※この作品はR-18です。

修羅場   作:言うても

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1話 修羅場

六畳の狭い部屋。換気扇の唸り。蛍光灯はちらつく。

ベッドの端に蓮。七人が取り囲み、逃げ道はない。

ドアの前。深雪の指先から冷気が滲み、蝶番が白く凍る。

 

「……私は、彼にすべてを捧げています。

だから、彼が誰かに心を許すことなど、ありえません」

 

柔らかな声なのに、空気が一気に冷える。

 

「はぁ? 何言ってんのよ。

一番一緒にいたのはあたしでしょ。

本人の前で嘘つくとか趣味悪くない?」

 

エリカが挑むように笑う。

 

「……私も。ずっと、隣にいた」

 

雫は感情を見せず、ただ事実だけを置いていく。

 

「ち、違う……!

蓮が一番大事にしてるのは、私なの……!」

 

ほのかの涙が、畳に落ちて滲んだ。

 

(蓮・心の声)

「やめてくれ……争わないでくれ……」

 

魔力が漏れ、蛍光灯がチカチカと明滅する。

蓮は声を出そうとするが、喉が固い。

 

「……やめましょう」

 

机の端に座っていた真由美が立ち上がる。

普段の余裕ある笑みは消え、視線だけが鋭い。

 

「誰が“彼女”かなんて、もう意味がないわ。

だって私は――蓮の子を宿したのだから」

 

静寂。呼吸さえ止まった。

 

「……残念ですが、私も同じです。

こればかりは、隠しようがありません」

 

深雪が冷気をまといながら告げる。

 

「診断結果が出ている。否定はできない」

 

雫が淡々と続く。

 

「うそ……そんなの、やだ……!

私だけのはずだったのに!」

 

ほのかが泣き叫ぶ。

 

「ふざけないで! あたしだってそうなんだから!」

 

エリカの拳が机を叩き、天板が大きく揺れた。

 

摩利はしばらく沈黙した。やがて苦しげに口を開く。

 

「……言いにくいけど。私も、同じだ。

付き合っている人がいる立場としても……

最低だって分かってる。……それでも、事実は変わらない」

 

最後に藤林が一歩進む。声は柔らかい。けれど退路を塞ぐ。

 

「……知ってたわよ。あなたがあちこちで“遊んでる”ことくらい。

最初はね、私も軽い火遊びのつもりだったの。本気になるつもりなんてなかった。

でも……気づいたら止まれなくなってた。……バカだよね、私。

だからもう、誤魔化しは無理。蓮も、わかってるでしょう?」

 

(蓮・心の声)

「逃げ道なんて、もうどこにもない……」

 

蛍光灯がバチッと音を立てて消える。

部屋は闇に沈み、七人の視線がなおも蓮を縫い止める。

冷気と熱気が交錯し、空気が震える。

 

「……どうして、こうなったんだ」

 

蓮のかすれた声が闇に溶ける。

 

「選びなさいよ。ここで、今」

 

エリカの叫びが突き刺さる。

真由美は沈黙を守り、雫は無言で見据え、ほのかは涙を流す。

深雪は凍るように微笑み、摩利は拳を解かない。

藤林は柔らかく微笑むが、一歩も退かない。

 

「……お願いがある。少しだけ……時間をくれ」

 

暗闇の中、深雪が低く問い返す。

 

「……本当に、少しで足りますか?」

 

篠崎 蓮は無言で頷いた。

部屋の空気は凍りついたまま、夜は深く沈んでいく。

 




朝まで居酒屋で飲んでたら、
隣の席がちょっとした修羅場になってて
「あ、これ物語にしたら面白そうだな」と思いつきました。

お酒の勢いそのままに書いたので、
重たい修羅場劇を楽しんでもらえたら嬉しいです。
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