もう一度サッカー選手に生まれ変わったなら美女も世界一も掴み取りたい! 作:クズ吉
2015年9月
2018W杯アジア2次予選フィリピン戦から1日経った昨日は移動日だった。
愛知の自宅に戻ってようやく一息、俺がしたのはエゴサーチ。
フィリピン戦でゴールを決めた俺はウキウキと自分の名前をtmitterで検索したのだ。
すると期待に反していつもの称賛の雰囲気とは違う呟きの数々。
『二股』
その文字を見た瞬間俺は察した。
世間に俺の本性がバレてしまったのだと。
バクバクとうるさい心臓の音を聞きながら、さらに情報を探ると今週の週刊性春が俺のスキャンダル記事を掲載することが分かった。
そして今日、今まさに…
「大雅!これ何?今すぐ説明して!」
母さんによってバンッと机の上に置かれた雑誌。そこには…
【W杯得点王二股か?元人気女子アナ妊娠&超人気アイドルとのお家デート!】
そう、書かれていた。
「うーんこれは…」
「待って!その前になんでLIMEも電話も無視したの?!昨日からお父さんとお母さん一杯大雅に連絡したんだよ!?」
「ああ、ごめん。昨日から色んな人から連絡が来て馬鹿みたいに通知が鳴り止まないからスマホの電源切ってる」
「そう…なの。もう!心配したんだからね!お父さんなんて今日何にも分からない状態で職場に行ったんだよ!」
朝一番に俺の自宅にやって来てプンプン怒っている母さん。
どうやら両親にも相当な心配をかけたようだ。
「それで…この記事は?どういうことなの?お母さん怒らないから正直に答えて」
「もう怒ってたけどね。それはそれとしてこの記事は…事実です」
怒るだろうなと半ば諦めて俺は母さんに真実を伝える。
「嘘…嘘でしょ?」
「嘘じゃない」
「こ、この妊娠ってのは?」
「本当。妊娠…5ヶ月くらいだよ」
俺がそう告げると、母さんは呆然としている。
「お母さん?」
「今すぐ…」
「え?」
「今すぐ妊娠させた女性と電話させなさい!」
ほら怒った。
それにしても夕梨さんと母さんが電話?どうなるんだろう。
「いや、それは…」
「大雅!昨日から電話切ってるってことはその人とも連絡取ってないんじゃないの?!」
「そうだけど……!?」
母さんの言葉でハッとした。俺のスマホが鳴り止まないということは、夕梨さんも同じ、いやもっと酷い状況の可能性がある!
俺は急いで机の上に置いてあったスマホの電源を付ける。
電源をつけた途端おびただしい通知報告が目に入る。
まずはスマホの設定からLIMEの通知を切って…
急げ!急げ!
LIMEアプリを開く。トーク画面は…通知でいっぱいだ!
友達欄から夕梨さんの名前を探す。…あった!
夕梨さんとのトーク画面を開くと…
『大雅君!昨日の夜からインターホンが鳴り止まないんです。お願いします電話出てください。』
『大雅君フィリピン戦お疲れ様でした。ぐっすり寝ちゃってますかね?大変な事になってしまいました。お話がしたいです。』
『大雅君インターホンは何とか鳴らないように出来ました。大雅君起きたら連絡ください。』
トーク画面をさらに上に遡ると、夕梨さんから何十件ものメッセージとLIME電話がかかってきた通知が確認できた。
クソっ!俺は一体何をしていたんだ!
すぐにLIME電話をかける。
テテテテテテテテテテンッ♪
テテテテテテテテテテンッ♪
お願いだ早く出てくれ夕梨さん!大丈夫なのか?
テテテテテテテテテテンッ♪
テテテテテテテテテテンッ♪
普段なら何でもないLIMEの呼び出し音が、どこか不気味に聞こえた。
テテテテテテテテテテンッ♪
「はい!大雅君!」
スマホから夕梨さんの声が聞こえた。
「あっ、夕梨さん!大丈夫ですか?!」
「ひとまず…大丈夫…じゃないかもしれません。実は不安で寝れてないんです。あっ、大雅君はもう知ってますか?週刊性春の…」
「はい。昨日知ったんですが、通知がうるさくてスマホを切ってしまっていました。夕梨さんはインターホンが鳴りっぱなしだったんですよね。気付くのが遅れて本当にごめんなさい」
「謝らなくて大丈夫ですよ。大雅君は一昨日試合でしたし、疲れて寝ちゃってたんだろうなって思ってましたから。似たようなものです」
ふふっと笑う夕梨さん。とりあえず取り乱してはいないようで良かった。
「体調の方は…?寝てないということでしたけど、大丈夫ですか?」
「体調は大丈夫ですよー。ひとまず大雅君の声が聞けて安心したので眠くもなってきましたし」
「そうですか。良かったです。今は取り敢えず眠ってください。起きたら一杯お話しましょう。そちらからLIME電話かけてくれたら今度は出るのでゆっくり休んで下さい」
「はい。分かりました。大雅君電話ありがとうございました。お休みなさい」
デロンッ♪
LIME電話が終わった。
「取り敢えず寝てないらしいから寝てもらってから話してもらうけど…いいよね?」
「しょうがないね。代わりにその間はちゃんと!正直に!全部!洗いざらい!2人の事話してもらうからね」
俺の声だけ聞いていた母さんに事情を説明して了承を貰う。
「分かってるよ。ふぅ…」
「ふぅ…じゃないでしょ!もう一人の子は!?連絡しなくていいの?!」
「あっ」
「ねぇ…大雅…お母さんの方が心配で倒れそうなんだけど」
その言葉は真剣味を帯びていて笑えない俺だった。