彼はウィッチ達と世界を救う契約を悪魔と結ぶ カールスラント脱出編 作:ゼロラグ
組織的抵抗虚しく各国連合部隊は敗走を余儀なくされる。
せめてもの抵抗として救える命を救う為決死の救援部隊が組まれた。
そして、彼らは出会う。
これは序章
初めに感じたのは言いようのない気持ち悪さだった。
臓腑を素手で弄られているような不快感。そして、心臓に冷たい釘をこれでもかと打ち付けられているような激痛。脳を数多の虫が蠢いているような錯覚。極めつけは声だ。何とも形容出来ない声が身体全体に響いている。 『壊せ、殺せ』
言い聞かせるように或いは叱りつけるように"ナニカ"が囁く。
『壊せ』
ー煩い
『殺せ』
ー知るか
声に抗い只管否定の言葉を浮かべる。次第に思考が靄のように曖昧になっていく。意識が急速に遠のいていく瞬間、今までとは違うハッキリとした声が聞こえた。
『止まるんじゃねぇぞ』
そこで"自分"の意識は完全に途絶えた。
「…い、おい!」
声が聞こえる。必死に呼びかける男の人の声だ。ズキズキと痛む体を無理矢理起こして辺りを伺う。
何処かの特殊部隊だろうか。フルフェイスのメット(或いはガスマスクか?)を被った何者かが声を掛けてきていた。声色から心配の感情が読み取れる。
「…は…い。」
声を出そうと喉を震わせると口の中に鉄臭い味を感じた。どうやら出血しているらしい。恐らく暫くはまともに話せないだろう。
「本隊、本隊。こちら、特殊救援部隊。負傷者を発見。喉を痛めておりま会話が困難な模様。見た目からの推定により年齢は14〜15の少年であると思われる。
『ネウロイ』発生区域間近の住宅地にいた為『瘴気』の影響が懸念される。指示を。」
目の前の軍人は恐らく耳があると思われる場所に手を当てて何事かを話している。恐らく、上官からの指示待ちだろうか。というより『ネウロイ』とは何ぞや。首を傾げていると軍人は1度首を縦に振ると此方に向き直った。
「ここは危険区域だ。いつ『ネウロイ』の襲撃があるかわからない。すまないが立てそうか?」
真剣な声で軍人がそう尋ねてくる。足に力を入れてみる。痛みはかなりマシになってきている。走るのも何とかなりそうだ。その意図を込めて頷いた。
「よし、本隊までは遠い。近くに俺達の乗ってきたトラックがある。近くにはシェルターがあるから一旦そこに避難しよう。任務の都合で今すぐ離れる訳にはいかないんだ。すまない。」
そう謝罪してくる軍人…さんに手で気にするなと合図を送る。立ち上がり改めて辺りを見ると凄惨な光景だった。煉瓦造りの家が軒並み焼け焦げている。妙な暑さはこれが原因だろう。そして、赤い、恐らく血痕が至る所に。
あれは誰かの腕だろうか。本体の身体は見当たらない。これを先程言っていた『ネウロイ』とやらがやったのだとしたら、恐ろしい。
「そうだ、金属製の物は持っていないか?知ってると思うが『ネウロイ』は金属製の物を取り込もうとしてくる。つまり、奴等の『餌』になるわけだ。」
そう言われ自分の体を探る。ボロボロのシャツと申し訳程度の外套。ズボンも所々破けている。『ネウロイ』とやらの攻撃に巻き込まれたのか?それにしてもー
「あ、そうだ。1番大事な事を忘れていた。君、地面に書くでもいいから名前を教えてくれないか?」
そう、それだ。"僕"の名前はーなんだ?