もう一度サッカー選手に生まれ変わったなら美女も世界一も掴み取りたい! 作:クズ吉
「こんばんは二山夕梨です」
「クラウチ大雅の父デス」
「クラウチ大雅の母です」
現在俺のスマホを机の上に置きスピーカー設定にして、夕梨さんとLIME電話をしている。
「「「・・・・・・・」」」
「何から話そうか」
3人ともお見合いのように話題を誰も振らない。なので俺から話すことにした。
「そうだ。夕梨さん体調は大丈夫ですか?」
「はい。とりあえずぐっすり眠れてご飯もしっかり食べれましたので、大丈夫です」
「今日は外出てないですか?」
「はい。多分外に出たら報道陣に囲まれて身動きが取れないと思います。両親に助けを求めて深夜とか早朝に出てみようとは思っていますが」
インターホンが鳴りっぱなしだったって事は、少なからず報道陣が夕梨さんの家に詰めかけてることが推測される。
まだ妊娠5ヶ月程度とはいえ、身重の夕梨さんが一人で外に出るのは危険だろう。
「夕梨さんのご両親には僕のこと話してありますか?」
「いえ、妊娠したことは以前伝えたんですが、大雅君の事は…父親はいないと言ったら変な誤解を与えたようで…優しくはしてくれてるのですが…」
「ご両親にはちゃんと伝えなさいよ!」
母さんが突然大きな声で発言した。
「リホ、落ち着いて」
父さんが母さんをなだめる。
「そ、そうね。ごめんなさい。でも二山さん?ご両親の所には報道陣は行ってないの?」
「それが行ってるみたいで…両親からは何か知らないかって聞かれてるんですけど…」
「ですけど?」
「あの…説明するのが怖くてまだ説明出来てません。ごめんなさい」
なんと…夕梨さんのご両親は何も事情を知らないまま、報道陣のアタックを受け続けていることになるのか。
それは…マズイな。
「だからさっさと説明しなさいよ!ご両親が何も知らないままじゃ可哀想でしょ!」
「リホ…」
母さんが熱くなってまた父さんがなだめる。
「それはそうなんですが…」
「取り敢えず先にご両親をLIMEで自宅に呼んだら?ちゃんと直接話さなきゃいけないことよこれは!」
「…はい、呼びます…」
その後一旦LIME電話を終えて、夕梨さんが自宅にご両親を呼ぶLIMEメッセージを送信する時間を作った。
そして再び夕梨さんとLIME電話をつなぐ。
「まず二山さん、ご両親が来る前に話しておきたい事があるの」
今度は母さんが話を切り出した。
「はい…」
「なんで避妊しなかったの?」
「それは…」
夕梨さんは沈黙した。
「二山夕梨さん?答えてください」
母さんが淡々と俺のスマホに向かって話す。
「…大雅君の赤ちゃんが欲しかったからです」
「大雅が未成年だってこと分かってたよね?」
「はい…分かってました」
「じゃあ今の状況になるってこと分からなかった?大雅のサッカー選手としてのキャリアもあなた達2人の名誉も傷つくって分からなかったの!?」
今度は怒った声で母さんは告げた。もう父さんも止めなかった。
「すみません…」
「すみませんじゃなくて分からなかったのか聞いてるの!」
「私は…大雅君の赤ちゃんを産めば幸せになれるって信じてました。そのことしか頭になかったです」
「でもあなた大雅に父親はいないことにするからって言ったそうじゃない。ちゃんと世間にバレた時のことを考えてたんじゃないの?」
母さんは問い詰める。
「・・・・・・・」
夕梨さんは黙る。
「出生届の父親欄に大雅の名前を書かなければ確かに公的に父親はいないことになるかもしれない。
大雅が考えるように警察に協力しなければ、2人の関係は証明出来ないのかもしれない。
でもさ報道ニュースは?二山さん、あなたは元テレビ局のアナウンサーでしょ?
あなたが未成年に手を出して報道される事を想定してなかったなんて言っても信じられないのだけど」
「・・・・・・・」
夕梨さんは黙ったままだ。
「あなたはこうなること、週刊誌に報道されて広く知られること、本当は想定してたんじゃないの?」
「・・・・・・・」
「早く答えて!」
「想定…してました」
夕梨…さん?
「最初の質問に戻るね。あなたはこうなることを想定していた。それでも避妊はしなかった。なんで避妊しなかったの?」
「うっ…くっ…誰よりも早く大雅君との子供が欲しかったからです…」
夕梨さんは泣いているのだろうか。くぐもった声でそう言った。
「皆に分かるように説明出来る?」
今度は優しい声で母さんは夕梨さんに聞いた。
「はい…突拍子もないことを言いますが、私は昔から王子様がいるって信じていました。絵本に出てくるようなカッコいい王子様と自分は結ばれるんだってそう信じていたんです。
20代も半ばでその夢を諦めかけていたところに現れたのが大雅君でした。大雅君は優しくて、かっこよくて、女の子からも沢山モテる、王子様みたいな人だと思ったんです。
そして大雅君が私に興味を持ってくれている事が分かった時、この人を逃せば次にはもう王子様は現れないと感じました。
…だから早く王子様と関係を結んだ証が欲しかったんです。その気持ちは大雅君から他にも彼女がいるって聞いてからもっと強まりました。
私は…結局は大雅君のキャリアよりも、自分と大雅君の名誉よりも、自分の夢を優先してしまったんだと思います。
ごめんなさい。大雅君。私は本当に醜くて幼稚な大人でした。私…本当に最初はあなたと結ばれる事を期待してなかったんです。だけど…うっ…ぐすっ…あなたと触れ合う度に…」
「もういいよ。分かったから」
母さんが夕梨さんが話すのを止めた。
「じゃあこれからどうするかって話なんだけど、大雅はあなたを犯罪者にしたくないし、あなたのお腹にいる子供を犯罪者の子供にしたくないんだって」
「大雅君…うぅ…ごめんなさい…」
「大丈夫だよ夕梨さん。大丈夫だから…」
俺は夕梨さんを精一杯慰める。
「それでね?大雅はこんな事を言ってるんだけど…」
母さんは俺が説明したスキャンダルへの対応を夕梨さんにも話した。
「私はこの作戦には無理があると思う。世間から…警察から逃げ続けるなんて…」
説明の最後に母さんは反対であることを夕梨さんに告げた。それでも…
「やります…私。大雅君が考えてくれた作戦」
夕梨さんはやる気のようだ。
「やるかどうかはご両親とも相談したほうがいい。後でまたあなたのご両親が来た時に一緒に考えましょう」
「はい…」
俺の作戦が採用されるかは、夕梨さんのご両親との話し合いで決まるようだ。
「ところで大雅?弁護士に一任していマスって言い張り続けるのはいいケド、肝心の弁護士はもう目処がついてるノカ?」
父さんが俺に聞いた。
「それは…まだこれからです…」
「「はぁ…」」
両親のため息が揃って聞こえた。