六畳の狭い部屋。換気扇の唸り。蛍光灯はちらつく。
ベッドの端に蓮。七人が取り囲み、逃げ道はない。
ドアの前。深雪の指先から冷気が滲み、蝶番が白く凍る。
「……私は、彼にすべてを捧げています。
だから、彼が誰かに心を許すことなど、ありえません」
柔らかな声なのに、空気が一気に冷える。
「はぁ? 何言ってんのよ。
一番一緒にいたのはあたしでしょ。
本人の前で嘘つくとか趣味悪くない?」
エリカが挑むように笑う。
「……私も。ずっと、隣にいた」
雫は感情を見せず、ただ事実だけを置いていく。
「ち、違う……!
蓮が一番大事にしてるのは、私なの……!」
ほのかの涙が、畳に落ちて滲んだ。
(蓮・心の声)
「やめてくれ……争わないでくれ……」
魔力が漏れ、蛍光灯がチカチカと明滅する。
蓮は声を出そうとするが、喉が固い。
「……やめましょう」
机の端に座っていた真由美が立ち上がる。
普段の余裕ある笑みは消え、視線だけが鋭い。
「誰が“彼女”かなんて、もう意味がないわ。
だって私は――蓮の子を宿したのだから」
静寂。呼吸さえ止まった。
「……残念ですが、私も同じです。
こればかりは、隠しようがありません」
深雪が冷気をまといながら告げる。
「診断結果が出ている。否定はできない」
雫が淡々と続く。
「うそ……そんなの、やだ……!
私だけのはずだったのに!」
ほのかが泣き叫ぶ。
「ふざけないで! あたしだってそうなんだから!」
エリカの拳が机を叩き、天板が大きく揺れた。
摩利はしばらく沈黙した。やがて苦しげに口を開く。
「……言いにくいけど。私も、同じだ。
付き合っている人がいる立場としても……
最低だって分かってる。……それでも、事実は変わらない」
最後に藤林が一歩進む。声は柔らかい。けれど退路を塞ぐ。
「……知ってたわよ。あなたがあちこちで“遊んでる”ことくらい。
最初はね、私も軽い火遊びのつもりだったの。本気になるつもりなんてなかった。
でも……気づいたら止まれなくなってた。……バカだよね、私。
だからもう、誤魔化しは無理。蓮も、わかってるでしょう?」
(蓮・心の声)
「逃げ道なんて、もうどこにもない……」
蛍光灯がバチッと音を立てて消える。
部屋は闇に沈み、七人の視線がなおも蓮を縫い止める。
冷気と熱気が交錯し、空気が震える。
「……どうして、こうなったんだ」
蓮のかすれた声が闇に溶ける。
「選びなさいよ。ここで、今」
エリカの叫びが突き刺さる。
真由美は沈黙を守り、雫は無言で見据え、ほのかは涙を流す。
深雪は凍るように微笑み、摩利は拳を解かない。
藤林は柔らかく微笑むが、一歩も退かない。
「……お願いがある。少しだけ……時間をくれ」
暗闇の中、深雪が低く問い返す。
「……本当に、少しで足りますか?」
篠崎 蓮は無言で頷いた。
部屋の空気は凍りついたまま、夜は深く沈んでいく。
朝まで居酒屋で飲んでたら、
隣の席がちょっとした修羅場になってて
「あ、これ物語にしたら面白そうだな」と思いつきました。
お酒の勢いそのままに書いたので、
重たい修羅場劇を楽しんでもらえたら嬉しいです。