※この作品はR-18です。

Re:ビルドハレム   作:たっぷり

21 / 22
 まるで不健全があるような…


・021 種蒔き(健全)

──♡──

 

(強いっ……!!)

 

 ユミナの前で駆けるアキラは、ユミナが情報収集機器の反応からモンスターの接近に気付くよりもずっと早くその存在を捉え、その上でユミナが止まらずに済むよう両手に握るAAH突撃銃を素早く構えて連射。即座に撃破していく。

 

 その反応がたとえ群れであっても然したる変化はない。ユミナが手を出すことなくその周辺の敵性反応は尽きていく。

 

(装備性能差があるってことは分かる……、でもそれ以上に技量が凄い!)

 

 ユミナはカツヤと共にドランカムの入党試験を受けてハンターとなった。それが約1年と半年ほど前。それからハンターとして常識的な知識や強化服を始めとした装備などを与えられ、東部でハンターをする大変さは身に染みている。

 

 アキラの着ている強化服へと視線を向けるユミナが思考を深めていく。

 

(……この強化服、前は着てなかった。スラムが危険なところっていうのはアイリからたくさん聞いた。そんな場所に装備を疎かにして行くような人には見えないし、その時には無かったんだと思うけど…。

 ……っていうことは、この強化服は最近手に入れたってこと。それでこんな動きが出来るっていうの!? それだけ制御装置が凄いだけ? ……ううん、きっと違う。勘だけど、そんな気がする)

 

 ユミナもドランカムから強化服を支給された当初は全くと言っていいほど、真面に動けなかった。苦い記憶なだけに今も鮮明に思い出せる。

 

 早く動こうとすれば予想以上の速度が出てこける。それだけならばまだマシで、腕や脚などを下手にぶつけて骨が折れた者も居た。

 

 そこから徒党の作成した教育手順に則って、徐々に慣れていったのだ。

 

 強化服とはそういうものであり、突然別の強化服に変えた場合、その装備の制御装置に自分の癖を覚えさせ、同時に強化服の機能を自分の感覚に合わせるという地道な作業が必要となる。ユミナにはそれがたった数週間程度で終わる事とは思えなかった。

 

 だが、現実として、ユミナの目の前を走るアキラの動きは自分の動きよりも精細で鋭く、ただ速い。

 

 モンスターの発見、撃破までの流れが非常にスムーズで、ユミナの出番など一切皆無と言わんばかりに。

 

(この人。多分だけど強化服が無くても相当強い……っ! 

 …………良かった。あの時カツヤを止められて、この人の激情を抑えられて、本当に……)

 

 ユミナは以前にルシアの件でアキラと揉めた際に、アキラの提案で何とか穏便な形で済みそうな話をカツヤがぶち壊しにしてしまったことを思い出した。濃密な殺意が落ち着いたからと迂闊なことを言ったカツヤを殴り飛ばすことで、ギリギリアキラの殺意が行動に移る前に再度鎮静化させることに成功したが、殺し合いに発展するところだったのだ。

 

 それを避けられてよかったと心の底から安堵するのと同時に、少しの心配事が脳裏を過ぎる。

 

(それだけ強い人が味方なのは頼もしいけれど、カツヤと会わせて大丈夫かな……。気を付けないと)

 

 また何かあったら死ぬ気で仲裁しようと、ユミナは密かに決意を固めていた。

 

 そして思考の渦の中にいた所為で、ユミナは遺跡内が危機的状況であることを、その認識を薄れさせてしまっていた。自分が戦わずに済んでいたことが原因か、アキラの戦闘に一切の乱れが無いことから観客側に回っていたことが原因か。

 

 他にも原因はあるのだろう。しかし自分を先導する様に視線の先で駆ける少年の背が頼もしいからと言えど、現在地は未発見の遺跡という危険性の測れない場所であることに変わりはない。

 

 油断か、慢心か、怠慢か。ユミナは旧世界製の建造物の耐久力を過信し過ぎていた。

 

 突如として遺跡中が揺れ、壁や床、天井にヒビが走り瓦礫が雪崩と化して崩れ落ちる。

 

 ちょうど、ユミナの真上から。

 

 音のした方向へユミナは顔を向け、視界一杯の瓦礫の量に、ユミナは思考が停止した。

 

 範囲は広く、避けられない。それがユミナの勘が導き出した答えだった。

 

 ──

 ────

 

「うわぁ、危ねぇー」

 

「……っえ?」

 

 ユミナは無傷で助かった。地震と間違えるほどの揺れに脳内が疑問に埋め尽くされたところへの、天井の崩落。

 

 ユミナが万全ならば回避できただろう。情報収集機器を確認していれば、アキラという外部の安心材料が無ければ。だが全てたらればであり、アキラが居なければユミナは今頃もっと前の地点でモンスターに追い詰められているだけだ。

 

 全力で先導し続けてくれているアキラへの文句などは無い。

 

 勝手に安心していたのはユミナの方だったのだから。

 

 だが、徐々に戻ってきた思考が現状を認識し始める。

 

 今のユミナは後ろからアキラに抱き留められているような形になっていた。

 

 アキラはアルファから揺れが収まった瞬間にユミナを引き寄せるように指示が出た為、片方のAAH突撃銃を進行方向へと投げてから反転しユミナの下まで疾走。そのままユミナの片腕を掴んで即座に後ろへと勢い良く跳んで事なきを得た。

 

 これはアキラの強化服に搭載されている接地維持機能のおかげで成し得たことだ。足裏で作動するこの機能は、地面との間に力場を発生させることで吸着力を引き上げ使用者をその場に固着することが出来る。

 

 この機能は上手く使用することが出来れば、最高速度で疾走中に鋭角な軌道で俊敏に走ることが可能。それどころか、壁や天井までも足場とすることさえ不可能ではない。

 

 これにより、アキラはユミナよりだいぶ先を走っていたにも拘らず減速も無く逆方向への疾走を可能とさせ、その疾走分の加速力を瞬時に相殺してユミナを危険地帯から脱出させることが出来た。

 

 アキラはユミナからの頼みを受けてから先程までは、アルファに移動方向の指示や索敵の補助は受けていたが、基本的に戦闘などに関してはサポートを入れて貰っていなかった。走っている時、一時的に接地維持機能を作用させる際にも自力で何とかしていたが、一方向へ走るのと逆方向へ駆けるのでは少々使い方が異なる。瞬間的にアルファのサポートが入ったことで何とか間に合ったのだ。

 

 アキラがユミナに目立った外傷が無いことを確認して安堵を覚えていると、視界の端に移るアルファの視線が少しばかり鋭くなっていることに気付く。

 

『アキラ。動かないでね』

 

 同じ方向へ眼を向ければそこには天井の崩落によって出来た穴があった。

 

(……なんだ?)

 

 アキラが視線を向け、そして注視するように目を細めれば、情報収集機器によって解析された取得データ以外の情報が拡張視界として表示された。

 

 そうして見えた機械的な装甲による光の反射にアキラが顔を顰める。

 

(あれって、もしかして……、クモか……? 冗談じゃないぞ、こんなところで……)

 

 アキラからの天井であれば、上階に居る存在からすれば床だ。下方から見えたそれの腹部に当たるであろう場所には戦車のキャタピラのような物まで確認出来た。

 

(通路の幅は良くて数メートル……。原作よりも小さい、か?

 いや、原作での戦闘時は数週間から1、2か月後だったか。その間に数階建ての家屋ぐらいに大きくなるってわけか……。流石に、怖いな……)

 

 内心の恐怖を呼吸を深く静かに行なうことで沈める。ガチャガチャという金属質な音を撒き散らしていたそのモンスターは少しの間、その場に停止していたがアキラ達へ目を向けることなく、そのままゆっくりと去っていった。

 

『なんとかなったわね』

 

『あれさ、ここに来る前にエレナ達がクズスハラ街遺跡で見たことがあるとか言ってたモンスターの同系機か? 気付かれなくて良かった……』

 

『気付いた上で見逃されただけかもしれないわよ?』

 

『怖いこと言うなよ!』

 

『穴が通れるほど広くなかったとか、機械系モンスターだから人間を餌にするのは非効率とか、他の餌が近くを通っただけで後でこっちに来るとか考えられるわね』

 

『やめてくれ……っ!』

 

「あ、あの~、アキラ……?」

 

 アルファの例え話に背筋を冷やしていたアキラは耳に入って来た声に気付き、自分の腕の中にいるユミナへと目を向ける。

 

「どうしたんだ?」

 

「い、いやー。いつまでこの状態なのかなーって……」

 

 アキラはそう言われて「推定タンクランチュラがどこかへ行くまで動かないようにしているだけだった」と思い出してユミナを開放する。

 

「……えっと、助けてくれてありがとう」

 

「どういたしまして。……は後にするか。まだ見付けてないし」

 

「そっ、そうよね! 急ぎましょう!!」

 

 アキラはユミナの顔が真っ赤に染まっていることに気付かない素振りのまま、再度カツヤ捜索へと走り出す。

 

 その最中、他のハンター達に話を聞いたりして目的地を逐次狭めていく。アキラが最初にヨノズカ駅遺跡に作成した地図は最下層の駅のホーム以外ならばある程度作成されており、それを頼りにしていた。

 

 そしてカツヤらしき人物が駅のホームに現れた旧世界の立体映像の下まで行った可能性があるという証言を得る。

 

(この遺跡、薬局とか無い所為で回復薬も手に入らないしカツヤの接続は原作通り途切れるのかな?

 間に合わなかったらどうなるんだろうか。トガミの慢心が治らず若手側が全滅とかか? 流石に笑えるが)

 

 アキラは自分たちが失敗した場合を考察しながらも、走る速度を緩めたり、移動方向を間違えたりなどはしない。まだまだカツヤには活躍してもらう必要がある為、見殺しは不利益だけが残る。

 

 見ていて不快であっても、こちらから関わりに行かなければ今後関わることは片手の指で済むはず。その思いでアキラはユミナと共に最下層にある駅のホームへと向かった。

 

──♡──

 

「疲れたぁ……」

 

『本当に、色々あったわね』

 

 クガマヤマ都市も夜の帳が下りて人口の光が多くなった時間帯、アキラはヨノズカ駅遺跡で溜め込んだ疲労を癒すためにたっぷりの湯に身体を浸からせていた。

 

 ──

 ────

 

 蜘蛛型の機械系モンスターに遭遇したこと以外に、特段原作から外れることなく進んだのだ。アキラもカツヤと殺し合うことも無く済んで、僅かに安堵を浮かべる。

 

 勿論カツヤは生還したのだが、ドランカムは手に入れた未発見の遺跡へは事務派閥の若手ハンター達、それもA班と呼ばれる比較的経済的に貧していない場所からの出身者で構成された部隊だけを派遣した為、数は最低限で練度も低い。

 

 作業中に全方向から集まってくる大量のモンスター。そのモンスター達によって、自分たちよりも遅く集まって来たハンター達が襲われ応戦。飛び交う怒号。周囲を囲うようにいたハンター達を抜けてくる少なくないモンスターの群れ。

 

 他者からの悪意に晒された経験も、それに対応したことも無い彼らでは、それら不意の事態への対処が遅れることとなった。

 

 突如として周囲から集まるモンスターの群れ。地上に逃げ道はないとして、開いたヨノズカ駅遺跡への逃走。しかし、そこへ追い打ちをかけるかの如く発生した最下層のトンネルの開口と、その先から合流したモンスターの波。外部からの接触によって起動した駅の管理人格が、侵入者排除のために出動させた大量の警備機械。

 

 地上の防衛が叶わないと判断した少年少女らは地下での籠城を迫られた。モンスターとの戦闘による負傷者も多く、地上部分に残した車両との通信が切れたことにより、都市との連絡も地上が安全かも分からない状態で、なにより殿(しんがり)を務めたカツヤが疲労困憊で倒れたことが大きい。

 

 数時間後、カツヤが起きた時には事態は色々と変化しており、その調査と地上の確認に向かったチームにユミナが参加したと聞いたカツヤは無理を通し、単独で地下遺跡の中を、どこにいるかも分からないユミナを探しに出てしまった。

 

 ひろいヨノズカ駅遺跡の中を、まるで何かに導かれているかの如く、多くの要救助者を助けていく。しかしその先にユミナは居ない。モンスターとの戦闘で危険な者達だけであり、自分の求める存在で無いことから焦り、しかし強情な性格から絶対に救うと心に決めた瞬間、カツヤは何故か最下層に施設されている駅のホームへと向かった。

 

 カツヤには何故そうしたのかなど分からない。遺跡の管理人格ならばこの状況でもどうにか出来るのでは、と考えただけかもしれない。

 

 後で思い返そうと、曖昧な言葉しか出てこない程の無自覚。既に駅の下までやって来たモンスターは足の速かった個体で、カツヤが混乱しているその場へ、足は遅いが強力な個体が群れで押し寄せて来た。

 

 苦戦の果て、何とかアキラとユミナが到着し事なきを得ることに成功。致命的な怪我を負うことも無くその場から離脱できた。

 

 嫌いな相手から救われたという事実にカツヤは胡乱気な言動を取るが、アキラは飄々とする。その態度が更にカツヤの神経を逆撫でてしまうが、遺跡の中で交戦などユミナは望まない。そもそも殺し合いの時点で望んでいないが、とにかくユミナはその間に入って両者を、主にカツヤを止めた。

 

 その後、アキラは取り敢えずの貸しとして使いかけの回復薬を渡したり、地上に脱出後、落盤に巻き込まれたユミナ達を追ったカツヤを含めた3人を救出したりなど、多数の恩を売ることとなる。

 

 ──

 ────

 

(……後は明日遺跡の様子を確認して、過合成スネークが出てくれば問題無しだな。まぁ、都市からしたら周辺の流通が滞るから問題大ありなんだろうけど、オレとしてはそっちの方が良いしな。

 オレの実力を認識させることは出来たし、後は討伐チームに呼ばれれば、か?

 ……遺物を幾つか売って5000万オーラムちょっとのバイクを購入しておくってのも手だよな……。明日にでもアルファと相談するか)

 

 湯船に浸かりつつ、今後の予定を思案し続けるアキラの傍らには、いつも通り微笑みを浮かべる拡張現実上の美女がいた。

 

──♡──

 

 深夜、クガマヤマ都市の外周部。荒野と接しているにも拘らず、都市から経済区域と認定されるその場所に建てられたドランカムの拠点の中では、未だ照明に明かりを灯している者達がいる。

 

 或いは仕事をしている者。或いは装備を整備する者。或いは足らぬ実力を補う為に訓練に明け暮れる者。或いはただただ眠れぬ者など。

 

 その内の眠れぬ者の中にはユミナもいた。

 

 昨日の昼から始まったヨノズカ駅遺跡へ通じる階段の発掘と調査。そして異常事態。昨日は碌に眠れず、今日は死ぬかもしれないという思いを何度も経験したことにより、身体には疲労が強く残っている。

 

 しかし眠れない。寝付けない。疲れているにも拘らず。

 

 どこかおかしいのだろうかという当たり前の疑問も湧いてくるが、都市に帰還した若手ハンターは例外なく一度身体検査を受け、入院必須と診断された者は病院に残されている。拠点へ戻ってきたユミナには入院が必要なほどの異常は見られない。

 

(眠れないなー……)

 

 与えられた個室を出たユミナは何となく廊下を歩き、眠気が強くなることを祈っていた。行く当てなどない。特段どこへ行こうか、などとは決めていないのだから。

 

(──……お風呂、入ろうかな)

 

 どこか熱っぽい。頭ではない。ユミナは無意識に手を動かし、臍のある位置より少しだけ上に置いた。

 

 誰かが見れば空腹なのだろうかと考えるような位置だが、ユミナの脳裏を一瞬だけ、意識出来ない速度でその時の光景が過ぎる。

 

 その場所は、崩落から救われた時にアキラが手を添えていた場所だった。

 

──♡──

 

 翌日、アキラは「原作に倣っといたほうが良いよな」という思いと、「本当に過合成スネークが登場してカツラギが飲まれると面倒」という思いの二つを胸に、そしてついでに遺物を売却する為にヨノズカ駅遺跡近くへときていた。

 

 そこには既に未発見の遺跡という情報が拡散したことで、周囲には多くのハンターと彼らに装備や補充品を売り付けるためにやって来た商売人が車を停めている。

 

 追加で遺跡に潜る者達を邪魔しないためにも、その間隔は結構疎(まば)らだ。その所為で遺跡の入口とされている場所を中心にして広範囲に他人の姿を確認出来る。

 

 その中にカツラギもいた。アキラは遺物を収めた箱を車の荷台に乗せ、そちらへと向かう。

 

 アキラに気付いたカツラギがトレーラーから降りてくる。

 

「よお! アキラ、待ってたぜ!!」

 

「上機嫌そうで良かったよ。こっちは態々遺物を回収した場所にまで来なきゃいけなくなったがな!」

 

「おっと、そう言うなよ……。それだけ高く買い取るからさっ! 前みたいにこの場での査定が難しいやつは預けてくれないか?

 それかお前も潜ってくればいい。その間に査定も済むかもしれないぞ?」

 

「そういう気分じゃない。昨日だって結構危険だったんだ。

 それにこの後も予定が詰まってる。さっさと査定してくれ。この場で買い取ってくれる品を高額で買い取るなら、さっきの話も考える」

 

「そうか。了解だ。任せてくれ!

 もう発見直後っていうボーナスタイムも終わって、持ち込まれる遺物も結構しょぼいもんが増えて来たからな。手付かず状態のヨノズカ駅遺跡から手に入れた遺物だ。

 期待させてもらうぜ?」

 

「あぁ、頑張ってくれ」

 

 アキラは自分の車両から降ろされ、カツラギの商売人仲間から鑑定を受ける遺物たちを一瞥した後、カツラギのトレーラーへと足を踏み入れる。

 

『アキラ、目を離すような真似して良かったの? 懐に入れる人が出ても可笑しくは無いのよ?」

 

『そんな奴がいたら撃って終わりだ。それにダリスが油汗流しながら監視してくれてるみたいだからな。他にも数人ハンターが警備についてる状況でそんな真似したら信用はガタ落ち。今後クガマヤマ都市で商売なんて出来なくなるだろうしな。

 ……そういやエリオとかもいたな。シェリルのところの奴が数人ぐらいか?』

 

 アキラは先ほどトレーラーの周りで銃を持って周囲に警戒を向けている少年たちをシェリルの拠点で見たことがあった。名前までは憶えていないが、エリオと通信している辺りからどこの所属かは推察可能だ。

 

『シェリルの徒党も、大分おおきくなってきたってことでしょうね。エリオだけだとしても強化服を着ていたり、商売人が離れの警備として雇う程度には信用を得た。

 これなら将来的にアキラへ還元される可能性は少なくないわ』

 

『アルファからもお墨付きを貰うか……。やっぱシェリルを頭に置いて正解だったな』

 

『それ以外に理由があるのも追及した方が良いかしら?』

 

『ノーコメントで』

 

 アキラは査定が終了した遺物をカツラギから見せて貰いながら、残りが済むのを待つ。カツラギのところから1000万オーラム購入するのなら、更に買い取り額を勉強するという口車に乗せられてやるつもりで商品棚を見て回るが、アキラの欲しい物はあまり無い。

 

 銃などはシズカの店で買う予定で、バイクなどの車両が置いてあるわけでも無し。精々が少々値の張るバックパックぐらいであり、それを購入したとしても半分にも満たない。

 

 カツラギのところに報告に来たレビンという男がアキラを見て「げっ……」という顔をし、その理由をアキラに問うカツラギ。正直に答えられた分、その内容にカツラギは怒り心頭になる。

 

 異常事態に陥った遺跡から無事脱出したハンターだと聞いていたが、その実態は他のハンターに救助して貰うまで立て籠もるしかなかったハンターだった。それを雇うのに高額を求められたのだ。未発見の遺跡から脱出できるハンター達という勘違いを起こさせる紹介を、仲介業者にやられたカツラギはそれでもアキラに当たり散らすことはしない。

 

 レビン達はどうでも良いが、アキラは上客の部類だ。それに、アキラとの縁はシェリルとの縁でもある。カツラギ側から切りたくはない程度には利益が徐々に増えているのだ。考え無しの行動は取らない。

 

 しかし挽回はする必要がある。今回のことで泣き寝入りなどする気のないカツラギは、可能な限りアキラからレビン達を救出した時の情報を聞き出した。

 

 情報料を支払うこととなったが、それを踏まえて合計1200万オーラム。アキラに400万オーラムの回復薬を3つ渡して聞き出した後、カツラギはレビン達の借金を肩代わりする契約を取り付ける。

 

 アキラを含めたエレナ達3人への救出依頼の達成報酬をさっさと払わなければ、モンスターが徘徊するようになった遺跡の中を足手纏いを引き連れながら、人を探せるような実力のハンターと敵対してしまうのだ。殺されるよりはマシだとして、レビン達は5000万オーラムの借金を背負うこととなった。

 

 ──

 ────

 

 アキラが情報端末を見て口座を確認する。そこには1億5000万オーラムという大金が表示されている。

 

 強化服などの装備を一新した際の残金。先日持ち込んだ遺物や今日の遺物の買い取り金額。更にレイナ達に渡した遺物の換金済みの物の分配金。

 

 それらの合計金額である。

 

「なんだよ。結構な大金こさえてんなら俺の店でも色々買ってくれりゃあ良いのによ」

 

「もう買うものは決めてるからな。そっちで買う。

 そもそもさっき回復薬の他に、バックパックやリュックサックを数個買っただろう?」

 

「それでも良くて1500万オーラムじゃねえか。もうちょい金を落としてくれてもいい気がするぜ」

 

「ま、追々だな。シェリルがカツラギのところの商品を高評価してたら変わるかもしれないぞ?」

 

 カツラギの不満気な顔を見ながらアキラは今後の予定を思案しつつ答えていた。

 

 周囲にはシェリルファミリーの構成員が数名おり、アキラがこの数分で大金を稼ぎ、そしてそれを平然と使っている場面を見て恐々としている。自分たちの価値基準では1000万オーラムなど手の届かぬ大金だ。

 

 例え手に入れたとしても金銭感覚が狂って無駄遣いしてしまうか、スラム街の何処かの徒党に無理矢理奪われて終わる。そんな未来しか見えない程に。

 

 少し前までならスラム街の子供という一括りにされていただけの少年だった。そんなアキラが今は商売人が下手に出る必要のある凄腕のハンターとなっている事実に打ちのめされてしまう。実際、先日ヨノズカ駅遺跡までの移動中、そしてその帰りでも、モンスターの咆哮が聞こえてもすぐに銃撃音と共にそれは沈められていた。

 

 彼らは外の様子を見れないようにとトラックの中に詰め込まれていたが、同じく強化服やAAH突撃銃を持っていたエリオは最後尾のトラックの運転席にいたのだ。その時の話からアキラの強さを想像しようとして無理だと悟った。

 

 エリオの主観も混じった話だったが、エリオに対応を任されたモンスターもそうでないモンスターも、一定の距離以内に入った瞬間、アキラに撃ち殺されていたというのだ。

 

 自分たちとは最早、別の存在となったアキラに羨望は抱いても、追い付けると思う者は居ない。

 

 そうしていると、アキラが叫ぶ。

 

「外に居る奴! 全員トレーラーに乗れ!」

 

 その声はシェリルファミリーの構成員だけでなく、他のハンター達や商売人の耳にも届く。

 

「ア、アキラ?! どうしたってんだ!」

 

「嫌なら従わなくても、──……何か出てくる……」

 

 アキラの情報収集機器は1億オーラムの強化服のオプション品であるため、非常に高性能で高機能だ。望遠機能や集音機能は当たり前で、人間の五感を模したセンサー以外にも多くの機能が搭載されている。

 

 その内の幾つかが地面の揺れを捉えた。まだ人が感知するには小さな揺れを。

 

 だがそれが徐々に大きくなっていく。異変に気付いたカツラギが周囲の者達に呼び掛けて逸早くトレーラーへ乗り込み、他の者たちも続く。

 

 そしてアキラの見ている先から、いくつか存在するヨノズカ駅遺跡の入口となっている一つの階段から遺物収集中だったハンターや大量のモンスターが這い出てくる。そしてその直後、巨大な蛇が顔を出した。

 

「でっか……」

 

『アキラが言う日が来るなんてね』

 

『そっちの趣味は無いからな。あっても勝つ自信が……。

 いやそういう話は良いんだよ。なんだあれ』

 

『合食系再構築類。暴食ワニと同じよ』

 

『暴食ワニが色々食べて色々あると、アレになるってことか?』

 

『そうなるわね。ところで、このままここに居ると餌になるわよ?』

 

『そうだな。いい加減移動しよう』

 

 そうしてアキラが車を発進させようとしたところへ、カツラギが護衛をさせようと話し掛けるが、無償奉仕など御免被る、とアキラは切り捨てる。アキラの厳しい視線に根負けしたカツラギは、シェリルに何かしらで協力すると発言。アキラはこれを了承し、徐々に出来ていた車列の最後尾に着いて過合成スネークから逃げるモンスターが先を走る車両に近付かないように銃撃を続けた。

 

 結構な距離を離れたアキラだったが、その割に過合成スネークの大きさが変わっていないと思い、アルファへと問えば、荒野という広さを得た分巨大化しただけだと答えられる。

 

 過合成スネークの起こす地響きに誘き出されたモンスターを食べるその様相は、まさしく捕食者という姿だった。

 

(あれと戦うのか……)

 

 原作よりも強化服の性能は良い。それでもどれだけ離れようともその強大さを見せつけてくる巨大な生物系モンスターの姿に、背筋が冷える。

 

──♡──

 

 カツラギと別れたアキラは、今後のためにとカートリッジフリークへと寄り、取り寄せと弾薬等の購入、その支払いを済ませた後、シェリルの拠点へと向かう。

 

 話は付けたとして、シェリルに遺物の販売所を開いてもらい、先日回収した遺物を高値で売買する計画を話せば、シェリルはすぐにその計画を練り始めた。

 

 即座に計画の骨組みを幾つか建て始めたシェリルを見て、アキラは「これなら原作以上に儲けてくれそうだ」と安堵を覚え、その日はシェリルの拠点で一泊した。





 クソッ! 今回も繋ぎ回(エロ無し)じゃないか!
 というのはおやめくださいお客様。

 健全って書いて健全で終わらすとか…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。