もう一度サッカー選手に生まれ変わったなら美女も世界一も掴み取りたい! 作:クズ吉
試合が始まる前にピッチで広島のボランチでキャプテンの赤嶺選手が話しかけてきた。
「大雅、この試合俺達が勝つ。他のNリーグファン達がどれだけ名古屋を応援しようとも」
赤嶺選手とは2014W杯でチームメイトだったので面識があり、対戦の度に話してくれる。
彼はNリーグ2ステージ制の不合理な大会形式に不満を持つ多くのNリーグファンが、名古屋アハトのチャンピオンシップ優勝を願っていることを知っているようだ。
「俺が名古屋アハトのトップチームに上がってから広島には一度も勝ててませんからね。もちろん勝負は分かりません。
だけど俺達は名古屋アハトのファン・サポーターに喜んでもらうことを第一に考えます。赤嶺さん達もそうでしょう?
今日の試合は純粋にお互いのクラブのために戦う。それでいいんじゃないですか?勝つのは名古屋アハトですけどね」
カッコつけて嘘をついた。
本当はNリーグの未来のために名古屋アハトのファン以外の応援も糧にして、広島を叩き潰してやるつもりでいる。
「そうだな。大雅の言うとおり俺達は広島のために戦うよ。でも俺、記事で見たんだけど、名古屋が広島に最後に勝ったのは2011年らしいぞハハッ」
「えっ?そうなんですか?!」
「じゃあな試合後にまた」
赤嶺選手が衝撃的な事実を言い残して去っていった。
そうか、広島スリーアローズは俺の前世では2012,2013,2015のNリーグチャンピオンになったクラブ。
2012年からは望永隼監督が就任して最盛期を迎えている。
その頃からずっと勝ててないんだな名古屋は。
名古屋アハトの歴史を感じる。俺は…俺達はこのクラブの新たな1ページを描く事ができる。
うん、燃えてきたな逆に。
名古屋アハトの天敵、広島スリーアローズ。
俺達は乗り越えなきゃいけない。
絶対に勝って、なってやるさ!正真正銘の2015Nリーグチャンピオンに!
・・・・・・・・・・
ピーッ!
試合開始の笛が鳴る。
2015Nリーグチャンピオンシップ
決勝第2戦
名古屋アハトVS広島スリーアローズ
KICK OFF!
広島ボールで始まった。
・・・・・・・・・
前半10分頃
3-4-2-1のミラーマッチ。それも守備時5-4-1、攻撃時4-1-5のシステムまで同じ。
堅守速攻を得意とする両チーム。
違いを生み出すのはなんだろうか?
現在、広島の攻撃。
33番右CB篠崎から14番右WBミヒッティにパス。
ミヒッティに相対するのは名古屋11番左WB成田だ。
ミヒッティは9番右シャドードルヴナスにボールを預け、前方へ走り出す!
しかし成田のスピードで抜け出しはさせなかった。
ドルヴナスは一度6番ボランチ赤嶺にボールを渡す。
赤嶺から8番ボランチ望橋、5番中央CB知多、19番左CB嵯峨井とパスを繋ぐ。
そして嵯峨井から27番左WB椎名にボールが渡った時!
椎名は細かいタッチから…カットインで中央へ!
30番左シャドー白河と連携し、ペナルティエリア前まで接近する!
椎名は今度は11番CF酒向とワン・ツーパス!
ボンッ!
しかし酒向のパスは少し長くなり、名古屋2番右CB種口にクリアされる!
このクリアボールは18番CFノグァロディッチの付近へ!
ノグァは近くにいる広島5番中央CB知多よりも先にボールを触る!
そしてポストプレーで味方の上がる時間を作る!
だが、広島8番ボランチ望橋がすぐにノグァのボールを奪おうと向かう!
これは…取られるか?
いや!取られない!サポートに来た名古屋36番左シャドー妻神にボールが渡る!
妻神のドリブルが始まる!
メッティにも例えられるそのドリブルは広島DFを翻弄する!
そして妻神がドリブルで前進する最中、爆速で後ろからポジションを上げる選手…ハヤブサ成田だ!
妻神は広島DFを引きつけた後成田の前のスペースにパスを送る!
ハヤブサ成田のスピードに追いつけるのは…俺しかいない!
俺は急いでゴール前へ向かう!
成田は大きなドリブルで前進すると、マイナスのクロスを上げた!
これは…ノグァがゴール前に走り込んでいる!
スカッ…
しかしノグァのシュートはボールにミートせず…
右サイドを駆け上がっていた俺の下へボールが転がって来た!
すぐさまカットイン!からの…左足ミドルシュート!
ボンッ!
パシッ!
広島1番GK塙のセービング!しかし弾いたボールは…
妻神の足下へ!妻神が落ち着いてシュートを放つ!
ボンッ!
パサッ!
妻神のシュートはゴールネットを勢いよく揺らした。
GOAL!
名古屋1-0広島
ウオオオオ!ワアアアア!
ホーム豊田スポーツアレナが揺れている!
観客が一斉に歓声を上げた!
「よーし!まずは1点!」
「ナイスー!この調子でいこう!」
妻神の下へ集まる名古屋アハトの面々。俺も妻神選手にお祝いの言葉をかける。
「ナイスゴールです妻神さん!」
「大雅のシュートが良かったからだよ。たまたま転がってきた」
妻神選手はそう言って笑ってから観客にガッツポーズを向けた。
それにしてもやっぱり横浜MSからこの選手が来たのはチート級だな。
チート級といえばハヤブサ成田選手のスピードもそうだけど、このコンビが左サイドの攻撃を担ってくれるのはありがたい。
俺も右サイドで存在感を示さないとな。右WBの八木選手とちょっと作戦会議するか。
・・・・・・・・・
前半25分頃
名古屋の攻撃。
31番右ボランチ大瓦から39番右シャドーの俺へと楔のパス!
俺はタメを作ってから19番右WB八木へとボールを預ける。
そして右サイド端に向かって走り出し、八木からパスを呼び込む!
右サイドに張った俺を八木はインナーラップで追い越していく。
俺はそれを囮に中央へ切り込むドリブル!
18番CFノグァロディッチとワン・ツーパスを交わし、ペナルティエリアに侵入!
ここは強引に打とう!
ボンッ!
右サイドペナルティエリア内から対角線上のゴール左隅を狙う!
カンッ!
シュートはポストを叩き…ピッチ内に残っている!
ボンッ!
広島33番右CB篠崎がクリア!このボールは…
ボンッ!
名古屋4番中央CB高尾がヘディングで押し返す!
こぼれ球を拾うのは…広島6番ボランチ赤嶺だ!
「まずい!」
既に前線に走り出している広島FW陣。赤嶺が使う選手は…
9番右シャドードルヴナス!
スルーパスを通された!
ドルヴナスは高尾の脇のスペースをドリブル突破!
名古屋8番ボランチダミスコムがカバーに入るが…
ドルヴナスはペナルティエリア前でカットイン!
シュートを放つ!
ボンッ!
トンッ!
広島11番FW酒向がちょん!と触ってボールの向きを変えた?!
パサッ!
ドルヴナスのシュートに対応しようとしていた名古屋1番GK長嶋は完全に逆を取られた。
ゴール内には確かにボールが入っている。
これは…酒向のゴールか?
「オフ!オフサイド!」
酒向のオフサイドを主張する名古屋DF陣。
しかし副審の旗が上がることはなかった。
GOAL!
名古屋1-1広島
ウオオオオ!
アウェイチームの広島サポーターが大歓声を上げる!
酒向はドルヴナスとハグをしている。
「クソっ!」
俺のシュートが入っていれば…このチーム…広島はカウンターが鋭すぎる!
・・・・・・・
ピッ、ピー!
前半終了の笛が鳴る。
スコアは…
名古屋1-1広島
2戦合計名古屋3-3広島
アウェイ広島で2-2だったので、アウェイゴールの差で今のところ名古屋が優勢だ。
ロッカールームへと戻る。
・・・・・・・・・・・
「後半は形を変える!」
ハーフタイム、二階堂監督は俺達に唐突に告げた。
守備時は5-4-1のまま。変えるのは攻撃時だ。
4-2-1-3。陣形としてはこう。
背番号1GK長嶋
背番号19右SB八木
背番号2右CB種口
背番号4左CB高尾
背番号6左SB堀井
背番号31右ボランチ大瓦
背番号8左ボランチダミスコム
背番号36トップ下妻神
背番号11左WG成田
背番号39右WGクラウチ
背番号18CFノグァロディッチ
5-4-1からの変形の仕方は4-1-5の時よりもシンプルだ。
5-4-1→4-2-1-3の変化
長嶋:GK→変化なし
八木:右WB→右SB
種口:右CB→変化なし
高尾:中央CB→左CB
堀井:左CB→左SB
成田:左WB→左WG
大瓦: 右ボランチ→変化なし
ダミスコム:左ボランチ→変化なし
クラウチ:右シャドー→右WG
妻神:左シャドー→トップ下
ノグァロディッチ:CF→変化なし
「4-2-1-3は4-1-5から前線を5枚から4枚へ、ボランチを1枚から2枚へ変えることで、攻撃から守備への切り替えの不安定さを改善する。
今まで律儀にミラーマッチをやってきたが、やっぱりどこかで違いを生み出さないといけない。
広島からは多くのことを学んだ。ただ…守破離の『離』だな!
俺達には俺達の選手の特徴がある。超攻撃的でも、超守備的でもない最強のサッカー、それを目指し、現状の選手を最大限生かすとすればこのシステムしかない!」
二階堂監督は広島から学んだ可変式3-4-2-1を、名古屋のメンバーに合った新たな形へ昇華したようだ。
「よし、いいか!後半でいつものごとく馬鹿試合を演じるなよ!
2-2で延長戦を戦うならまだいい!3-3になったらアウェイゴールで上回られるからな!
その前にしっかり勝ち切れ!
俺達は今季Nリーグを戦ってきて広島以外の全チームを倒した!
後は広島だけなんだ!広島だけ!彼らを倒すためだけに俺は3-4-2-1を採用した!
そしてぶっつけ本番にはなるが、名古屋アハトの新しいスタイルも見つけた!
断言する!何一つお前たちは広島の選手に負けていない!
あとは噛み合わせ、それだけだ!
さぁ、今季Nリーグで試合に勝った数をもう一度数えようか。29勝だ!
俺達は29回も相手を打ち負かしてきたんだ!記念すべき30回目の勝利を広島から勝ち取ろう!
広島に勝つためにこの1年磨いてきたもの、全部使い果たせ!」
二階堂監督がハーフタイムで最後の演説を行った。
「行くぞ!」
「「オウ!」」
高尾キャプテンの掛け声に名古屋アハトのメンバーが呼応した。
さぁ、後半絶対に勝つぞ!