もう一度サッカー選手に生まれ変わったなら美女も世界一も掴み取りたい! 作:クズ吉
ハーフタイム
ロッカールームの雰囲気はブラジルと同点とは思えない程張り詰めていた。
皆分かっているのだ。
必ず後半にブラジルから前半以上の反撃を食らうことを。
アビーネ監督が後半の方針を話す。
「前半はタイガが中盤に降りた事でリズムが出た。だが、後半ブラジルはもっと本気で来るぞ。ブラジルのプレッシャーを回避するには一人一人が球離れをよくする意識が必要だ。アルゼンチン戦同様綺麗なサッカーじゃなくていい。大事なのはペナルティーエリア内にボールを多く運ぶことだ。後半はユキオとタイガのツートップで戦おう」
後半は背番号9番大杉修人選手に代わって、背番号18番
アビーネ監督は俺の方を見るともう一度話し出した。
「タイガがボールの運び役になるのもいいんだが、後半はもう中盤に降りなくていい。タイガはやはりトップで体を張って、フィニッシュに備えてもらうのが一番だと私は思う」
アビーネ監督からはトップで勝負しろと役割を固定されたな。
まあ長身FWの俺がトップ下のような中盤の役割をやるのが勿体なく感じるのは当然だ。
名古屋アハトではケリーというもう一人の長身FWがいるから、1.5列目、右WG等とある意味俺を遊ばせることが出来ている。
一方日本代表で190cm超えの選手は俺の他にはいない。
自分で言うのもなんだが、長身でフィジカル、スピード、テクニックが揃った俺という存在はゴール期待値がチームの中で最も高いと思う。
だからこそアビーネ監督は俺を最もゴールに近いトップで固定したいのだろう。
半端ない及川選手とツートップを組むのは彼のキープ力を期待してのことかもしれないな。
及川選手がキープして俺が抜け出す。
そんなイメージを及川選手と共有してハーフタイムを終えた。
前半のブラジルから受けたスライディングタックルの影響だろうか。
すこし脚に違和感があるが、交代を申し出るほどではない。
後半必ずリードしてブラジルに勝利だ!
・・・・・・・
ピーッ!
主審が鳴らした笛の音が満員の豊田スポーツアレナに響き渡る!
日本VSブラジル
後半
KICK OFF!
ブラジルボールで始まった。
・・・・・・・
後半5分頃
ブラジルの攻撃。
左サイドで左SBフィニテ・ルウィンがボールを持つ。
右横に来た左SHオクラスとワン・ツーパスを交わし左サイドを突破!
フィニテ・ルウィンはCF目掛けクロスを放つ!
ボンッ!
ボンッ!
このボールを右CB望岡が弾き返す!
トップ下ネウィラウルJrが日本ゴールに背を向けてボールを回収、ボランチにボールを渡す。
ボランチはもう一人のボランチを経由して右SHウィニランにパス!
今日何度目かのウィニランVS左SB中園!
ウィニランが縦にドリブルするのに対し、中園も必死についていく!
ウィニランは中園を抜けず、反対方向に切り返して右SBダミーノにボールを預ける。
ネウィラウルJrがペナルティーエリア前でボールを貰いに行く。
左CH立木VSネウィラウルJr!
ネウィラウルJrは一度静止する。そこから急加速!
カットインだ!
さらにネウィラウルJrはCFとワン・ツーパスを交わすとペナルティーエリアに侵入!
立木も必死についていくがネウィラウルJrの身のこなしが速すぎる!
望岡がカバーに入るものの、ネウィラウルJrはゴール右隅へシュートを放つ!
ボンッ!
パサッ!
GOAL!
日本1-2ブラジル
後半開始早々に失点をしてしまった…
ネウィラウルJrはジャンピングガッツポーズで、鬱憤を晴らすかのように喜んでいる!
ウオオオオ!
ブラジルサポーターも呼応するように熱狂に染まる!
アァ…
日本サポーターからは落胆の声が聞こえる。
「すぐ取り返しましょう!踏ん張りどころですよ!」
俺はチームメイトに掛け声を発する。
1点入れられたくらいでへこたれるようなメンバーではないが、自分にも言い聞かせるように俺は告げた。
・・・・・・・
後半15分頃
引き続き日本はブラジルに押されまくっている状況だ。
だが3点目はなんとか入れられてない。
今はブラジルCBミナンザがボールを持ちビルドアップの場面。
ミナンザから左SBフィニテ・ルウィン、フィニテ・ルウィンからボランチ、ボランチから左SHオクラスへとボールが渡る。
オクラスからトップ下ネウィラウルJrへ、ネウィラウルJrから右SHウィニランへとパスした時!
中園がウィニランからドリブル勝負を仕掛けられる前にボールを奪った!
これは…
カウンターのチャンスだ!
数少ないこの機会、モノにしなければ!
中園は左CF及川に縦パスをつける!
そして及川はターンをしてから、右CFである俺の前のスペースに向かってスルーパス!
来た!理想の形だ!
俺はトップスピードで加速する!
左CBミナンザと並走しボールを追う!
間に合え!間に合え!間に合え!
ミナンザよりも先にボールに触れてGKとの1対1に持っていくんだ!
ブチッ!
痛っ!!!!
突如右脚に激しい痛みが走る!
これは…やばい!
俺はゆっくりと減速していく。
ミナンザに俺は追い抜かされ、ボールは彼の下に回収された。
「はぁ…はぁ…嘘だろ、こんなところで!」
慎重に倒れ込む俺。
それを見てミナンザはボールをピッチ外に出した。
スタジアムがざわめきの声で埋め尽くされ、この空間にいる何万という人の視線が俺に向かっているのを感じた。
今はそれがとても恐ろしかった。
「おい、大丈夫か?」
フィニテ・ルウィンが駆け寄ってきて、心配そうに声をかけてくれるが、俺は首を横に振る。
「大雅!どうした!」
星野選手をはじめとして続々と日本代表選手達も集まってくる。
「多分、肉離れです…すみません肝心な所で…」
「肉離れか…試合はなんとかする!今は自分の心配だけしろ!」
星野選手が真剣な顔で俺に言う。
「そう…ですよね。後は頼みます」
その後俺はチームドクターの肩を貸してもらい、ピッチをあとにした。