数は少ないものの、新手のヤラタサソリ達が通路の左右からアキラ達に迫ってきている。レイナとシオリが左右それぞれのヤラタサソリ達の迎撃を開始する。

 

 アキラが叫ぶ。

 

「近くに別の穴があるなら数が少なすぎる! 多分15番防衛地点以外の場所に向かったヤラタサソリ達が戻ってきてるんだ! こっちは手一杯だからそっちで何とかしてくれ!」

 

「分かったわ!」

 

 レイナの返事に、アキラが焦りを含んだ声で続ける。

 

「頼んだぞ! 本当に頼んだぞ! 頼んだからな!」

 

 アキラも囲まれた際の訓練は積んできた。それでも数が多い。通路と横穴。敵の来る方向は分かるが、自分の逃げ道も少ないのだ。レイナ達の援護が無ければこの場の維持など到底かなわない。

 

 レイナは一瞬だけ驚きの表情を浮かべたが、すぐに力強く笑って答える。

 

「……任せなさい!」

 

 いち早くヤラタサソリの群れの襲撃に気づき、その後も一人で大量のヤラタサソリを押し止(とど)めるアキラの姿は、レイナがアキラの実力を認めるのに十分なものだった。アキラのレイナに対する評価も含めて、レイナが軽い劣等感すら覚えるほどだった。

 

 そのアキラが、レイナを頼りにしている。レイナの実力がアキラに認められている。その実感がレイナの士気を大幅に上昇させ、レイナの頭から自身の実力不足を嘆く悩みを、焦りと苛立(いらだ)ちでレイナの足を引っ張っていた要素を消した。

 

 アキラが横穴からの襲撃に対処し、レイナ達はそのアキラの戦闘を邪魔させないために通路から襲ってくる個体をとにかく倒していく。各々が尽力していく分、ヤラタサソリの数は徐々に減っていき、十数分後、最後に放たれた専用弾の着弾音がヤラタサソリの群れを壊滅させるに至った。

 

 ──

 ────

 

 その後、アキラはシオリからのちょっとした依頼の終了を確認しレイナ達と別れた。彼女らはカツヤのチームメンバー。共に行動する気などアキラには無い。

 

(ちょっとした因縁も出来たし、これであとは……、強奪犯が来るんだよなぁ、この後。

 面倒だけど……、これもしかしてネリアが捕まらなかったらヤナギサワの計画って少し止まる? いや、カツラギのトレーラーの荷物が一番の痛手か? ……武装のコンテナは最前線向けの高級品だし壊れないか。下手に改変しても良いこと無いな)

 

 アキラが今後のことを考えていると視界の端に近付いて来るレイナやカツヤ達が映る。面倒だと心の中で嘆息しても現状は変わらない。

 

(三等分にしたんだから受け取ればいいものを。……濁をそのまま飲むのを躊躇う程度には綺麗な来歴ってことか。箱入りだな)

 

 その無鉄砲さが今後、彼女を危機的状況に陥らせるのだ。

 

 アキラとしてはどうでも良い。助けられるなら助ける。出来ないならば、それはもう仕方が無かった。それだけだ。

*1:
なお、当時のハンターランクでもレンタル自体は出来るが、ランクが低いことから帰還率やレンタル車の損壊確率から普通よりも高額になる為借りるメリットがデメリットに釣り合わない。




 この後のこと考えるとアキラの次に高低差の激しい人生してんなレイナ

 そういやカツヤがハンター始めたのは、アキラがキャノンインセクトと戦った一年前だし、この章でハンター始めて16ヶ月ぐらいか
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