重装強化服から出たネリアは既にビル内の通路へ足を着けている。その途中で立ち止まり、周囲を確認した。ネリアの義体には情報収集機器が内蔵されており、それで今も周囲の索敵を続けている。だが、重装強化服に搭載されている物よりも性能が低い。既に内部に潜んでいるであろうアキラからの奇襲を警戒しながら進むには力不足だ。
(うーん、色無しの霧の所為で情報収集機器の方はあんまり動いてないわね。こんな精度ならもう切っても良いか)
内蔵された情報収集機器が停止したことでネリアは義体の五感を模した単純なセンサー類のみでしか周囲を探れなくなり、索敵の精度は先程よりもさらに悪化した。
それでもネリアは楽しげに笑っている。この状況下で一切余裕を崩していない。その理由を腰に巻いたベルトの一部を開いて取り出した。小さいが一部分にだけ、収納スペースがあり、そこへ
(こんなに早く使う機会が来るとはね。さて、性能の方はどうかしら?)
ネリアが取り出したのは輸送車両へ積み込む予定だった遺物の一つ。ネリアが幾つか隠し持っていたそれはケインへ話していたクズスハラ街遺跡のマップ情報への接続機器だ。
その接続機器を義体に装着し起動すると、ネリアの義体へ多数の情報が流れ込んでくる。最初は少々くらっとしたが、ネリアは取得情報を徐々に限定的にしていくことで問題の無い範囲へと変更できた。
そしてその情報は義体の情報変換装置を通り、ネリアの拡張視界へとビル内の情報を映し出す。
(表示情報をこのビルに限定した上で更にデータ量を間引いて、ようやく私の処理性能でも問題無い範囲……。か。この量だと情報収集機器との併用は無理ね。
まぁ、どっちでも良いわ。それじゃあ、あの子を探しましょうか。どこかしら?)
今のネリアはビル内の情報をほぼ全て取得できる状態だ。まるでアルファのサポートを得たアキラのように、壁の向こうを見通せるようになっていた。当然、アキラの姿はすぐに見つかる。
そしてネリアの表情がちょっとした驚きと喜悦で歪んだ。
そのまま外で待機中のケインへと通信を繋げ、アキラが生存していること、なおかつ両足で立って今も十分戦闘可能状態を保っていることを伝える。
加えて自分の推察は恐らく正しいと唱える。アキラも強化服を着用しているが、これはモック。形だけ似せただけで性能は別物になっているのだろうと言えば、ケインも納得した。ケインの最初の爆撃によってアキラの
それで2人の意見は一致した。
『──ふーん、で、どうするんだ? 都市のエージェントなら、並の戦力じゃないはずだぞ?』
『当然、殺すわ。当たり前でしょう? 私が負けると思っているの? ケインはそのまま周囲を警戒しておいて、すぐに済ませるから』
『了解だ。急げよ』
通信を切ったネリアがアキラをもう一度見て、再度狂気的な笑顔をその相貌に映す。余裕を多分に含んだその笑みは、アキラを捉えて離さない。
壁を幾つか挟んだその先で、アキラも自分へ視線を向けていたからだ。
「熱烈な視線ね。身体が
いま、殺しに行くから」
ネリアがベルトから銀色の
その両端には刃などない。しかしネリアは
アルファから「敵が侵入してきた」と聞かされた時からアキラの胸の内で疑問が湧き始めていた。何とかその疑問を起因とした不安感を面に出さぬように注意しながらアルファの案内の下、ビルの中を移動する。
(情報収集機器は、……駄目だ。真面に機能してない。外なんか見えない。重装強化服ほどの大きさならそれ相応の索敵機器を積めるはず。ビルに入れば機能するだろうが、あの図体。中に入れば真面に動けなくなるんだ。逃げ道を作ってくれるような真似はしないだろう……。
そうなるとネリア本人……、まぁ義体で来たんだろうが、色無しの霧がこの濃度。あっちも機能してないはず。で、そこに旧領域の拡張現実情報への接続装置を使ったはず)
アキラは移動を繰り返しながら先導するアルファを見やる。そこには原作と違っていつも通りの衣装のままアキラをサポートする美女が映るだけ。それだけでも有り難いのだが、原作を知っているだけあり、このアキラは内心で不安を抱えていた。
(アルファは別段、オレとの直通の回路で結ばれてる訳じゃない。旧領域の回線を通して、オレ
なら、どうしていま、アルファは見られているはずの状況下でこの姿なんだ? 明らかに旧世界風の衣装だ。相手が2人で、こっちよりも機動力が上なんだ。殺せる算段の無い状態で、確証の無い現状で、態々アルファが姿を
……絶対あり得ない。旧世界側の存在と知らせるだけ損だ……)
ならば何故? そう頭を捻ってみるが、それらしい結論は思い付かない。疑問と不安だけが積もっていく。募っていく。その所為でアキラの呼吸が僅かに乱れ、荒くなる。
『アキラ。どうしたの? 大丈夫?』
『大丈夫。……と
誤魔化しでもあり、強がりでもある。
アルファに明かせないからこその焦りでもあるその言葉に、それでもアルファは優しく返す。
『安心しなさい。色々あったけど、アキラの強化服はまだまだ十分動くわ。私のサポートを受けられる状態なの。しっかりサポートしてあげるから、アキラはそれに付いてきなさい』
『そうか。……それさ、終わったあとのオレの腕とか足とか、大丈夫か……?』
『生きて帰れるわ。大丈夫でしょ?』
『ちょっと待ってくれ……!』
そう笑い合っている最中、アルファの気配とも呼べる感覚が鋭くなる。視線にも力が入ったように一方を睨み付けた。
アキラも釣られてそちらを見る。
『アキラ。来るわよ』
壁を透過した視界の中で、アキラの視線の先にはネリアがいた。
少しだけ浮かべていた笑みが、アキラと視線が交差した瞬間、更に深い喜悦に染まり、走り始める。
義体という人外の出力による速度で走るネリア。曲がり角があろうと一切の減速も無く駆け抜けていく様から、その先から奇襲される恐れなど無いと知っていることが窺える。
(間違いなく接続装置を使ってる! 詳細までは覚えてないけど情報収集機器は切っていた……。あいつは間違いなく拡張現実情報を受信している! アルファが見えないのはなんでなんだ?! どうして?!
オレと
原作のアキラは突如現れたアルファを、信用できなかった。
だがこの場に居るアキラは原作とは違う。アルファは契約と規約に雁字搦めになっている人工知能と知っている。知っているが故に、契約内容を最低限口出ししてその場での契約を
ずっと前から、シェリルとの交渉が為される前から、シズカと体の関係に至るよりもずっと
(オレと契約したアルファは既に、
クソッ! 今更が過ぎる!!)
通路をアルファの指示通りに走っていたアキラだが、急に変わった指示によって振り返り、その先へCWH対物突撃銃を向けた。
『良く狙いなさい!』
『……了解ッ!』
そして照準器越しに通路の先へ視線を向けていたアキラ。しかし通路を走っていたネリアは止まる気配を見せない。相手もこちらもどこにいるのか、そしてどのような動作を取っているかなど丸わかりだ。ならば自分がCWH対物突撃銃を構えていることも見えている筈だというアキラの思考を、ネリアは
『なんだ……?!』
ネリアは両手に握った旧世界製の
直後、アキラの身体に強い圧が掛かり、身体を勢いよく横へズラした。そこへ、
回復薬のおかげで痛覚は鈍化しているが、それでも筋肉が締められる感覚や骨が軋む感覚までは消し切れない。酷い違和感に顔を歪めながらも、アキラは階下からの斬撃を
(結局こうなるのかよっ!!)
CWH対物突撃銃を向けようにも、バレルを伸ばしたCWH対物突撃銃はアキラの身長と同程度。どうしたって真下には向けられないし、そもそも専用弾であってもこのビルの耐久力を突破するのは至難。何十発と撃ってようやくヒビが入るかどうか程度で、アキラには有効打はない。
ネリアの斬撃を躱している内に近くの一室へと誘導されたアキラは、打開の策をアルファに委ねたまま、強化服の回避行動に合わせて動くしかなかった。
ネリアが重装強化服の中に入れておいたベルトには、彼女が今回の遺物強奪の際に見つけた遺物が取り付けてあった。その内の一つが接続装置で現在使用中。
更に3つの遺物が取り付けてある。
1つはナイフだ。アキラがアルファと契約したての頃入手したタイプの調理用の商品。しかし、制限を解除すればその刃渡りはそこらのナイフとは比べられないほど伸びる。十数メートルを斬り裂くなどわけないほどに。
残り2つは同じ遺物であり、内部に液体金属を保存しているナイフだ。先程のものとは形状が違う。ただし普段は
そして今、ネリアは両手にブレードを握ってビル内に幾つもある部屋の中を駆けまわり続けていた。
別段、ネリアにそんな趣味などない。だがネリアの顔は喜色で染められていた。
自身の上階で駆ける死後報復依頼プログラムの対象者。そのアキラが今もなお生き残り、反撃の機会を窺うようなそぶりを見せているからだ。
ブレードの届く範囲。東部では超至近距離戦闘域に分類される自分の得意分野。それを一方的に押し付けているにも拘らず、アキラの目からは光が消えることはない。それどころか生き残るためのギラギラとした瞳をしている。今のネリアには壁の向こう側など手に取るように掴めるからこそ、アキラの視線が自分を見ていることに気付いており、そして自分と戦える実力者であるという事実に興奮していた。
(
止めどない高揚をそのまま変換したような表情でネリアは笑う。そのままネリアのブレードが縦横無尽に床を切り裂きながらアキラを
通常の
アキラは部屋の中を必死で逃げ続けている。アキラが部屋を脱出しようとすると、ネリアがアキラの両断よりも脱出の阻止を目的とした斬撃を放つからだ。結果的にアキラは部屋から逃げられなくなっていた。
『アルファ! このままだと俺の足が持たないんだけど!?』
アキラはネリアの斬撃を回避するために急加速と急停止を繰り返している。その動きの
アルファが慌てるアキラとは対照的な落ち着いた声で答える。
『我慢しなさい。大丈夫。まだ千切れていないわ。もう少しよ』
『それはもう少しで反撃の機会が来るって意味で良いんだよな!? もう少しで千切れるって意味じゃないよな!?』
『
『保証が欲しい!』
『ちょっと難しいわね』
反撃の糸口はあるが、その代償は大きいかもしれない。アキラは非常に嫌そうな表情を浮かべながら、ネリアの斬撃から必死に逃げ続けていた。
そして、
──
────
アキラが階下からの斬撃を躱し、後ろへ跳ぶ。直後アキラの元居た場所をブレードが通っていった。その行動は正解だろう。だが、それは誘い。
ネリアの攻撃は一見ひたすらにアキラを狙い続けているように見せていたが、それの斬撃には攻撃以外の目的で放たれたものが含まれていた。ネリアにとっての天井を、アキラにとっての床を斬り裂く際に、微妙な角度で斬り付けることで、周囲の床から切り取られているが、引っかかって落ちない。そんな部分が形成されていた。
ネリアはそこへアキラを誘い込んだ。
アキラが仕込み場所へと足を着く。そのタイミングで
非常に勢いよく蹴られた天井が、ネリアの予想通りにアキラごと吹き飛ばされる、ことはなかった。他の部分と
「なっ!?」
予想外の事態。しかし、ネリアの驚愕を置いて事態は進む。ネリアの斬撃によって脆くなっていたその場所は、ネリアの蹴り、そしてその逆方向から叩きつけられたアキラの蹴りの衝撃で砕け散った。
──
────
アキラは強化服の出力に加え、CWH対物突撃銃の専用弾を撃った反動を利用した。引き上げられた出力に発砲の反動という威力の底上げによって、義体が放つ蹴りの威力を相殺したのだ。
床であり天井。その部分は上下から与えられた衝撃で動かなかったが、アキラとネリアは違う。
ネリアは下へ。アキラは上へと飛ばされた。
ネリアは驚愕を浮かべていたが、それもすぐに収め、床に付いた瞬間、再度飛び上がる。対してアキラは天井へ足を着いた。
どうすればという一瞬の考えが酷く長い。そんな思いも余所に、両手が動く。アルファの操作だ。重力に引っ張られ始めた身体だが、天井に両足をしっかりと付けたアキラの身体は安定していた。そのままCWH対物突撃銃の銃口が僅かに開いた亀裂へと向かう。
轟音。共に放たれた専用弾の余波によって瓦礫は吹き飛ばされ、階下に散る。
それに遅れることなく、アキラは天井を蹴って勢いよく空中の瓦礫を追い越し、そのまま空中に残っていたものを手に取った。
それはネリアの左手だ。手首から先は先程の専用弾によって砕け散り、そしてアキラの目の前に、ようやく肉眼で捉えたネリアは、左肩から先を失っていた。
「……ようやく、
「私に会えてそんなに喜んでくれるなんて、
旧世界の遺物にだって安全装置ぐらいは付いているのよ。つまり、その解除方法を知らないと使えないの。ちょっと調べれば分かるようなものじゃ……」
握られている
アキラにこのブレードは使用できない。ネリアはそう思って笑っていたのだが、アキラの右手の
「……ああ、そういうこと。
態々答える義務などないアキラは口を
「そう。それなら、
アキラが少し迷ってから答える。
「……アキラだ」
「そう。私はネリアよ。
次の瞬間、ネリアは滑るようにアキラとの距離を詰めると、床に付くほど下げていた剣先を跳ね上げる。
アキラがそれを
ビルの外で待機しているケインが大きく溜め息を漏らす。しかしそれが空気を乱すことはない。内心で行なったことだからだ。
既にネリアがビルの中に侵入してから十数分と経っている。しかし未だに目標の殺害報告が上がらない。たとえ都市のエージェントであったとしても、ネリアの近接戦闘技術はそこらのハンターでは、囲んだところで対処不可能なほど卓越している。
だからこそネリアが1人で侵入するという案に、1も2もなく了承を返したのだ。
生存していたという報告のあと、流石に遅すぎると思い、こちらから連絡を取ってみれば、今もなお戦闘中。更には片腕を持っていかれ、現在は両者共にブレード戦へと移行したという。
「……ヤジマが殺されただけでも計算違い。その上でこの状況。同志からの情報に誤りが? それとも不測の事態が重なり合った結果なのか? どちらにしろ、計画に修正が必要だ」
ケインの独り言を聞く者はいない。その口調は、ネリア達と話す時のものとはまるで違うものだった。
──
────
色無しの霧が晴れ始めたビルの外で、重装強化服が移動を開始した。
アキラが繰り出した一閃をネリアが
一進一退の攻防が繰り広げられている部屋の中では、ネリアの
「凄い凄い! 凄いわアキラ!
「断る! オレにだって相手を選ぶ権利ぐらいある!」
「そんなこと言わないで! こんなに楽しい殺し
ネリアが攻めればアキラはそれを防ぎ、
だが、数分間のも及ぶこの拮抗状態により、この場での不利を感じた方が相手の攻撃を
『逃げた?!』
『アキラ。追いなさい!』
『分かってる!』
一足早く通路へ出たネリアがその先へと向かおうとしたタイミングで、アキラも通路への出入り口付近へ辿り着く。そこでアルファから少々の申し訳のなさも乗った言葉が掛かる。
『アキラ。我慢してね』
その言葉の真意を確かめること無く、アキラの身体が洗練された動作と共に斬撃を放った。
アキラでは決して成し得ない。そんな一撃。強化服をアルファが掌握しているからこそ出来た芸当に、アキラの身体が悲鳴を上げた。全身を駆け巡る激痛に意識が飛び掛けるが、奥歯を噛み潰して前を見る。
その先では両腕を失くしたネリアが体勢を崩しながらも走っていた。倒せていない。アルファのサポートありきで、どうしてと歪んだ感覚の中で問う。
『アルファ!? 何が駄目だったんだ?!』
『強化服をずっと最大出力にしていたのが
『それは良い! 次は!?』
『演算は済んだ。必ず当たるわ』
『頼んだ!』
頼って甘えている状態の中、相手が自分の状態を過失するなんてよくあるだろうという思いと共に、機能限界を迎えた旧世界製の
相手は最早何もない状態。対して自分はCWH対物突撃銃に床に落ちていたナイフを拾い、武装は十分。敵への有効打を持っている、戦闘意欲も十分ある状態。形成は完全にこちらへ傾いた。そう思ってアキラが駆ける。
だが、それは相手も同じだと知ることになった。
アキラから専用弾を撃たれれば、今のネリアにはひとたまりも無い。通路を曲がり、自然とできていた穴などを経由して逃げていたネリアがそこへ着く。
(ごめんなさいね。アキラ……。もっと
ネリアが床を蹴って跳び上がると同時に、飛来した専用弾がネリアの胴体を貫いた。
『クソッ、狙えない!』
アキラは何とかネリアに追い付いたが、そのネリアは既に重装強化服へと搭乗しようとしていた。そこを狙った一撃だったのだが、重装強化服の腕となる。ネリアへの一直線上に腕が伸びて
そのまま笑みを
首元に用意していた接続端子は先程のアキラの銃撃で破損してしまった。ネリアは即座に接触通信回路に切り替える。数瞬のラグ。しかし重装強化服の防御力ならば、CWH対物突撃銃の専用弾の数発程度耐えられる。
これで終わりだと少しばかりの寂寥感を持ったネリアの視界に重装強化服のセンサーが捉えた映像が映った瞬間、失策を悟った。
──
────
CWH対物突撃銃を捨てたアキラが走り始める。左手の中にはナイフが握られていた。そのナイフはネリアがベルトに取り付けていた最後の遺物。一回こっきりの
重装強化服の動作が切り替わったその僅かな隙を、アルファは見逃さない。ここまで走り続けたことで強化服のどの部位が駄目になっているのかは良く調べられた。もう失態はない。
一閃。ただ横に。
数秒後、アキラの視界の中で崩れ落ちていく重装強化服と、内部から出て来たネリアの頭部。それだけが残った。
ネリアの顔には諦観と高揚が混じり合って映っている。
「やっぱり凄いわ。アキラ。ねぇ、私と付き合いましょ? きっと特別になれるわ」
「ぽっと
「……そう、残念。口説くのは、次の機会にしましょうか」
「ああ?」
ネリアの意味深発言に一拍遅れ、ビルが揺れる。
「私の仲間がね? 私の負けを察して逃げちゃったのよ。重装強化服を向かわせるから仲良くなっ、てね」
「
アキラは急いで先程捨てたCWH対物突撃銃の
あと一歩。そのタイミングで、アキラの目の前に重装強化服が現れる。自動操縦であることから動きは鈍い。しかし無手のアキラでは攻撃手段などない。
(……死、────────にたくないっ!!)
絶望的な瞬間、アキラは視界の中が停止したような感覚に襲われ、その世界の中、自分だけがいつも通りに動けているように感じつつ、目の前のCWH対物突撃銃を掴んで勢いよく跳ぶ。
アルファのサポートもあるアキラの動作は洗練されていき、装填済みの弾倉を捨て、たった1発だけ込めてある弾倉を取り出し、装填した。
『良く狙いなさい』
『了解』
狂った時間間隔の中、アルファのサポートによって伸びた弾道予測線を丁寧に標的に合わせる。視界にはアルファのおかげでどこを狙うべきかが分かる。重装強化服の持つ大型の銃が自分に照準を向けつつ連射されても、アキラは一切焦ることなく、その銃弾を遅いと感じながら、引き金を引いた。
それは重装強化服が形成する弾幕の穴を衝くように進み、そのまま着弾。同時に広がる衝撃変換光すら貫いて、重装強化服の中央部分に風穴を生み出した。
「
このタイミングで……、ずっと狙ってたってわけ」
驚愕を伴ったネリアの声と共に、アキラの身体がふらりと揺れ、そして倒れた。
もはやアキラの体の中に回復薬は残っていない。強引に振るった2度の剣閃は両腕を、直後に撃った専用弾と
体内に残る疲労も負傷もそのまま。どうしようもないほどに壊れたアキラの身体では、もうすぐ生命活動を終えてしまう。
「残念」
そのアキラを頭部だけのネリアが見ていた。重装強化服の銃撃によって出来た気流が運よくネリアの頭をそちらへ向けたのだ。
ちょっとばかりの悲しさをもって声を出した。
「次に会えるのは何時になるのかしら……」
その言葉の直後、この場に派遣されてきた都市の防衛隊が姿を現す。
銃口をアキラやネリアへと向け、反撃も自爆も無いと確信し、確保。
そのままアキラとネリアを数名で護送。残った人員でこの場に残る状況証拠の回収を開始した。
・アキラ
:(原作から)ズレてるズレてる! うるせぇ!!勝てばオケー!
・ネリア
:これこのままやっても勝てないわね。仕方ない。お仕事優先だもの。重装強化服に乗ったし私の勝ちね。そっちのナイフも使えるか~。
・ネルゴ
:ネリアが重装強化服を呼ぶか…。色無しの霧が晴れたな。あれで負けるならもう時間もないし退こう。ついでに一緒に散るといい。
・アルファが見えてないのなんで?
:みんなが使える回線をアキラも使っている。同時に昔は誰かが使っていたが今はアキラしか使えない回線もどこかにある。問題は旧領域の回線はそっちもそっちで無数にあるから特定するのに時間が掛かっている。
ネリアが使ったものに類似したものをカヒモも使っていたから回避した。アキラは泣いた。
・ネリアを斬らなかったの?
:外に居た奴に操縦されないよう制御装置を優先して斬った。そこにネリアの頭部が無かったので残った。運が良かったってやつ。