もう一度サッカー選手に生まれ変わったなら美女も世界一も掴み取りたい! 作:クズ吉
前半35分頃
マデンゼの攻撃。
名古屋は引き続き5-4-1ブロックを敷いて対応している。
俺はディフェンスの動きをしながら考える。
この3-4-2-1の可変システムにおいて辛いところは、守備時に5-4-1に変形しなければならない点だ。
5-4-1は基本的に後ろに重心が行きやすく、いわば「あなたの攻撃を待ってますよ」というフォーメーション。
つまりこの可変システムを採用するということは、本来なら攻め込ませる必要のない互角かそれ以下の相手チームにも攻撃の主導権を渡してしまうリスクがある。
ただしこの戦術、カウンターを発動させるとものすごい威力を発揮する。
とりわけ二階堂監督オリジナルの4-2-1-3への変形は両WGにハヤブサ成田と俺という快速コンビをおく。
ハヤブサ成田といえば2012オリンピックでは、『戦術成田』とも称される神速プレスやカウンターでチームの核を担った男。
その成田と、彼と同等の速さを持つ俺が、攻撃に転じた瞬間に両サイドからミサイルのように発射される。
しかもトップには俺達両WGがクロスを上げたら空中戦で圧倒してくれる、固定砲台のノグァがいる。
さらにトップ下にはぬるぬるドリブルで潤滑油のような働きをしてくれる妻神。
たしかにこの戦術、カウンターの破壊力は抜群だ。
…だが、いくらなんでもロングカウンターに特化しすぎではないだろうか?
俺達は広島スリーアローズのように、後ろでパスを繋いで相手を誘い出す「擬似カウンター」を狙うわけではない。
かといって前線からのフォアチェックでショートカウンターを狙うこともしない。
ただ単純に5-4-1のブロックで自陣深くに引き込んで、奪ったら一気に縦にボールを蹴り出すロングカウンター。
それが俺達の最大の武器である。
武器ではあるが…マデンゼ相手にもこれほど割り切る必要はあったのだろうか。
俺達は「広島を倒す」という目的のためにこの3-4-2-1可変システムを取り入れた。
その広島を倒した今、別のシステムでクラブワールドカップに挑んでもよかったはずだ。
例えば4-3-3で俺とハヤブサ成田が前線から相手DFを追いかけ回すハイプレスをすれば、相手のビルドアップをハメ殺すことが出来るだろう。
だが、二階堂監督は即時撤退のリトリート守備を選手たちに徹底させている。
戦術を落とし込む時間が足りなかったのか、それとも本当にこのシステムが最強だと思っているのか、はたまた別の理由があるのか……。
とにかくそんな疑問を抱かざるを得ないくらいには、マデンゼに押し込まれ続けている。
現在マデンゼはDFライン間でボールを回しているところだ。
左CBから左SBへ、左SBから左SH、左SHは近くに寄ってきたトップ下にボールを預け前方へ走り出す。
左SBがトップ下をインナーラップで追い越しボールをもらう。
左SBは名古屋DFを背負うCFにパス。
CFは周りを囲まれながらも、右SHにボールを落とす。
右SHのミドルシュート!
ボンッ!
このシュートはゴールの枠を捉えられなかった。
・・・・・・・・・
前半40分頃
マデンゼの攻撃。
名古屋の5-4-1の外でマデンゼがボール回しをしている。
そして右CBにボールが渡った時!右CBは名古屋のバイタルエリアに位置取ったトップ下に楔のパス!
トップ下はワンタッチで内側に入っていた右SHにパス。
右SHはカットイン!中央へ切り込む。
しかしそこへボランチダミスコムのチェックが入る。
ガツンッ!
ダミスコムは相手右SHに身体を当てて…
ボールを奪い切る!
来る!
俺は前線に走り出す。
ダミスコムが前を向くがマデンゼの守備への切り替えも早い!
ダミスコムは一度もう一人のボランチ大瓦にパス。
大瓦は…俺がハーフウェイラインを突破する前に、俺の前のスペースにロングフィードを送った!
これは…独走状態か?マデンゼよ、ボールが持てるからといって最終ラインを押し上げすぎだ!
トンッ!トンッ!
ボールに追いつき大きくドリブルする。
首を振って中央を見るとCFのノグァが走っており、マデンゼのDFもアフリカ特有のスプリント能力で猛烈に追いすがっているが…
ここは変にクロスを上げるより一人で行った方が確実だ!
右サイドから斜めにペナルティエリアに侵入する。
相手GKはノグァにパスを出すことを想定してか、じっと飛び出すのを我慢している。
ドンッ!
駆け引きをするまでもなくさっさとシュートを打つ。
パサッ!
ゴールにシュートを突き刺した!
GOAL!
名古屋2-1マデンゼ
ワアアアア!ウオオオオ!キャアアア!
逆転弾に歓喜する長居陸上競技場!
俺はコーナーエリアに向かって膝スライディングタイガーポーズ!
今大会初披露だ!
見てるか世界!
クラブワールドカップは世界何カ国で中継されてるだのなんだのテレビで言ってたよな!
よしよし。2ゴール目ゲットだ。1点目は高さで、2点目は速さで相手を出し抜いた。
3点目も狙ってしまおう!
俺はその後チームメイトにゴールを祝福され、自陣へと戻った。