彼はウィッチ達と世界を救う契約を悪魔と結ぶ カールスラント脱出編 作:ゼロラグ
「名前がわからない?」
「はい。ここが何処で何で此処に居るのかも。何が起きているのかも。全て、判りません。」
ようやく痛みの減った喉を擦りながらありのままの事実を語ると軍人さんは悩んでいるようでこめかみ辺りを手で押さえた。
「うーん。身元を確認出来そうな物…は無さそうだよなぁ。」
僕の方を見て軍人さんは唸る。まぁ、物を持っている感じではないし一応唯一ポケットのあるズボンを探ってみたけれど何も入っていなかった。
「見た感じ『扶桑皇国』出身か?じゃなくともそっち方面だと思うが。まぁ、今は非常事態だ身元不明位問題ないか。」
そう言って納得したのかこめかみから手を離した。
「記憶がないのは大変だろうが今は説明している時間はない。地図やるからそれでなんとかシェルターまで行ってくれ。わかりやすい目印はあるから大丈夫だろ。」
そう言って軍人さんは腰に付けていたポーチから紙を取り出した。あれが地図だろうか。何回か使われているらしく若干よれている。
「気をつけろよ。本当なら護衛の1人でも付けてやりたいが、こっちも人員不足でな。不審な物音や何かしら違和感があれば全力で逃げろ。何なら俺達の方へ来い。逃げる時間位は稼いでやるさ。」
なんとも頼れる言葉に送られて地図に記された場所を目指す。不思議な事に体中の痛みは既に消えていた。
暫く歩いていると唐突に鼻を抑えたくなる激臭を感じた。血の匂いだ。濃厚な死の匂い。
恐らく此処が『ネウロイ』とやらの被害が大きかった場所なのだろう。飛び散った血痕と片付けられず残った死体と肉片。それが此処の惨劇をこれでもかと教えてくれた。
ふと何か光るものを見つけた。近づいて見るとそれは刀だった。軍刀だろうか。少々刃渡りと重さが物足りない。一般的に太刀と言える刀の方が好みー
「はぁ?」
自分の思考に戸惑う。まるで刀を握るのが初めてではないような。寧ろかなり振るってきたのでないかというくらいに冷静に目の前の物を分析していた。
「まぁ、丸腰も危ないか。」
果たして『ネウロイ』とやらに刀が通用するのか疑問ではある。『瘴気』云々の話もあった。近づくことすら危ういのかも知れないが、それでも武器を持たないと言う選択肢はない。
拾い上げた軍刀はよく手入れされていた。磨き上げられた刀身が美しい。近くを探すと鞘も落ちていた。
「刀、貰っていきます。」
恐らく近くに所有者がいた筈だと思い、手を合わせ声を掛けておく。
じゃりー
近くで物音がした。柄に手を掛け腰を落とし辺りを見渡す。
「よかった。まだ人がいた。」
青い帽子と服装。思わず惹き込まれそうな美しいオッドアイ。何故男装をしているのか知らないが人形のような可憐な少女がそこにいた。