※この作品はR-18です。

Re:ビルドハレム   作:たっぷり

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・009 装備は拡充しました

──◆──

 

 クガマヤマ都市の外周部には基本的にスラム街が形成されている。都市をを囲うようにぐるっと一周、その地域は形成されており、都市からは基本的に関わることはない。

 

 理由は単純で、そこを経済区画と認定するにも介入するにも回っている金銭の量が端た金が過ぎるからだ。更には治安も最悪で、何が原因で死んだのかも分からない死体が見つからない日が無い。

 

 行く意味も介入する意味も基本的に存在しない地域であるため、死体の処理が追い付かなくなった際に死体から新種の細菌が発生し、感染症でも流行しようものなら容赦なく焼夷弾の雨が降る。

 

 そこに住む人々は基本的に人権も無く、経済圏の端っこに何とかしがみついているだけの存在だ。その為、壁の内側に住む人々にとっては何故スラム街などが未だに残っているのかと疑問に思う者も少なくない。

 

 だがそのような者たちは基本的に中流層。さらに上の都市運営に関われる者たちであれば、スラム街を残しておくデメリットよりも、運の要素が強く絡むがメリットの方が大きいのだ。

 

 スラムでの生活。最底辺の暮らしすらままならないからこその飢え。上へ。誰にも舐められず、指図されず、傲岸不遜に振る舞おうと許されるような強さと栄光を望んだ者が、荒野へと、遺跡へと赴き貴重な遺物を入手するかもしれない。そしてその内の大多数が淘汰されつつも、荒野や遺跡の脅威に呑まれなかった者は更なる強さを手にして、比例するように貴重な遺物を持ち帰る。

 

 基本的に伝手など何もないスラム上がりのハンターが遺物を卸すとなれば、近くの都市しかない。

 

 彼ら彼女らの力が回りまわって都市の経済を更に発展させる起爆剤となるかもしれないのだ。

 

 そう易々とは消し飛ばせない。それ相応の理由でもなければ。

 

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 エリオがスラム街に接している荒野へと来ていた。まだまだ朝日が出るには少しばかり早い時間だが、ボスであるシェリルからの指示だ。二つ返事で、はい、と答えてここにいた。

 

 何よりエリオは1人でここに来ている訳ではない。周りには自分と同年代の少年が30人近くいる。全員、一応軽く武装しており、小規模徒党の人員だとすれば、それなりだろう。

 

 彼らがここにいる理由は、都市からの依頼をシェリルが又請けしたからだ。

 

 現在都市の周辺にはモンスターの死骸が大量に放置されている。これは昨日の昼頃から夜遅くまで続いたモンスターの大襲撃の名残だった。

 

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 基本的にクズスハラ街遺跡内に生息するモンスターは遺跡の外には出ない。クズスハラ街遺跡の外周部に生息する大半が生物系モンスターであることと、荒野ではそのモンスターが生存、繁殖する為の餌を見つける労力が釣り合わないからこそだ。何なら荒野から遺跡に来るモンスターの方が多いぐらいで、外に出る理由など禄に無い。

 

 一応例外となるモンスターも現れたりするが、それは極僅か。群れとなる前に共食いなどで数は減るし、例外というものは万に一つ程度の確率だからそう呼ばれるのだ。

 

 つまりは今回の大襲撃は都市としても予想外。一応慎重な人物がクズスハラ街遺跡の様子がおかしいと憂慮して、都市にいる索敵能力の高いハンター達に依頼を出したりなど予防線を張ったが、それを楽々越してきた。

 

 大型から小型まで数多くのモンスターの対処はその人数では不可能で、都市も防衛隊を派遣したのは事が発覚してから幾分か遅れたあとだ。

 

 そして都市に被害を出しやすいモンスターと言えば基本的に大型になる。大きいモノから順に討伐対象としたため、小型が荒野を抜けて都市近郊まで接近してきた。

 

 そしてそれらに対しても都市は手を打っている。クガマヤマ都市に拠点を置くハンターの中から腕に覚えのある者は前線へと打って不在だが、それでもそこそこのハンターぐらいなら幾らでもいるのだ。彼らに依頼を出す形で一種の防壁とした。

 

 彼らも急な依頼であった為、死者も出た。負傷者であれば更に多数。

 

 流石に殺し切ったモンスターの死骸をどうこうするような気力はない。都市近郊の荒野を埋めるほどの量だ。小型であっても運ぶ気など起きず、そのまま放置されていた。

 

 しかしこのままではモンスターの死骸から感染症が発生する可能性もある。処理するにも数が数であるため、ハンターオフィスの職員だけでは手が足りない。

 

 そこでハンターオフィスはネットに依頼を掲載した。モンスターとの戦闘よりも安価だが報酬もある。何より死骸だ。安全性は段違いだということで、飛び付く者は少なくなかった。

 

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 ────

 

「……えーっと? えっ!? これ、食用になんのか!?」

 

 ぐちゃぐちゃになった生物系モンスターの死骸を貸し出された端末越しに見て、食用のコンテナに放り込むよう指示が出る。それに少年が顔を引き攣らせた。

 

「良いから運ぶぞ。こいつが食用なら運ぶだけで2000オーラム。そこから色々引かれるだろうが、それでも俺たちが一日ずっと屑鉄集めしたって、まずそんな額(がく)にはなんねぇんだぞ?」

 

「まぁ、それはそうなんだけどな? おれ、こんなの食ってたのかなって」

 

「何の話だよ」

 

「あの都市の配給食だよ。一種の実験場みたいに怪しい肉とか野菜とかが混ざってるって噂。事実だと思うか?」

 

「知らねー。食えるだけマシだろ。最近は徒党の方でも夕食ぐらいは出るんだし、心配ならそっちで食えばいんじゃね?」

 

「えー……」

 

 会話が助長し始めた少年たちが後ろから怒鳴られる。エリオの声だ。

 

「おい! 喋るなら休憩時間にでもしろ! 今は働け! ボスの顔に泥を塗る気か!?」

 

「すっ、スマン!」

 

「わかった! 運ぶ! 今、運ぶから!」

 

 そう言ってせこせこ運んでいく少年たちの後姿を見て、彼等のまとめ役とされたエリオが大きく溜め息を吐く。他の場所では強化服を着ているハンターや、身体強化拡張者が軽々と数体纏めて持っていくのだ。それを見ると、確かにやる気も削がれるだろう。それでも数を用意したことで同程度の範囲を引き受けることが出来ているのだ。その範囲内のモンスターを回収すれば今まで稼いだことも無いような額になるはずだと、エリオは確信している。

 

 成功すれば幹部候補から、候(・)補(・)という二文字が外せるはずだ。先日一足早く幹部に任命され、更にはシェリルの補佐という立場にも就いたアリシアに追い付く為にも、エリオは頑張っていた。

 

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 ────

 

 都市近辺の荒野に転がる死骸の回収。この依頼を受けているのはダリスだ。

 

 昨日の大襲撃によって多くのハンターが負傷し、一時的にハンター稼業を休業する者が出た所為でカツラギの店に来るハンターの数が減少する見込みとなった。そうなると自分が護衛として働く必要性が減り、必然、給料が減る。それを解消する為に探した依頼の中で丁度いい物は無いだろうかと探していた時、夜も更けた頃シェリルから連絡が入ったのだ。

 

 急なことだったが、相手が相手。特に気にすることも無く応じる。そしてシェリルから提案された依頼はダリスにとって丁度良かった。護衛から外れると言っても余り遠くまで遠出する訳にもいかない。しかし都市近郊では汎用討伐も今は無意味だ。でも金は欲しい。

 

 ダリスはシェリルとの相談の後、シェリルのところの構成員を労働力として派遣する代わりに相応の報酬を、ダリスはその労働力を使って1人だけでは請け負えない範囲を担当できる。

 

 双方の同意が済んだ時点で一応の契約書を作成し、そして数時間後、朝になった。

 

 ダリスの視線の先では数人チームで別れ、少年たちがモンスターの死骸を運んでいる。彼らは生身に最低限の防護服も着ていない状態。少なくとも荒野に出るような恰好ではないのだが、怖がっていたのは最初だけ。シェリルから激励の言葉を預かっていると、エリオからソレを聞かされた瞬間、少年たちがやる気で満ちる。

 

 ダリスはそれを見て、「よく躾けてるな……」と内心で呟いた。が、流石に口には出さずに大まかな指示と、都市から配給された情報端末と同期させた端末を配って自分は監視に回る。

 

 本来ならば自分1人で担当する筈だった。そうなるとやはりその範囲はそれ相応に狭くなるのだが、シェリルから30人も送られてきたのだ。それを見たハンターオフィスの職員もそれ相応の範囲をダリスを筆頭としたチームに与え、結果として結構な広範囲を得られた。

 

(これなら日暮れには終わる。無機有機混合系の奴も多いはずだし、いい酒代になりそうだ)

 

 台車付きの車両でここまで来ているので、数人ずつ休憩に回しながらダリスはゆっくりしていた。範囲を侵犯してくる奴がいれば自分が対処しなければならないからだ。最大限穏便に済ませるつもりだが、相手はハンター。そうならない時は多々ある。ダリスは気を緩めることなく周囲へ視線を巡らせていた。

 

──◆──

 

 休憩時間になったエリオが幹部候補として支給されている情報端末を使ってアリシアと雑談していた。

 

「こっちは順調に進んでるよ。最初はみんな怖がってたけどな……」

 

「そう? それなら良かった。ボスから昨日のことを聞かされたからちょっと心配だったの」

 

「なにを聞いたんだ?」

 

「アキラさん。昨日、泊っていったでしょ?」

 

「ああ。日が変わる前に来たんだっけ? 俺は早めに寝たから見てないけど」

 

「それで寝る前にボスがアキラさんからあの時間に来た理由を聞いたらしいんだけど、その……、ね。一軒家を潰せるぐらい大きい足を持った戦車みたいなモンスターと戦ったらしくて……」

 

「……逃げたって訳じゃ、ないん、……だよな?」

 

「拠点の駐輪場にバイクがあるんだけど、それが依頼の報酬の一部になったとか」

 

「ああ……、触るなって言われたあれか。あれで一部って……、結構高そうに見えたんだけど……。いや、それだけの成果を稼いできたってことなのか? ……やっぱり、凄いな」

 

「そうね。そんな人が徒党の後ろ盾をしてくれているんだから、有り難いことだわ。……まぁ、形だけなんだけど」

 

「そうだな。俺たちじゃなくてボスの……、だしな。頼りっぱなしじゃ居られないよな……っ!」

 

 エリオの活力に満ちた声を聞いたアリシアから疑問が漏れる。

 

「もう戻るの?」

 

「ああ! しっかり稼いで帰るよ!」

 

「そう……。でも安全第一。無事に戻って来てね?」

 

 チュッ、っという音がエリオの耳朶を叩いたあと、通話が切れた。

 

 エリオとしてはそれに反応したかったが、自分から通話を切り上げたようなものなので折り返すのも難しい。だが、応援されたのには違いないので、エリオは頬を赤く染めながらも1人休憩を切り上げて死骸回収へと戻っていった。

 

 その様子を見ていた同年代の少年たちは、「この彼女持ちがよぉ……」と内心毒づいていたが、先日アキラから言われたことを思い出す。「シェリルは行動した。お前らは?」という言葉を。何もしていない状態で何かを得られることはないのだとどこか納得気に、今は働こうとエリオのあとに続いた。

 

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 ────

 

 情報端末へ微笑みを向けていたアリシアが、通話の切れたソレを横へ置く。そしてそのまま再度チュッっと口づけをする。何に? 当然、ナニにだ。

 

 エリオの休憩時間に通話すると約束していたが、それとは別にボスであるシェリルからの命令で、アキラを起こしに来た。普通に起こせばいいのだが、室内に香る僅かなアキラの匂いを嗅いだアリシアが少々我慢できなくなったがゆえの行動に出てしまったのだ。

 

 足側から布団の中に潜ったアリシアがアキラの股座に顔を埋(うず)め、再度口付けする。愛(いと)おしそうに。敬うように。

 

 アキラが起きるまで続けてしまった結果、アキラの主砲は見事なまでに対空準備に入っており、どうにかする必要が出た。そのままアキラはベッドに腰をかけ、アリシアは床で膝立ちに。何を言われるまでもなく、アリシアは自らの上半身を晒し、アキラの主砲へと自分の胸を使って「浅ましくてすみません」と謝罪と贖罪を開始した。

 

 頭上から感じる嗜虐的な視線を嬉しく感じつつも、アリシアは雄の苛立ちをしっかりと受け止めた。なみなみと。

 

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 ────

 

 壁掛け時計の短針はそろそろ午前の10時頃を指す。この時間はアキラが昨日寝る前に遅くてもこの時間には起こしてくれとシェリルへ頼んだ時間だ。本来ならばシェリル自身が起こしに行きたいのだが、現在のシェリルは色々と忙しい。

 

 ダリスとの交渉や荒野へと出した戦闘要員、シジマに売ったことで管理範囲を抑えれたがそれでも広い縄張りの統治。

 

 カツラギとの交渉で手に入れた物資の中には情報端末も入っていた。シェリルは自分に予備含め二つ、幹部にはそれぞれ一つずつ常備させ、残りは状況に応じて構成員へ支給している。

 

 これのおかげで縄張り内の清掃や巡回に出した構成員からのレスポンスが上がった。上がった分だけ、シェリルには出来ることが広がり、着手した方が良いと思ったものをリストアップして、早めに行動した方が良いものは今すぐにでも行動するべきと、自分の時間を削ることになっている。

 

 少々億劫だ。これの所為でアキラに性的なこと一切皆無で抱き枕にされるという夢のような体験も切り上げることになり、今も起こしに行くことが出来ずにいる。

 

 それでもアキラの昨日の活躍を聞いた限り、大金を稼いだのは想像に難(かた)くない。前報酬のバイクだけでも自分たちとは稼ぎが違う。そんなハンターの笠の下にいる対価を支払う為には怠惰には過ごせない。大きな溜め息を吐きそうになりながらも、送られてくる報告に目を通す。

 

 次に何を行なうかは決まっていた。カツラギにも話は通しており、その為の資金もある。シジマとの交渉で手に入れた150万オーラムという大金。しかしシェリルからしてみれば、という話だ。

 

 これをアキラに、2000万オーラムの強化服を着るハンターに渡したところでどの程度喜んでもらえるのか。そう考えた時、効果は薄いだろうと結論が出た。

 

 であればこれを元手に数を増やす。

 

 運が良いのか、アリシアを筆頭にこの徒党にはそれなりに磨けば光る原石とも言える少女達が居る。

 

「……、まぁ、使えるでしょ。笑顔を作る指導と、こっちの声を相手に伝える発声法。……他にも色々あるけど、なによりまずは見た目ね」

 

 人は第一印象が重要になる。逆に言えばその点をクリア出来れば、超短期的な付き合いでしかない状況下では最強の武器に早変わりだ。

 

 まずは石鹸や化粧水などをカツラギを通して購入しようと、タブレット端末に仮予算案を作成しているところにアリシアが入って来る。

 

「アリシア。少し遅いんじゃない? …………?」

 

 この部屋に無条件で入れるのは幹部であり仲(・)間(・)でもあるアリシアぐらい。であれば彼女のはずなのだが、返事がない。どうしたのかと顔を上げれば、そこには少しだけ髪を湿らせたアリシアが立っていた。

 

(……風呂に入らなければならないことをした……、と。……別に良いけど)

 

 自分が仕事に忙殺されている最中、アキラとナニかしてきたということになるその様子に、少しばかりの殺意を抱いたが、それよりも気になったことがある。

 

 返答がない。アリシアが口を開かないのだ。

 

 シェリルが頭上にクエスチョンマークを作っている間に、アリシアが執務机を回ってシェリルの横まで来ると、そのまま頬に両手を添えて、キスをした。

 

(?!?! ……ッ!!)

 

 急なことに驚愕を。しかし口の中に入って来た液体の味を理解した瞬間、シェリルの顔がトロンとした表情に変わる。目は潤い、上気したように顔をほんのりと赤く染めた。

 

 舌を絡め、アキラからの下賜物にお互いの唾液を丁寧にブレンドする。自分の舌の境界線が分からなくなるまで続けたあと、白い橋を作りながらも距離を空(あ)け、示し合わせたようにコクコクと味わうように嚥下(えんげ)する。一滴たりとも無駄にしないため、丁寧に。

 

 一分、たっぷり堪能したシェリルが先程の感情を捨て、判決を下す。

 

「……まぁ、……許すわ」

 

「だって、仲(・)間(・)……でしょ?」

 

「あら、アリシアからは珍しいわね?」

 

「そう? ……そうかもね」

 

 先程までの情欲を表に出していた少女たちの会話とは思えないほど、今は緩やかな空間へと変わった。オンとオフ、そしてその中間をしっかりと切り替えられる少女たちは、今後もこの徒党を率いるに足る素質を開花させていくことだろう。

 

 その少女たちの会話が廊下にも聞こえたところで、アキラが入室する。流石に方向性の違う美少女2人による愛情たっぷりのレズキスを見て我慢するのは身体に悪すぎるため、直視しないようにしていたのだ。

 

 満面の笑みで迎えられたアキラは一応、今日も泊まるかもしれないとだけ残し、二つ返事で了承を貰ったあと、拠点から出ていった。

 

 その際、シジマが装甲車で拠点まで来たが、アキラもシェリルも今更その威嚇行動にどうこう思うことはない。アキラはそのままバイクで下位区画へ向かい、シェリルはシジマを拠点の応接室へ案内した。

 

 それを見ていたシジマは少々軽んじられているのではと思ったが、ここへ来た主目的はアキラの生存確認だ。そしてそのアキラが五体満足であることに内心舌打ちしたのち、シェリルとは近況を交えた雑談をして終了した。

 

 武装した部下を引き連れ威圧しようと一切怯まないシェリルを少々不気味に感じながら、そう上手くはいかないか、とシジマは内心舌打ちし、装甲車に揺られて帰っていった。

 

 なお、応接室での雑談中、室内の匂いはコーヒーの豊潤な匂いが誤魔化していたとか。

 

──◆──

 

 カートリッジフリークの倉庫でアキラがシズカの胸に埋(うず)もれていた。

 

 アキラは強化服を脱いでいる。しかしシズカも強化インナーをはだけさせてその母性を感じさせる柔肌でアキラを包んでいるのだ。

 

「良かったわ。昨日あんなことがあったもの。心配だったの。凄く」

 

「御心配、お掛けしました」

 

 ハンターとして鍛え始めたアキラなら、シズカの素の筋力など体格差はあれども抜け出せる。

 

 だが、アキラはそのまま甘く柔らかな匂いの中でリラックスしていた。心配をかけた事もそうなのだが、彼女には少々失敬な事をしたという過去がある。不可抗力とはいえ、当時のアキラは鍛えるどころか栄養失調だったとはいえ、着ていた衣類がボロくて目の前で破れてしまったとはいえ、だ。

 

 アキラは取り敢えず受け入れる構えだった。

 

 それはそれとして、先手を譲るだけで反攻もする為、最終的な勝者がどっちかは伏せることになるのだが。

 

 ──

 ────

 

 シズカは仕事中なのでコトは早めに終わらせ、お互いが満足しつつ、それぞれの職種へ戻る。アキラはハンターとして更なる装備拡充を。シズカはハンター専用の万屋の店主としてその応対を。

 

 昨日のキャノンインセクトとの戦闘で、アキラはAAH突撃銃の強装弾を大量に使用し、討伐数を荒稼ぎした。砲弾の再装填時など弱点となる場所が多々あり、アルファの操作によりそれを突く形で効率化を計ったりなど。

 

 それでも最後に出て来た大型の個体には強装弾だけでは通用しなかった。装甲の材質は同じでも、単純にその厚さが違い、当てても内部まで到達しない。この点を解決するような銃は無いかと相談すれば、カウンターにCWH対物突撃銃が置かれる。

 

「これ以上AAHに拡張部品を組み込むよりも、こっちの方が安価だし、火力も上になるわ。こっちの銃は色々な銃弾に対応しているから、今アキラが使ってる通常弾や強装弾も撃てる。

 けど基本は汎用徹甲弾の使用を勧めるわ。元々そっちの弾薬での使用を基準にされて製造されてるからね」

 

 アキラはシズカの説明を聞きながら銃の確認をする。

 

 まず持った時点でAAH突撃銃との違いがある。単純に重量が倍以上あるのだ。AAH突撃銃を同じ大きさにしたとしてもこの重量にはならない。

 

『強い弾薬を高威力且つ高速で射出するってことは、反動も大きい。当然それに耐えられる材質を求められるの。

 その辺りを解決しようと試行錯誤された結果生まれたのがAAH突撃銃。製作当初からだったのかは知らないけど、それを上手く使おうと考え続けた結果、元がどう在れAAH突撃銃には汎用性が生まれたの。

 ただし、汎用品(AAH突撃銃)と特化品(CWH対物突撃銃)では単純な比較は出来ないから気を付けなさい』

 

『はき違えるなってことね。了解』

 

 アルファからも少々専門的なアドバイスを貰い、威力が上だから、軽量だからという単一的な理由だけでは、明確な格の差は出来ないのだろうと理解した。

 

 そしてアキラがCWH対物突撃銃の購入を決めたあと、好い加減手に入れるべきだと考えたアキラがシズカに相談する。

 

「情報収集機器?」

 

「はい。強化服や銃よりも優先度は劣りますが、必需品であることに変わりはないですし、好い加減どこかで……、と思いまして。丁度良いかなと。

 シズカさんのチョイスなら信用できますし」

 

 そう言って今しがた購入したばかりのCWH対物突撃銃やAAH突撃銃を見せるアキラ。

 

 シズカが少し思案する。アキラの強化服は別の商売人が渡した物である以上、そこへ相談しに行くべきだと、それが最善の選択だろう、と。自分の店は色々と取り扱っているが、基本は銃器とその弾薬が基本。専門的なところに任せるのがベストだ。

 

 しかし目の前の少年は自分を頼ってくれている。

 

 少しの逡巡のあと、シズカは微笑みを浮かべた。

 

「そこまで言われたら仕方ないわね」

 

 そうして一応アキラの予算を聞いたシズカが少し驚く。CWH対物突撃銃とその弾薬で1000万近く使った後でも2000万オーラムが口座に残っているのだ。

 

 ハンター稼業を再開したのが昨日だというのは聞いた。それまでは強化服の訓練ばかり。宿泊費や弾薬費で口座残高を減らす日々でありながら、これほどの大金があるということはそれだけ昨日の件で稼いだということになる。

 

 呆れ顔を向けることになったが、それでも頭金も貰ったシズカはどうしようかと悩む。受け負ったとは言え専門外なのは変わらない。

 

 頭を悩ませていたところに丁度良い人物が来店した。

 

「いらっしゃいエレナ。サラ」

 

 随分とくたびれた様子の友人たちを迎え入れたシズカは、この2人も巻き込むかと決めた。アキラに命の危機を救って貰った恩もあるのだ。構わないでしょ? と。

 

──◆──

 

 数日後、アキラはヒガラカ住宅街遺跡にいた。




 書きたい戦闘はまだまだ先
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