もう一度サッカー選手に生まれ変わったなら美女も世界一も掴み取りたい! 作:クズ吉
2014年11月 愛知県
ブラジル代表戦から半月が経った。
俺はこの半月リハビリに励んでいた。
前世でも肉離れは経験しているから冷静に受け止める事が出来ている・・・なんてことはない。
まず日本代表VSブラジル代表の一戦。
俺が怪我で退場した後、ブラジル代表の容赦ない攻撃にあい、日本代表は1-4でブラジルに敗北した。
もっとやれたはずなのに怪我のせいで貴重なブラジル代表戦をフル出場で戦えなかった。
それがとても悔しい。
両親を招待した地元での試合だったということもその悔しさに拍車をかけた。
両親はまた豊田スポーツアレナでの代表戦に招待してくれればいいと俺を慰めてくれたが…
そうじゃないんだよな。
地元である豊田スポーツアレナでブラジル代表と息子が日本代表として戦う。
そんな事はもう二度とないだろう。
その特別な体験を苦い思い出にしてしまった。
それを申し訳なく思う気持ち。
3日間くらいはその思いで一杯だった。
望結や二山夕梨アナウンサーから励ましのLIMEメッセージを貰ったり、茉那が直接家に見舞いに来てくれたりと、気分が少し上昇することもあった。
でもすぐにNリーグが再開され、俺は無力感に苛まれることとなる。
俺がいない名古屋アハトの試合。
それはお世辞にも良いとは言えない内容だった。
第28節広島戦で0-4で敗戦するとその後3戦連続引き分け。
4試合で勝ち点3しか得られなかった。
第27節終了時点で2位以下と4あった勝ち点差も縮められてしまった。
そして…
ピッ、ピッ、ピーッ!
「試合終了!浦和ロート、横浜M・セーラーズに勝利し、勝ち点3を獲得!これで名古屋アハトを抜き2位です!!1位のピエルナ大阪とは勝ち点が同じ!次節第32節のピエルナ大阪との直接対決はどうなることでしょう!」
「くそっ!」
俺は今浦和ロートの試合をテレビで見ているところだ。
画面の中では、赤いユニフォームの選手たちが勝利の歓喜に沸いている。
実況音声で知らされた通り名古屋アハトはピエルナ大阪と浦和ロートに順位を抜かされ、3位になってしまった。
俺は居ても立ってもいられず右脚を見る。
この脚が早く治れば…
「大雅、焦っちゃだめだよー?」
キッチンで晩御飯を作っていた母さんが俺に言う。
「分かってるけど…」
「そう?大雅が中途半端な状態で戻っても何も良いことないからね。今は我慢だよ」
「でも名古屋は3位になっちゃったんだ」
「自分が出来ることだけに集中しないと。残り3節に向けてリハビリ頑張ってるんだから、今はそれで十分だよ」
母さんの言うとおり、俺は第32節清水戦での復帰に向けて調整を続けている。
しかし頭では母さんの言う事を理解できても、気持ちは焦るばかりだった。
「残り3節でまた1位になれるかな」
「そんなの分かんないけど…なってみせて?優勝してみせてよ大雅。お母さんは大雅とお父さんが喜んで帰ってくるの待ってるから」
「・・・珍しいねお母さんがそんな事言うの」
「だって大雅がいつまでもウジウジしてるんだもん。…残り3節じゃもう間に合わないかもしれない。だけど大雅がやる事は変わらないはずだよ。最終節まで優勝の可能性を信じてチームを勝たせるだけ。違う?」
俺はウジウジしてるのか…
確かにそうだな。彼女が言ってることは正しい。
Nリーグ優勝の可能性を信じてチームを勝たせる。
それが俺にできること。やるべきことだ。
それならやってやるさ!
「違わないよ。ごめんお母さんウジウジして…俺、優勝してみせるよ」
もう迷いはなかった。
ただ今は全力で休む!
それだけだ。