もう一度サッカー選手に生まれ変わったなら美女も世界一も掴み取りたい! 作:クズ吉
「大雅の考えは分かった。でもさ、大雅はそうやって一生逃げて生きていくの?二山さんもそうだけど、生まれてくる子どもに胸張って自分は父親だって言えるの?」
スキャンダルへの対応について考えたことを母さんに伝えたらそんなことを言われた。
「でも夕梨さんと関係を持った事を正直に話したら、夕梨さんが捕まるかもしれないじゃん」
「そうだね。私は申し訳ないけど、二山さんが捕まっても自業自得だと思うよ。未成年の大雅を誘惑したのは間違いないんだから」
「そうだとしても!夕梨さんのお腹には俺の子供がいるんだ。その子に犯罪者の子供として生まれてほしくないし、夕梨さんが捕まるのも嫌なんだ」
「大雅…だからって世間に対してはぐらかし続けるの?名古屋アハトや日本代表のチームメイトやファンにも?もう1回聞く。あなたはそれで胸を張って生きれるの?」
・・・言葉に詰まる。これは俺が決めなきゃいけない。
「俺は…それでも…逃げる事を選ぶ。どんだけ後ろ指を差されようとも夕梨さんを犯罪者にはしたくない。
俺は…俺はこういう人間だ。ズルい人間なんだよ」
「カッコよくないよ、その生き方」
「元々俺はカッコよくないよ。二人がカッコよく生んでくれただけで生まれる前からこんなもんなんだ」
「ねぇ…なんでそんな事言うの?さっきからもうどうしようもないとか、俺はこういう人間だ、って自分を決めつけるような事言うの?
変わればいいじゃん!変われるよ大雅なら!ズルい人間だかなんだか知らないけど、正々堂々と今からだって生きれる!
大雅はまだ未熟なんだよ。未成年だからしょうがないって世間の人も思ってくれるはず。もうどうしようもないことなんて何一つない!」
違う…そうじゃ…そうじゃないんだ。
俺は人生2回目の男。生きてきた年数で言えば決して未熟とか未成年とか言い訳できない。
俺は一人の男としてこの問題に…夕梨さんと向き合わなきゃならないんだ!
「ごめんお母さん」
「謝ることないよ。私は大雅に胸を張って生きてほしいだけ」
俺が謝ったことで改心したと思ったのだろうか。少し安心した顔をする母さん。
「いや、俺さっきの作戦実行するよ」
「・・・・・・」
母さんは沈黙した。そして長い間の後に…
「病院行こっか大雅」
「え?」
「大雅は絶対こんな子じゃなかった。4股なんてしないし、周りの人に誠実な子だったの!
二山さん…二山夕梨に洗脳でもされてしまったんだわ」
母さんは何を言ってるんだ?
「お母さん!俺洗脳なんかされてない!俺は」
「大丈夫、大雅。取り敢えずお父さんにしばらく大雅を休養させるよう、名古屋アハトに言ってもらうから」
「!?いや待って今週末は広島戦だし、アジアCLだって…」
「今は何も考えないほうがいいよ。日本代表の事も名古屋アハトの事も。もしかしたらプレッシャーから来るものかもしれないし…」
その後俺は精神科の病院に連れて行かれた。
俺は断固拒否していたのだが、母さんが泣き出してわけのわからないことを言い出したので仕方なく。
精神科では母さんの希望で、脳に異常がないかMRIで精密検査をしたが、異常はなかった。
医者の先生の診察では母さんが俺がいかに普段真面目か、誠実か、優しい子かなどを説いた。
その後に4股!避妊なしの末に妊娠!今日初めて怒鳴られた!などと、今日俺と話した断片的な情報をぺちゃくちゃと話してしまった。
先生もその話には大層驚いて、終いには双極性障害の疑いがあるとか言い出した。
双極性障害とは気分に波がある病気で、躁状態と呼ばれるハイテンションな時に、性に奔放になる事もある病気らしい。
最終的な結論は1ヶ月程仕事を休んで経過観察をしたほうがいいとのこと。
母さんは「やっぱり病気だったんだよ!」と言って病院を出てすぐに父さんに連絡した。
その数十分後に父さんから「1ヶ月の休養、承認されたよ。今日の夜から実家に戻っておいで。ゆっくり話そう」とLIMEメッセージがきた。
なんだか俺の意思に反して物事がどんどん進んでいく。
俺は絶対に病気なんかじゃないのに!