彼はウィッチ達と世界を救う契約を悪魔と結ぶ カールスラント脱出編 作:ゼロラグ
燃え盛る炎越しに『ネウロイ』の様子を窺う。困惑…だろうか?動きが鈍い。突如現れた炎に対してかそれとも獲物が反撃してきた事に対してか。警戒をしているようだ。時間は掛けられない。今が好機だ。
「『八葉一刀流 2の型 絶技・紅蓮疾風』」
足に力を込め、刹那の間に敵との距離を潰すと同時に斬り抜ける。炎を纏った刀身で敵の防御、装甲諸共焼き切る。それを都合10回繰り返す。時間にして5秒。まずまずの速度だ。飛んでいる相手出なければもう少し速くやれたか。
キィィ
甲高い音を立てて『ネウロイ』は粉々の硝子の様なとのに変わった。あの黒い靄の様なモノの影響は受けていない。吸う前に倒せたということだろう。
「残りは…10か。」
援軍だろうか。先程斬り捨てたのとは違う群れが来た。若干蒼星石さんのいる店の方が近い。奴等に気付かれるのは不味いな。ならば。
「『八葉一刀流 6の型 緋空斬・千鳥』」
渾身の1振りを横薙ぎで放つ。すると炎の斬撃が燃える鳥となって敵へと向かっていく。それが直撃或いは掠った箇所が切断され内部から燃やされる。それは消えず敵の息の根を止めるまで連鎖していく。
バラバラと崩れていく『ネウロイ』を無視して雑貨店に向かう。蒼星石さんはコッソリと此方の様子を見ていたようだ。酷く驚いた顔をしていた。
「君、『ウィッチ』だったの?と言うか女の子?」
「は?」
いきなり何だと言うのか。
「男ですけど。」
「え?あー?えっ?」
何か困惑しているようだ。けれど落ち着くのを待っている暇はない。
「『ネウロイ』も出た事ですし、早くお姉さんを…。」
言いかけた時、タイヤが地面を擦り上げる音が聞こえた。方角的にさっきの軍人さんがいた方からだ。コッチに向かっているらしい。
「前方に人影発見!あれは…さっきの!」
目の前にトラックが止まる。銃座には先程の軍人さんが焦った様子で座っていた。
「よかった!少年、シェルターは崩壊した!『ネウロイ』の襲撃があったんだ!今すぐ本隊に合流する!乗れ!そこの蒼い少年?少女?もだ!」
「あ、でも姉さんが…。」
「蒼星石!早く乗るですぅ!」
「姉さん?!」
トラックの荷台からドレスの様な物を着た女の子が顔を覗かせた。蒼星石さんの様な美しいオッドアイ。顔立ちもよく似ている。この人が双子のお姉さんか。
「早く乗れ!出ないと!」
蒼星石さんが荷台に乗り僕も乗ろうとしたその瞬間、家屋の1つが吹き飛んだ。土煙の中から家とそう変わりのない戦車の様な姿が見える。まさか、あれも『ネウロイ』なのだろうか。
「大型…!?クソ!耳を塞げ!」
軍人さんは機銃で戦車型『ネウロイ』を攻撃する。どう見ても効いてない。このままじゃ皆がー
【壊せ】
脳内に声が響く。
【殺せ】
身体がミシミシと音を立てる。
【抗え】
そうだ、まだ死ねない。死ぬ訳には行かない。自分が何者かもわからないまま死にたくない。
【呼べ】
「行くぞ、【バルバトス】!」
そう叫んだ瞬間、狼の遠吠えと共に僕の意識は闇に溶けていった。